オレラグ
策に屈して、道絶たれる【Review】第39節 栃木SC戦
何とか灯し続けてきたほんのわずかな火も、消えてしまえば一瞬のことでした。今年は残り3試合を残して目標達成の可能性が絶たれてしまいました。
大変に無念で非常に悔しい限りです。
可能性の芽が小さい中で、仮にそれが潰えた時にその節の振り返りは難しいなぁと少し前から案じていて、だったら最後に“やりました!”か”ダメでした…”で分かりやすく終われるように何とか最終節まで繋げてほしいなと勝手ながら思っていましたが…
まあ、とりあえずいつも通りこの1試合を振り返ってみようと思います。
スタメン
新潟は2試合連続で同じスタメン。前節に引き続き秋山がボランチに入ってサチローとコンビを組みます。また、今週から練習に合流したという報道もあった矢村が早速ベンチ入りを果たしました。
対する栃木の方は前節から1人変更があり、浜下が6試合ぶりのスタメンで右SHに入りました。さらに大幅にメンバーを替えた33節の鹿児島戦以降、1度もベンチにすら入っていなかった大黒が久しぶりに戻っていました。よりによって何でこのタイミングで…と思ったのは正直なところです。
前半
予想通り栃木は立ち上がりからシンプルに長いボールを送ってきました。最初は新潟もセーフティーに蹴って、よく見られる入り方の試合となったわけですが、その中で栃木がチャンスを作ります。
5分、浜下の右サイドからのクロスに榊のヘッドは枠の外。
さらに7分、左サイドの瀬川からゴール前のヘニキにボールが収まり、落としたボールを浜下が狙いますが大武のブロックでしのぎます。
新潟は6分に、舞行龍のパスを内側で史哉が受けたのを起点に右サイドから攻め込んで最初のチャンスを作ります。ただ、どうしても栃木の圧力に押され気味な展開となる中でベンチからは秋山に対して「もっと前線へ大きく展開していこう」という声掛けがあったみたいです。実際チームとしても大武が長いボールを蹴るようになったり、10分には大武のインターセプトからサチローが素早く左サイドのスペースへ送り、レオが繋いで至恩が仕掛けてエリアへ侵入したりというチャンスも作れました。
それでも12分50秒あたりの舞行龍、サチロー、秋山での繋ぎや、13分の大武から至恩、秋山、シルビと繋いだところなど、中盤でテンポよく動かそうとするところはやっぱりなかなかうまく攻め切るまで持っていけません。
すると18分でした。
右サイドの深い位置から史哉はシルビへパスを送ります。シルビはサチローへ落としますがこのパスがずれてしまい、それをカットしたユウリに右足で豪快に決められてしまいました。
あの深い位置からでもしっかり繋ごうとした意識自体は大変よかったのですが、結果的にミスから失点というのは大変もったいないプレーとなりました。
しかし22分、すぐに追いつきます。
大谷、大武、ゴメスと繋ぐと、ゴメスはプレッシャーに来た川田拳をかわして、レオとワンツーで中央へ侵入して行きます。
アタッキングサードに入ったあたりで新太が中に入ってきてライン間でボールを受けるとスルーパス。シルビが抜け出して相手GKの股を抜くシュート!素晴らしい!見事な崩しによるゴールでした。
右SHの浜下が大武へプレスに行ったため、ゴメスには右SBの川田拳が勢いよく寄せてきていました。さらに下がって受けたレオにはCBの乾が付いて来ていたので、ゴメスの冷静なドリブルとレオとのワンツーによって相手DF2人を置き去りにすることに成功します。
さらにゴメスが持ち出した中央の広大なスペースを作るために、シルビが中央から左に走り込んで枝村と田代の気を引いていたのもナイスプレーでした。
そして新太の中へ入ってくるタイミング、受けてからのパスも絶妙でした。
複数の選手が綺麗に連動した素晴らしいプレーだったと思います。
この直後、栃木は負傷の大崎に代わって久富を投入することになり、失点に続いてアクシデントにも見舞われます。
この交代で右SHに川田拳、左SHに浜下、そして久富が右SBへとシフトしました。
