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オレラグ

臭いものにも蓋はしない【Review】第8節 東京ヴェルディ戦

2020年7月31日
こんにちは。
試合後のインタビューでアルベルさんは「このスポーツの素晴らしさが表現されていた試合だと思います」と仰っており、ヴェルディの永井さんも「お互いボールを大事にして攻撃をするという……ゲーム内容に関しては非常によかったかなと思います」と、恐らくお互いに似たスタイルである相手へのリスペクトも込めた上で、ゲーム内容自体を高く評価していました。
アルベルさんに至ってはヴェルディに対して「日本サッカーの目指すべき方向性はこういったものだと思います」なんて最大級の称賛を口にされていましたが、まあそれが是か非かはここでは置いておくとして、やはり考え方や好みのスタイルなどシンパシーを感じるところがあったのかなとも感じました。
実際見ていても非常に面白かったですし、見ている側には一番伝わりづらいところではありますが、肉体的以外の疲労も相当大きいゲームだったような感じがしてそれくらい濃密なゲームだったかと思います。
そんなゲームだったからこそ、やっぱり3ポイントが取りたかったですし取れるゲームだったという悔しさが募ります。

スタメン

 
うちは前節から5人の入れ替えがありました。
田上、ゴンサ、ロメロ、善朗が2試合ぶりということで、やはりうまくローテーションをしながらやっていこうとしているのがハッキリ見えてきた感じはあります。そして前節途中出場で新潟デビューを果たした中島が早速スタメンにも名を連ねました。
対するヴェルディは前節から全く同じメンバーで臨んできました。
久しぶりにスタメン予想が的中したのでほくそ笑んでいたのと同時に、予想しながらも1人2人くらいは替えてくるかなと思っていたので少しだけ意外でもありました。

前半

まず、試合前から新太と至恩の2トップか?とか善朗トップ下か?などメンバー表を見ただけでは読めないところがありましたが、蓋を開けてみると、ロメロに相手のアンカーである藤田をマークさせて、同様にゴンサと中島が井出と佐藤を見るような感じで、中盤の中央で相手との噛み合わせをよくするためにスタメン図のような4-2-3-1を新潟は採用してきました。
立ち上がりに関しては中島のFKや田上のロングスローでシュートやゴール前に迫るシーンも見られましたが、徐々にポゼッションで優勢に立ったヴェルディが試合のペースも掴んで行きます。
中央から左にかけて人数を割き、テンポよくボールを動かしてくることの多いヴェルディに対して、新潟も慌てずコンパクトにして対応してはいましたが、15分には左から右に展開されて大外の藤本からCBとSBの間を抜け出した端戸に通され、最後は若狭にシュートを打たれます。
さらに直後には新潟の前線でのパスミスを奪われて、間髪入れずに佐藤からライン間の井出に楔のパスを通されると、ドリブルからシュートというピンチも作られました。
それでも、23分のゴンサのインターセプトや27分の新太のシュートに至った中島のインターセプトなど、飲水タイム前後から少しずつ新潟も意図した形での守備ができるようになりそこからのチャンスも作れるようになってきます。ここは後ほど細かく。
また、ビルドアップに関してはヴェルディが速い切り替えで追ってくるためなかなか思うように動かせないところがあり、そもそも支配率の数字自体が僅差とはいえ今季初めて相手を下回った試合となったので全体としていつもより持てなかったところはありました。
それでも前半終盤。36分のロメロのシュートやアディッショナルタイムの左サイド深くからロメロが入っていったシーンのように、舞行龍が持ち上がって入れた楔を起点にチャンスも作れていました。
これは相手のインサイドハーフが1人出て来て2トップで守ってくるのに対して、ボランチが下がって3人にすることで舞行龍がフリーとなる形を作れていたという構図です。
そしてこのシーンを始めとして中島がよくボールに絡んでビルドアップで貢献していました。オンラインスタジアムで解説されていた慶行さんも何度か彼のプレーを高く評価する場面がありましたが、改めてほんとにいい選手が来てくれました。今後さらに楽しみです。
前半は結局お互いにゴールを奪えず。
0-0で折り返します。

後半

 
 
 
 
 
 
