オレラグ
フットボールをどう見るか【Review】第40節 FC岐阜戦
ツイッターで試合の感想なんかを眺めていると、勝利したもののそれなりに不満や物足りなさを感じている意見が多く見られたような気がしました。
自分は寒い中でも割と楽しく見られていて(もともとサッカーやアルビレックスにおける楽しさのハードルが著しく低い人間なので自分の感情は参考にしづらいですが)、悪くなかったという意見もあって個人的にちょっと安心したりもしたのですが、いずれにしろわずかですがギャップを感じました。
別にこれが悪いとかっていことじゃないです。むしろこういう“自分は楽しかった”とか“私は今一つだった”というところから細かい部分をあそこがよかったとかここはよくなかったとかってああでもないこうでもないって話せるのがサッカーの楽しさなのかもしれないなぁと改めてですがなんとなくぼんやりと思ったということです。はい。
スタメン
新潟は3試合連続で同じスタメン。ベンチには前節に引き続き矢村も入っていました。
岐阜の方は前節から2人の変更があり、まずはGKに12試合ぶりにスタメンのビクトル。さらにCBには2試合ぶりに竹田が入った、というより戻ったという表現が正しいかと思います。
それ以外でのスタメンにメンバー変更はありませんでしたが、前節徳島戦とはSHのフレデリックと塚川のポジションが左右反対になっていました。これまでの何試合かでもちょくちょく入れ替えてはいたのでそれほど珍しいことではなくて、何かその日その時の狙いによって入れ替えているのだろうとは思います。どういう狙いかまではちょっと推測しかねるのでご了承ください。
前半
試合を通じて丁寧に後ろからボールを動かしていこうとしていた中で、その姿勢は序盤から窺えたわけですが、入りの数分間に関してはちょっと不安定な部分が散見されました。
開始1分には大武からボランチへのパスを奪われたところからセットプレーを与えてしまい、ゴール前に迫られます。
4分の阿部のパスを前田が落として馬場がシュートまでいったシーンも、起点は中盤の秋山からシルビへの縦パスをインターセプトされたところからでした。
それでも6分過ぎに、サチローが中盤中央のエリアで受けたのを起点に至恩の仕掛けまでいき、落ち着いたビルドアップからの攻撃を1つ作ると、その直後でした。
7分、相手2トップの脇でボールをもらったサチローから楔のパス。
レオが相手のライン間で受けるとシルビとのワンツーから右の新太へ展開します。新太はすぐにファーサイドへのクロスを選択。フリーで走り込んだゴメスが折り返したボールを至恩!幸先よく先制です。
中央の狭いところへまず勝負のパスを入れて相手を寄せておいてから左右に大きく揺さぶってフィニッシュ。お手本通りというか、見ていないですけどたぶん練習通りなんじゃないかというくらい綺麗に崩しました。
見逃してはいけないのが史哉のフリーランニングです。
レオから新太へとボールが渡った際、ゴール前は岐阜のDF3人(竹田、當間、藤谷)vs新潟2人(シルビ、至恩)で、岐阜からすると数的優位は作れていました。しかし、新太へ甲斐が出たことで、甲斐と竹田の間にスペースができ、そこへ史哉が出て行きます。これによって竹田は少しそこへのカバーを気にしてシルビから離れ、當間がその空いたシルビを少し見に行き、さらにそれに伴って至恩を藤谷がカバーという受け渡しが行われて、逆サイドのゴメスが完全にフリーとなりました。
DF3人だけの責任にするにはちょっと酷で、岐阜の右SHである塚川がもう少し早くゴメスに気づいて戻らないといけない気もしますが、とにかくそういった状況になったのも史哉のランニングがあったからこそでした。お見事。
ここからは新潟がボールを持つ展開になる中で、岐阜もあまり前からボールを取りに来ず、ブロックを作ってきたため、非常に静かなゲームとなります。
新潟のチャンスシーンといえばまずは26分。
中盤で奪われたボールをすぐに奪い返したところからサチローが拾って、ドリブルでスルスルっと抜けだしてラストパス。GKと1対1になった秋山がシュートを放ちますがビクトルのセーブに阻まれます。ここはしっかり決めておきたかった決定機でした。
また、それ以外では36分の落ち着いた左サイドでのビルドアップからサイドチェンジを経てからのシルビのミドルや、こちらもゆっくりとしたビルドアップから舞行龍の楔をスイッチに左サイドまで展開して、最後はサチローのミドルといったところは、しっかり動かしてフィニッシュまでいけた良いシーンでした。
岐阜の方ではカウンターになりそうというシーンがいくつかありましたが結局腰折れになることがほとんどで、ちょっとヒヤッとしたのは31分のクロスのクリアボールを川西がボレーで狙ったところくらいだったでしょうか。
33分ころには當間がボールを持ちながら前線へ出すところを見出せず不満な態度を見せる場面もあり、脅威となるようなプレーはほとんど見られませんでした。
前半終了、1-0。
