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オレラグ

甘くない from bee【戦評】第26節 アビスパ福岡戦

2020年10月16日

この日のゴールはセットプレーとセットプレーからのカウンターということで、サッカーの中でも動きやすいシチュエーションでお互いが取りあうこととなりました。
それくらいどちらも特長を出し合って拮抗したゲームだったと思います。
フラットなサッカーファンからしたら非常に見応えのあるグッドゲームだったでしょう。
ただこの日のホームチームを応援していた人間からすれば、見応えはあっても結果的にグッドゲームではありませんでした。

福岡に対して新潟も決して力が劣っていたとは思いません。
それでもベッケンバウアーの有名な言葉の通り「強い者が勝つのではなく、勝った者が強い」ということでしょう。

悔しい悔しい6試合ぶりの敗戦です。

スタメン

新潟の方は前節からスタメンの入れ替えなしで臨むこととなりました。3連勝中ということもあっての判断でしょう。ちなみに2試合続けて同じ11人をスタメンに送り出すのは今季2回目です。

対する福岡も前節からの変更は1人のみ。
左SHを石津から福満に替えた以外は前節と同じ11人でスタートしてきました。

前半

開始早々島田の楔からファビオが抜け出しかけた場面こそありましたが、最初のシュートは福岡でした。
4分、右サイドのスローインから増山がキープして落としたボールをサロモンソンがゴール前へ。裏を取ったフアンマが収めてシュートはギリギリ枠を逸れました。
直後に新潟の選手から「レフェリーあれはファールスローよ」という声が聞こえましたが、それと同時にスローインの位置もかなり前だったように思います。ただそこでちょっと新潟は対応が甘くなり、最後はボールウォッチャーにもなってしまいました。大前提としてジャッジに不満は残りますが、それでも集中を切らしてはいけない場面でした。

7分、新潟のファーストシュート。
小島からのビルドアップをまず左で作って福田が縦パスのレシーバーになると、史哉と島田のパス交換から中央へ運びます。
そこから史哉がライン間に入った中島へ縦パスを通して右サイドでボールを動かすと、今度は島田から至恩へ大きなサイドチェンジ。
至恩は得意なカットインからミドルを狙いましたが上へ外れます。
ただ左から右、右から左と長短のパスを使いながらピッチを広く使ってフィニッシュまで至るいいプレーを立ち上がりから見せました。

お互い1つずつシュートの形を作った後は、新潟がボールを動かそうとする中で福岡は奪ったらシンプルにフアンマへ送る形で少し押し込み、ゴール前まで迫るシーンも作ります。
12分にはクロスのクリアを前が拾って2次攻撃。
遠野、福満との3人のパス交換の後、福満が遠野とのワンツーでエリア内に侵入して折り返し。マイナスで待っていた増山にフリーで打たれたシュートは小島のナイスセーブによってしのぎましたが、その直後にゲームは動きました。

14分サロモンソンの左CK。中央を抜けてファーサイドへ流れたボールを福満が折り返し最後はグローリヘッド。失点。
ゴール前で奥に流れてから手前に折り返されてと、あれだけ揺さぶられたら対応するのは難しくなります。そう考えるとニアや中央のところで未然に跳ね返しておきたいところでした。

飲水タイムの時点でポゼッションは62vs38と予想通り新潟がボールを持つ展開が続きますが、シュートは2vs5ということで、なかなかシュートやその前の縦パスを入れられない時間が続きます。
それでもその飲水タイムを挟んで29分、善朗の右CKにファビオがヘッドで合わせたシュートは残念ながらGKにキャッチされてしまいますが、このあたりから少しずつボールの回りもテンポよくなってきてリズムが生まれ始めました。

33分には序盤のチャンスのように、ビルドアップで左右に動かしながら運んで田上のクロスまでいき、そのあとのセカンドボールも拾って、さらに失ったボールもすばやく回収して厚みのある攻撃を見せます。
34分には島田のサイドチェンジを善朗が左サイドで受けてクロス。クリアを中島がシュート。ブロックされたのをもう1度拾って今度はクロス。ファーサイド善朗が合わせましたがDFにクリアされてゴールとはなりません。
ただこの時間帯は押し込んでゴール前に迫ると共に、福田やファビオが素晴らしい守備への切り替えで波状攻撃に繋げることが出来ていました。

