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信じられるもの【戦評】第27節 水戸ホーリーホック戦
こんにちは。
この試合からアウェー席解禁となったわけですが、午前中からTLに流れてきた現地組の遠征記や心待ちにしていた思いのツイートなんかを見ていて、なんだか行っていない自分までとってもわくわくした気持ちになりました。
まだ完全に元通りではないのですが、それでもようやくたくさんの人の元にしっかりアルビレックスが戻ってきたんだなと実感します。
そしてそんないつも以上に熱い気持ちが集いつつも、クラブとしては非常に難しい状況で迎えた今節でしたが、現場の選手、スタッフは今季取り組んでいることをしっかり表現しながら、力強く戦って勝ち点3を掴み取ってくれました。素晴らしい、誇らしい。
とにかくナイスゲーム、ナイス勝利でした。
スタメン
ではスタメンから振り返ります。
まず新潟の方は前節からの変更が2人。
3試合連続スタメンだった中島に代わって右SHに大本。
そして活動禁止(翌日契約解除)のファビオが務めていたトップにはテセが入りました。また、テセがスタメンになったということでベンチにはお久しぶりに達也さんが入りました。
対して水戸の方ですが、こちらは前節から牲川、前嶋、山口以外の8人をガラッと入れ替えてきました。
とはいえほとんどが15試合以上出場している選手だったので見慣れたメンバーではあったのですが、その中でも少し意表を突かれたのは深堀と鈴木です。深堀は実に開幕戦以来のスタメン抜擢。そして鈴木は先月末FC東京からレンタルで加入して以来初めてのスタメンとなりました。
前半
お互いに前からのプレスをベースに最初は長いボールを入れながら全体を押し上げようとします。
そんな立ち上がりの3分、テセがこの試合最初のシュートを積極的に狙っていきました。かなり遠目からで残念ながらDFにブロックされてしまいましたが、小島も使いながら丁寧なビルドアップを起点にくさびを入れて1つ攻撃の形を作ります。
さらに4分には高い位置で至恩がインターセプトしたのを皮切りに、前からの寄せでマイボールにしたところからサイドチェンジを使って至恩の仕掛けからセットプレーというシーンであったり、6分には自陣左サイドで相手のプレスをうまくかわしたところから右に大きく展開して最後は善朗のミドルであったりと、押し込む形を作ります。
ただ水戸としてもある程度ボールを持たれることは織り込み済みだったかと思います。もちろんボールを持つところは持ちたいチームであり意識だったとは思いますが、9分の新潟左サイドでのポゼッションを奪ったところから発動したカウンターはまさしく狙いとしていたところだったように感じました。
19分にも中盤狭いところで受けた善朗に対して安東、深堀が挟んでボールカット。
右サイドの森からオーバーラップした前嶋に渡ってクロスは田上が何とか戻ってカバーし、小島がはじき出します。
また24分はカウンターではありませんでしたが、左サイド外山のクロスにファーサイドの中山がヘッドという決定機も作られました。
それでも新潟はある程度ボールは支配し、また水戸がビルドアップしようとするところにはしっかりプレッシャーを掛けて奪ったり、長いボールを蹴らせて回収したりすることが出来ていました。
そして飲水タイム以前は田上のFKや善朗のCKなどセットプレーが主にチャンスとなっていたところから、少しずつ攻撃のバリエーションに広がりが見られるようになってきます。
35分、右サイド大本のクロスに攻め上がっていた田上のシュート。
36分には舞行龍のくさびを中央で受けた島田が左の至恩へ展開。
得意の仕掛けで縦に突破してからクロス。DFに当たりこぼれたボールを島田がシュート。
いずれもゴールとはなりませんでしたが、左右中央から満遍なく攻め立てフィニッシュの形を作ります。
すると40分、ついに均衡を破ります。
再び至恩と島田の関係から得た左のCK。一番大外から内側に走り込んできたマウロのヘッド!先制!
