オレラグ
【Review】第9節 モンテディオ山形戦
驚きのニュースでした。
片渕監督解任、アカデミーダイレクターの吉永一明さんが監督就任。
この決断をどう受け止めていいのか正直整理できていません。
とにかく、事実として桜も散らないこのタイミングで、時間がないクラブは大きな大きな手を打ちました。
この判断が吉と出るのか出ないのか、というか出してもらわないとまずいわけですが……。果たしてどうなっていくのか。
試合のこと
山形戦の振り返りはとりあえずいつも通りシンプルにその試合の振り返りとして書きます。
翌日に聞くことになる驚きのニュースを踏まえてどうこう書けるほど器用ではないので……すみません。
はい、まずこの日は最高のサッカー日和でした。
桜が咲き誇り、青い空が広がって、予想通りアウェー山形からもたくさんの方が来られていて、とってもいいコンディションとテンションの中で行われました。
しかし、試合の方は2試合続けて後半アディッショナルタイムに追いつくなかなか評価の難しいものになった印象です。
メンバーを振り返ると、まず新潟の方は前節と全く同じスタメンで、ベンチにはレオナルドが4試合ぶり、サチローが3試合ぶりにメンバー入りを果たしました。
対する山形は前節からDFとMFに変更はなく後ろの方は安定のメンバーといった感じす。そして前線では坂元以外の2人を入れ替えてきました。
ジェフェルソンバイアーノがベンチスタートなのは正直ありがたいかも、とその時は思いましたがあんまり関係なかったかなと振り返ると感じます。
前半
45分全体の印象で言えばフチさんがコメントしていた通り「山形のプレッシャーをうまく外すことができずに後手を踏んでしまい……」というものでしたが、試合の入りでは最初の最初こそ大きな展開の中で少し押されたりCKを与えたりしたものの、5分過ぎくらいには落ち着いてボールを動かせるようになっていた印象です。
泰基、尚紀のSBがうまく持ちだしたり、シンプルに裏のスペースへ送ったりして、パスは通らずとも中盤で拾うこともできていましたし、そこからセットプレーのチャンスも作れていました。
しかし、18分の松本のミドルから、続けて三鬼のCKのこぼれを坂元がシュートと立て続けにピンチを迎えた頃には既に潮目は変わっていた気がします。
この松本のミドルの場面では左から右へボールを動かされ、スライドが間に合わないうちに前へ運ばれてクロスを上げられ、セカンドを拾われて再び左へ展開されてミドルという形でしたが、結果的にこれは失点場面にも通ずるようなシチュエーションだったのではないでしょうか。
24分にも左から右へ展開した後、阪野へのくさびが入りエリア内の坂元のシュートというピンチに見舞われます。
ここもまず逆への展開がありました。さらに、阪野のくさびが入る前に坂元が右に走ることでパスコースを空ける動き出しをしていました。
こうした出し手と受け手だけではない関係性が山形の方はいくつか見られていて、このあたりは新潟との差を感じる部分の1つだったと思います。
そして失点は41分でした。
山形の自陣左サイドで松本が奪ったのを始点に中央の本田にボールが入ると中村、坂元とテンポよくつないで新潟のプレスを掻い潜ると、右の三鬼へ展開します。
三鬼の入れたくさびのパスを中村がフリックして阪野へ預けると、再びワンツーのような形で前向きにボールをもらい左へ展開し、最後は山田のクロスに大槻がヘッドで合わせました。
恐らく山形としてはほぼ完璧で狙い通りの形で取れたゴールだったのではないかと思います。それくらい新潟としては1つ1つの局面で後手になってしまいました。
中央の本田に入ったところで善朗がプレッシャーのスイッチを入れて本田からパスを受けた中村に対してはカウエと達也さんも加勢して囲みに行きましたがここであっさり剥がされてしまったのがまずかったです。
他のやり方を挙げるとすれば、例えば本田に入った時点で大が少しのぞくくらいの軽い牽制をして善朗が坂元へのパスコースを消す感じで中央へ斜めにしぼることで、同じ山形の右サイドへの展開になったとしても新潟主導で替えさせたくらいのイメージでできて、もう少しその後の対応も慌てずできたのかなという気はしました。
もちろん、大と本田にはそれなりの距離があったので中央で自由にさせたくないというのでプレッシャーをかけにいった善朗の判断も間違いではないと思います。
ただ、その場合中村を3人で囲んだ時点で大は下がってスペースを埋めるのではなく、坂元をつぶしに前へ出た方がよかったのかなとも思います。
余談ですが、新潟はハイプレッシャーを敢行しての成功体験があるからなのかとにかく前から行け、プレスに行け、みたいな声をよく目にしたり耳にしたりすることがあります。
ただ、このシーンのようにプレスへ行くのもうまく運用しきれずつぶしきれないと一気にピンチになったり、ただのリスクにしかならなかったりという裏面があることを忘れてはいけません。
潮目が変わっていた前半18分以降で新潟のチャンスを思い返すと34分の凌磨のヘッドでしょうか。
中盤で達也さんが奪いカウンター気味に深い位置まで持っていって最後は善朗のクロスに凌磨がヘッドという流れでした。
いい守備が起点としてあり、さらに達也さんにしても泰基にしても裏やサイドの深い位置に走りこんで受けたことで手前にスペースが生まれてそこを活用できていたいい攻撃でした。
しかし、前半は1点ビハインドで折り返します。
後半
後半の入りは前節の反省から前への意識がよく出ていましたし、敵将の木山さんもコメントされていましたが、新潟は少し内側に人数をかけたことでセカンドボールを拾う事が出来るようになっていたり、SHが内側で縦パスを受けるシーンなんかも増えたりして迫力を出せていました。
そして53分。
左サイドから泰基のクロスはクリアされますがそれを大が拾い、凌磨、善朗と横へつないで、善朗から必殺スルーパス。
尚紀が完璧に裏を取るとGKとの1対1を冷静に決めます!同点!
