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オレラグ

甲斐からの再開【Review】第2節 ヴァンフォーレ甲府戦

2020年6月29日

こんにちは。

朝起きて日報の記事と予想スタメンを確認し、PORTで立石さんの番組を聴き(再開初戦が最後になるというのは残念でなりませんが…)、諸々やることやった後、スタメンを確認して様々なシミュレーションをしながら気持ちが自然と高まる中で、ペンとノートを準備して開始の笛を待つ。
いつもの流れもいよいよ再開しました。
この日に限って言えば2時間前になってもしばらくうちの試合だけスタメンが発表されなくて妙にザワザワさせられたり、1時間前からオンラインスタジアムやらインスタライブやらでいろいろ忙しかったりもしましたが、とにもかくにもJリーグが戻ってきてくれました。

スタメン

まずはスタメンです。
開幕戦で新潟サポのみならず他サポにも衝撃を与えたファビオを新太との2トップに抜擢。また各媒体の予想通り欠場が濃厚となっていた舞行龍と大本のポジションにはそれぞれ田上、新井が起用されました。
そして何と言ってもGKです。
開幕戦に出場した小島が中断期間中にケガで離脱してしまったことで誰が入るのかが注目されていましたが、練習試合でも活躍を見せていたらしい和輝がプロデビューを飾ることとなりました。
GKというのは基本的に入れ替えの少ないポジションですから、出られない選手はこうしてケガであったり出場停止といったアクシデントが起こった時にその機会を逃さずチャンスを掴めるかが大事になってくるわけです。それを今回はGK陣の中でも最も若い和輝が掴みました。
GKにおける10代での出場はクラブ史上最年少だそうで、ただただあっぱれではありますが、きっとこれも輝く未来への通過点に過ぎないのでしょう。

甲府の方はというと開幕戦からの変更は5名。
GKに河田、CBに新井、ケガ人が重なっている右SBには小柳、ベンチに4人も入るくらい熾烈なFW陣の中で1トップに起用されたのはジュニオール・バホス。そしてボランチには大宮のジュニアユース、ユースと伊藤監督の下でプレーし、今季その伊藤監督の下で再びプレーすることとなった22歳の山田陸がJ2デビューを果たしました。

前半

DAZNの試合前の予想フォーメーションもそうでしたし、スタメンの11人を確認した時もてっきり4-4-2だとばかり思ってイメージしていましたが、蓋を開けてみると意表を突かれました。上の図のようにゴンサがDFラインの中央に入り、ロメロと善朗は秋山と共に3センターという3-5-2(5-3-2)で新潟はスタートします。試合後のコメントで敵将の伊藤監督も「最初少し戸惑ったが・・・」ということを仰っていました。

ファーストシュートこそ13分の甲府・松田によるヘッドでしたが、展開としては予想通りそれほど激しく前から奪いに来ない、もしくは連動して嵌めに来るようなことは少ない甲府に対して、新潟は後ろの3人+秋山やGKの和輝も使いながら数的優位を作りつつボールを動かして、主に右サイドからスムーズに持ち運ぶシーンが序盤からよく見られました。

守備では、こちらもそれほど前から激しく行って嵌めにいく感じではありませんでしたが、2トップが相手の2ボランチを消してから少しCBに寄せてサイドへ誘導し、SBに出たら3センターがスライドして対応する形でうまく守っていました。

そして迎えた19分です。
右サイドでインターセプトしたマウロからライン間のロメロへ楔のパスが入ります。うまく反転すると攻め上がったまま残っていた新井とのワンツーで中央へ。
さらにゴール前で少し引いてボールをもらった新太が、ワントラップしてからファビオにあてると、落としてもらったボールを素早い振りでシュート!新太4カ月越しで2試合連続のゴール!

何だか似たような形のゴールを見たことあるなと感じて思い出したのが、昨年のアウェー大宮戦でのシルビとのワンツーから左足で決めたゴールでした。ああいうのほんとうまいですね。今回に関して言えばトラップを足裏でしたのも自分の間合いを作り、相手に間合いを取らせづらくする意味で見事でした。
また、アシストしたファビオのポストプレーもナイスプレーでしたが、ロメロの貢献も忘れちゃいけません。いや、むしろロメロのプレーがさらに秀逸に感じられたのでそこをちょっと深く。

まず最初に受けた場所がよかったのはもちろん、その後の右足でトラップして体を開くように反転した動きが、後ろに新井がいることと、さらにそこからワンツーで運ぶところまでイメージできているからこそできるであろう無駄のない動きでした。
さらに新太に出した後、また中央に走り込むプレー、いわゆるパスアンドゴーがしっかりできていたため、1度新井とのワンツーを見せられている甲府としてはまた新太とのワンツーをもらうおうとしているんじゃないかと考えてしまい、新太に付いていた小柳や挟みこめる位置にいた野澤の寄せを甘くする効果があったのではないでしょうか。お見事でした。