 
後半どちらもそのままスタートしましたが、開始10分を経過したところで両チームとも大きく動きます。
新潟はロメロ、至恩、善朗という2列目3人を一気に下げてファビオ、シルビ、島田を投入します。これによりファビオと新太の2トップとなり、左SHにシルビ、右に中島がスライドして島田がゴンサとボランチを組む形となりました。
2トップに関しては一応新太がやや下がり目で、それまでロメロが担っていた藤田の目付け役を引き継いでいましたが、ロメロほどハッキリ見ていたわけでもありませんでした。これはヴェルディ側の変化もあってのことだと思います。この辺も後ほどちょっと触れます。
ヴェルディの方は端戸、藤本→山下、小池というサイドで縦に突破できるアタッカーを投入します。慶行さんのコメントを使わせてもらうと「ヴェルディっぽくない選手」を試合のどこかでアクセントとして使う策は、これまでの試合でもよく見られるパターンでしたから「永井さんの中ではあらかじめ決まっている……プランの中にあった」交代策と言えるでしょう。
そんな仕掛けられるアタッカーを、特に山下のスピードを投入直後からガンガン使ってきたヴェルディですが、新潟もファビオという明確な攻撃の基準点となれる選手の投入によって攻撃の質は上がってきます。
63分には中島のカットからカウンター発動。右サイドの新太からのパスをファビオ、さらにシルビと連続で狙う決定機を作りましたが、ここはマテウスのファインセーブに阻まれました。
余談ですがこの直後のやつを含めて新潟のCKは主にファーサイドを狙ったものが多くありましたが、それに対してヴェルディの守りは完全なゾーンでした。
もしかするとヴェルディは前節の反省から、下手にマークを付けてもそこで競り負けたら本末転倒であり、それならいっそ完全なゾーンにしようと考えたか考えてないかは分かりませんが、とにかく『2、3人はマークを付けてくるので』というプレビューの予想は華麗に外されてしまいました。
さてその後、飲水タイムを挟んでヴェルディの方は69分に奈良輪→山本、さらに77分には井上、井出→福村、森田と最大5人で3回という交代枠を使い切ってきます。
するとその直後でした。
79分、佐藤の右CKにあわせたのは高橋。やられた…。
この日のマークは高橋に田上、平に舞行龍でやっていました。
ただ、このCKの前までにあった3回のCKではいずれも高橋は少し後ろに残るか、入っても中央までで、平の方が必ずニアへ走り込んでいました。
それに対して新潟はよりニアに近い方に立っている田上が、走り込んだ平に付いて行くことで蹴る瞬間にマークが入れ替わる形が続いていました。
それがこの失点シーンでは高橋もニアに走り込んで来て、新潟のDFは付いていけずに先に合わせられてしまいました。
どう動かれようが結局はマークに最後までしっかり付き切れていれば問題はないわけですが、そもそも意図的かどうか分かりませんがそれまでの3回のように蹴るタイミングでマークが入れ替わるという対応の仕方が続いていたのは果たして好ましい状況だったのか。臨機応変にやれていたと言えばポジティブなのかもしれませんが、実際それで本当に問題はなかったのか。
まあ思うところはいくつかあるのですが、この辺はまた自分も勉強してみます。
とにかくそれまでとは違ったパターンで仕掛けてきたヴェルディに対して反応が遅れてまんまとやられてしまったということでした。
得点直後にヴェルディはベンチから何か指示されているのがカメラに抜かれていましたが、恐らくここでハッキリ2ボランチのような形でブロック守備の強度を上げる策を施したのではないかと思います。
対する新潟は最後の交代枠でゴンサ、田上→ゴメス、大本というサイドから仕掛けられる選手を入れて何とか打開しにいきます。
83分には浅いラインの裏にファビオが抜け出しかけたり、86分には繋ぎのミスを奪ってカウンターから新太の決定機があったりと、リードしてからもラインを下げずに且つ丁寧にボールを動かそうとするヴェルディ相手なら何か起こる可能性は十分にあると思っていた中でアディッショナルタイム+3分。そんな望んでいた可能性が実際に起こってくれました。
左サイドから新井のロングスローをニアでDFが触り、中央でマウロが競り勝つと奥でフリーになって待っていたのは新太!同点!
前半から長いボールには積極的に前へ出て防ぎに来ていたマテウスがこのシーンでも出てきたことで、結果的にGKが留守にしたゴールマウスへ新太は落ち着いて蹴り込むことができました。
試合終了、1-1。
先制点が入る少し前にDAZN実況の中村さんが「こういうゲーム、勝敗を分けるのはセットプレーとかまた1つのミスとか……」なんて仰っていましたが、そんなセットプレーによって勝敗付かず、という幕切れとなりました。

外切りの守備

 
 