CKのキッカーが最初の1本目こそゴメスでしたが、それ以降はレオが蹴っていたのは今まで見られなかったので気になるところでした。どういった意図での選択なのかは分かりませんが、ニアを狙って恐らくすらして押し込むみたいなことを狙っているのは推測できました。
後半
最初にチャンスを作ったのは新潟でした。
49分、右サイドで新太がカットするとすかさず前線へ。レオが収めるとドリブルで仕掛けて行ってエリアへ入ったところで右足を振りますが、GKのセーブに阻まれます。
DFと対峙する中で割と角度の限られた場所からあれだけのシュートを打てるのはさすがといった感じです。勲さんはDFをブロックしてシュートコースを作る腕の使い方を褒めていました。
ってこれ前もいつだったか書いた気がしますが、まあいいでしょう。良いプレーは何度褒めたって余計なことはありません。
後半も基本的に試合の展開は変わらず推移します。
新潟がボールを持って、岐阜はブロックを作って守る形で、岐阜がボールを持っても新潟は出足よく守れており、脅威に感じるようなプレーはほとんどありませんでした。ただ、新潟もちょっと攻撃が中、中に寄ってしまっているような感じがして、シュートまでやり切るシーンはあまり作れずにいました。
そんな中で奪えた追加点はサイドからのシンプルなボールが起点でした。
64分、左サイドのハーフライン付近からゴメスが前線へフィード。新太が走り込んだところは甲斐にクリアされますが、それをレオが拾うと、パスなのかDFを抜きに行ったのか分かりませんが、再び新太にボールが渡ります。素早く立ってボールを収めてから右に持ち出すと倒れ込みながらシュート!
これがDFにあたって少しコースが変わりゴール右上に決まりました。追加点。
ゴメスがボールを持った時に新太と共にサチローも動き出していました。最初は新太と同じ方へ走り出してしまっていましたが、新太が先に走っているのを見てすぐにファーサイドへコースを変えており、まず2人の裏を狙った動き出しがよかったことと、その後臨機応変に動きを変えたことと、どちらもナイスプレーでした。
また、このシーンの前でもビルドアップをする中でシルビが2,3回裏への動き出しを狙っていました。これはどちらもボールが出てきませんでしたが、こういった動き直しは絶対に大事なプレーです。シルビのプレーも直接ゴールに関わっていなくとも称賛されてしかるべきポイントでしょう。
岐阜は2失点目の少し前に塚川→村田、さらに失点の直後に前田→バホスの交代を行います。バホスはそのままFWで、村田は左SHに入りフレデリックが右SHへ移りました。この2人が入ってから少し流れが変わって岐阜のチャンスも増えるようになります。
特に村田は、79分に左サイドからえぐって川西のシュートをお膳立てしたり、83分には川西からのパスを馬場によって釣り出された大武が空けたスペースで受けてシュートしたりと存在感を発揮していました。
ここは大いに反省材料となるでしょう。
反省材料で言えばもう1つ。
ピンチが増えた中でも完全に押し込まれたわけではありませんし、こちらもチャンスは作れていましたから、3点目を取って試合を終わらせることができなかったということは言えるでしょう。
これは何も後半の終盤に限った話ではなく試合を通じて言えることですが、カウンターからレオが抜け出したシーンや、途中出場のフランシスの仕掛けから惜しい場面は作れていたので2点というのはいささか物足りなく感じたのは事実でした。
それでも危なげなく、と言ったら危ないシーンもあったので正確ではないかもしれませんが、2点リードの余裕をしっかり活かし、終盤にはJリーグデビューとなる矢村も起用しながら逃げ切ることができました。
試合終了、2-0。
前半戦では2点リードから1点返され、さらにPKを与えてあわや同点というところまで持っていかれたのと比較すれば成長と言えるのかもしれません。
まあ、監督も変わっているし、シーズン終盤で状況も全く違うから比較しようがないと言われれば、それはまあそうなんですけど…。
ボールを動かすという話
パス数(768)、成功率(90%)共にどちらも今季最高の数字だったようにデータからも新潟がボールを持ちながら進んだ試合であったことは明白な試合でしたが、テンポよく繋いで組み立てたり、崩しにかかったりするシーンはいくつもあった中で、あえてミスとなってしまったシーンから1つ。
22分52秒〜のシーン。
史哉からボールをもらった舞行龍が左サイドに張って待っていた至恩へフィードを送るもラインを割ってしまったのですがここを少し細かく。
舞行龍は史哉からボールをもらうと、左足でトラップして大武へ出そうかなという持ち方をしました。しかし、岐阜の右SH(塚川)が大武へ寄せる準備のために少し前へ出て来ているのを見て、スッと右足のアウトサイドでボールを置き直してすかさず至恩へのフィードを狙いました。
さらにこの時、ゴメスが内側に入って高い位置まで出てきていたことで相手の右SB(藤谷)にまず中を気にさせる必要を強いることが出来ていました。
