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勝利へのクアトロ【戦評】第23節 FC琉球戦
こんにちは。
終盤琉球側がジャッジに対してきつい言葉も使いながらイライラや不満を露わにしていて、それを聞きながら「お~言ってる言ってる~」なんてちょっとニヤニヤしてしまうあたりに、我ながら性格悪いなぁなんて思ったりもしましたが、まあそんなのどうでもいいのです。
試合後に解説の石川さんが仰っていた「チーム一丸となって」という表現がぴったりな戦いで5試合ぶりの勝利を掴み取りました。
素晴らしい。
スタメン
スタメンから振り返っていきます。
まず新潟ですが前節からの変更が4名。
新井、島田、ロメロが2試合ぶりで、シルビは6試合ぶりのスタメン復帰となりました。
前線のポジションは何通りか予想されましたが、右SHに善朗、左SHに至恩が入り、前線にシルビとロメロで守備の際はロメロがやや下がり気味といった感じでした。
対する琉球も前節からの変更が4人。
まずCBに2試合ぶりの知念。2列目トップ下に6試合ぶりの池田で、右にはケガ明け以降途中出場のみだった茂木が実に16試合ぶりとなるスタメンに入りました。そして6試合連続継続中だった上里、市丸のボランチコンビも風間宏希と小泉にそっくり入れ替えてきました。ちなみに風間宏希もケガ明け以降実に14試合ぶりのスタメンだったようです。
ボランチ市丸とトップ下小泉の話を書いた展望記事は今回も安定の空振りでした。まあこんなのも終わってしまえばどうでもいいのです。
前半
コイントスで前半に風上を取った新潟は、非常に積極的な入りを見せます。
開始早々の1分に右サイドの善朗からライナー性のクロスを至恩が合わせる見せ場を作りましたが、まずはシンプルにサイドの裏のスペースへボールを送りそこからプレスを掛けて押し込む形を作りました。
そして2分には相手ゴールキックからのビルドアップをシルビが奪ってCKを取り、直後にも同じような形で今度は福田が奪ってシルビのシュートまで至ります。するとこれで得たCKでした。
5分、右から善朗のCK。ニアサイドへのボールをシルビがヘッド。
こぼれ球を舞行龍がシュート。ポストに当たりDFに跳ね返ったところを最後はロメロ!先制!
ハイプレッシャーで圧力を掛けたところからまさに狙い通り出鼻をくじくことに成功しました。
先制点以降も前線からの積極的な守備と、テンポのいいビルドアップを軸に主導権を握って進めます。
10分頃には丁寧なビルドアップで運び、右サイドから新井のクロスやシルビが抜け出すシーンを作ったり、16分には左サイドで荻原との連携から善朗が抜け出してリ・ヨンジが堪らずファールで止めるシーンを作ったりと、両サイドから攻め立てていきます。
そうかと思えば19分には狭いところを至恩が自らドリブルで運んでシュートという中央から突破するシーンもありました。
琉球としては支配率こそやや上回っていたようですが、シュートは24分にカウンターから河合が放ったのが恐らく最初だったはずで、新潟のプレスに手を焼いてうまくボールを動かせず、そして運び出すことができていませんでした。
また、13分には田中の負傷で鳥養との交代を余儀なくされるアクシデントにも見舞われました。
しかし、飲水タイムを挟んでから少しずつ潮目が変わってきます。
琉球も少しずつ新潟の守備に慣れてきたのか、特に左サイドを起点に新潟の守備を見ながら内外を使い分けつつ運び出せるようになっていき、最初の方はそれでも新潟もアタッキングサードのところで食い止めたり、クロスに対してしっかり跳ね返したりして難を逃れていましたが、少しずつ危険なシーンも増えていきました。
37分、新潟のビルドアップで内側に入っていた荻原のところを阿部がカットして、そのままドリブルからシュートを狙いますがわずかに外れます。
さらに40分には、少し下がって受けた阿部から楔のパスを茂木に入れて、落としを受けた小泉が左へ展開。エリア内フリーで受けた沼田がシュートもここは小島ナイスセーブ。さらに今度は小泉が拾ってスルーパスに茂木が反応するもここは枠の外へ外れて肝を冷やします。
終盤新潟は少しポジションを替えて守備のテコ入れを図りましたが、それもうまくハマりません。結果的に何とか無失点でしのげたわけですが、サッカーが45分ハーフでよかったなと思えるくらい、残り15~20分は耐える展開となってしまいました。
