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オレラグ

絶賛進化中【戦評】第15節 アビスパ福岡戦

2020年8月31日

こんにちは。

いつどこで聞いたか定かではないんですけど、“選手はカードでも駒でもない”っていうどなたかの言葉を見てから、確かにそうだなと思ってこういう記事とかでは交代とかで枚という言葉を使わないようになりました。
もちろん、枚を使うことが=人をカード扱いしているといった悪意や何か他意があるわけとも思わないですし、実際普段の会話とかでは自分も自然と使うことはありますから、使うこと自体も何の問題もないと思います。
ただ、1人2人でも意味は変わりませんし、枚にすることで言葉を縮める効果もないですから別にわざわざ枚を使う必要もないなと思ってこういった記事では使わなくなりました。

ということをNegiccoのKaedeさんのツイートで思い出しました。
当然ですがKaedeさんも他意などを感じたわけでは全くなく、純粋にただただ不思議に感じてそういう質問を投げかけてみたんだとは思いますが、改めてああいう素朴な疑問っておもしろいし結構大事だなと思ったという話です。

それにしてもKaedeさんに限らずNegiccoのお三方がアルビレックスを応援してくれて、さらにサッカー自体にもどんどん興味を持っていただけるというのは嬉しい限りです。
新曲『午前0時のシンパシー』聴いていないという方はいないと思いますが、もしいらっしゃったらご一聴ください。毎度ですが今回も素敵で個人的にもおすすめの曲です。ぜひぜひ。

スタメン

さて、試合を振り返っていきましょう。
素晴らしい。ついに今季初の連勝でございます。もう1回、素晴らしい。
開幕戦以来、リーグ再開後では初めてのアウェーでの勝利ということで、5連戦part2を幸先よくスタートできました。さらにもう1回、素晴らしい。

ではまずスタメンからおさらいしておきましょう。
新潟の方はついにファビオが帰ってきました。実に7試合ぶりの出場です。中盤は至恩が2試合ぶりに戻り、新加入の福田が初のスタメンとなりました。また、ベンチにはファビオ同様、ケガで離脱していたロメロも戻ってきました。

対する福岡は久々に1週間空いたこともあるかもしれませんが、前節からの変更は菊池から石津に替えた1人だけでした。

前半

新潟は2分に新井からのパスを受けた新太がうまく反転して放ったシュートがあり、福岡は3分に中盤で拾った増山が遠くから思い切って狙ったシュートがありと、お互いに入りから1つずつ惜しいシュートシーンがありました。またこれもお互いにですが、前線からプレスをかける守備を行う中で、予想されていたことではありましたが、新潟の方がボールを持つ展開となります。

島田が2CBの左や中央に下りて相手の2トップに対して数的優位を作りながらビルドアップするのをベースに、中盤では福田、中島、至恩が流動的に動きながらボールも動かせていました。そして8分と10分には監督も期待していた通り、奥行きを提供してくれるファビオのポストプレーを起点として中島と至恩のシュートシーンを作り出すことも出来ていました。

ただ福岡も、フアンマを狙ったシンプルな長いボールやいくつかのカウンターでチャンスを作っていて、飲水タイム前後ではある程度ボールを持って新潟陣内に押し込む時間も作っていました。
解説の松岡さんも仰っていましたが「お互いにやりたいことっていうのはある程度示せている」展開であり、それはつまりお互いの特長が重なっておらずある意味噛み合わせがいい分、そういった展開になったのかなと思います。
それでも、終盤にかけてまた新潟がチャンスを作ります。
32分には中島が右サイドの裏を取ってクロスを上げ、ファビオ、至恩、新太と繋いで福田のシュート。
35分中央の福田から至恩を経由して左の荻原へ展開して、マイナスのパスに新太のシュート。
さらに44分には新井の鋭いクロスに新太がスッとDFの前に入って左足アウトでうまく合わせたシュートもありましたが、いずれも枠を捉えられませんでした。
お互いに特長が重ならず、さらに守備への切り替えも速く、特にボランチのフィルター機能がどちらもよく効いていた中で、それでもわずかにボールを持てて動かせていた新潟の方がチャンスをより多く作ることができていたということなのかなと思います。

ただ、両チームともゴールを奪うには至らず前半終了。
0-0のスコアレスで折り返します。

後半

どちらも選手交代なくスタート。
すると後半の入りは福岡がより勢いを持って押し込んできます。前半同様前からプレッシャーを掛けてくるのと共に、サイドに追い出したところをより狙いどころとして圧力を掛けて、さらに周りも素早く囲むことでセカンドボールを拾えていた印象です。
48分にはサロモンソンの左CKにフアンマのヘッドや、直後には右サイドで拾ったサロモンソンが自ら運んでミドルと立て続けにシュートシーンも作りました。