ゲームが動いてからは追いつきたい甲府がポゼッションで盛り返す展開となります。ただ、1点リードした新潟としてもある程度バランスを考えながらという意識を持ちつつそれまで通り落ち着いたブロック守備が出来ていた印象でした。

しかし34分です。
ゴメスのクロスをキャッチした河田がすぐに中央の山田へ預けると、少し運んでから松田へ渡し、松田は左の泉澤へと繋ぎます。
リトリートしながら守る新潟に対して泉澤はじわじわ運び、アタッキングサードまで入ると得意の“ゼロヒャク”と言われる緩急を付けたドリブルで縦に仕掛けてクロスを上げます。これを中で待っていたドゥドゥがファーへ流れながらヘッドでゴールの逆側へ流し込みました。同点。

正直相手を褒めた方がいいゴールな気がしてしまいました。だって泉澤もドゥドゥもうまいもーん(投げやり)。
まあそれを言っていたら進歩しないのかもしれませんが、これに関してはチームの問題というより、SBとしてあそこは泉澤から奪えずともボールを足にあててクロスを上げさせないとか、CBはマーカーに競り勝てずとも体をつけることで競り合いに持ち込んで自由にさせないという個々人のスキルアップに期待したいと思います。がんばれ新井、がんばれ田上。

ということでいただけない失点はこっちです。
直後の35分。
キックオフから後ろに下げてビルドアップ。右の新井までボールが渡りますが、新井のワンタッチでのバックパスが大きくずれます。
それをバホスに奪われると、中央への折り返しをドゥドゥに押し込まれました。あっさり逆転。あたたた……。

これはさすがに喝を入れざるを得ない、全く不用意で残念な失点でした。
そもそものミス自体もそうですし、追いつかれた直後という分かりやすく気を付けないといけない時間だったのも大きな問題でした。
もう反省あるのみです。

逆転された後も数分そのままの形でプレーしていましたが、38分にゴメスの治療で少し試合が止まった間に恐らくベンチからの指示でゴンサを中盤に上げて4-4-2に変更します。
攻撃の際にゴンサなり秋山が下がって後ろを3人にする形は変えていませんでしたが、守備時は「中盤の支配を改善するため」(アルベルト監督)システムを替えたようです。

すると、このまま前半終了かという雰囲気が漂い始めた45分+1分でした。
ハーフラインを少し越えたくらいから秋山のゴール前へのフィード。走り込んだ新太が右足でシュート!同点!
もうあの秋山の惚れ惚れするようなタッチダウンパス。恐ろしい。お前はピルロか。秋山がピルロなら新太はカッサーノとかインザーギといったところか。いや、もうそんなことどうでもいい。最高すぎました。
綺麗に崩すゴールも好きですが、ああいうパス1本で入るゴール大好きです。

あとここでもやっぱりロメロが効いていたように思います。
秋山は新太に出す前に一旦善朗に縦パスをつけてから再びもらっているのですが、その善朗に出したところでロメロが右サイドから左へダイアゴナルに走り込んでいました。その残像もあってか、新太のマークに付いていた新井は新太が同じように斜めに裏を狙ってくるのではないかと感じて体の向きが1回手前側に向いてしまい、新太を背にする形になっていました。そのため実際に出てきたボールに対して反応が遅れ新太は落ち着いて流し込むことができたのではないかなと思います。
実際にボールに絡んでいなくても、それがなかったらゴールが生まれていなかったというようなアクションは自分が気付かないところにもたくさんあるわけですが、それを見つけるというサッカーの面白さを改めて感じました。

前半終了、2-2。
やばい、まだこのレビュー前半だ。配分間違えた。
まあそれくらい再開初戦の最初の45分から濃密なゲームが展開されていました。
帳尻を合わせるわけではありませんが後半は薄めになると思うのでぜひ読み進めていただければと思います。

後半

甲府が先に動きます。ボランチの山田→山本を投入します。
今年限定のルールとして交代枠は3から5に増え、回数も実質4回できるようになったので、甲府はこの時点であと3回の中で最大4人交代できるということのようです。

新潟は前半の終盤に変更した4-4-2の形を継続して後半も入りました。ビルドアップではやはり秋山やゴンサが降りて3人にする形が基本でしたが、それと共にボランチは下がらず左のゴメスが残ることで3人にして、右の新井は前半同様高い位置を取ることで結果的に左右非対称になるパターンも何度か見られました。
また、新井は変わらず高い位置を取るためこちらもやはり前半同様、右サイドからの攻めが多く見られました。