前半終了、0-1。
後半
さて、この試合一番の驚きであり肝となったのがこのHTを挟んでの出来事でした。舞行龍、善朗、ロメロ、シルビ→史哉、大本、ゴメス、ファビオ。
題してアルベルさん必殺4人替え。
すみません。ちょっとコミカルな感じで書いてしまいましたが、リードしつつも悪い流れが続いていた中で「引き続き前からプレスを掛けるため」という意図でアルベルさんは思い切った策を取ってきました。
46分、右サイド大本のスローインを受けたファビオがエリア内でDFをかわして強烈なシュートもGKセーブ。
このチャンスシーンに限らず立ち上がりに関しては、シンプルな長いボールの的となりそのセカンドボールを拾って全体を押し上げるという意味でファビオが早々から存在感を見せていました。
またそういった高さを活かす形もありつつ、50分頃の右サイドから攻めこんだシーンのように、簡単にクロスを上げないで攻撃を単発に終わらせないという形が見られたのも最近の試合と比較してよかったように感じます。
それでも琉球は55分、右サイド風間のFKからリ・ヨンジのヘッドというチャンスシーンを作り、その2分後には風間宏希、池田、茂木→風間宏矢、上里、上原とこちらも一気に3人を入れ替えてきます。
ボランチに上里、右SHに風間宏矢、そして上原と阿部の2トップといった感じで攻撃のギアを上げてきました。
この直後には早速風間宏矢がハーフスペースでボールを引き出して最後は上里のミドルというシュートシーンも作りました。
とはいえ新潟も前半終盤のように押し込まれる展開に陥る事はありませんでした。62分、64分と連続で高い位置からの守備で奪い、至恩のフィニッシュまで至るカウンターを見せます。
相手のポゼッションに対してこうして前から奪いに行くこともあれば、ある程度ボールを持たれることを許容するところも前半より増やして、いいメリハリをつけながら守ることができていました。
そうやって守備ブロックを作る中でも、小島の「2列目下げるな!」という声が入っていたり、アルベルさんの上げろみたいな仕草が見られたように、細かいラインコントロールを集中して続けることができていたことも安定感に繋がっていたと思います。
72分に左サイドからのクロスをファーサイドでフリーになっていた小泉にボレーで狙われる大ピンチがありましたが、ここを始めとして少し戻りや守備の対応が疲れから苦しくなっていた至恩を79分に中島と替えます。
ラスト1つ残していた交代枠も的確に使うことが出来ました。
琉球は84分に小泉→市丸を投入。さらに終盤は上里が指示を出しているシーンも丁度抜かれていたように前線の上原へシンプルに蹴るパワープレー的な攻撃にシフトしてきますが、新潟は最後までしっかり体を張りつつ、5人目の交代で入った中島が強烈なFKを含めて2本のシュートで見せ場を作ることもできていました。そのチャンスに限りませんが、どこかのタイミングで追加点が取れていればさらに言う事なしと言えたかもしれません。
試合終了、0-1。
冒頭で自分の性格の悪さを書きましたが、終盤のいくつかのジャッジが正しかったかどうかは正直分かりません。
ただとにかく思ったのは、いつも穏やかであるはずがこの日はさすがに厳しく怒気を帯びた表情になりながらも、それでもジャッジには触れず矛先を自分達に向けていた樋口さんはすごいなということでした。
守備の修正
前半の苦しい時間帯から後半立て直しに成功したわけですが、それには守備の変化があったように思ったのでそれを比較する感じで2つピックアップして図にしていただきました。
まず1つ目が前半のオーガナイズということで例として33分のシーンです。
琉球が後ろから繋ぐ場面で、CBのリ・ヨンジからボランチの小泉が少し脇に下りてボールをもらいます。ここにはロメロが付いています。
そしてもう1人のボランチである隣の風間宏希には福田が前に出て見に行っていました。小泉はその風間を飛ばして左の知念に渡します。
すると新潟は右SHの善朗が外側(SB側)へのパスコースを消しながらプレスを掛けました。しかしそれを見て知念は空いている正面のコースにパスを出し、内側に入っていた河合がそれを受けて結局左SBの沼田へと展開されました。
