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オレラグ

嬉しいお墨付き【戦評】第31節 モンテディオ山形戦

2020年11月6日

こんにちは。

落ち着いた語り口で的確に内容を伝えてくれるので、山形の清水さん・越智さんという実況・解説コンビは以前から好きなのですが、この日の試合前に実況の清水さんが新潟について「このチーム、数年以内に何か大きな成果を得る可能性が十分にあるんじゃないかと思っています」と仰っていました。
解説ではなく実況の清水さんがこうして仰ってくれたのはちょっと意外でしたが、解説の越智さんも「1人1人が試合をこなすごとにうまくなっているように見える」と仰っていて、普段は山形を中心に追っているお2人にもそう感じてもらえているんだというのが誇らしくもあり、嬉しく感じました。

やっぱり今年のチームはおもしろいです。

スタメン

さて、ここ最近は3試合続けて同じスタメンでしたが、この日はいくつかの変更がありました。
まずは前節前半で交代となった小島に替わって和輝が実に3カ月振り、10節大宮戦以来のスタメンとなります。
次に前節4枚目のイエローをもらってしまったマウロが出場停止ということで、史哉をCBに持ってきて、左SBにこちらも17節磐田戦以来2カ月振りのスタメンとなるゴメスを起用してきました。
さらに至恩とテセがベンチからのスタートとなり、善朗を左サイドに移して、前線中央には7試合ぶりのスタメンとなるロメロと10試合ぶりの矢村が久しぶりに入りました。

対する山形の方は前節からの変更が2人。
まず右SBに出場停止明けの山田が復帰。そして入れ替わるように今節出場停止となってしまった野田に替わってCBに半田が入りました。

前半

お互いに前からのプレスと長いボールを前線に送ることを中心とした試合の入りだった中で、まず山形の方がペースを掴みます。
ファーストシュートは57秒、ボランチ中村の浮球パスをヴィニシウスが頭で落とし、南から左の加藤へ渡してミドル。ここは和輝が正面でキャッチします。
しかし5分にも、ボランチ岡崎からの縦パスをヴィニシウスがフリックして南が中央から抜け出しかける形を作ります。ここは史哉がイエローカードと引き換えに止めて、続くセットプレーもしのぎます。

山形のビルドアップするシーンではいつもと同じようにボランチの1人が左に下りて後ろを3人にするやり方を中心としていて、それに対して新潟も矢村が前線で相手のCB、ロメロが少し下がった位置で中盤に残る相手ボランチを見て、左に下りたボランチには中島が外側を切りながらプレスを掛けるという意図を持った守備も見られました。
しかし、浮球を使って空いたところを使われたり、警戒していた通り凌磨や南に間へ入ってボールを引き出されたりするシーンもありました。

攻撃では、最初のCKを獲得したシーンなんかは長いボールを送ったのを起点に、相手ボールになったところへ前からプレスを掛けて引っかけたプレーからでしたが、10分頃にはプレスバックが曖昧になった矢村に対してアルベルさんから檄が飛ぶシーンも見られました。
試合後山形の石丸さんは「自分達のやりたいことがあまり今日はやらなかったという印象です」と厳しい言葉を残していましたが、入りに関してはそれでも山形の方がやりたいことは少しずつできている感じはしました。
だからこそ前半の飲水タイム前に先制点を取ることができたというのは、試合中に「今季山形は逆転勝ちがない」という話も出ていましたが、その意味も含めて非常に大きかったなと思います。

18分、島田の右CK。
ニアに走った中島へショートで入れると、ワンタッチの落としをエリアの外で善朗が受けます。右サイド福田、島田、中島と繋ぎ、またボールが戻ってきた島田がゴール前へフワッとしたボールを供給。すると手前に入ったロメロには届かずも、流れたボールにいち早く反応した矢村のシュート!先制!