47分には相手のGKのキックをゴンサがカットしたところから、新井、ファビオ、新太と繋いでロメロのシュート。
50分には新井がロメロとのワンツーで抜け出し速いクロスを上げると、クリアをゴンサ、さらに善朗と立て続けにシュートと攻め立てます。
そして1番惜しかったのが58分。
高い位置で受けた新井がアーリークロスでファーへ。新太と入れ替わる動きでうまくマークを外したファビオがフリーであわせましたがうまくミートできませんでした。

後半も15分が過ぎたところで新潟も最初の選手交代を行います。左SHを善朗→至恩へ替えました。
甲府は同じタイミングで2人交代。泉澤、バホス→太田、ハーフナーを投入してきます。この交代によって甲府は左にドゥドゥ、太田がトップ下でハーフナーが最前線へ入りました。

さらにそのおよそ5分後にはゴメスが足を攣ってしまいアウト。ちょうど飲水タイムが入ったため、ここでゴメスとさらにロメロに替わって、史哉とシルビが入ります。シルビはそのまま右SH、史哉は右SBに入り新井が左へ移ります。
甲府はさらにその約5分後にドゥドゥ→金園で太田を右、松田を左に移し、ハーフナーと金園の2トップへ変更します。さらに80分には恐らく接触プレーの影響で痛みが残っていた河田→岡西という、アクシデント的な交代で5人目の交代枠を使いきることとなりました。

Jより先に再開していた欧州のリーグ戦を見ていても感じましたが、交代枠が増えたことで両チームがどういう形や配置にしたのかを逐一確認するのが大変で、さらにこれも枠が増えたことによって同時に複数人を替える策も取りやすくなったため、展開に追いつくのも一苦労になった印象です。
また試合内容自体に関しても、最大でスタメンの半分が変わることになるため、フレッシュな選手が入るとはいえという言うべきか、入るからこそというべきなのかは定かではありませんが、バタバタして落ち着かないままどうしても集中力が落ちて良い意味でも悪い意味でもオープンなゲームになりやすくなっている印象があります。
今後はどんどん暑くなりますし、ゲームをコントロールする力(ボールを持つ持たないというだけの話ではなく)というのが、チーム全体の規律であったりベテラン選手の存在感みたいなところを中心に物を言ってくるかもしれません。

試合に戻ります。
新潟の交代策で言えば、この日も今までと同じく3人しか替えていませんが、シルビと至恩が積極的なミドルや仕掛けるプレーでアクセントとなって攻撃を活性化していたとは思います。
それでもなかなか決定機を作るまでには至らず、もう1つ状況を打破する何かがないと厳しいなあなんて思っていた81分、勝ち越し点が生まれます。

野澤のバックパスがずれたのをきっかけに2トップがプレス。一旦はCBの新井のところに運ばれてプレスを剥がされかけましたが、シルビが寄せにいき、呼応して史哉も内田へ寄せます。内田はワンタッチでうまく松田へ渡してかわしますが、ここをゴンサが狙っていました。少しトラップが大きくなったところ逃さずフィジカルを活かして奪い、縦へ繋ぎます。
新太がスルーをして至恩が中央でもらうとルーレットで華麗にDFをかわし右へラストパス。待っていたシルビシュート!
Muito bom!  Muy bien! 素晴らしい!
チーム全体でプレスを掛けてハンターのゴンサが狩る。
そこからファンタジスタの至恩が鮮やかなテクニック。あの狭い局面をルーレットでかわして、さらに引っかからないように浮球のパス。笑ってしまうくらいすごい。
そして最後はスナイパーのシルビが打ちぬきました。あのシュートも浮いたボールに対してわざと叩きつけるようなキックでGKが反応しづらいように打っていました。さすがです。
オンラインスタジアムに出ていた成岡さんも「完璧ですね」と大絶賛のゴールでした。

いやね、あの〜、今日のレビューここで終わっていいんですよ。
ただ、あったものをまるでなかったもののようにしてしまうのはいけませんからね、一応ちゃんと書いておきます。
90分+4分。左サイド内田のロングスローをニアで金園が落とし、走り込んだ太田が胸で押し込みました。同点。
中央からニアへ走り込んだ金園がフリーになってしまいました。最初見るとマウロが付いていますからそのまま付いて行ってよかったとも思いましたが、彼が無暗に付いて行って中央を空けるリスクを考えれば、ニアにいる選手に任せるという考えも十分理解はできるわけで。
とにかくもったいない、詰めの甘さが出てしまいました。

試合終了、3-3。
再開初戦から派手に打ち合ったゲームは、当然勝てるゲームであったと同時に最後のピンチを考えると負けてもおかしくないゲームでもあり、やっぱり引き分けという結果は妥当だったのもしれません。