さらに終盤には、至恩のパスを受けた田上の強烈なミドルシュートがあり、アディッショナルに入ってからは至恩の突破で得たFKから中島が鋭いボールを供給してゴールに迫りましたがいずれも枠の外へ外れます。

前半終了、0-1。
1点のビハインドを前半の内に取り返すことはできませんでしたが、徐々に自分達のリズムでやろうとしていることを自信を持って表現できているようには見えました。

後半

新潟が先に動きます。
史哉→荻原、左SBを入れ替えてきました。この交代によって前半は基本的にSHの至恩が外に張ってSBの史哉が内側という関係を、SHの至恩が内側に入り、SBの荻原が外に張る仕様へ変更しました。

後半も前半から引き続き新潟がボールを持つ展開で、セットプレーがあったり荻原がクロスを上げるシーンがあったりもしますが大きなチャンスまでは作り切れません。
逆に福岡の方は54分、サロモンソンの右CKからセカンドボールを拾って最後は福満という決定機を作りましたが、ここは小島のナイスセーブで事なきを得ました。

すると56分、新潟が次の一手を打ちます。
善朗、中島→ロメロ、大本の2人同時投入を行いました。前節と同じような時間帯に同じトップ下と右SHという2人を入れ替えたわけですが、今節はゴメスではなくロメロを先に投入してきました。

左は荻原が入ってクロスを上げるシーンを作り、右は大本が投入直後から連続でプレスを掛けたりドリブルで運んだりして、外側からチームにスピード感が出てきた中でそれを逆手に取るように58分には至恩が内側からスルスルっと運び出すシーンも作り出します。
福岡としてはちょっと前半とは守備の際に気にするポイントが変わってきたり、また61分にはクリアをフアンマが収めてカウンターに行こうとしたところを舞行龍にカバーされて押し上げられず、自陣で我慢する時間が続くことになっていました。

そして迎えた待望の瞬間です。
64分島田の右CKからファビオがヘッド!GKのファインセーブに遭いますが、すかさずつめたのは至恩!同点!
メモには「同点!よし!いくぞオラ!」と殴り書き。入った瞬間ノートとか太ももバンバン叩いちゃって右手小指の外側が痛い痛い。
まあとにかくそれくらい興奮してしまいました。
押し込んだ時間帯の中で、福岡の左サイド深くから2回あったスローインをロメロが素早く寄せて引っかけて取れたCKでしたから、いい守備からの同点弾でした。素晴らしい。

さあ、同点に追いついた新潟はさらに攻めます。
67分、福岡がセットプレーの2次攻撃から最後はグローリのヘッドも小島のナイスセーブでしのぐと、そこからカウンター。
福田が中央から運んで左の大本へ展開。得意の縦への仕掛けから左足のキックは浮いてしまってゴールを大きく越えてしまいました。
さらに69分にはロメロのキープから至恩がスイッチして中央から運び出し、左サイドのファビオへ渡してCKを獲得する速攻も見せます。
あとで振り返ればこのあたりのオープンな展開が続いたところで取りたかった、というか取らないといけなかったのかなと感じました。もしくは飲水タイムまでを目途に、多少極端にでもゆっくりしてボールを動かしつつじわじわ追い込んで終盤に勝負を掛けるという展開でもよかったのかなと思いましたが、まあこれは結果論です。あとからは何とでも言えるのです。

