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オレラグ

泣き叫び、想いはつのる【Review】第4節松本山雅戦

2020年7月13日
こんにちは。
3点、5点と大量失点が続いていたチームがここで突然のクリーンシート。
プレビューの最後で割と無理矢理な例を引き合いに出して「やればできる」なんて書きましたが、やっぱりやればできるチームでした。素晴らしい。
行き慣れたはずのスタジアムにもこの日はちょっとした緊張感を携えて向かったわけですが、そんな久しぶりに現地で見られたアルビレックスの試合について今回も振り返ってみます。

スタメン

 
 
 
いつも以上にわくわくした気持ちでこの日を迎えた中で、予想をしていなかったなかなか大胆な変更の施されたスタメンは、さらにわくわく感を高めてくれました。
前節からの変更は4人。
まずCBに舞行龍が復帰。さらにボランチには島田が入り、左SHには至恩。
そしてファビオの相棒として2トップの一角に抜擢されたのはペドロマンジーでした。いよいよJデビューです。
対する松本は前節からの変更が2人。
まず前節ケガで途中交代となった常田から、その時もその常田に代わって入った乾がそのままスタメン。そして右のWBに田中隼磨ではなく鈴木が起用されました。
ちなみに乾は前節常田に代わってそのまま左のCBに入っていましたが、今節は乾が右で浦田が左のCBとしてプレーしていました。

前半

松本がエンドを入れ替えて始まったこの試合。
まず新潟はメンバー表を見ただけでは一体どういう形になるのかといくつかの可能性が考えられましたが、蓋を開けてみると守備の際は1つ目の図のようなオーソドックスな4-4-2。
そして自分達がボールを持ってビルドアップする際が2つ目の図のような形でした。田上が残って後ろを3人にし、新井と至恩が大外で幅を取り、中央は島田がやや低く残って秋山と新太がやや高い位置で相手の間に立っていました。また秋山に関しては少し下がって島田と並ぶような形でいつものようにゲームを組み立てる役割をすることもありましたが、数字にするとやはり3-1-4-2といった表現をするのがベターだったかと思います。
立ち上がりからお互い球際の激しい奪い合いがよく見られましたが、久しぶりの現地観戦ということもあってなのか何だかいつも以上に速く激しく見えた気がしました。
最初のシュートは新潟。
7分、左サイドの至恩の仕掛けから最後は田上がミドルで狙いましたが上へ外れます。
この起点となった舞行龍からファビオへの楔のパスは震えるほど見事で綺麗なパスでした。その後2列目の新太が前向きにボールをもらい、そこから外へ展開してという開幕から見られるレイオフの形が今日も立ち上がりからありました。
12分、今度は松本のチャンス。
右サイドの鈴木から中央で杉本が受けるとフリーでミドルを狙いますがここは和輝が正面で抑えます。
一旦下がって受けてから再び前に出てボールをもらった杉本を新潟は完全に離してしまいました。
さらに14分には右サイドの鈴木が出したスルーパスからセルジーニョに抜け出されたシーンや、23分のセルジーニョにミドルを狙われたシーンと、少し対応が甘くなってヒヤリとさせられる場面がありました。
また、17分のマンジーがポストプレーから新太との連携で右サイドを突破してシュートまで行ったシーンを始め、いくつかいい楔がなかったわけではありませんでしたが、21分のマウロからのフィードがそのまま相手GKまで行ったシーンでアルベルトさんが手を横に激しく動かしながら怒っていて、恐らく「もっと急がずに左右にボールを動かせ」みたいなことだと思うのですが、堅くて且つしっかりボールにアタックしてくる松本の守備を前に思うように運べませんでした。
DAZN解説の梅山さんも「試合前の予想では新潟が保持して松本がカウンターなのかなというイメージは少しあったんですけれど、今のところ(前半飲水タイム時点)逆の展開と言っていいと思いますね」と仰っていましたし、じゃあそんな展開に対してもっと何が欲しかったかと言えば、オンラインスタジアムで解説されていた平澤さんが仰っていた「もっと秋山選手にボールが入った方が…楽しい、セクシーパスがいっぱい出てきますから」という話にも繋がっていくのかなと思いました。
それでも飲水タイム明け直後の26分には、秋山、マンジー、ファビオ、新太、さらに島田も前へ出て行く準備ができた状態の連動したプレスなど、球際の集中力や強度においていい守備が見られた中で、新潟は先手を取ることに成功しました。
33分、右から島田のCK。ファーサイドへ送ったボールを舞行龍が胸で落とすと田上がジャンピングボレー!先制!
何かそれっぽいかっこいいフレーズが付いて、インパクトの瞬間に時間が止まって閃光とか出ちゃったりしそうなめっちゃ画になるシュートでした。
またこのCKに至るまでの過程も見過ごせません。
中盤でのルーズボールを秋山が収めると一旦田上に戻して作り直し。田上からボールをもらった舞行龍がまた素晴らしい楔のパス。新太もこれをライン間でしっかり収めるとドリブルからマンジーに当て、これをマンジーはワンタッチで落とし、再びもらった秋山が右サイドに展開して新井が積極的な縦への仕掛けからCKをもぎ取りました。お見事な形でした。
しかし直後に大ピンチを迎えます。
35分、右サイドで杉本に粘られてボールを奪われると、エリア内で藤田が拾って中央へラストパス。フリーで待っていた高木がシュートも和輝が正面でキャッチしました。
先制してから間もない時間だったことを考えれば、ここで止めてくれたのは非常に価値のあるビッグプレーだったと言えそうです。
前半終了、1-0。
開幕から4試合連続で奪った先制点をしっかりキープして折り返します。