前半の途中に勲さんが「岐阜は新潟のSBに誰が行くかハッキリしない」ということを仰っていて、これに関してはやられたくない気持ちが強過ぎて中を締めることに偏ってしまい外が空いたと推測しましたが、そんな岐阜の立ち位置やプレスの掛け方を見つつ、ボールを動かす時は素早く逆サイドへ動かして高い位置へ運ぶということは狙ってやれていたように思います。
後半にも同じようなシチュエーションがありましたし、近い状況はいくつもあったのでぜひ探してみてください。
攻→守(ネガティブトランジション)
ボールを持てる試合展開の中で、相手を見ながらボールを動かすことが大事であることと同時に、それと同じくらい大事なのが失った瞬間の守備です。そこについても1つ。
57分05秒〜の連続した2つのシーンなのですがまず1つ目として、こちらはいつも図を作ってくださるさいとーさんがちょうど動画を撮ってくださっていたので、図に替わってそちらを(動画の20秒くらいからの一連の流れです)。
右サイドから中央へ侵入しますが奪われます。
しかし、パスを受けた川西に対して準備していた秋山がすぐにチェックへ行き、そこで奪うことはできませんでしたが、さらにその後ボールを受けた阿部に対しては新太と史哉が挟み込む形でプレッシャーを掛けて、結果的にマイボールのスローインにすることができました。
— サイト〜 (@saitosangogo) November 9, 2019
さらにその直後、スローインからのリスタートでシルビからの縦パスがカットされてからが2つ目の図です。奪われるや否やシルビと至恩が挟み込み、さらに前田には再び秋山が寄せて、下げられたボールには至恩がプレスへ行っています。
どちらも連続で、しかも行けるところは複数人で奪いに行けています。
また、その強度も1つ目の方で言えば秋山や史哉、2つ目で言えば至恩や秋山の前へ奪いに行く速さは迫力を持って奪いに行けています。
こういった守備の出足は前半から見られていたので、試合を見ながら仮に攻撃が不完全燃焼だったとしてもこれができていれば大丈夫だと思えました。実際そういった守備を意識していたことは試合後のコメントにもありましたし、前節からの反省が一番よく出ていた部分なのかなと感じました。
新太と秋山
ちょっと個人について。
まず新太ですが、もうここ最近は彼の活躍に目を見張ってばっかりな気がしますが、この日も気の利いたサポートが随所に見られました。中央や時には逆サイドまで来てボールを受けることもありましたが、それはただボールが欲しくて受けに行っちゃうのでは全くなく、ボールホルダーの選択肢を増やしてあげて、受けたらシンプルに捌いてリズムを作る役割をスムーズにこなしていました。
正直、新太はキャラクター的に貪欲にゴールだけ狙ってればいい、なんて思わないこともないのですが、プレーの幅が広がるに越したことはありません。いろいろできた上でゴールも量産できればいいわけですから。
ちなみに史哉が、右サイドに人が少なくて自分が前へ出て行っていいか迷うという、右サイドの攻撃についての悩みをコメントしていましたが、これは新太が幅広く動いているからというよりも、どうしてもシルビが左に流れることが多いのもあって左サイドに比べるとそういう現象が起きているのかなという気がします。新太が空けた右サイドのスペースに時折サチローが飛び出すこともありますが、この辺がもう少し左のように厚みを出せるようになると、史哉がさらに前へ出て行きやすくなるでしょうし、結果的に新太がゴール前でチャンスを迎えるシーンも増えてくるような気がします。
あともう1人秋山について。
こちらはただこのプレーが好きってことを書きたかっただけです。
52分03秒と75分09秒。この右足で軸足の後ろを通してクッと方向転換するやつ。思わずスタジアムで見ていて「ふぅ〜」って声出ちゃいました。
堪りません。
最後に
冒頭でのこの試合に対しての評価にちょっとギャップを感じた話ですが、結局消化試合の難しさがどうしてもあるんだなぁというのはいくつか意見を伺った中で感じさせられました。
確かに、岐阜に失礼を承知で言えば2-0は物足りません。ビルドアップの場面で中盤より前の選手がボールを受ける際にまだ前を向ける余地があると感じるシーンはありましたし、楔を受けられるコースがある中でそういったアクションが足りなく感じたシーンもあったように思います。また、1つ目の図で取り上げたシーンのように、いい狙いやいい形がフイになることも含めて単純なミスはそれなりにありました。
今節は現在のチームの立ち位置、総合力の中で「やるべきことをしっかりやる」(勲さん)ことができたという表現が的を射ているのかもしれません。
たぶん“これ以上”のことが“常に”できていたのなら、残り3試合を残して昇格の可能性が無くなってしまうような位置にはいなかったとも言い換えられる気がします。
結局何が言いたいのかグダグダしてしまいましたが(いつものことか)、とにかく残り2試合。
次の相手は恐らく今節くらいの内容だと打ち負かすのは難しいように思います。今節のポゼッションや守備の出足を最低限に、いかにミスを減らして隙をなくせるか。いつも通り楽しみにしたいと思います。