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オレラグ

筋書き通りにいかずとも【戦評】第12節 大宮アルディージャ戦

2021年5月7日

こんにちは。

映画やドラマや小説など媒体は何であれ、世の中には数えきれないほどの様々な物語が溢れているわけですが、そのどれもが基本的には起承転結という骨組みに沿って成り立っています。
最近はBSプレミアムにて4Kリマスターで放送されているウルトラQとウルトラセブンを見るのが毎週の楽しみなのですが、ああいう特撮なんかは特に分かりやすく起承転結に沿った形で30分の物語が構成されています。

“サッカーは3-2くらいが一番面白い”という意見は昔からよく見聞きしていた覚えがありますが、その真偽はともかくとして、今節の取って取られて取り返しての3-2は間違いなく面白い試合でしたし、何より今回の3-2は非常に起承転結が鮮明でストーリー性の豊かな90分となりました。
これを現地で見られた方が羨ましくて仕方ありません。

スタメン

それではメンバーからおさらしておきましょう。
まずは新潟ですが、前節からの変更が2人ということで、CBに史哉と右SHにヤムケンがそれぞれ2試合ぶりと3試合ぶりにスタメンとなりました。
この辺は連戦も考慮してローテーションということだったのかもしれません。何にせよ今は誰が出ても間違いないパフォーマンスを見せてくれる安心感というか心強さがあります。

対する大宮の方も前節からの変更が2名ということで、5試合ぶりのハスキッチと今季初スタメンとなる菊地で2トップを組んできました。

表面的見立て

頭から後出しのズルイ話をしますね。
1-1でハーフタイムを迎えた時点ではこの感じで続けられれば点は取れる、大丈夫だろうと感じていました。
後半、先に失点してしまった時点でも同点にはできると感じていました(逆転できるかまでは信じ切れませんでしたが)。
終わってからなんて何だって言えるわけですから、これはズルイ以外の何物でもないわけですが、そう感じていた理由みたいなものを挙げつつちょっといろいろ書いていきます。

まず、この試合は予想されていた通り新潟がボールをポゼッションするのに対して大宮が4-4-2のブロックを作って守る構図となりました。
そんな中で新潟はボランチが1人下りたりゴメスが残ったりすることで後ろを3人にし、ボランチの1人がアンカー的に中盤の底へ残り、ライン間に善朗やヤム、またゴメスが後ろに残る場合はアンカー的に残らないもう1人のボランチがポジションを取る形となっていました。
対する大宮はライン間、中間のスペースに立ってくる新潟の選手に対しては陣形をコンパクトにしてパスコースを切ることで無力にしようとしていました。

またその分ということではないですが、ライン間から下りて大宮ボランチの前で受けようとしたり、大宮2トップの脇に入って受けようとしたりする新潟の選手に対しては結構厳しく寄せに行く姿勢が見られました。ライン間の受け手よりもそこへの出し手をより抑えに行く狙いだったのかもしれません。
前に出てボランチが潰すというのもそうですが、2トップがプレスバックのために戻るプレーというのはこれまで見てきた何試合かよりもきっちりとやってきていた印象でした。

そういったマッチアップの中で、まず序盤に関しては新潟のライン間を狙う選手達がサイドや裏に抜ける動きを多く見せていたように思います。
実際先制点は内側から善朗が左に抜け出す形で取ったCKから奪ったものでした。

そして途中(たぶん飲水タイム前後)からはライン間を狙う選手も動きすぎず、間に立つことによって位置的な優位を活かすことで相手を困らせようという意識を感じ、マイボールの際もより短く丁寧に動かしつつ中央から縦パスをトライするシーンが多くなったように見えました。
失点はそういった繋ぎの中で失ったところから1発抜け出されたわけですが、あのシーン自体はアルベルさんも仰っていたようにリスク管理のミスということですから、ライン間にポジションを取ったりボール受けたり出したりしたヤンと至恩のプレー自体はいいトライだったと思います。

また、前半の間に何度かうまく相手の間で受けられるシーンを作ることはできていましたし、しかもそこに入った時に大宮の寄せが緩い印象もありました。
さらに前半の終盤は再びサイドチェンジやフィードといった少しレンジの長いパスも織り交ぜつつ押し込むシーンもあったので、そういった印象があったので最初に書いた通りこのままなら大丈夫と思ったわけです。

的確な修正

後半に入っても基本的な構図や展開は変わりません。
そんな中で60分を経過するあたりに再び中盤で失ったところから引っくり返される形で逆転を許してしまいました。
ちなみに1失点目と同様リスク管理のところで至らずにやられたわけですが、試合後に史哉がどうすべきかを明確に反省していたので、やられてしまった部分に関しては2失点とも特別心配はしていません。

逆転されはしましたが、大宮のライン間を狙いながらうまくそこで受けて仕掛けるシーンは前半同様ありましたし、いいボールカットから繋いで奏哉が深い位置まで侵入するシーンもありました。
だからこそ、相手の対応がかなり後手を踏んでいたセットプレーからの可能性も含めて、最悪でも栃木戦のような感じで同点までは行けるんじゃないかなというような感覚を持っていたわけです。

しかし改めて振り返ると、仮にそのまま続けて同点にしたところで満足できるチームでは今のアルビレックスはないということに気付かされました。
まずは星を右SHへ投入。さらに島田を下げて三戸ちゃんを入れて4-3-3へと変更。
両ワイドにドリブル突破が武器の至恩と三戸ちゃんを置き、ヤンをアンカーにして善朗と星がインサイドという並びにして、リズムを引き寄せました。

特に抜群な効果をもたらしたのが星です。
インサイドハーフになってからは『起点になってボールを前に運べるように』ということを意識していたそうですが、まさにそれを体現していました。
何がよかったかと言えば、最初右SHに入ったところからそうでしたが、受けるために下りるタイミングが絶妙でした。