後半

ハーフタイムに松本の選手の方が早めに上がったのを見て「これは頭から動いてくるか」という推理がまんまと裏切られたのは気にしないとして、両チームとも交代なしで後半に入ります。
前からの積極的な守備によって押し込む形で後半は入ることができて、悪くない立ち上がりだったように思いますが、53分に中央で藤田のスルーパスから阪野に抜け出されかけて新井がギリギリカバーに入って事なきを得たという危ないシーンがありました。後ほどここは作っていただいた図を付けて触れます。ひとまず笛を吹かれなくて助かったシーンでした。
57分、新潟ベンチが先に動きます。
マンジー→ロメロ。新太とファビオの2トップでロメロが右SHに入ります。
デビュー戦のマンジーはゴールこそありませんでしたが、シュートシーンあり、周りとの良い連携もあり、さらに随所で安定したポストプレーも見せてくれたわけですが、平澤さんも「2トップの2人が2人ともポストプレーがうまいって楽ですよね」と仰っていました。
ファビオとのコンビは文字通りツインタワーのようでしたが、そんなツインタワーを見てふと思い出したのが2001年の黒崎さんと氏原さんの2トップでした。いや、たぶんもっと近い過去にも背が高くてポストプレーのできる2トップはいたと思うんですけど、どうもこのコンビが強い印象に残っていました。
脱線失礼。戻ります。
このくらいの時間になると序盤ほど新潟は松本の3バックに対して無理して行かずコンパクトにブロックを作って守っているように見えました。それもあってか守備は比較的安定したように思います。
そして61分。松本も1人目の交代で杉本→アルバロ・ロドリゲスを投入してきましたが、平澤さんも「ありがとうございます、替えてくれて。という気がします」と仰っていたように、ブロックを作って安定感が増して来ていた新潟にとってこの交代は追い風になってくれたように感じました。
杉本は前半から嫌らしい位置にポジションを取りながら新潟の守備の網を掻い潜りつつチャンスメークであったり自らシュートだったりを狙ってきました。それに比べてアルバロは前節ビハインドの状況で投入された際のポジションはWBでしたし、杉本より少しだけ外側を主戦場にしている印象で、且つオンザボールになってから恐さが出るタイプなので、それらの点から新潟としては守りやすくなったとまでは言えないかもしれませんが、多少恐さは薄まったように感じました。
67分新潟は2回目の交代。
至恩と足をつった舞行龍→善朗、史哉を投入します。善朗はそのまま左SHに入り、史哉が右SBに入ることで、新井が左SB、田上が左CBへそれぞれ移りました。
飲水タイムを挟んで68分には松本が2回目の交代。
塚川、阪野→久保田、高木彰を投入します。ポジションはそのまま久保田がボランチ、高木彰が最前線へ入りました。
久しぶりのスタメンだった舞行龍が足をつったように、このあたりから両チームとも前半からタフなゲームだったこともあり疲労の色が濃くなってきます。
自分達でボールを繋ぎながら運んで攻撃の形を作るということはこの時間帯に限らずこの日はなかなかうまくいかないことが多かったのですが、そんな中でも長めのパスを前線に送りFWががんばる、またそのセカンドボールに中盤が素早く寄せて回収しに行くということはこの苦しい時間でも繰り返しやれていたように思います。
それでも79分には左サイドの連携から久保田に抜け出されてシュートを許したり、80分、81分には連続して右サイドから裏を取られかけたりしますがいずれも和輝が見事なプレーでチームを救いました。
ここは本当にファインプレーでした。ここも後でちょっと触れます。
残り10分を切って松本は浦田→服部を前線に投入してシステムを4-4-2へ変更。新潟は足のつった新井→ゴメスを投入。お互い3回目の交代枠を使いきることで松本はパワープレー態勢、新潟はゲームの締めに入ります。
アディッショナルタイム4分を含めた最終盤。
松本はうまく服部を活かせないまま時間が過ぎていたのに対して、新潟は史哉のクレバーな守備で相手にカウンターを許さなかったり、ロメロ、新太、善朗、ゴメスなんかが絡んでコーナーで上手に時間を使ったりできました。
そして試合終了、1-0!
アルベルトさんも「難しい試合」「コントロールを失った時間帯も長かった」と仰っていたように苦しい試合でしたが見事に勝ち切ってくれました。

