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オレラグ

空っ風に負けない、新潟(スパニッシュ仕込み)の新しい風【Review】第1節 ザスパクサツ群馬戦

2020年2月25日

今、群馬で頂いた水分補給ゼリーを触って、あのゼリー飲料独特のぶよぶよした感触を楽しみながらこれを書き始めたんですけど(飲食物で遊ぶなんてお行儀悪くてすみません)…、

開幕戦勝ったぞ〜〜!!!

もう最っっっ高であります。
6分間で怒涛の3ゴール、そして無失点。
帰りの越後川口SAで食べた山菜なめこそばのおいしさとか、帰ってから入ったお風呂とか、見直しながら飲んだカルピスとか、それら全てがいつもより格別に感じたのはきっとこの素晴らしい勝利による補正が大いにかかったからであることは間違いないでしょう。

たかが42分の1、されど42分の1。
さ、今年も完勝の開幕戦からダラダラとレビュー書いていきましょう。

スタメン

1月から始まり約1カ月続いた高知でのキャンプを経て、見事開幕のスタメンを勝ち取ったのは図のようなメンバーとなりました。
新加入選手は、GKの小島、右SBの大本、CBのマウロ、ボランチのゴンサロゴンザレス(以下ゴンサ)、そしてカムバックではありますが左SHのロメロという5人でした。
またベンチには田上、島田、ファビオと、昨年既にデビューは果たしていますが、今季が一応プロ1年目となる矢村もベンチ入りとなりました。
アル関ライブでやっていた、清田賞争奪・開幕戦スタメン予想大会でぴったり的中された方はいらっしゃったのか気になるところです。
あ、私ですか?聞かないでください、はい。

対する群馬はローンバックの岡村を含めてスタメンのうち8人を新加入選手が占めていました(清水、岡村、高瀬、内田、宮阪、岩上、進、大前)。ベンチも鈴木と岡田以外は新加入ということで、昨季から大きく入れ替わったメンバーで開幕戦に臨むこととなりました。
1つ残念だったのは飯野がメンバーから外れたことでしょう。ぜひとも次回の7月4日、ビッグスワンでのゲームでは対戦できることを期待したいと思います。

前半

まず、何といっても風が強かったです。
まさに強烈な上州の空っ風ということなんでしょうけど、スポンサーボードは立てず、横断幕や旗も禁止となりました。置いたボールが止まらなかったり、アルベルトさんのキャップが飛んだり、各所に影響が出た中で、もちろんそれは試合にも影響します。
コイントスで負けてしまったため前半は風下となったわけですが、アルベルトさんは「浮かさずゴロのパスを有効的に使わなければいけないことに気づくまで20分かかってしまった」と仰っていました。
そういえば、小島もロングボールを蹴る際はちょうど20分くらいからライナー性のキックに切り替えていたように見えました。

そんな風下に押された中でのゲームは案の定難しく、シュートは16分のゴメスのクロスに善朗がヘッドで合わせた場面と、ラストプレーでセットプレーからこぼれ球をゴンサが打ったシーンの2つくらいに止まってしまいます。

それでも、悪い内容という印象は持ちませんでした。
それはデータでも出ていたように新潟の方がある程度ボールを持てていたことと、300本以上のパスを77%の成功率でできていたことが1つあるかと思います。
また、開始4分頃に秋山からの楔のパスを善朗がフリックした形だったり、16分の善朗のシュートシーン前後のように、1度ダメでももう1度奪って2次、3次攻撃ができていたりと、崩しの片鱗や厚みのある攻撃の一端が見られたことも1つの要因かと思います。

さらに守備でも、シュートこそ3、4本打たれましたが決定機は作らせませんでした。大前のミドルに対して舞行龍が見せたように体を張るところはしっかり張るプレーや、23分頃の前線から連続でプレッシャーをかけるプレーができていたことで、危なげなくやれている感覚もありました。
このあたりは新太が話していたように「前半我慢はチームとして話してた。プラン通り」という言葉通りなのかなと思います。

後半

後半は開始早々47分に秋山のシュート、53分にはゴメスのシュート性のボールからルーズボールをシルビ、さらに55分には中盤で受けた新太が自らドリブルで運んでミドルと、風上に立ったこともあり、風に乗って攻勢に出ます。