相手がビルドアップをする際、琉球のボランチ2人にロメロとボランチ1人が出て4-1-4-1のような感じになることと、CBに対して善朗が外側へのパスコースを消しながらプレスを掛けるシーンはよく見られました。恐らくこの形をベースとして前線からプレスを掛けるというプランニングだったのだろうと思います。
実際それで立ち上がりは相手を面食らわすことに成功して幸先よくリードが奪えました。
しかし時間が立つにつれて相手も慣れてきてしまい、図のような感じでプレスを剥がされてしまうケースが散見されるようになったと思います。
前半の残り5分くらいで善朗とロメロの位置を入れ替えた上で、シルビと善朗がそのまま相手の2CB、福田と島田には恐らくそのまま相手ボランチ2人が見る形で、SHが外を切りながら相手CBまでプレスを掛けるということは自重するような調整を施したように見えました。
しかし結局相手SBのところで捕まえ切れずに剥がされたり、前線の阿部やSHの河合などが中盤に入って数的優位を作られたりしたことで、却って相手のボランチに高い位置でプレーされることが増えてしまいピンチを作られました。
そんな前半を経ての2枚目の図が、4人を替えてオーガナイズも修正した後半です。例として59分のシーン。
縦関係になっていた琉球のボランチに対して、低い位置でボールを受けた上里にはトップ下に入ったゴメスが見ます。
そして知念にパスが出た時に右SHに入った大本は前へ出ずにブロックを維持する選択をしたことで知念は縦へ出すのをやめてやり直しました。
そしてリ・ヨンジ経由で右に展開されたボールを鳥養のところで至恩が見事に奪い取ったという結末です。
知念に入ったところで大本が出ずに4-4-1-1みたいな形となり、しっかり中を閉めるシーンが後半は増えていました。とはいえ右に展開し直す際、リ・ヨンジに入ったところでサポートに入った上里には島田が前に出て付きに行ってもいました。
相手のボランチ2人に対して、トップ下のゴメスとボランチの1人が見るというやり方も前半から引き続き見られたということで、ややブロックを作ることに重心を置きながらも、行く時・行かない時のメリハリをうまくつけながら守り、そしてカウンターにも出ることができていたのかなと思います。
そして忘れてはいけないのがゴメスの貢献でした。
このシーンのようにボールサイドに近いボランチを見つつ、福田、島田と連携しながらうまく入れ替わり立ち替わり相手のボランチを監視していました。
また、74分の右サイドへ下がって小泉にしつこく寄せて相手の攻撃を遅らせたシーンのように、低い位置まで戻って後ろを助ける役割も十分に果たしていました。
昨年練習でボランチをやっていたこともありましたが、いよいよトップ下まで来ました。責任感とインテリジェンスを持っている選手はやっぱりポジション関係なくいろいろできるんだなとつくづく思い知らされた気がします。
受けて出す、受けて出す・・・
勝って気分もいいので、ついでにもう1つビルドアップのよかったところについても少しだけ。
今節は非常にテンポよくボールを動かせていたシーンが随所に見られましたが、その中でも11分です。
右サイドで新井が奪ってから、マウロ、島田、福田が三角形のポジションでパス交換をします。そこから間で受けた島田が楔を入れて善朗とのワンツーから右サイドへ流れたシルビへスルーパスが出たという流れるようなビルドアップでした。
テンポがよかった理由は特別難しい話ではなくて、関わった全員のタッチ数が少なかったということが言えるのだろうと思います。楔が入ってからはもちろんですが、43秒の島田からマウロに下がったパス以降は全てが2タッチ以下でパスが出ていました。
そしてこのシーンが特によかったと感じたのはそのマウロ、島田、福田でのパス交換です。
前節甲府戦の戦評記事でテンポをよくするために「もっと近場で何度もパス交換をしてもいいのではないか」ということを書きました。それが通じた……わけではもちろんないと思いますが、この日はシンプルに近くの味方を使うとか、縦パスが入る瞬間に次のサポートが斜め後ろにしっかり入っているとか、非常にスムーズなボールの運びが見られました。
最後に
琉球に今季はダブル達成です。
こうして前半戦勝ったチームにはダブルを狙い、引き分けたチームには勝ち越しを目指し、負けたチームには雪辱を果たす。
目標とそれを達成するために必要なことは、次節からも引き続き目の前の相手を全力で倒すということ。単純明快。がんばりましょう。