オレラグ
美しい舞台と待っていた悲劇【戦評】第20節 徳島ヴォルティス戦
こんにちは。
広がる青、浮かぶ白、青々とした緑を光が照らしていました。さわやかに吹きぬける風に色があるとすれば、それもきっと綺麗な色に違いないでしょう。
初の連敗ということで冒頭だけでもなんかいい感じに入ってみましたが、ここからはいつも通り試合を振り返ってみます。
スタメン
新潟の方はどうやらファビオが前日練習で別メニュー調整だったようで今節は欠場となり、替わってテセがスタメンに入りました。それ以外は前節と全く同じスタメンとなります。
対する徳島は前節からの変更が3人。
まず右WBに岸本ではなく藤田が入り、シャドーの位置には鈴木ではなく渡井が入ります。そして前節ゴールを挙げながらも負傷で途中交代となった河田はベンチスタートとなり、垣田が2試合ぶりのスタメンに名を連ねることとなりました。
ようやく秋めいてきた9月の3週目。
見るのはもちろん、ボールを蹴りたい欲にも駆られるくらい気持ちがいい天候の下、入場制限も少し緩和されたタイミングで今季初のホーム戦デーゲーム開催となりました。
前半
お互いにボールを自分達が持ちながらゲームの主導権を握りたい同士の対戦でしたが、序盤からそれをより体現できていたのは新潟の方でした。
ボランチがDFラインに下りて後ろを3人にすることで徳島の前線に対して数的優位を作り、SBが高い位置を取ってSHが内側に入り中盤に残る島田や前線の新太と近い距離で相手の間を狙いながらボールを引き出すという形です。
徳島は守備になるといつも通り4-4-2となる仕様で、前線の2トップはまず中盤に残るボランチをケアすることで後ろの3人にはある程度持たせるという形でやっていましたが、その3人に簡単に縦パスを入れられたり少し運び出されてやはり縦パスを供給されたりして、5分頃にDAZN解説の梅山さんも「徳島としてはもう少し規制を掛けたいですよね」とご指摘されていたように、守備がなかなかハマっていませんでした。
9分、左サイドで作ってから右に展開して、新井のクロスに中島ヘッドもDFブロック。
13分にはマウロの中距離の縦パスをテセが落とし、至恩がドリブルからシュートも外れます。
いずれもゴールとはなりませんでしたが、前者で言えば左サイドで選手が入れ替わり立ち替わりながらパス交換して逆まで展開という形ができていましたし、後者では中島が下りて相手を引っ張ったことで、テセのポストプレーの際には中盤に1人残った小西の周りに至恩や新太、ここではリスク管理で留まりましたが福田と新潟の選手が近い距離でサポートに入れていました。
対して徳島のビルドアップに対しての新潟の守備ですが、まず徳島はこれもいつも通りではありますが、相手を見つつ選手が入れ替わって立ち位置を替えながらビルドアップを行ってきました。
例えば田向が内側に入って内田・石井の2CB+3ボランチだったり、小西が下がることで後ろを3人にして田向がボランチの位置に入ったり、もしくは田向がSB的に幅を取って西谷が内側に入るといった変化をさせていました。とにかく小西と田向が様々に動いていた印象です。
対して新潟はまず前線2人がボランチを消すところから始まり、連動してSHは大外にいるWBへのコースを消しながらCBへプレスを掛けることもあれば、FWがCBに出たら少し内側をケアする感じでポジション取ったりして上手に制限を掛けながら守ることが出来ていました。
徳島のWB+前線3人が新潟の4バックに対してその間と外側に立ってくるわけですが、2トップ+SHにボランチも連動して前へ出たり、パスコースを塞いだりという”背中で守る”ことができていたことで高い位置での守備が実現できていました。
また、立ち上がりの7分頃にはベンチから新太に対して「8!8!」と声が掛かっていてそれに対して新太も「8でしょ、大丈夫大丈夫」と徳島の心臓である岩尾のマークについても細かく確認が行われていました。
それでも18分にクイックリスタートから右サイドに展開して最後は小西のミドルであり、22分には高い位置からのプレスで引っかけて垣田の決定機といくつかチャンスを作っていたのはさすが徳島といった感じではありました。
飲水タイム以降の主なシュートシーンとしては、新潟は25分の荻原のアーリークロスにテセが反転シュートを放ったシーンや35分のマウロのインターセプトから中島のミドルといったものがありました。