しかし、ちょっと嫌な出だしになっちゃったかなと思っていた矢先、ホットラインになりつつあるアカデミー出身コンビがゲームを動かします。
50分、左に下りた島田からの縦パスを内側に入っていた至恩がうまくターンして受けるとそのままエリア手前まで運びます。ドリブルから絶妙なタイミングで出したスルーパスに新太も素晴らしいタイミングで飛び出して左足!
先制!素晴らしい。

あのプルアウェイからの飛び出しも見事ですし、ニアを打ち抜いたシュートもイメージ通りというんですから、さすがストライカーです。
そして至恩も見事でした。
解説の松岡さんも「タッチの細かさ」に言及されていましたが、あれだけ細かいステップと細かいタッチをされるとDFは反応できません。
トラップで抜け出した後、そのトラップを除いてラストパスまで5タッチしていますが、最初にタッチしてから6歩挟んで2タッチ目。次は4歩挟んで3タッチ目。さらにまた4歩挟んで4タッチ目した後、最後は2歩挟んでラストパス。
流れとしては抜け出してタッチ、1・2・3・4・5・6・タッチ、1・2・3・4・タッチ、1・2・3・4・タッチ、1・2ラストタッチのパス。っていう感じ。
肝になったのはこの2タッチ目の後の4歩の3と4の部分。ここでちょっと細かく歩幅を刻んで調整しています。この細かい調整をすることで4歩4歩のリズムを見せておいて、最後に2歩でラストパスという意表を突いたリズムが最大限効果を発揮することになったのではないでしょうか。
しかも最後はシャレオツなノールック。ちょっとデブライネからスターリング、もしくはアグエロみたいな流れに見えました。最高です。

60分を過ぎた頃にどちらもベンチが動きます。
新潟は62分、荻原、中島→史哉、ロメロ。右SHにロメロ、右SBに史哉が入り、新井が左へと移りました。
荻原は1回新太を狙って低めの鋭いクロスを上げたシーンがありましたが、それ以外にも上げられそうなシーンはあるように感じました。ファビオも戻ってきたことですし、アーリー気味でも1回シンプルに上げてみてもいいかなと思いますし、それを見せることで縦の突破もしやすくなってくるはずです。期待してるぜ荻原。

対して福岡は65分、湯澤、増山、石津→輪湖、東家、城後と一気に3人を入れ替えてきました。左SBに輪湖、右SHに東家、フアンマとの2トップに城後が入り、遠野が左SHへ移ります。
しかし選手も替えつつなんとかギアを上げたい福岡に対して、新潟は上手にボールを動かしながら失っても素早く奪い返したり、ラインも高くコンパクトに維持することができていました。終盤に実況の福岡さんが「チャンスらしいチャンスを作れていない福岡です」と仰っていた通り、新潟は落ち着いて試合を進めることが出来ていたかと思います。
この60分~80分くらいの時間帯にもう少しチャンスシーンを作って願わくば追加点も取れていたら言うことなしだったでしょう。

80分、新潟は殊勲の新太、至恩→矢村、ゴメスを同じポジションに入れて守備のリスクマネジメントと運動量を担保します。
86分にはロメロが高い位置で引っかけてこぼれ球をゴメスが繋ぐと矢村がGKと1対1という決定機を迎えましたがここはポストに嫌われました。
ここでも追加点が取れていればやはり言うことなしだったでしょう。
福岡は82分に遠野→菊池、89分に田邉→鈴木と5人の交代枠を使い切って反撃を試みますが、実らず。

試合終了、0-1。
これで今季4回目のウノゼロで、群馬戦以外は全て1点差の勝利となったわけですが、この日はこれまでよりも随分危なげなくプレーできていて、落ち着いて見ることができました。
ナイスゲームであります。

1つの進歩

では、そんな落ち着いて危なげなく試合を運べたことに関連して、後半リードしてからのポゼッションでよかったシーンを1つ。

65分27秒頃~新井のクロスへ至るシーンです。
一連の流れでちょっと長めなので図も2つに分けていただきました。
全体の流れとしては史哉からの縦パスを少し下がって新太が受けます。ロメロが引き取って、再び史哉に戻ると一旦マウロまでやり直します。2トップの間に入った島田に縦パスが入ると、島田は斜め後方の舞行龍へ渡します。
舞行龍は左の新井に展開して、もらった新井がアーリークロスを上げますが残念ながらシュートにはいけませんでした。