みんな大好き守備について。
前半のところで後ほどとしていた23分と26分のシーンを、作っていただいた図と共にちょっと触れてみます。
23分の方は、引いてボールを受けた藤本が平へ下げたところを善朗が勢いよくプレッシャーをかけたことで、急いで出さざるを得なくなった平の縦パスをゴンサが奪ってカウンターへ出たというシーンでした。
そしてもう1つ26分48秒頃のシーンでも、藤田から平に出たところでやはり善朗と、ここでは新太も挟んで出せるパスコースを限定した後、狙い通りゴンサがカットしました。
これら2つに共通してよかったのが善朗の外切りのプレスです。
平に入ったところで善朗は左SBの奈良輪がいる外側へのパスコースを消しながら(切りながら)プレスを掛け、パスを中央へ誘き出したところでハンター・ゴンサが狩るという連動した守備の流れがありました。
守備は中を閉めて(中央へのパスコースを消して)外へ追い出すというのが基本的なセオリーとしてよく言われるのですが、今季プレミアリーグを制したユルゲン・クロップ監督率いるリバプールがこの外切りの守備方法をベースに結果を出し始めたことで、2、3シーズン前から注目を浴びるようになったやり方です(もちろんその前からやっていたチームはあったでしょうけど)。
この試合に関して話を戻すと、プレビューでも書いた通りヴェルディは中央から左側に人数を割いて崩しにかかることが多いと書きましたが、実際この日も前半は62%、90分トータルでも60%の比率で左サイドから攻撃をしてきました。
その攻撃に対して素直に対応しようとすると、どうしても少し遠いところからの援軍が必要になりバランスが崩れやすくなります。
そこで、善朗の外切りのプレスによって直接マークに付かずとも1人(今回で言えば奈良輪)を無力化することによって局面での数的不利を作らず、さらにそこから掛けた人数を活かしてカウンターということを相手の左サイド(新潟の右サイド)の守備では狙いとしていたのではないかなと感じました。
また補足として、左に集まれば必然的に右が空いてくるわけですから、ヴェルディも何度か右の大外で待っている選手(主に藤本)へサイドチェンジを蹴ってくることもありました。ただここでの新井の対応が抜群でした。
サイドチェンジを先読みしてあらかじめ外へ出過ぎても中央やゴール前のカバーに間に合わなくなりますし、かといって遅すぎれば藤本に自由にやらせてしまいます。
この微妙な、出る・出ないというタイミングをよく見極めてプレーできていたと思います。新井が外へ出て行った際にしっかり下がって内側を埋めた至恩も含めいい守備でした。
ちなみにオンラインスタジアムの慶行さんの解説は試合後にアーカイブで聴いたのですが、慶行さんも外切りの守備について高く評価されていて、やっぱり間違っていなかったとちょっと嬉しくなりました。

相手視点で見える事

新潟の良い点、悪い点といった話ではなく、試合全体の雑感をあえてヴェルディ視点で振り返ってみます。
新潟がトップ下にロメロを置くことで前線は新太の1トップだったため、ヴェルディの若狭も残って後ろを3枚にするというよりも、藤田の脇に上がるかシンプルにSB的にふるまう事が多かったかと思います。
それが後半になると、小池と山下を投入して以降ビルドアップの際にSBが藤田の脇に上がる頻度が増えたり、またインサイドハーフも井出が少しボランチに下がることが増えたりして、ボランチの位置にアンカー+1、2人と人数を増やしている時間が長くなっていた印象でした。
これは恐らく藤田がマンツーマンで付かれて思うようにいかなかったのをサポートするためという意味合いもあったかと思います。このように中盤の底にアンカーだけじゃなくなった流れもあって新潟としては新太がロメロほど藤田にマンツーマンで付くことはしなかったのかなという気がします(当然ゴールを奪うためにハッキリと2トップにして攻めに出たかったというのもあるでしょうけど)。
さらにその後、交代を経て井上や森田が最前線に入ることでそれまで以上にゼロトップの色を濃くしてきましたが、そうすることで中盤中央がより流動的になったことによってワイドのアタッカーも俄然活きるようになったのかなと思います。
失点シーンに繋がる場面でも、森田と福村が左サイドでパス交換をしている間に佐藤が左へ流れたことで、瞬間的に田上vs佐藤+山下という数的不利を作られて山下に裏を取られてしまいました。
ちなみに先に書いたSBがボランチの位置に上がるプレーというのは、ボランチのサポートだけでなくワイドへのパスコースを広げたり、真後ろではなく内側から斜めにボールを渡すことで仕掛けやすくしたりするといった、ワイドを活かすための効果的な策にもなっていました。
こうしていろいろと攻撃の手段を見せてきたヴェルディですが、そんな相手に対して新潟はコンパクトさを保つであるとか、不用意にスペースを空けないといった、少しずつ改善されてきていたことを継続して、概ねよく守れていたようにも思います。
試合後にヴェルディの高橋は「相手がうちをすごく研究したのかは分からないけど、嵌め方も相当にうまかったし、パスを出すところが本当に少なかった」と語っていたように、中3日とはいえ新潟は非常に綿密に対策をして望んでいたように感じました。
対策の大きなトピックの1つでもあるトップ下・ロメロにマークを付かれていた藤田も「いつもに比べて自分たちのサッカーができる時間帯が少なくて……」や「前半から相手の24番に負けてしまう場面があって」と話していことからもそんなことが読み取れるかと思います。
あえて相手視点でいろいろまとめてみましたが、そうしないと実際に何が起きていたかであったり、それに対して新潟がどうだったかが見えづらかったりする部分が今節は特に多いと思ったので書いて見ました。

最後に

正直ここまで書いてきたことがどれくらい合っているのか自信のないところが今節は特に多いです。でもやっぱりサッカーって面白いし難しいなと改めて感じさせてくれたゲームでした。
だからこそ冒頭の繰り返しになりますが、そんないいゲーム、濃密なゲームで3ポイントを取って勢いや自信を深めたかったと思うばかりです。
8月中にはこういったゲームを勝ち切れるチームになりましょう。
くりはら
くりはら
鳥屋野潟ほとり出身のアルビレックス新潟サポーター。海外はアーセナル推し。Jリーグ、海外、2種、3種、女子、その他、カテゴリーは問わずサッカーが好き。ラジオも好き。某坂道グループもちょっと好き。