あれだけ完全なGKとの1対1で、しかもそれなりに考える時間もあると相当緊張しちゃいそうですがそこは勲さんもおっしゃっていた通り「元FW」の尚紀、左足で落ち着いて流し込んで見せました。さすがです。
また、そこまでに至る過程ではカウエがインターセプトから味方に預けて自ら左サイドまで出てきてクロスを上げていました。
こういう積極的な姿勢は前半になかったところであり、後半の早い時間帯でそれがゴールとして実ったのは素晴らしかったです。
しかし、59分。
三鬼の中央へのくさびを熊本が落とし阪野のシュートを打ち損じたようなボールがゴール前へ。大槻はトラップミスをしますが尚紀にあたってこぼれたボールをしっかり沈めました。
たった6分でスコアは再びビハインドに戻ってしまいます。
このシーンに限りませんが三鬼に入った時点でいたずらにラインが下がり過ぎてしまいました。
また、この場面を少し遡ってみると、山形は坂元が運んで三鬼へ渡してからそこで詰まったため最終ラインの栗山まで一旦下げています。
そこから再び三鬼へ戻り失点へとつながる流れの中で、栗山までボールを下げた時に新潟のDFとMFの8人は押し上げてはいるのですが、寄せに行った2トップと中盤より後ろの8人の間はそれでも大きなギャップがありました。
また、善朗は2トップについていかなきゃという気持ちもあったのでしょうがそれが結果的に中途半端になってしまい、栗山から三鬼へのパス1本で後ろ向きに追いかける守備を強いられてもいました。
新潟は65分に達也さん→シルビーニョ、74分に宗→レオナルドと2トップを入れ替えます。
シルビーニョは投入直後にミドルシュートを放つ場面や、セットプレーから良いボールを供給する場面もありましたが、後方からのフィードが大きすぎたり、簡単に跳ね返されてしまったりで相当にフラストレーションを溜めている様子が窺えました。
山形は70分に阪野→井出、80分に大槻→ジェフェルソンバイアーノと前線を入れ替えます。
井出が入ったくらいからねじを巻きなおしたように再びプレスをしっかりかけてくるようになっているように感じましたが、前線を入れ替えることで前からの守備の強度を下げないという意図があったのかなと想像しました。
新潟は82分に大→フランシスを投入し岡山戦同様ブラジル人選手たちの個人のパワーを前面に出して押し込みに行きます。
ちなみにこの時フランシスが左サイドに入りボランチには善朗が移っていましたが、その事実からも彼への相当な信頼が感じられました。
終盤左サイドのフランシスの仕掛けを中心に押し込んで行きますが決定機を作り切れないまま4分のアディッショナルタイムに突入します。
そして90+2分。
相手のクリアを新井が拾い尚紀へ渡すと少し中へ入って左足でクロス。
カウエが競って、左のフランシスがこぼれを拾って速いグラウンダーのクロス。レオが収めてシュート!GK弾いたボールを凌磨!同点!