71分、島田の左CKはGKに弾かれ、遠野と福田が競ったボールが増山に拾われて一気に運ばれます。遠野の斜めのランニングによってフリーとなった福満へ丁寧なラストパスが入ると、少し足下に入りながらもゴールに流し込まれました。失点。
守備対応についてですが、増山に運ばれて遠野が斜めに走りこんだところへ大本は付いて行く判断をしましたが、あそこはそのまま中央に残って福満を消しておくべきだったのかなと思います。
遠野に抜け出されたとしても抜け出すコースとしては右に流れるような感じでしたから、GKと1対1になったとしても恐らくシュートコースは右も左もある福満に比べればそれなりに限られたように感じました。
まあどちらにせよどっちかは捨てることになりますし、GKとの1対1になることは避けられない選択なので難しいといえば難しいわけですが……。
あとついでですが、プロに入ってからはあまり印象的な活躍は見られていない印象でしたが、さすがは高校時代“ヒガシのクリロナ”と呼ばれていた選手だけあって増山のドリブルは非常に速かったです。彼ももう6年目なんですね。

飲水タイムを挟んで福岡の方は、76分に福満→石津、2分後に増山→木戸と、この日梅山さんも何度も称賛されていたように攻守にわたって献身的な働きを見せていた両SHを入れ替えます。
さらに82分には遠野、サロモンソン→三國、湯澤を投入します。
湯澤はそのまま右SBとして入りましたが、三國を投入したことで5バックへ移行してハッキリと逃げ切りを図ります。
対して新潟の方は80分にマウロ→テセを投入。
田上をCB、大本を右SB、ロメロを右SHにスライドさせテセとファビオの2トップにします。さらに85分には福田→ゴメスを投入してゴメスは実質トップ下的な感じで4-1-3-2のような配置で前線に人数を掛けます。

しかし試合後にアルベルさんが「残り15分のところはサッカーをさせてもらえませんでした」と仰っていたように福岡は上手にコーナーでキープしたり、時には治療してもらうために座ったりしてしたたかに時計の針を進められてしまいました。
アディッショナルタイム入ってからの木戸が倒れ込んだシーンの運用については勉強不足もありますが疑問の残るところではあります。ただSNSで随分福岡への文句が飛んでいたようですが、5-4-1で守備固めをしたチームの戦い方を考えれば残り10分くらいに福岡が実践したプレーはどこでもやるでしょうし、特別汚いプレーもなかったように感じました。

試合終了、0-1。
大一番落としました。

福岡の牙城崩せず

福岡のコンパクトに連動した守備を前に、思うように運び出せないシーンが多くあった中で特に印象的だったところを2つ。

まず35分50秒~36分00秒頃。
ビルドアップから舞行龍が少し持ち出して中央の福田へつけます。そこからワンツーのような形で舞行龍に戻りますが、内側に入った田上には出せず島田へ戻します。
島田から再び福田に入れて、今度は内側にポジションを取っていた史哉へ渡しましたが、少しパスがズレてしまいコントロールが大きくなったところを前に奪われたというシーンです。

(動画のスタートは試合時間の表記がある画像からです。)

まず福田からの折り返しを舞行龍がもらった時点で、田上に対して福満がしっかり絞って付いています。
さらに島田から福田に入ったところで外へ流れた舞行龍へフアンマがしっかり付いて行っています。
そして一連の流れの中、ライン間でボールを引き出そうとする善朗を警戒しつつ、史哉のコントロールが大きくなったのを見て前は素早く寄せて奪っていました。
新潟としては相手の2トップに対して後ろを3人にしたり、福田に入れて相手のボランチを引っ張ってスペースを作りつつ細かく動かしてそのスペースを使おうとしたりしてはいます。
しかし先に挙げた3人を始め、福田に2度強くアプローチしてきた松本や史哉に寄せた増山、さらに中を意識しつつマウロへ出る準備をしていた遠野という2トップ+4MFの距離感と連動したリアクションを上回ることができませんでした。

もう1つが時間前後しますが23分01秒~12秒頃。
ビルドアップから福田が中央で受けて、横に運びながらパスコースを探すも見つからず一旦戻します。ボールをもらった島田からマウロへ展開されると、少し運んでから右の中島へ渡しましたが、そこから裏へ抜けようとした田上へのパスは残念ながら引っかかってしまったというシーンです。

(動画のスタートは試合時間の表記がある画像からです。)