立ち上がりのCKから再三ファーサイドのマウロが折り返す形は作れていた中で、このシーンではそのマウロが中央に入ってきて自ら叩きこんでみせました。マウロも「狙い通り」と話していたようにファーサイドを狙うという分析を入れつつ、住吉や中山といった選手がゾーンで立つためマウロに付くのが177cmでSBの外山という高さのアドバンでージをしっかり活かしたゴールでした。
また、CK獲得の起点となったのは高い位置からのプレッシャーで奪ったところからでしたから、そこも試合序盤から見られたように狙い通りのナイスプレーでした。
前半終了、0-1。
アディッショナルタイムにも高い位置での守備からテセが惜しいシュートを放つなど非常にいい流れで試合を折り返すことが出来ました。
後半
後半の頭から水戸は深堀→奥田を投入してきます。
前回はベンチ入りもしなかったためお預けとなっていましたが、新潟ユース出身の奥田とようやく対戦できることとなりました。
しかしそんな感慨に浸ってもいられません。
後半飲水タイムの時点でポゼッション率が45(水戸)vs55(新潟)だったことからも読み取れるように、奥田が入ったことで水戸のポゼッションのリズムがよくなり、新潟としては前半のように前で嵌めづらくなります。また、秋葉さんの「走力を出して圧力をかけてくれた」という言葉通り、守備の強度も上げてきたことで、前半とは少し様相の違うゲームとなりました。
序盤こそそれほどピンチを作られたわけではありませんでしたが、60分に鈴木→平野、68分に中山、山口→ピットブル、松崎とフレッシュな選手に入れ替えつつ攻勢を強めます。
68分には左サイドで細かく繋がれたところから外山、奥田、ピットブルで抜けだされかけますが何とかマウロがブロック。
70分、今度は右サイドから松崎のパスをピットブルがフリックして奥田がもらうと、さらに追い越してきた松崎がエリア内で縦に仕掛けますがここもマウロのカバーで難を逃れました。
振り返るとこの時間帯が一番ゴール前に迫られて苦しかったように思います。ただ試合を通じてですが水戸はちょっとしたパスの精度やタイミングのズレ、また秋葉さんも仰っていた「判断」のところでもったいないミスがあったのは事実でした。
新潟はここ2試合と同じような時間帯、55分前後のタイミングで善朗、大本→ゴメス、中島というトップ下と右SHの交代を行い、さらに64分にはテセ→ロメロを入れ替えました。
ロメロが前線、中島が右SH、そして最初はゴメスがトップ下で至恩左でしたが、ロメロを投入したあたりでそこはこの日も入れ替わっていました。
新潟としては選手交代をしつつもなかなか流れを引き戻せないでいた中、飲水タイムが絶好の転換点となりました。
飲水タイム明け直後の75分。
水戸のビルドアップに対して前から連動してプレッシャーを掛けると、前嶋のところで史哉がカット。一旦安東に拾われますが次のパスを中島が再びカット。右足のキックフェイントで相手をかわしてから左足一閃!追加点!
後半は立ち上がりから前半のように高い位置でプレスが掛からない中で、ロメロが投入されたあたりからもう1度プレスを強く掛けようとネジを巻き直した印象がありました。しかしそれでもなかなかうまくいかず逆にピンチを作られてしまって飲水タイムを迎えました。
そこでこの飲水タイムを挟んでロメロと中島の位置を入れ替えます。また至恩とゴメスも左に至恩、トップ下にゴメスというポジションに戻していました。
結果的にこのポジションチェンジが奏功します。
これは別にロメロがダメで中島がいいということではもちろんありません。芳しくない状況を打破する上でこの日は中島とゴメスの鋭いプレスが守備のスイッチとしてハマッたということでしょう。
そしてそれをしっかりゴールで完結させた中島のシュートは言わずもがなナイスシュートでした。
2点のリードを得た新潟は78分に最後となる3回目の交代を使います。
至恩に替えてゴンサを投入することでリスクマネジメント色を強くし逃げ切りを図りました。ちなみに最初はゴンサがトップ下っぽく入っていましたが、途中からは町田戦同様、ゴンサがボランチで福田がトップ下っぽくなっていました。
対する水戸は外山→河野という左SB同士の交代でこちらは5人の交代を使い切ります。
その河野のクロスから奥田に押し込まれた89分の失点は反省しないといけません。
アルベルさんが「残り15分ボールを支配する形でしっかり守備ができた」と仰っていたように、82分30秒あたりから1分半ほどGKの小島も関わりながらポゼッションして時間を進めていたプレーなんかは成長を実感するものではありました。
また、86分にゴール前へ入れる選択をしたCKでも、もちろんキープをする選択もあったと思いますが、マウロと舞行龍は上げずにリスクを抑えつつ、その上で3点目を狙いに行ってシュートで終われてもいましたから決してあのプレー自体は悪くなかったと思います。
それよりも失点のシーンは、左サイドに展開されて河野に縦へ運ばれる際の中盤の戻る意識というかアラートさがシンプルに足りなかったように映りました。
まあ、勝って反省できるのが何よりです。
そして最後、2点目と同じように前線からプレスを掛けて、平野から福田が奪ったところでPKゲット。これを中島がしっかりゲット!