何事も積み重ね

 5失点からの無失点なのでまあ言わなくてもそりゃそうだろって話ではあるんですが、反省がちゃんと活かされていたんじゃないかというお話です。
 
まずは1枚目の図について。60分12秒です。
右サイドの鈴木から斜めのパスが阪野へ入ったところで舞行龍がしっかり寄せます。フリックでうまくセルジーニョへかわされますが、ここも島田がしっかり付いて行くことでカバーできています。そして横に運ぼうとしたところでしっかり絞っていたロメロが奪いました。トリプルしっかりです。
前節はこのバイタルに入るところでCBやボランチが寄せられてなかったり、さらにSHが絞り切れておらずにボランチの脇のスペースを使われたりという課題がありましたが、このシーンを中心に特に後半はそれが改善されていました。鈴木が持った瞬間の最終ラインがペナルティエリアの外まで出て下がり過ぎていなかった点も含めてナイスプレーでした。
 
 
もう1つは時間が前後してしまいますが52分35秒のシーンです。
後半のところで“後ほど”と書いた新井がファールすれすれでカバーしたシーンです。
正直CBが前へ出て行ったスペースを使われかけているので結果論だけで言えばダメなんでしょう。
それでも、中央で受けたセルジーニョのところにすぐに出て行ったマウロと、そこへ素早く寄せられる位置に絞ったところから少し次のパスの予測が外れながらもすぐに寄せ直した新太のプレーも前節からの反省が活かされたプレーという点で評価するべきプレーだったんじゃないかなと思い取り上げてみました。
繰り返しになりますが結果的にはやられかけているので、あの場合舞行龍が阪野へ付いて行くのか、新太が寄せた段階でマウロがもっと早く本来の位置に戻るのか、新井がもっと余裕を持ってカバーできるようにもう少し我慢して大外を捨てて中を締めるのかなど、解決策はいくつか考えられると思いますがもっと詰めないといけないのも事実でしょう。
同じようなシーンが訪れるかは分かりませんが、今後の楽しみにしたいと思います。
ちなみに新井のカバーについて平澤さんは「敵とゴールの間に入るのがセオリーですけど、その逆を行ったんですよね。ボールにそっちの方が近いからという判断だったと思います」と仰っていて、出来心の秋山さん同様「なるほど~」と一人なのについ呟いてしまいました。

勇気が大事

あと何と言っても和輝でしょう。
前半ちょっとファンブルがあってヒヤッとするシーンもありましたが、その後しばらくしてからですが、マンジーの治療で少しゲームが止まっている間に後ろのボールボーイにボールをもらって何か確認していたように見えました。こういうシーンは別に和輝に限らずたまに見ることではあるんですけど、そういう繊細で丁寧なところを見て改めてより一層後押ししたいと気持ちが入ってしまいました。
そうしたら後半。見事なセーブに勇気のある飛び出しを連発して勝ち点3に大きく貢献しました。平澤さんも「守備でリズムを作るってこういうことなんだなって」と高く評価していました。
その飛び出しに対して島田が大きく手を叩いて労っていたところや、試合後のコメントで新井や達也さんからアドバイスをもらったということなんかを見たり聞いたりしていたら、何だか泣けてきてしまいました。
和輝ナイスプレー、これからも頼んだぞ。

最後に

梅山さんは「ボールを使って相手を引き出して、引き出して空いたスペースを使っていくということ」が「この試合に限ってはちょっとうまくいってないかなという感じはありますね」と仰っていて、試合後のインタビューでアルベルトさんも「今までの試合と比較すると必ずしもいい試合が出来たとは言えません」と仰っていました。
確かにこれまでのゲームに比べると、ボールを動かして相手を動かして狙って作ったスペースを陥れるといったロジカルな攻撃は多くありませんでしたし、事実今季初めてオープンプレーからのゴールは奪えませんでした。
それでも、いや、それだからこそセットプレーを確実に仕留めて奪った勝ち点3は大きな価値があります。
そしてそんな勝ち点3が何より大事であるのと同時に、今後もこうしてやりたいことができなかったり、勝ち点を落としてしまったりすることだって(無いに越したことはないですが)あるでしょう。
でも、「目指しているところはすごく高いところにアルビはあると思うので、それができあがっていくのを見られるって幸せですよね」という平澤さんの仰っていた言葉は常に忘れず感じながら応援していきたいなと思いました。
くりはら
くりはら
鳥屋野潟ほとり出身のアルビレックス新潟サポーター。海外はアーセナル推し。Jリーグ、海外、2種、3種、女子、その他、カテゴリーは問わずサッカーが好き。ラジオも好き。某坂道グループもちょっと好き。