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【燃え上がれ清五郎】10年前の同窓会

2013年11月7日


 十年一昔という言葉がある。意味をネットで検索したところ「世の中の移り変わりが激しいことのたとえ。十年という年月を区切りとして、それ以前は昔のように思われるということ。」(goo辞書:三省堂提供「新明解四字熟語辞典」より)とある。人間は年を取るほどに月日があっという間に流れるぞ、とは人生の先輩たちに聞かされていた話だが、確かに過ぎてみれば自分の三十路はさながら眠っている間に東京駅に着いてしまった上越新幹線のようだったと思う。ただ、自分にとっては短い時間であっても、その間アルビレックス新潟がずっとJ1の舞台で戦ってきたことは素晴らしい事だし、僕らの誇りでもある。

 さて、いま巷では今年の11月23日のホームゲームをJ1昇格10周年の日として様々な企画・イベントが練られている。その中でおそらく最も注目されているのが、あの時のように満員の観客でスタジアムを埋め尽くそうという趣旨の活動だろう。試合当日には、スタジアム内外でグラブやサポーターが主体となった様々なイベントが開催されるだろうが、それらは多くのお客さんに来てもらってこそ意味を増してくる。サッカーに例えれば、試合勝敗の決め手は当日のゲーム内容もさることながら、事前のスカウティングや練習メニューでほぼ決しているという状況だと言えそうだ。「いかに多くの人がこの日の試合に行きたいと思うか」という点に尽きる。
 
 そもそも「4万人越え」の試合はどれだけあっただろうか。過去のデータを探ってみた。
(全てホームゲーム、ナビスコ杯を含む)
シーズン 来場者4万人超えホームゲーム
2001
2002
2003
2004 11
2005 12
2006
2007
2008
2009
2010
 2001年のワールドカップ開催を翌年に控え、新たに建設された「新潟スタジアム」を初めて4万人の観客が埋め尽くしたのは、昇格争いの大一番でライバルを迎え撃ったあの京都パープルサンガ戦。当時J2には延長戦の制度があったが、それまで地元のTV局がサッカー中継をする事などなかった時代。某民放TV局がこの試合を地元向けに生中継で放送したのだが、放送時間の延長枠を設けておらず延長戦が始まる頃に放送を終了せざるを得ないという大アクシデントに見舞われた始末(苦笑)。しかしそれを逆手に取るならば、試合終了の瞬間まで歓喜を分かち合えたのはスタジアムに居合わせた42,011人のみだった訳だ。試合結果は、これまで多くのスーパーセーブを我々に見せてくれていたGK野澤が、雨で滑りやすくなったボールをファンブル、追いつかれての延長Vゴール負け。そこにいた人であれば昨日の事のように思い出せる、野澤の涙とスタジアムに響く野澤コール。4万人ホームゲームの歴史は、苦くて悔しい幕開けだった。
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京都に延長Vゴールを決められ、ぼう然とする新潟サポーター
2001年11月3日 新潟スタジアム(ビッグスワン)

 
 2002年シーズンも1試合に留まった4万人越えだが、2003年シーズン以降は飛躍的に数字が伸びていく。J1昇格への熱が冷めやらぬまま、2005年シーズンにはナビスコカップの試合でも4万人越えを記録するという快挙も達成した。この試合、相手が大宮ってのも、いかに新潟サポーターが数多く詰めかけたかを物語っているのではないかと思う(アウェイサポーターの数が必ずしも多くないという意味で)。しかしその後は徐々に来場者数が減り始め、とうとう2010年シーズンの横浜FM戦を最後に4万人を超える試合はなくなってしまった。今アルビレックスに所属している選手たちのほとんどが4万人越えのピッチでプレーしたことが無く、2010年5月5日以降にスタジアム観戦するようになったサポーターもあの雰囲気を知らない。チケット入手困難の解消、駐車場からの出庫時間短縮といった便利さと引き換えに、ひとつひとつのプレーに湧き立つように起こる歓声と拍手、ゴールが決まった瞬間に轟く地鳴りのような雄叫び、スタジアム全体を染め上げたオレンジと青のコレオボード…、それらを僕らは失ってしまっている。
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スタンドを埋め尽くすアルビレックスサポーター。「I BELIEVE!」の文字が浮かぶ
■2005年11月23日 新潟スタジアム(ビッグスワン)

 
 10年前は、ワールドカップ開催とJ1昇格という大きなうねりの中で、当たり前のようにスタジアムを4万人の観客が埋め尽くし、興奮と感動を共有した。現在は、当時のある意味「異常」ともいえるべき盛り上がりを再発させるような話題性には乏しいかもしれない。しかし、J1昇格から10年目となる2013年11月23日は、その日だけでもスタジアムを満員の観客で埋め尽すには十分特別な意味を持っているだろう。だから、僕も自分にできる事をしてみようと思う。
さて、10年前にあの感動を分かち合った友へ、久しぶりに連絡を入れてみよう。同窓会といきましょうか。
 
 
 と、ここまで書いておいてナンだけど、次節はちょうど10年前頃にJ1昇格を争っていたライバルチーム大分とのアウェー試合。なぜか相性の悪い大分には、今シーズンも痛い思いをさせられっぱなし。最後は勝って気持ちよく締めたいところ。僕は大分まで行けませんが、現地で応援する皆さんは選手たちと一緒になって戦ってきてください!


渡辺英雄(わたなべ ひでお)

1973年生まれ。新潟大学法科大学院助手。新潟大学在学時からアルビレックス新潟のサポーターとなり、現在は新大アルビプロジェクトを教員の立場から取り組んでいる。また、ホームゲーム後に新潟県スポーツ公園内のレストラン「ラ・ピアンタ」で不定期開催している「サポーターズバー」の実行委員としても活躍中。