オレラグ
エンブレムとデザイン
こんにちは!長岡出身東京在住のニラサワ( https://twitter.com/nirayuu_alb )です。僕のサポーターズコラムはデザインについてのコラム。グラフィックデザインを生業にしている僕だからこその視点で、アルビレックス新潟を、フットボールを読み解いていきます。
今回は『エンブレムとデザイン』。アウェイ限定フリーペーパー『アルビウェイ』No.233に掲載されたコラムを最新版に再構成・追記したものです。
クラブの顔である『エンブレム』。それは歴史であり、誇りであり、アイデンティティです。それをわざわざ変更する理由はなんなのでしょうか。分析してみます。
FCバルセロナの場合
2018年9月、スペイン・リーガエスパニョーラ所属のFCバルセロナが、19-20シーズンからクラブエンブレムを変更すると発表しました。
This is the proposed update to the Barça crest, subject to member approval
pic.twitter.com/csIHvX2ZyS— FC Barcelona (@FCBarcelona) 2018年9月27日
ご覧の通り、今までのエンブレムを踏襲しつつ、「FCB」の文字を廃して、よりグラフィカルなものになります。
クラブエンブレムの変更には多大な労力が伴います。サッカーファンなら誰でも知っているような超ビッグクラブが、どうしてわざわざエンブレムを変更するのでしょうか?
そこにはしっかりとした理由がありました。クラブリリースには「サッカーボールとカタルーニャ自治州旗を強調させつつ、“新たな時代に適応する”ため」とあります。つまり、政治的にもデザイン的にも現代に適合できなくなりつつあるエンブレムを、現代風にアレンジしてしまおう!というわけなのです。
新しいエンブレムを分析すると、非常に考えられたデザインなのがわかります。まず右上部のカタルーニャ旗のストライプラインと左上部のクロスの中心線が、下部のストライプラインにピッタリ合っています。この調整の作業を実際にやってみるとわかりますが、これ何気に大変な作業なんです。少しでもやりすぎるとどちらかに寄ってしまい、デザインが一気に破綻する可能性があります。そのギリギリのラインを攻めた、冷静かつ挑戦的なデザインです。
次に、真ん中のボールの模様。実はこれ、120°ずつ回しても重なりません。正面から見たときに違和感が無いよう微調整されています。その他にも、実に考えられているポイントが無数にあります。さすが世界のトップクラブですね。
ユヴェントスの場合
また少し前、2017年にイタリア・セリエA所属のユヴェントスもエンブレムを変更しました。こちらは今までの面影はほとんど無く、大刷新です。
Agnelli: “This new logo is a symbol of the Juventus way of living.” #2beJUVENTUS pic.twitter.com/x5B3fapqGJ
— JuventusFC (@juventusfcen) 2017年1月16日
伝統の縦長楕円のエンブレムから、「J」(ユヴェントスの原語表記はJuventus)とストライプ柄を全面に押し出した、非常にシンプルなエンブレムへと変わりました。
ユヴェントスのエンブレム変更には、経済的な背景が大きいようです。と言っても困窮しているからではなく(そもそも困窮していたらそんな余裕はない)、未来を見据えてのエンブレム変更です。
今日のユヴェントスでは、従来の縦長楕円エンブレムでは作れなかったような、非常にデザイン性の高いグッズや広告をリリースしています。フットボールを知らなくても着用したくなるようなアパレルを展開し、そこからフットボールの世界へ誘導しています。むしろアパレルだけで完結しても良いと考えているのかもしれません。試合結果に左右されない収入源を確保出来れば、経営は非常に安定するでしょう。いやあ、非常に羨ましい。
アルビレックス新潟の場合
そして両クラブが解決したこの問題を、いずれアルビレックス新潟も解決しなければいけない時がきます。残念ですが、どんなに素晴らしいグラフィックデザインにも、賞味期限があるのです。
時代遅れのデザインを使い続けることは、文化的にも経済的にもあまり良いことではありません。バルセロナのように「クラシックで良いデザインだから現代風にアレンジしよう」とするのか、ユヴェントスのように「時代遅れだから全部変えてしまおう」とするのか。アルビレックス新潟にとって、どちらが正解かはわかりません。「その時」が来たときに、しっかりと未来を考えて作られたデザインを選べるよう、僕たちも準備をしておきたいですね。
追記:Jリーグの場合
エンブレムの現代化の波が、ついにJリーグにもやってきました。清水エスパルスと東京ヴェルディがエンブレムの変更を発表しています。共に2020シーズンから使用するとしています。
リブランディング・プロジェクトの取り組みとして、現状のエンブレムに込められた想いを大切にしながら、デザイン面でのブラッシュアップを検討しています。皆さんのざっくばらんなご意見やご感想をお願いします!https://t.co/19pcU3o203
※予め商標登録を出願しています。#spulse #エスパルス— 清水エスパルス公式 (@spulse_official) 2018年10月26日
【クラブ】創立50周年を迎えるにあたり、新たな50年でクラブが目指す指針としての『総合クラブ化』について、またヴェルディブランドを世界に発信していくための『エンブレム・ロゴの変更』についてお知らせいたします。
詳細は→https://t.co/VAOWzJzy42 #verdy pic.twitter.com/CBiPQbk26u— 東京ヴェルディ公式 #緑パートナー募集中 (@TokyoVerdySTAFF) 2019年1月19日
清水エスパルスはFCバルセロナ型、東京ヴェルディはユヴェントス型の変更です。どちらも現行のデザインを現代のスケールで分析し、問題を解決しようと試みた結果です。他クラブですので個人的なコメントは差し控えますが、これを期にJリーグもエンブレムの近代化が一気に進みそうな予感がします。全部良い方向に進んでほしいですね!僕もグラフィックデザイナーの端くれとして、良いデザインは全力で応援します。