まず1枚目の図、島田に入るまでです。
新太が少し下がって受けてサイドに流れることでCB(篠原)を釣り出すことができています。ロメロ、史哉と繋ぎ直す中で、その釣り出されたスペースをカバーするために下がったボランチ(松本)は一旦ラインを上げようとします。しかしここで内側(ハーフスペース)に入っていた至恩が、バックステップを踏みながら前線へ出ていくことでその松本を後ろに引っ張ることができていました。

続いて、マウロまで戻ったところから島田へボールが入ったところでもう1人のボランチ(田邉)が寄せにきます。さらに、近い距離でサポートしていた福田に対してさっき至恩に付いていた松本が寄せに行くのですが、さっき後ろに引っ張られた分、少し急いで行く必要に迫られてわずかですが余計なスプリントをさせることができています。要はここで松本・田邉に対して福田・島田・至恩の3vs2が作れていたということになります。

そして2枚目です。
島田から舞行龍を経由して左サイドの新井へ展開されるわけですが、舞行龍から新井に出るタイミングで、至恩が今度は左のハーフスペースに移動します。それによってCB(上島)を少し前に釣りだして気を引くことができているのと同時に、さっき島田へ出た田邉にも慌てて戻ることを強要することができています。
もう一方のボランチである松本も一旦スプリントで福田まで出た分、新井にボールが入った時には戻りが遅れており、ゴール前は篠原・輪湖vsファビオ・ロメロ・新太というこちらも3vs2の局面が作れていました。

このシーンから言いたいことはつまり、正しいポジショニングを取ることとボールの出し入れの重要性です。
この一連の流れの中で大きく相手に影響を及ぼしていた至恩が、結局1度もボールに触れていないことからもいいポジショニングに立つことの重要性は一目瞭然かと思います。もちろんこれは至恩に限らず、2トップの間に立った島田然り、近い距離でサポートしていた福田然りです。
そして、もし仮に同じようにいいポジションを取れていたとしても、ボールの動きが横パスだけだったり、縦パスでもゴール方向に対して出し手と受け手が完全な垂直な関係だったりした場合、相手もスライドや受け手に寄せるだけでよくなるので恐くもないですし、余計なエネルギーを使うこともありません。
しかしこのシーンでは、史哉から新太、マウロから島田といったブロックの中へ“入れる”パスと、新太からロメロ、島田から舞行龍といったブロックの外に“出す”パスがあることでスライドだけでは効かなくすることができていましたし、史哉やマウロが入れたパスでは、斜めに入れることで受け手は半身の状態で視野の角度を作れているので相手は入れ替わってしまうリスクを考えてガツンと寄せづらくなっていました。

これまでの試合でもリードした後にもっとポゼッションしながら自分達の時間を作れるといいということを書いた覚えがありますが、こういった形で落ち着いてボールを動かしながらゲームを進められたのは1つ進歩と考えていいのではないでしょうか。
それが出来た上で、あとはこのシーンで言えばシュートで終わるとか、それ以外でも追加点を奪うということができれば100点満点かなと思います。

ファビオと中盤の流動性

その他ちょこっと2つだけ。
ファビオの存在はやっぱりデカいですね。
前半の早い時間から早速ポストプレーでタメを作って攻撃の起点になっていましたし、内側に入った流れで至恩がそのまま前線の守備者になれば、ファビオが(もちろん新太も)サイドに下がってカバーをしてくれるプレーもナイスでした。
あと、多少困ってアバウトなボールを蹴ったとしても収めてくれることはもちろん、思い通りに収まらずとも、彼が競り合うことで相手のクリアも遠くまで飛ばしづらくなるメリットを改めてですが感じました。
次節以降テセも含めた熾烈なFW争いは大いに見物です。

もう1つ、守備の際にファビオがサイドへカバーしてくれると書きましたが、これは中盤でも言えることです。この日のメンバーで言えば福田と中島はSHもボランチも遜色なくできるプレーヤーですから、例えば内側に入っていた中島がそのまま中央の守備に入って福田が素早くサイドのカバーへ動くというシーンはこの日も何度か見られました。この辺のフレキシブルさは大きな強みとして今後も期待したいと思います。

最後に

ファビオが戻り、ロメロが戻り、新加入もみるみるフィットしたところで初の連勝を飾り、そしてテセも加わったこのタイミングで上位陣との連戦がやってきます。
わくわくしますね。やってやりましょう。

くりはら
くりはら
鳥屋野潟ほとり出身のアルビレックス新潟サポーター。海外はアーセナル推し。Jリーグ、海外、2種、3種、女子、その他、カテゴリーは問わずサッカーが好き。ラジオも好き。某坂道グループもちょっと好き。