ALBIWAY ALBIWAY

オレラグ

まだらメンタル【戦評】第22節ヴァンフォーレ甲府戦

2020年9月28日

こんにちは。

7777人という非常に縁起のいい、綺麗に揃った数字のお客さんが来場した試合でしたが、残念ながらハッピーな結果とはなりませんでした。
不安や心配が多く残った愛媛戦から中2日で、ある程度ポジティブな面が見られたというのは間違いありませんが、もうシーズンも折り返したということを考えれば、なんとしても3ポイントが欲しかったというのがやっている側も見ている側も一番感じていることでしょう。

なかなか煮え切らない日が続きます。

スタメン

さて、メンバーを確認していきます。
新潟の方は前節から5人の変更がありました。
まずは右SBに9試合ぶりのスタメンとなる田上。中盤では中島がボランチに移ったことで右SHにこちらは実に15試合ぶりのスタメンとなる大本が入りました。そしてトップ下のポジションに5試合ぶりスタメンの善朗が入り、前線にはテセという11人でスタートしました。

対する甲府は前節から大胆に9人を入れ替えて臨んできました。
泉澤と松田が展望記事の予想通りお休みだったということにちょっと自惚れ気分にもなりかけましたが、結局今回も予想スタメンは5人外しでした。強化指定の須貝がいきなりスタメンなんてそりゃ当たらないっすよ。

前半

スタメンを確認した時に3バックの可能性もあるかな、なんて思っていましたが蓋を開けてみると4-2-3-1でした。ビルドアップの際も相手が1トップということもあってボランチが下りることもそれほどせずに後ろは2CBで組み立てていました。
立ち上がりはやや長いボールも蹴る中で、対角のフィードで左サイドに張る至恩を狙った形が何度か見られ、5分には田上からのフィードを至恩が受けて、追い越した荻原が深い位置までえぐってシュートというチャンスも早々から作ることができていました。

さらに7分には相手陣内に押し込んだ状態から、福田が入れた縦パスを善朗がバイタルで受けて左に展開して荻原のクロスという崩しの形も見られました。
ライン間に顔を出して攻撃の起点となっていたトップ下・善朗はこの日随所に存在感を見せていました。昨年はこれが基本だったのでやってくれることは重々分かっていたことでしたが、改めて今後も継続的にこの形、彼の活躍が見たいと思わせるプレーぶりでした。

さて、甲府のビルドアップについてですが、展望記事でも少し触れたように本来は3バックの中央に位置する新井が前へ出て中盤を厚くする形で攻撃を展開することがこれまでは多かったのですが、この日に関してはそれほど前には出ず3バックのままでビルドアップを行っていました。もしかすると新潟がトップ下を置いていたのでわざわざ上がって捕まりに行くよりも後ろに残った方がいいという判断だったのかもしれません。

そういった相手の変化にも惑わされることなく、また素早い切り替えも含めてよく守れていた中で、最初のピンチは14分でした。
中央で至恩がカットし損ねたボールが中村にこぼれ、ドリブルで運んでからサイドに展開して荒木のクロス。ファーサイドで待っていた太田がボレーで狙いましたが荻原がブロックして枠の外へ逸れます。
さらにその3分後には福田のコントロールミスを荒木に奪われてスルーパスからラファエルに抜け出されますがここはオフサイドで事なきを得ます。
少し自分達のミスから連続してピンチを作られてしまいました。

ただ、崩されるようなシーンもなかったですし、逆にうちが攻め切るようなシーンも少なくて、良く言えば前半終了時に実況の岡田さんが仰っていたような「締まった展開」であり、ちょっといじわるに言えば地味な何とも甲府戦らしい展開となったような気がします。

前半終了、0-0。
守備をベースにしているのは共通としてありつつも、善朗を中心としてアクセントを入れながらボールを動かしてという点で言えば、新潟の方が意図したプレーを狙えているような感じはしました。

後半

お互いに選手を入れ替えてきます。
まず新潟の方は中島、テセ→島田、ファビオ。そして甲府の方は太田→ドゥドゥを投入します。
3人ともそれぞれ退いた選手と同じポジションに入りました。