右の作り

もう十分書いたんですんけど、残りいくつかの感想も。

1つ目はビルドアップ。特に前半先制するまでの時間帯の右サイドについて。
HTのデータでもアタッキングサイドが極端に右が高くなっており、試合中に解説の須藤さんも評価されていましたが、右サイドからのビルドアップは特にスムーズにできていました。
いつものように作っていただいた図ですが、今回は前半8分45秒のシーンです。
和輝からのフィードをファビオが胸で落とし、新井が受けて、秋山が縦パス。ファビオがサイドでもらって・・・という流れです。
まず甲府はドゥドゥが左SHで泉澤がトップ下という本来とは逆のポジションでスタートしていました。どういった意図があったのかはちょっと分かりませんが、この本来とは逆の立ち位置だったことが新潟としてはむしろやりやすくなった1つの要因だったかと思います。

ドゥドゥは決して守備をサボる選手ではないですし、一生懸命出来る選手ではあるのですが、多少前に出て右に開いたマウロに早く出すぎたり、もしくは中央の2人や後ろと連動し切れていない部分がありました。
それに対して新潟は相手を見ながら論理的にボールを動かしたり、複数人が動き出したりという事が出来ていたと思います。
図のシーンで言えば、相手がプレスを掛けてきているから飛ばしたパスでファビオへ蹴る。ファビオのすぐ後ろには新井とロメロが素早くフォローに入るといったことです。
ポゼッションの意識を高く持ったチームのビルドアップというとどうしても後ろから短い距離でテンポよくグラウンダーのパスを繋ぐイメージに陥って墓穴を掘ることが各地でよく見られますが、このシーンに限らずシンプルにファビオへ蹴る選択肢も持てていたところは特に良かったのではないでしょうか。

もう1つの例として5分50秒のマウロがイエローをもらってしまったシーンも、マウロがボールをもらった瞬間に新井は大外に開いてパスコースをつくり、その新井に対して左SB(内田)が寄せに行ったのを見て、空いたスペースにロメロが内側から抜け出す動きをしています。さらにそのロメロが空けたスペースにはファビオが降りるというようなローテーションがありました。
結果的にトラップが大きくなってもったいないシーンにはなりましたが、恐らくドゥドゥと距離があったのでマウロは少し運んで相手を引っ張り出してから新井なり裏へ走ったロメロなりに渡そうとしていたのではないかなと思います。

システムの話し

もう1つだけ。
相手への対策を含めてこのシステムにおける戦い方は、恐らく準備していた通りによく表現できていたのではないかと感じました。
特に守備についてですが、3センターだとどうしても4-4-2に比べて中盤が少ないので、解説の須藤さんも途中指摘されていましたが3センターの脇が空きやすく狙われやすい弱点があります。
ただ、甲府が攻撃の際に後ろを3枚にしてSHが絞ってSBが高い位置を取るというのは当然分かっていて、さらにその後ろ3人が自らドリブルで前へ持ち運ぶことがほとんどないことも把握できていたであろうことから、新潟としては3センターの1人が後ろの3枚へ対応するために前へ引っ張られて脇が空きやすくなるリスクは高くないという計算ができており、そういったことも試合後に監督自らが仰っていた理由と共にこの形を採用した理由の1つだったのではないかなと感じました。

結局実際に起こった現象としては、甲府が新潟のシステムはSBのところにプレッシャーが掛けづらいシステムであることをすぐに理解したため、無理に後ろを3人にせず、SBを起点に運ぼうとしてきましたが、それに対しても新潟はスライドしながら問題なく対応できていました。
3-5-2(5-3-2)でスタートしたことに対して意表を突かれたと書きましたが、振り返ってみれば開幕戦でも時間帯によっては3-5-2の形で守っている時もありましたから、今後も柔軟に4-4-2や3-5-2(5-3-2)、もしくはそれ以外のいくつかの形を使い分けた戦いが見られるような気がしています。ただただ楽しみです。

最後に

悔しいけどやっぱりどうしても楽しかったが上回っている自分がいました。久々にアルビレックスが見られたこと。しかも欧州の各リーグ戦の試合で見た分、再開初戦はもっと体が重くて低調なゲームになることも覚悟していた中で、4カ月も空いたとは思えないくらい興奮する試合を見せてくれたこと。

自分の心のクラブがあって、そのクラブの試合が見られることは、やっぱり幸せだなとつくづく感じました。

くりはら
くりはら
鳥屋野潟ほとり出身のアルビレックス新潟サポーター。海外はアーセナル推し。Jリーグ、海外、2種、3種、女子、その他、カテゴリーは問わずサッカーが好き。ラジオも好き。某坂道グループもちょっと好き。