しかし、同点に追い付き、相手にアクシデントが発生しながらも、それでもやることがハッキリしていて尚且つそれをパワーを持って実行してくる栃木に対して、なかなか新潟は自分達のリズムにすることができず、結局前半はそれ以降めぼしい見せ場を作ることができませんでした。
逆に言えばうまくいかない中でたった1本のシュートをしっかりゴールに結びつけてイーブンで折り返せたのはポジティブだったとも言えるでしょう。
前半終了、1-1。
後半
後半も栃木の圧力に押される展開は変わらず、FKやクロスからゴール前に迫られて新潟は何とか耐えることになります。
吉永さんのHTコメントで「自信を持って、ボールを動かして相手ゴールに向かっていこう」とあった通り、52分のサチローからレオへ楔が入ったシーンのようにその意識を持ってやっていたのは見受けられましたが、そのシーンも結局中盤で潰されてしまいます。
また58分の舞行龍のイエローに至ったプレーでも、相手陣内で奪われながらもすぐに奪い返しに行ってはいるものの取り切れなくて、試合後に舞行龍が話していた通りシンプルに「球際」での劣勢というのが、ボールを繋いで運べないことに加えて、陣地を押し返せない要因にもなっていたかと思います。
60分にゴメスのサイドチェンジから新太が受けて、内側に入った史哉を経由してシルビがようやくチーム2本目のシュートまでいきますが、反対に65分には自陣でのボールロストを発端に瀬川のクロスからユウリに決定機を作られ、リズムは悪いまま推移していきます。
66分過ぎにサチローが右サイドで浜下に寄せられて何とかマイボールのスローインにした際、一瞬だけ映った後ろの吉永さんが“どうにもうまくいかないなぁ”といった感じで首をひねっていたのは印象的でした。
73分栃木が2人目の交代としてヘニキ→キムヒョンを投入します。
前線でターゲットとなる役割をそのまま引き継ぎます。
2分後、新潟も最初の交代枠を使います。ここ最近では定番となっている至恩→フランシスでした。
それでも流れは変わりません。
78分、左45度から浜下がミドルシュートを狙いますが、ここは大谷のナイスセーブで失点を免れます。このシーンも中盤で浮いたルーズボールを先にユウリに拾われて、キムヒョン、枝村と繋がれてのピンチでした。
81分に新潟は新太→貴章を投入します。
直後に栃木も最後の交代枠として、榊に代わって満を持して大黒を投入してきました。
残り10分を切ってからラストスパートで多少オープンになり、さらにキムヒョンがヘニキに比べて淡泊だったことも手伝って、奪われても素早く奪い返して相手陣内へ押し込む時間をわずかですが作れていました。
シルビのFKだったり、アディッショナルタイムに入ってすぐには、左サイドのフランシスからパスをもらったレオがDFをかわしてシュートを狙ったりと、最終盤になってようやくゴール前に迫るシーンを作りますが決め切れません。
すると93分、瀬川の右CKに詰めたのは田代でした。
この日何度も先に触られピンチになっていたセットプレーが決勝点になったのは何とも示唆的というか、フットボールはよくできているなと思わずにはいられませんでした。
試合終了、2-1。
表面的には最後の最後に決着がついた劇的な試合でしたが、内容からすれば残念ながら敗戦は妥当と言わざるを得ないようなゲームだったかと思います。
してやられる
吉永さんが試合後に失点シーンに言及した後「それよりも、攻撃のところでうまく進められなかったというのが、トータルで見たら大きいと思います」と仰っていましたが、そこについて少し。
栃木は前からアグレッシブに奪いに来ることが予想され、実際そうでした。ただ、新潟のCBへのプレッシャーに関しては思ったよりも来ていないように感じました。それはここ最近新潟の攻撃のリズムを作り出していた秋山を徹底的に消すためでした。
作っていただいた図の1つ目では、中央の狭いところに入ったサチローへパスが入り、素早く横の秋山へと繋いで、悪くないテンポでのビルドアップが行われていました。京都戦であればそこから縦に持ち出す、または縦パスを入れるイメージがあったと思いますが、栃木はヘニキが素早く戻ってコースを塞ぎ、さらに榊も後ろから挟みに来ていて秋山は後ろに戻さざるを得ませんでした。