フワッとしたボールを入れた島田も恐らく狙いはロメロだったのではないかなと思います。山形としてもそのつもりだったと思うので、手前に入った加藤がクリアしようとして被ってしまったことで、不意にこぼれたボールに対して後ろの選手も反応が遅れたと言えそうです。
そんなボールを矢村はきっちり狙っていました。これがプロ初ゴールということで、おめでとう。ナイスゴール。

先制直後の19分、CBの熊本が持ち出したところから裏へのボールを凌磨に抜け出されたシーンや、28分和輝のパスミスから南にシュートを狙われるシーンなど、セットプレーも含めていくつかのピンチはありました。しかし先制点を取って以降はプレスで相手の自由を奪い、また落ち着いて繋ぐシーンも確実に増やせていた中で、再び歓喜が訪れます。

35分、前線のヴィニシウスに当てるようなスローインを舞行龍がカットしたところを起点に、ゴメス、島田と繋いでから左サイドのスペースへシンプルにボールを送ります。これを矢村が走り込んでうまくキープすると、そこから反転してカットインで中央へ持ち込みロメロとスイッチ。解説・越智さんも褒めていた2タッチ目でグッと縦に持ち出すと、そのまま左足シュート!2点目!
前線2人による素晴らしい連携からのゴールでした。

まずはやはり矢村のターンでしょう。
サイドで相手を背にしながらキープするところで、相手が右から突つきにくるギリギリまで溜めてうまく内側へ反転しました。全て計算通りだったのか、それともスリッピーなグラウンドで思ったよりボールが伸びたため臨機応変にああいうプレーになったのかは分かりませんが、いずれにしても見事なプレーでした。
そしてロメロも、グッと縦に持ち出したところでかなり角度は限定されて難しいところからのシュートシチュエーションになりましたが、それでもGKが瞬時に反応しづらい肩口を左足でしっかり狙い打ちました。

前半終了、0-2。
終盤43分の中島、田上の連続シュートが決まっていれば言うことなしの最高な結果でしたが、それでも上々の出来と2点のリードで試合を折り返しました。

後半

キックオフ直後にあった福田のパスミスからボールを失った直後、素早く島田が取り返したシーンに象徴されるように、その後も島田が中盤で相手のパスを読み切ってインターセプトしたり、善朗がプレスバックから綺麗にボールだけ絡め取るスライディングでカットしたりと、前半にも増して強度を上げて狙いを持って奪い切る積極的な守備が後半も入りから見られました。
49分にゴメスが思い切ったミドルシュートで後半のファーストシュートを放ちましたが、この起点も島田のインターセプトからでした。

また、山形も切り替えが速くてプレスを掛けてくるチームですが、新潟は奪った後も簡単に失うことなく、テンポよく繋いでかわすシーンが何度か見られ、57分には前からのプレスで長いボールを蹴らせて回収したのを起点に、右サイドで繋いでから一気に左へ展開し、最後はクロスから福田のボレーというシーンも作りました。
61分からは右サイドからのFKを皮切りにCKが3本続く攻勢を見せて、最後は善朗のクロスに福田がヘッドという決定機を作りましたが、ここはクロスバーを叩き3点目とはなりません。

その直後に山形が動きます。
63分加藤、南→末吉、前川。そのまま末吉が左SH、前川がトップ下へ入ります。
するとその2分後でした。
ヴィニシウスの左からのCK。ポジション取りの中で熊本が引っ張られたとしてPKの判定となります。
68分、ヴィニシウスのPK。和輝コースも読んで触るところまでいきましたが弾き切れず。1点を返されました。

飲水タイム時点でポゼッション率は50対50、シュート数も9対9という互角な展開の中で両チーム選手を入れ替えます。
新潟は72分と74分にそれぞれロメロ→至恩、矢村→テセという交代を行い、前線を前節までの基本のメンバーへと替えます。
対する山形は75分にヴィニシウス→大槻。最前線の選手を入れ替えてきました。