解説の柴村さんも言及されていましたが、相手との駆け引きで見事に裏を読んだ福田、まさに彼の真骨頂とも言えるインターセプトでした。
そして豪快に決めた中島はこの日2ゴール。
ちょっと前に史哉がツイートしていましたが、この日も点を決めて胸のエンブレムを叩いてくれていました。ああいうのを見るとほんとに帰したくないという思いが膨らんでしまいます。
レンタルなんて言わずに、いいんだよ、ずっと新潟にいてくれて。っていうかいてほしいのです。
試合終了、1-3。
躓いてもすぐ立ち上がる。この日の戦いぶりも頼もしい限りでした。
奥田に屈せず
2点目、3点目にも繋がった前からのプレッシャーについて、水戸の変化と共に比較のような感じで拾ってみました。
まず前半の例として挙げるのは17分。
水戸のゴールキックからのビルドアップに対して新潟は前からプレスに行き、細川に長いボールを蹴らせて回収したシーンです。
開幕戦以来久々のスタメンだった深堀は、あまり間で受けたり受けようとする動きが乏しかったりする印象でした。少なくともここ何試合か見た水戸の前線の流動的な動きはそれほど見られず、それによって新潟もより全体を押し上げて前から嵌めこんで奪ったり、もしくは蹴らせて回収したりすることができていました。
しかし後半のところでも書いたように奥田がリズムを変えます。
2つ目として48分のシーンです。
水戸はボランチの鈴木が下りて後ろを3人にしてビルドアップを行います。右に運ばれて住吉に入ったところで、ライン間に立つ奥田を島田が付きに行ったため、絞って来た森はボランチの位置でフリーとなってボールをもらい捌く事が出来ていました。
奥田は常に新潟のライン間、嫌らしいポジションに立ち、そこで受けたりサイドに流れて起点となったり、受けずとも新潟のボランチに意識付けさせて連動して前から取りに行くことをやりづらくさせていました。
前半はこうして森が中へ入って来ても寄せに行けたのが、どうしても後ろが気になってしまいフリーで受けられる形となっていたのではないかなと思います。
それでも2点目を取れたシーンが3つ目の図です。
後半のところでも、ロメロ投入以降もう1回ネジを巻き直した印象ということを書きましたが、水戸のボランチが下がって後ろを3人にするビルドアップに対してSHが出ながら連動して圧力を掛けます。
奥田に関しては中盤の背中にフリーで立たれることは許容しつつ、また後ろでボールは動かされたとしても、ボールホルダーに時間とスペースを極力与えないことで全体を押し上げることが出来るようになり、結局史哉がタイミングよく前に出て引っかけたところから奪って得点に結びつけました。
正直前半の水戸に関しては、深堀に対して中山とできるだけ近くでプレーするとか、山口が後半に比べて開いて待つ意識があったのかもとか、各所で違った狙いがあった可能性は大いにあります。
ただどちらにせよ奥田が入ったことで、後半の方が中盤に数的優位を作って運び出すみたいなシーンは増えて、それにより押し込まれる時間も増えました。それでもすぐに修正して前半のようにプレッシャーを掛けることによってチャンスでありゴールを奪う事が出来ました。
右の活用
課題として感じたこともちょっとだけ。
DAZN中継のHTに出たアタッキングサイドの数字が左54%、右22%と明らかに左に寄っていましたが、その前半のサイドアタックの偏りについてです。
狙ってそうやっているのかなとも考えましたが、アルベルさんも試合後に「同サイドをしつこく攻めてしまうミスを犯した」と仰っていたので、やっぱり意図したものではなかったようです。
大本自身に関しては序盤から大外に張って待っていたり、裏に抜け出したりといったアクションも見られたのですが、どうにもパスは出て来ず、結局ボールは左へ動くという展開が多く見られました。
理由はいくつかあると思います。
相手のDFがすぐに出られる準備ができていてパスが出せなかったとか、それと関連してそもそものポジションが高過ぎて出しづらいとか、あとはシンプルに出し手と動き出しのタイミングが合っていないということも何度か見られました。
何となくですがもう少し低い位置で一旦受けてからもう1度動き出すというのがあってもいいのかなと思います。
また、逆サイドのCBやSBが持った時に、斜めのランニングで中央の裏のスペースへ走り込むことで相手のDFを引っ張り出して、空いた外のスペースをSBが使うという形も、実行できそうな場面が何度かあったので出していけるといいのかなと感じました。
中島と大本というタイプの異なる2人が現状争っているわけですが、この使い分けやもしくは共存方法、またはそれ以外の選手の台頭など、課題でもあり伸び代でもある右サイドは次節以降も注視して見たいと思います。
最後に
処分が下りました。会見がありました。
正直何をどう言っていいものか難しいのですが、それでも中2日で試合がやってきます。そこへ向けて精一杯取り組んでいる選手・スタッフをとにかく応援したいし、後押ししたいと思います。それが現状一番ハッキリしている感情です。