すると開始早々1分も経たないところで先にチャンスを作ったのは甲府でした。
右サイドのスローインをラファエルがヘッドで流すと、カバーに入ったマウロがクリアミス。ドゥドゥに抜け出されて折り返しを中山がシュート。しかしここは田上のナイスカバーでしのぎました。
さらに47分には新潟陣内で中塩が奪うと、大外の荒木を経由して山田に裏のスペースを突かれます。クロスをラファエルが合わせたところはなんとか舞行龍がブロックしましたが、甲府の伊藤さんが試合後に悔やんでいたように、後半の立ち上がりは甲府が前線から激しいプレスを掛けて押し込みチャンスを作っていました。

その後新潟もサイドからの仕掛けでチャンスを作り試合のペースを取り戻すと、60分を経過する前にお互い選手を入れ替えます。
新潟は大本→シルビ。甲府はラファエル→宮崎。どちらも攻撃のテコ入れを図りました。すると先に均衡を破ったのは新潟でした。

63分、左サイドの至恩から間に立った善朗へ入れて、ワンタッチで外の荻原へ渡します。荻原はこのボールをダイレクトでゴール前に供給。低く鋭いボールはクリアしようとした新井に当たってゴール!
ついに荻原のクロスがゴールに結びつきました。
スリッピーなピッチ状態も意識しつつ、何といってもあのキックです。
対峙するDFの足が届かないように外から曲げることと、さらにワンバンドしてDFもクリアしづらいボールを供給できました。

「100点といえるクロスではなかった」と本人が言っているのは、恐らく理想としては新井涼も触れず、且つGKも出られないところにカーブさせて入れてファビオへピンポイントというのがあったのだろうと思います。しかしそれでも中村俊輔なんかも時々見せるような、蹴るというよりも切るといった表現が適切な素晴らしいクロスでした。SBをやっていた人間からするとあんなクロスを上げてみたい人生だったとつくづく思います。
また、荻原が受ける前に中間スペースで引き出したプレーもさることながら、さらに少し戻った場面で奪われかけたところを素早い反応でカットした善朗のがんばりも忘れてはいけないでしょう。ナイスプレーでした。

さて、ついに破った甲府ゴールでしたが、その優位に立った時間はかくも儚きものとなってしまいました。
たった2分後の65分。
一旦は相手の攻撃を寸断してマイボールにしますが、福田の横パスを荒木にカットされてラストパスをドゥドゥに押し込まれてしまいました。同点。
荒木も「後ろから繋いでくるのは分かっていたので」とまさに狙い通りに仕留められた失点でした。

さらにその2分後の67分にはカウンターを食らいます。
右サイドからドゥドゥに抜け出されてゴール前へのパス。ボールをカットしてそのまま上がって来ていた新井涼がスルーすると中山のシュート。ここは田上がブロックして小島が何とか抑えました。
甲府の勢いと抜け目のなさはさすがでしたが、何とか逆転は許しません。

飲水タイム明けのタイミングでまた両チーム動きます。
新潟は善朗、荻原→ロメロ、新井。残り15分ちょっとある中で5人の交代枠を使い切ってきました。
対する甲府は中山→武田。これで甲府は前線の3人を全て入れ替えた格好となりました。

少しずつオープンになってきて、中盤でボールが落ち着かず奪い合う時間帯があった中で、甲府の方は84分に荒木、中村→野澤、ハーフナーマイクを投入してきます。恐らくハーフナーを活かして攻め立てる算段だったとは思いますがミスがあったり新潟のプレッシャーもあったりして、1つCKから武田のヘッドというシュートシーンがありましたが目ぼしいチャンスはそれくらいに終わった印象です。
逆に最終盤になると新潟がセットプレーを取りながら押し込む展開を作りますが、こちらもやはり決定的なチャンスまでは作ることができませんでした。

試合終了、1-1。
痛み分けという言い方がベストなのでしょうけど、やっぱりホームであり尚且つ順位も下であるうちの方がより痛みは強く残る引き分けだったのかなと思います。

それがテンポを作る

今回取り上げてみたのはビルドアップについてです。
もっと近場で何度もパス交換をしてもいいのではないかなということで、図にしていただいたのは前半の37分です。
マウロから舞行龍へボールが渡り、舞行龍は少し前を窺ってから左に運んで一旦至恩へ預けました。