中盤で繋いでからサイドに展開してシュートまでいった25分であり、前線から守備の網をかけて縦パスを奪ったところからシュートまでいった35分であり、やはり新潟の方が丁寧にボールを運ぶことや高い位置からの守備といった本来やりたい形ができていたかと思います。
ただ徳島の方のチャンスを見ると、31分にあった西谷のカットインシュートであったり、38分の内田のアーリークロスに渡井のヘッドであったりと、大きくサイドを替える展開から少しずつ糸口を見出していました。
新潟としては中央から裏に出されたボールや、内側で間を狙ってくるプレーに関してはよくカバーできていましたが、この大外を使われての攻撃に少し不安を残すことになります。
前半終了、0-0。
それでもペースとしてはやや新潟で進んだ45分だったかと思います。
後半
開始早々の40秒とさらに55分、荻原が積極的にミドルを狙います。どちらもゴールとはなりませんでしたが、前半のよかったペースを渡さんとばかりに後半も良い入りを見せます。
ただ徳島の方も、50分にアクシデントで田向→福岡という予期せぬ交代を強いられましたが、53分に渡井、56分に西谷と右サイドの深い位置を取ってチャンスを作り出します。
59分に新潟が中島→ロメロという交代を行った直後にも、高い位置での素早いボール回収を起点に今度は左サイドを抜け出してクロスからゴール前に迫るシーンを2回作るなど、前半の終盤から引き続き外側から侵入できるようになっていきます。
63分には藤田、内田→岸本、ドゥシャンという同時交代で右WBとCBを入れ替えてきました。
新潟はロメロの力強い推進力を活かして運んだり、69分の島田が上げたクロスに新井のボレーというチャンスシーンも作ったりはしましたが、少しずつ前半のようなテンポのいいポゼッションが影をひそめ始めます。
逆に岸本のクロスまで至った65分のように、小西から間に立った西谷に縦パスを入れられ、一旦左に渡してから中央経由で右に展開されるといった徳島に揺さぶられるシーンも見受けられるようになってきました。
そして飲水タイムを挟んで72分には、荻原のバックパスを小島の前で垣田にかっさらわれてゴール前に迫られる絶体絶命の大ピンチを迎えますが、ここは必至のカバーで何とかしのぎ切ります。
ただ、前半は間に立ってくる新潟の選手も気になって中盤に留まる選択をしていた徳島の選手も、後半はどんどん出て来て新潟が窮する格好が増えてきます。
78分新潟は新太、島田→矢村、善朗を投入します。
この交代によって前節同様、中央に福田、右にロメロ、左に善朗でトップ下に至恩という中盤ダイヤモンドの4-4-2へ変更しました。
対する徳島は82分に垣田→河田を投入します。
形を変えて以降新潟も矢村が裏に抜ける動きを見せて変化をつけてくれたり、ダイヤモンド型になった中盤が近い距離感でサポートしながらボールを動かしつつ、舞行龍から新井、福田から荻原といった対角の大きい展開を見せます。
しかし、どうしても中盤をダイヤモンドにしたことで外側へのアプローチにラグが生まれてしまうようになり、87分には右サイドに出た小西のクロスに河田がヘッドはクロスバー。さらにクリアを拾われたところから今度は西谷に右サイドから突破されてシュートも小島のセーブとギリギリのシーンを作られます。
そして89分、右サイド矢村のクロスをテセが落として舞行龍が詰めにいくもGKにキャッチされた直後のプレーでした。
小西から対角のボールが右サイドの岸本へ渡ります。じわじわとゴール方向へ仕掛けて行きフェイントで荻原を動かして空いたコースへ丁寧なクロス。走りこんだ河田のヘッド。失点。
再三ピンチを作られていたサイドから最後の最後、ついに破られてしまいました。
アディッショナルタイム、善朗のCKからテセヘッドなどCKやロングスローといったセットプレーで何とかゴールを狙いますが届かず。
試合終了、0-1。
今季初の連敗となりました。
求むアイデア
今年のチームカラーとこれまでの試合をご覧になっている方なら、問題点としてフォーカスすべきは最後に失点を喫したところよりも、8試合ぶりに無得点に終わった部分ではないかという見方に恐らく共感していただけるような気がしています。
ということで今回はその攻撃面について気になったことを2つ挙げてみました。
まず1つ目が64分。