さすがにあの瞬間は変な声が出ちゃいました。
しかし、この場面で多くの方が言及されていたのが、“ボール取りに行けよ問題”です。
ベンチのスタッフは「戻れ!」とか「(次に)行け!」みたいなジェスチャーをしていて、自分が見えた限り善朗が一瞬喜んだ後すぐ「ボール持ってこい!」みたいなジェスチャーをしていて、結局自ら相手のところへ行ってボールを取りに行っていましたが、確かにあそこはチーム全員でボールを取りに行ってセンターサークルに戻しに行ってほしかった気はします。
残り時間も3分はありましたし、実際その後CKもあり、ロングスローもあったわけですから。
試合終了、2-2。
先週に続きなんとか1ポイントをもぎ取った、そして2ポイントを落としたゲームとなりました。
気になること
気になるのはやっぱり2失点目のように守るときに下がり過ぎてしまう点です。
これは2失点目のシーンに限らず、前半18分の松本のミドルのシーンしかり、この試合の中でも何度か見られました。さらに言えば前節岡山戦の3失点目もそうだったので修正しきれていなかったということになります。
開幕当初はある程度ブロックを作って対応していて、そこから少しずつプレスもかけていきたいという流れなのかもしれませんが、プレスに行くのは後ろにスペースを与えることになるので上にも書いた通りリスクにもなります。その感覚が強すぎて守るときに必要以上に引いてしまっているのかもしれないとなんとなく推測しました。
それはつまり、どこかまだ全体として前から行くときに行き切れてない部分や無意識な不安が隠れているのかもしれません。
前から行く・行かないに限りませんがハッキリとやることが大事です。
これはハッキリやっていれば無鉄砲でもいいということでは当然ありません。中途半端だと正しい判断すら正しくなくなってしまうということです。
そして、もう1つオフェンス面。
前半でいえば裏へのボールやシンプルな縦へのパスが引っ掛かりすぎていました。フチさんが弧を描くような身振りで指示を出していて、恐らく相手のDFの頭を超える滞空時間の長いボールを要求していたようで、「相手が後ろ向きに守備をするような状況をつくりたい」と勲さんも解説されていましたが、それは決して綺麗で華麗なプレーではないかもしれませんが、攻撃において重要なのは相手が嫌がること、対応が面倒なことをすることです。だから、前半の序盤に少し見られた裏への抜け出しがもっと徹底できれば良かった気がします。
また、後半でいえば前半も決してできていたわけではありませんが、ビルドアップのアイディアが少ないのはどうしても見ていてモヤモヤしてしまいました。相手もプレッシャーをかけて来ていましたし、引かれると5-4-1になるのでスペースを見出したり作ったりするのは大変ではあるのですが、山形の方は随所に1つ飛ばすパスを使って新潟に守備のスライドで少しでも長い距離と速さを強いていたのに比べて、新潟は隣の人から隣の人へとパス回しが各駅停車になりがちでした。
もっとボールを引き出すプレーしかり、運ぶ形がないとゴールを奪うのはもちろん、チャンスを作るのも難しくなります。
ただ、ここに関して1番気になったのは80分頃のスタンドの雰囲気ではありました。
もちろん、1点ビハインドで残り時間も少なくなっているので出来るだけ早く前へ、出来るだけ多く縦へ、という気持ちになるのは至極当たり前のことではあるのですが、新潟が後ろで持っている時にアウェーサポーターはブーイングをして、ホームのサポーターは急かすようにザワつくというのは……。
どうにも自分達のチームを追い詰めているようにしか感じませんでした。
審判のこと
ゲームの内容ではありませんが、審判について。
どうしても微妙な判定があった時ばかり話題に挙がってしまうのでそれだとフェアではないので一言ではありますが書いておくと、この試合はコンタクトプレーは割と許容して、その基準を一貫して続けてくれたことでとても見やすかった印象でした。
また、ファールの判定に限らずリスタートの位置が多少違っていた時も、両チームがプレーしようとしていればクイックでのリスタートもそのまま認めてくれるシーンなんかもあったので、ほとんどストレスなく見ることができたのでいいゲームコントロールだったのではないかと思います。
最後に
改めて、監督交代という大鉈を振るうことになりました。
基本的にアルビレックスに関しては甘めで、何でも楽しむ人間ですが、さすがにこの状況で楽観的でいられるほど残念ながら肝は座っていません。
今後どうなっていくのか。というかまず次節どうなるのか。
どんなサッカーをするのか、どんな戦いをするのか、今のところさっぱり分かりません。
それでも間違いなく来週の土曜日には第10節がやってきます。別に自分がプレーするわけでもないのに正直恐いです。
ただ、そんな恐さとは比べものにならないくらいのプレッシャーが現場にはあることは容易に想像がつくわけですが……。
監督が解任された時はいつも恐くて不安でどうにかなりそうになるんですけど、今回はより衝撃が大きく、これまでとはまた違った質の恐さや不安に苛まれているのですがそれでも、やっぱりこれまで同様に今回も思い出すのは中島みゆきさんの名曲なんです。
そんな時代もあったねといつか話せる日が、
あんな時代もあったねときっと笑って話せる日が……来ますように。
全員でがんばろう。