それまでは間に立ち位置を取って動き過ぎないことで、ボールの位置に合わせてスライドする相手との間に生まれるギャップを狙っていた印象でしたが、いかんせん出し手となる選手のところに大宮がバチンと寄せてきていたことで「ライン間で受けられるシーンはあった」と書きましたが、基本的にはコースを消しながら守られていたためたくさん供給できていたわけではありませんでした。
またライン間で受けられた場面でも、寄せこそ緩く感じられても人数はいましたから決定機というところまでは持っていけていませんでしたし、出し手のところで寄せられることでパスの精度が落ちたりして引っ掛かったりすることも多々ありました。

ところが星が入ってからは、ボールが出てくる瞬間に下りてもらって、さらにもらったらワンタッチ、ツータッチで相手に寄せ切られる前にボールを捌くことでテンポが生まれました。これはいつだったかも使わせてもらった表現な気がしますが、言うなればスペースの鮮度を保ちつつ活かせるようになったという感じでしょうか。
そしてそれと同時に相手のボランチを上下に行ったり来たりさせることで、時間帯的にもより一層苦しい状態を強いることにも繋がったのかなと思います。

こうして対応しに行くのでいっぱいいっぱいとなってきた大宮を尻目に、ボールを入れて落としてテンポよく前を向いた状態の選手を活かしながらスピードに乗った攻撃を創出できるようになりました。
また、スピードに乗った仕掛けの増加に伴いチーム全体で押し込めるようになる中で、アンカーとなったヤンがセカンドボールを回収するという特長をより発揮できる展開にもなっていたと言えるかと思います。

したたかなチーム

そして生まれたスーぺルな2点目と執念の3点目です。
この2点が入った時に「お!入った!」ではなく「ほらキタ!」のようなどこか確信しつつ待てていた感覚がありました。
自分で書いておきながら説明不足の感は否めませんし、言ってしまえばこれも後からなら何でも言えるズルイ話にも聞こえますが、つまりはそれくらい今年のチームは自分達のペースのうちにしっかりゴールが奪えているということです。誠にあっぱれと言うほかありません。

そしてそんなあっぱれという形容は逆転後の戦いにも当てはまるものでした。
善朗とカイトという攻撃手に替えて田上とゴンサという仕事人を投入。
お馴染みとなっている左SBに田上でゴメスを1列上げるシフトを敷き、また至恩を前線、星をトップ下へ移すことで、再びゴンサとヤンでボランチを2人にする感じの盤石なプロテクト態勢を構築し直しました。

その中で特に圧巻だったのはゴンサです。
あのルーズボールに対するハント能力。もう今年何回かここで書いている気がしますがやっぱり何度だって共有したい。至恩の突破と同じくらいテンションも上がるし興奮物のプレーをあの短い時間でも複数回披露してくれました。もう堪らんです。

また、右サイドで見せた至恩、三戸ちゃん、星、奏哉あたりが絡んでの鳥カゴなんかは憎いほど落ち着いていましたが、最後までポゼッションによってボールとゲームをコントロールしつつ締めることができました。
欲を言えば三戸ちゃんに訪れた決定機をしっかり決め切ってほしかったというのはありますが、まあこれに関しては次節以降の課題というか楽しみに取っておくとします。

楽しい学び

大宮の小島が試合後『カウンターが多かったのはもともとのプランだったのか』という問いに対して『違います』と話していました。
大宮としても本来はポゼッションしながら主導権を握るというのがやはり狙いではあったようです。それでもそれができないとなった際にこうして割り切ったプランを遂行して一時は逆転までこぎつけたのは大宮の地力と言えるでしょう。

そういったことも踏まえていろいろ考えた時に、結果的にはうちが再逆転したのでさっき書いた自分の後出しのズルイ話は的中した格好なのですが、根拠を精査すればある程度ライン間にボールも入りそれなりにうちのペースに思えていたのは、割り切った大宮のプランの範疇だったのかなと気付かされ、改めて本質が見えていなかったことを思い知らされた気がします。
だからこそあの選手交代、あのシステム変更、そしてプレーアクセントの付け方によってリズムを変化させて状況を打破したという流れは、楽しくもあり面白い学びにもなりました。

またそんな学びという点で、2つ失点したとはいえオフサイドを7つ取ったラインコントールは序盤から80分を過ぎても高いラインを維持できていて、この日も常に統率が取れていました。
至恩のドリブルやステップ、ゴンサの危機察知と奪取力、千葉、史哉のCBコンビが見せた持ち出し方や球出しと共に、このラインコントロールもこどもの日にうってつけな高質な教材だったような気がします。

あぁサッカーしたい。もっと言えば小中学生に戻ってサッカーしたい(This is 戯言)。

最後に

何だかいつも以上にしっちゃかめっちゃかな試合の感想になった気がしますがまあ勝ったから細かいことは気にしません(たぶん負けても気にしないけど)。

これで3連勝、開幕から12戦無敗です。
改めてですが逆転されたものをもう1回逆転してしまうなんて、恐れ入る強さです。
解説の名良橋さんが『少しの差が完成度の違いに出ていたのかなと思います』と仰っていたのはまさにその通りですし、そんな両チームの完成度には『確かな差』を感じることができたのは誇らしい限りでした。

いかなる“転”があろうと、今のアルビレックスには勝利で“結”べる強さがあります。

くりはら
くりはら
鳥屋野潟ほとり出身のアルビレックス新潟サポーター。海外はアーセナル推し。Jリーグ、海外、2種、3種、女子、その他、カテゴリーは問わずサッカーが好き。ラジオも好き。某坂道グループもちょっと好き。