福田から右の新井に渡りクロスが上がるもクリアされたというシーン。
ここで感じたのはアタッキングサード(ラスト3分の1)のエリアにおけるもうひと工夫、アイデアが欲しいということです。
福田から新井にボールが渡ったタイミングで内側にいたロメロは裏のスペースに抜け出す動きを見せていますが、このシーンではそこを使ってあげる意識が欲しかったなと感じました。
新井からダイレクトでロメロへ送るパターンでなくても、例えば中央へサポートに入っていた至恩へ渡してワンタッチでスルーパスといった流れであればゴール方向に向いた状態でもらえるので尚良しという形になります。
こうして内側から抜けてサイドのスペースを取る、もっと言えばペナルティエリアの深い位置を取るという狙いがチームとして希薄になっている印象を受けました。
もちろん相手の研究は日々進んでいます。
序盤戦に結構見られた細かく繋いで丁寧に崩す形だけではいけないということで、ファビオやテセといった高さや強さをシンプルに活かす形を二の矢、三の矢として用意しておくことは絶対に必要です。
とはいえ、どうにもそのシンプルな形に比重が傾き過ぎてしまっている気がしてしまい、結局それが淡泊な感じや決定機の少なさにも繋がっているような感じがします。そしてこのあたりがアルベルさんの仰る「自信を持ってプレーできないことが多かった」という見方にも繋がるのかなと感じた次第です。
起こせアクション
もう1つが66分、右サイドで福田とのパス交換から新井がうまく相手のプレスをかわして、ロメロへ縦パスを出しましたが福岡にカットされたというシーンです。
これは後半の途中から受け手の動き出しがすっかり減少してしまったように感じた代表的な場面として取り上げてみました。
ビルドアップからの流れの中で、相手のプレスがかなり迫ってきている難しい状況ながらもうまくかわし、新井は顔も上がっていて前を向くことが出来ているにも関わらず、前線の4人とは依然として距離があり結果的に縦パスを狙われてしまいました。もう少しロメロなり新太なりが受けに行くような動きが欲しいですし、または斜め前の至恩も受けようとするアクションがあってもよかった気がします。
そしてその受けに来てほしかった3人がほとんど同じ高さで横1列に並んでしまっていたことにも大きな問題を感じました。これでは守る方からしても視野の確保は容易ですし縦パスを狙いやすい格好です。
75分にもマウロからロメロへの縦パスを福岡にカットされたシーンがありましたが、ここでは選手同士の距離感もそうですが、止まってしまっていることでそれぞれが次どうするかを探っている感じがして、それで結局距離が遠くなってしまっているように感じました。
カットされたところで「動けよ」という声がマイクに入っていましたが、これはカットしたボールに反応できなかった西谷に対して福岡が言っている可能性も捨てきれませんが、新潟の選手が受け手に対して言っていても何ら違和感はありませんし、状況的にも恐らく新潟の選手が発した言葉だったのではないかなと推測しました。
最後に
相手を見ながらポジションを取りつつ、それをそれぞれが共通理解を持った上でテンポよくボールを動かして相手のプレスをかわして運び出すことや、前半のところでも少し触れましたが前線から連動して守備の網を掛けて相手を背中に置きながら縦パスを引っかけたり、奪い切ったりする守備は随所に見られました。
こうやってポジティブなところ探すとなぜか怒られちゃうこともあるそうですが、別にポジティブな発信をする人は悪い所が見えていないわけでもないでしょうし、ネガティブというか厳しいことを発信する人がいいところを蔑ろにしているわけでもないでしょう。
ただどうせお互いに反応するのなら、もっとこのボールの動かし方がどうだとか、あのプレーはこうしないといけないんじゃないかとかサッカーの中身について細かく意見を交換してみた方が楽しいですし健康的じゃないかなぁとなんとなく思いました。
まあ、完全に余計なお世話ですし、みんながみんなサッカー自体に興味があるわけじゃないということも承知しているのでどうか聞き流してください。
負けた時のSNSほど見ない方がいい物はないなとメンタルが豆腐の自分なんかは思うわけですが、そりゃ負けたら気持ちはささくれるものです。
踏ん張りどころでしょう。
改めて温かくも厳しい目で応援しようと思います。