ここでもっとパス交換をしてもいいのではないかというのは、1つ例として挙げるとマウロからもらった舞行龍はすぐに一旦福田へ入れてワンツーをする感じで左に流れてもう1回ボールをもらうといった感じです。

この直後にもマウロが田上へ出すのをやめて少し持ってから中島に出したり、41分にも右からボールをもらった中島が左の舞行龍へ出すのをやめてもう1度右に戻したりといったシーンがありました。いずれのシーンでも受け手である選手に対して相手は近くに立っているのでリスクはありますし、そこを回避するという選択は何も間違っていません。
ただ、近くに立っているからこそそこへつけることで相手を寄せさせる、ブロックを動かすという選択肢を取れるといいような気がしました。
それは針の穴に糸を通す時、糸を湿らせたりよじってクセをつけたりするような作業をもっと丹念にやって欲しいということです。

後出し

こう思った経緯から説明すると、まず今節もやはり最近の試合同様相手ゴール前ラスト3分の1でどう崩すか、どう攻め切るかという課題が残ったように思います。
ただ、今節は善朗がトップ下としてアクセントとなり1つの形を見せてくれました。それで考えた時に、ラスト3分の1の攻略はそこでどうするかもそうですが、その前段階でもっとボールを動かすことで相手を動かして、よりうちにとっていい状況を作った上でボールを前へ供給することがやっぱり大事なことではないかと思ったからです。

図にしてもらった37分の結末もそうですが、鋭い楔がライン間や中央の選手に入ることは時折ありました。
ただそれらは、中央から一気に急所を狙い過ぎているような気がして、それでは出し手も受け手もより高難度な質のプレーを求められ周りも呼応し切れなかったり、相手もボールをコントロールしている間に寄せてきたりしてしまいます。
だからこそ、もう少し後ろでワンタッチやツータッチを使いながら近い選手とのパス交換や、右から左、左から右、一旦当てて落としてといったことで相手を細かく動かして、縦パスを入れやすく、そして受けやすくすることが崩すにしても攻め切るにしてもよりよい状況を作るためには必要に感じました。

そして今回こうして取り上げてみたことは、新しいことではなくてもう1度意識し直すだけでいいことだとも思います。
丁寧に繋いでくる新潟に対して磐田であり北九州などが高い位置からプレスを掛けてビルドアップをさせないという攻略をしてきました。
そういったことに対してテセでありファビオを目印にもう少しダイレクトにシンプルに前へ送ろうということをやっていたのだろうと思います。
しかし、最近はその意識が強くなるあまり淡泊な形が多くなってしまっていた気がしました。

ビルドアップの形にしてもSHが内に入ってSBが高い位置を取ってというのが基本としてやっている中で、今節は最近の試合に比べてSBが内側に入ってSHが幅を取ってという形も効果的にできていました。これは選手の特長によって使い分けられるべきものですが、やっぱり毎試合その場その場で相手を見ながらどちらも出せるというのが理想でしょう。そしてこれは時々目にすることをそのまま拝借することになりますが、サッカーは後出しじゃんけんのできるチームが強いということです。

最後に

後ろで何度もパスを交換している状況というのは、特に今節の甲府のような相手であれば、持たされているように見えることもあるでしょう。ただそれでも、原点回帰というほど遠くまで来てもいないですし、そんな大仰なことでもないですが、もう1度一見何でもないようなパス交換を意識してもいいのかなと思います。それが結局フックになり得てくるように思います。

そしてそれは今節の失点シーンにも通じることです。
もちろん出しどころの選択や、パスの質など反省しないといけないことはあるでしょう。ただ、あそこで簡単に前に蹴らないとかボールを簡単に捨てないという意識であり選択をやめてはダメでしょう。そして失うことを恐がってもダメでしょう。
ここでそんなことになったら前半戦やってきたことは前半戦だけのためにやってきたことになります。そんなくだらない話しはありません。

改めて自信を持って、強気に積み上げていることを次節以降も堂々と見せつけてほしいと思います。

くりはら
くりはら
鳥屋野潟ほとり出身のアルビレックス新潟サポーター。海外はアーセナル推し。Jリーグ、海外、2種、3種、女子、その他、カテゴリーは問わずサッカーが好き。ラジオも好き。某坂道グループもちょっと好き。