チャンスは増えながらも、そう簡単にゴールは生まれない中で先に新潟ベンチが動きました。
66分善朗→ファビオ。この交代によってシルビが右SHへ移りファビオと新太の2トップとなります。この交代についてアルベルトさんは試合後のインタビューで「追い風を活かしてサイド攻撃を狙って、高さのあるファビオを投入した」と仰っていました。
この交代直後には、左サイドでロメロとのパス交換から抜け出した新太のクロスにファビオが飛び込むという惜しいシーンを早速作ります。
74分には左サイドのゴメスが縦に突破してクロス。
ゴール前でファビオがつぶれてこぼれ球を新太がシュートという決定機も作り出しますが、DFのブロックに阻まれます。

群馬は71分に進→岡田、77分には田中→中山という交代でFWと右SHの選手をそれぞれ入れ替えます。
右SHの交代に関してはファビオが飛び込んだシーンや新太の決定機など、徐々に群馬は右サイドから押されていたこともあって交代したのかなと推測しました。

それでも、結果的に先制点は群馬の右サイド、新潟の左サイドからのセットプレーから生まれました。
82分、左サイドからゴメスのFK。一旦はDFにクリアされますが、こぼれたボールを新太がドン!先制!すごい!
もう、ゴラッソどころかスーペルゴラッソです。
新太は「その前に2、3回チャンスがあったのを外していたので、思い切り打った」と話していましたが、仮にそういう良い判断ができたとしても、あれだけ正確にボールをミート、しかもわずかにアウトにかけた感じであのコースに突きさすなんて。
さすが、ゴールの嗅覚を持っている男は違います。

また、ゴメスのボールもグッドでした。
フワッとした滞空時間の長いボールを供給しましたが、うちの方に分があった高さを活かすためであるのともう1つ。
仮にクリアされた時も威力のあるボールだとその分跳ね返る力も大きくなってしまいますが、緩いボールであれば反発力も落ちるので、遠くへクリアできません。しかもあの強風でしたので尚更クリアしても距離は出ないでしょうから、そういったことも意図していたのではないかと思います。
そして実際そのクリアから先制点が生まれたわけですから、お見事です。

群馬からすると、試合後奥野さんも自ら反省の弁を述べられていましたが、セットプレーの直前に高瀬→鈴木という交代を行ったのは結果的に裏目に出ました。
基本的に守備のセットプレー時はマークで混乱が出ないように交代は避けるのがベターです。ただ今回に関しては、投入された鈴木は元々CBの選手でもあり高瀬より高さのある選手ですから跳ね返す意味で投入する判断も決して間違いとは言いきれないでしょう。
サッカーの難しいところであり面白いところでもあります。

先制した直後、新潟はロメロとシルビのサイドを入れ替えていました。すると4分後でした。
86分、ゴメスが左サイドに移ったシルビとのパス交換から中央でもらってスルーパス。ファビオが抜け出すとそのままゴール前まで持ち込んでクロス。戻ったDFが必至のカバーを見せますが、こぼれ球を新太が冷静に落として押し込んだのはロメロ!おかえり!そして息子さんハッピーバースデー!
攻撃の起点となってから最後はゴール前まで入ってきていたシルビも素晴らしかったですし、新太も決定的なシーンで落ち着いて味方のゴールをお膳立てしました。
そして、ファビオは長身ながらスピードもあるという噂をこのシーンでしっかり証明してくれたわけですが、この2分後にその圧巻のスピードをさらに見せつけてくれます。

88分、大本の前線へのアバウトなボールは風に乗り、目測を誤った舩津の後ろに落ちます。すると後ろにいたファビオが見る見るうちに追い抜き、そのまま前へ出て勢いそのままにシュート!3点目!
めっちゃ速いっすね。あのスピードを目の当たりにして改めてウイングで見てみたいなという願望というか妄想がまた膨らんでしまいました。
またスピードに加えて、シュートを打つ前のタッチが非常に柔らかく、打ちやすい位置にしっかりボールを置けていたところにも心を掴まれました。

3点目の直前に新太→至恩、そしてアディッショナルタイムに入ってから大本→田上を投入します。田上はCBが本職の選手ですが今回は右SBとしてしっかり逃げ切りに貢献してくれました。今後ますます貴重な戦力になってくれそうです。

試合終了、0-3。
2020年、幸先のいいスタートです。

テンポを作るための距離

攻撃についていいなと思ったのが図にしていただいたシーンのような形です。パスが入った時にボールホルダーに対して近いポジションに入ることや、その中で関わる意識を持ってポジショニングできていると感じられるシーンが多く見られたことが非常によかったと思います。

キャンプの時から監督や選手から「パスのテンポを上げる」という言葉はよく耳にしましたが、近い距離(特にボールホルダーの斜め)にポジションを取ることは、テンポを上げるためには重要なことであり、しっかりそれが意識されているということが窺えました。