また2つ目の図では、サイドから運んで前進しながらもサポートしに行った秋山に対してキムヒョンがしつこく付いて来ていました。
このシーンはフランシスがボールを持っているケースです。例えばCBから直接ボランチへ入れられないとき、SBを経由してから前を向いた状態のボランチが受けることで相手の2トップによるファーストプレッシャーラインを越えるというやり方がありますが、栃木は交代で選手が替わってもFWが戻ってボランチ潰し(秋山潰し)という対策をしっかりと遂行し切っていました。
マークがしつこく付いてくるのであれば、必然的にどこかにスペースが生まれるので、そこにまた誰かが入って受けて動かして、ということが求められるわけですが、そういったことも少なかったように感じます。
試合後に解説の小村さんが秋山について「1人な感じがした」と仰っていましたが、まさにそういった印象でした。
アクションの不足
動きの少なさは何もビルドアップの部分だけに限ったことではなく、中盤より前でもボールを受けに行く動きだけになっていた感じはしました。
66分のサチローが右サイドで浜下に詰められてスローインになったシーンでも、結果的に上がっていた史哉含めて前線にいた4人と後ろの選手は距離が大きく離れてしまっています。そこに至るまでのビルドアップの最中に前線でどれくらい動き出したがあったのか、映像では分からないので何とも言えませんが気になってしまいました。
70分35秒あたりのゴメスからシルビへいい楔のパスが入ったシーンでは、受けに行ったシルビの動きと同時に左サイドでは至恩が裏に抜ける動きをしていました。こういった抜ける動きと受ける動きがセットになっていたシーンは少なかったように思います。
受ける動きはあるので、このゴメスからシルビのシーンのように終始劣勢な試合展開の中でも縦へのパスはそれなりに入っていたと感じました。
ただ、結局そのボールが入ったところに相手はしっかり付いて来ていて、しかも他の動き出しが少ないから、周りの栃木の選手もボールホルダーへ寄せに行きやすく、囲まれて奪われるというシチュエーションが多くなっていたのではないでしょうか。
裏に抜け出す動きだけで言えば、前半の序盤に少し長いボールを入れていく時間帯もありました。あれは「陣地を挽回したいというのもあると思いますね」と小村さんが仰っていましたが、後半は前半同様押される中でそういったシーンすら少なくなっていたように感じたのは疑問に感じます。
クリアしても決して間違いではなかったり、少し長めのパスもしっかり繋げる意識を持ち、実際にいいパスになっていたシーンもいくつかあったりして、それはそれで素晴らしいですしそれが出来るに越したことはないのですが、そこで相手に食われてしまっては水の泡です。何とも歯がゆく感じました。
柔軟性
動き出し云々の話をしましたが、あとはやっぱり単純なパスの質、特にポストプレーから落とすパスやワンタッチのパスでミスが多かったのは問題でした。
この日の栃木県グリーンスタジアムも芝は長く、散水もされなかったようなのでパスに限らずドリブルでもボールの転がりが悪くて詰まってしまい、スピードに乗りきれないシーンはいくつかありました。また栃木のプレッシャーが早く厳しかったのはもうここまで何度か書いてきた通りでボールを動かすのはいつもより難しかったと思います。
しかし、それはどちらも想定されていたことでした。
ゲーム全体としてもう少し手を替え品を替えではないですが、柔軟に戦うことはできなかったかなぁと残念に感じました。
最後に
昇格の可能性がなくなった試合について振り返って、ちょっとどう締めたらいいかの分からず、さらにこれも幸か不幸かが分からないのですが、シーズンはあと3試合残っています。
“来季に繋がる戦いを”とはよく言いますが正直それがどんな戦いなのかは考えれば考えるほど堂々巡りになってしまいます。
ただ、とにかく1つ間違いないのは勝ちにこだわってほしいということは言えるでしょう。
自分もいろいろ悩みながら考えつつ、残り3試合応援したいと思います。