1点差となったことでちょっと嫌な空気になりかねないところでしたが、76分には相手GKからのビルドアップに対して前線から連動してプレスを掛けてミスを誘いマイボールのスローインにできたり、78分にもこぼれ球を拾った左SH末吉に対して中島、島田の2人で挟んで奪って、さらに相手のGKに対して至恩がプレス掛けてあわやといったシーンも作ったりします。
試合後アルベルさんも「ハイプレスがこの試合の最も重要なポイントだった」と仰っていましたが、一番苦しい時間帯でもこうして守備の強度を落とさず戦えていたことからもその言葉は深く頷けました。

終盤、85分に山形は凌磨、岡崎→北川、小松を投入。交代枠を使い切って何とかゴールを狙います。
対して新潟は88分に善朗→新井を投入。
しばらくケガで離脱していた新井がついに復活ということで、この日は4-1-4-1のアンカーに入り逃げ切りのタスクを担いました。

試合終了、1-2。
4試合ぶりの勝利。何はともあれめでたしめだし。

柔軟性

データとしてはポゼッション率が52対48ということで、ほぼ五分の中でもやや下回る数字となったわけですが、いつもに比べて奪ったらまず矢村でありロメロへ前へ速くということがこの日は意識されていたように見えました。
これが結果的にというか、意図としてあったのだろうとは思いますが山形の前からのプレスを受けないような展開にもできましたし、解説の越智さんも少し仰っていましたがコンパクトにやろうとする山形の陣形を広げる効果にも繋がっていました。
そういった意味で、2ゴールを生み出したという結果の部分以外でも久しぶりにスタメンとなった矢村、ロメロの貢献というのは計り知れないものがあったのかなと思います。

また、いつもより縦ということを考えると、どうしてもそればっかりになって攻撃が単発となり、ポゼッションを明け渡してしまう事によってむしろ押し込まれる展開というのは十分あり得ました。
しかし繋ぐところは繋ぐ、いつものようにテンポよくボールを動かすところは動かすというシーンも随所に見られたので、このあたりの局面による使い分けもよくできていたという印象を持ちました。

確かな成長

そしてやっぱり積極的なプレスを始めとした守備です。
後半の入りのところでいいボールカットができたシーンをいくつか列挙しましたが、1試合を通じてそういったシーンはありましたし、どちらでもないセカンドボールへの反応もそうですが、それ以上に連動したプレスから狙った形でインターセプトするシーンがいくつも見られたというのは非常に頼もしかったですし、安心感を持って見ることが出来ました。

そしてコンパクトな陣形をベースに、細かい連携で攻めることを強みとしている山形に対して、切り替えで上回ることで先にコンパクトな陣形を作って攻め手を封じるということも見られました。特に逆サイドのSHがグッと絞ったポジションを取ることで、入ってきたボールを狙い澄ましてカットするというシーンがいくつかありました。
前回対戦の時にこの逆サイドの絞りを課題として書いていたこともあったので、諸々お互いに変化している分、単純比較はできないかもしれませんが、分かりやすく成長を実感できたプレーでもありました。

最後に

久しぶりの勝利とはいえもちろん満点ではないでしょう。
前半のうち、もしくは後半の飲水タイムまでにもチャンスはいくつもありましたからそこでちゃちゃっと3点目を取り切ってしまうこともそうですし、余計な失点もそうです。また前節のヴェルディ戦もそうでしたが、途中から入ってきたスピードを武器とするアタッカーへの対応というのも、この日はある程度人数を掛けたり史哉の素晴らしいカバーもあったりしてヴェルディ戦ほど脅威に晒されることはありませんでしたが、それでももっと詰められる気はします。

とはいっても久しぶりにスタメンとなった選手の活躍があり、全員の積極的な姿勢があり、最後はケガ人の復活もあっての勝利ということで、嬉しい限りです。
またすぐ試合なのであんまり余韻にも浸れませんが、ゴールシーンやお気に入りのインターセプトシーンをリピートしながら、また次の試合を楽しみにしたいと思います。

くりはら
くりはら
鳥屋野潟ほとり出身のアルビレックス新潟サポーター。海外はアーセナル推し。Jリーグ、海外、2種、3種、女子、その他、カテゴリーは問わずサッカーが好き。ラジオも好き。某坂道グループもちょっと好き。