図のシーンではいわゆるレイオフと呼ばれるような形から3人目が抜ける動き出しが出来ていますが、こういった直接崩しにかかるバリエーションもできますし、結果的にうまく運べなかったりチャンスには結びつかなかったりしても、近い距離で関われていることで失った後のプレッシャーも素早くかけることができます。そういったシーンもいくつか見られました。
今後はテンポよく動かした後、サイドチェンジといった大きい展開を使いながらどんどん揺さぶる頻度を増やせると尚良し、といった感じでしょう。
レイオフについてはこちらをどうぞ

守備への切り替え

先程も書いて繰り返しになりますが、テンポよく動かすために近い距離でポジショニングを取るということは、ボールを失った際に素早くプレッシャーを掛けるためにも効果的です。
そんなスムーズな守備への切り替えを行うにあたって、攻撃で変形した形をそのまま維持して守備の局面に入るシーンがありました。

攻撃でビルドアップする際、この日は試合の入りだけ秋山が下がっている場面もありましたが、基本的にゴンサが後ろに下がって最終ラインを3人して、SHが中へ絞りSBが高い位置を取るという形で行っていました。このビルドアップ時の変型自体は特別変わったことではありませんが、ボールを失った際すぐに4-4-2の形へ戻らず、そのまま3-5-2の形を維持したまま守備をするシーンが50分過ぎや54分頃に少し見られました。
理に適ったやり方でありますし、近い距離でボールを動かすということ=守備の準備をしながら攻撃をするということにもなり、これは昨今よく見聞きするポジショナルプレーという概念に通ずるものじゃないかと、興味深く感じました。
これはまたポジショナルプレーについてちゃんと復習してからさらに学びを深めるいい機会になりそうです。

理に適っているついでにもう1つ。
試合後よく感想戦にお付き合いいただいている関西在住のサポーターさんに、キャンプの時からCBとボランチの左右が入れ替わっているという話を教えてもらいました。それはなぜなのかしばらく考えた末に私が思ったのは、SBは右の大本の方がスピードや推進力があるため高い位置を取ることが多くなるため、その裏のスペースを前にガツンと奪いに行けるマウロにカバーさせるためで、そのマウロが出ることで生まれる穴をゴンサにカバーしてもらうという、そういった意図があるのではないかと感じました。

もちろん、これは推測の域を出ない完全な想像ではあるんですけど、こういうこと考えるのがやっぱり楽しいですね。

セットプレー

セットプレーの守備はキャンプの映像で断片的に見ただけでしたが、今年はやはりゾーンとマンツーの併用のようです。
まずゾーン担当としてゴールエリアに高い選手を3人置き、ニアに1人、キッカーに1人で、残りはマンツーのようでした。
それに対して群馬がGKの前に2人置いてマークを2人引っ張り、飛びこむ選手を4人入れることで新潟は飛び込む選手の内1人は捨てるという表現が正しいのか分かりませんが、フリーにしながら守るケースがありました。

これは確か柏が同じようなやり方でやっていたと思いますが、昨年序盤戦の柏はセットプレーからの失点が多く課題となっていました。
セットプレーの守り方はそれぞれ一長一短でありどれが1番良いとか悪いとかってことはないのですが、今後ひょっとすると昨年の柏と似たような状況にうちがならないとも限りませんから、次節以降も集中して、この心配が杞憂に終わることを願うばかりです。

最後に

翌日のスポーツ紙に掲載されていたコラムの勲さんも、夕方のニュースに出演されていた営業部の野澤さんも、3ゴールを奪いながらもまず守備に言及されていたのが、このクラブの感じを表しているような気がしてなんだか妙に印象的でした。ゴールの取り方や攻撃の崩し方にフォーカスするクラブもありそうですが、まずいい守備あっての攻撃ということでしょう。
まあ、クラブの感じを表しているというのはあくまでも個人的に勝手にそう感じたってだけの話なので深い意味はありませんが。

とにかく、いいスタートを切れました。
最初にいじっていた水分補給ゼリーが実はマスカット味だという事に気づいてしまい、正直マスカットは好きでも嫌いでもないのですが、今それを大変おいしく飲むことができています。

やっぱり勝利は偉大です。

文中の作図は、‪Jun Kanomata(@jun_kanomata‬)さん のTACTICAListaを使用させていただきました。
くりはら
くりはら
鳥屋野潟ほとり出身のアルビレックス新潟サポーター。海外はアーセナル推し。Jリーグ、海外、2種、3種、女子、その他、カテゴリーは問わずサッカーが好き。ラジオも好き。某坂道グループもちょっと好き。