ここでも福田が横にドリブルする中で動き出した田上を見て前が福満との間を閉めます。
さらに福田が切り返した瞬間に今度は増山がスプリントで戻って史哉へのパスコースを消しています。
そしてマウロがボールを受けて運ぶところでも、前が田上への縦パスを消しつつ左にスライドしていつでもカバーができるポジションを取っていました。

新潟はさっきのシーン同様に、福田に入れて相手を引き出す餌をまいていますし、福田が一旦止めて下げたところから島田もワンタッチで素早くマウロに展開することである程度ゆとりを提供しています。さらに受け手のマウロも少し内側にドリブルを入れて福満を自分のところに引っ張ってから中島へ展開するという、相手の陣形をどうにか動かして崩そうという意図が見られました。
それでもやっぱりコンパクトな距離感と、さらにボールホルダーへの寄せやスライドのスピード感が福岡は相当速く、新潟はなかなか効果的に縦パスを供給することができませんでした。

ある程度自分達の取り組んでいること、やりたいことを出せたり、出そうとプレーできていたりしたからこそ、余計福岡の強さであり、まだまだブラッシュアップしないといけないということを強く思い知らされたような気がしました。

積み上げ

後半のところでも書きましたが、選手を入れ替えてスピード感を加えることで、サイドからの突破を意識づけて逆に緩くなりやすい内側を仕掛けることや、もちろんその逆でもいいですが、様々なバリエーションやアイディアを時間帯によって使い分けることはもっと精度を上げたいところです。
また理想としては、同じメンバーでもいくつかの選択肢を状況によって使い分けられるといいのだろうなとは思います。

あとそういった選択肢の中で1つ、後方から中長距離のパスを前線にスパッと入れて起点を作る形は良かったように感じました。
前半特に小島からのキックでいくつかあったのですが、ファビオが一旦残って相手のラインをステイさせてから手前にできたスペースに自ら下がって鋭く飛んでくるパスを受けるというものです。
何度か似たような形が見られたので恐らくセットプレー的に練習しているものなのかなと勝手に推測しましたが、ちょっと今後も気にして見てみようと思いました。

雑感

良かったこととそうではないことを1つずつ。

まず良かったことですが、この日は(この日も)小島が何度も素晴らしいセーブを見せていました。あんまりGKである彼が目立つ試合というのはチーム的に喜ばしい展開ではないのですが、とにかく頼もしい限りです。
特に前節もあったパンチングが弱くてピンチになってしまうという少し前から見られた課題が、この日はしっかり遠くに飛ばすことが出来ていましたし、それがカウンターの起点になることもありました。
今後も大いに期待したいところです。

もう1つそうでないことですが、攻撃のセットプレーについて。
後半最初にあった中央遠目からの善朗のFKは梅山さんも「あれ?あれ?それだったけ?といった感じでしたね」と仰っていたように短く繋いだもののイマイチ形が見えずに終わってしまいました。
また、結果的に2点目の起点となってしまった左CKも、最初島田が蹴りに行って、ベンチからコーチが出て来て何か声を掛けた後、至恩がボールの方に向かって蹴ろうとしたのですが結局やめて島田が蹴っていました。
どういったコミュニケーションがあったのか定かではありませんが、ちょっとモヤモヤが残ってしまいました。
同点弾はセットプレーから生まれているので決して全てが悪いわけではないのですが、被カウンターへの対応も含めてさらなる改善やデザイン、意思統一が求められるのではないかなと思います。

最後に

ファビオとマンジーが不祥事により活動禁止となってしまいました。
こればっかりは擁護できません。
勝った負けたでサポーターやスポンサーさんが付いてくれたり離れたりする分にはまだいいです。試合に勝てばいいのですし(それが大変だということは承知の上)、負けたって戦い方、姿勢に共感してくれることもあるわけですから。
しかしこういったことは一気に信頼を落としてしまってそれを取り戻すのは非常に大変で、どうしたって時間を要するものです。もちろん時間が経てばそれでいいというわけでもありません。

とにかく今は一に反省、二に反省、三四も反省、五も反省です。

くりはら
くりはら
鳥屋野潟ほとり出身のアルビレックス新潟サポーター。海外はアーセナル推し。Jリーグ、海外、2種、3種、女子、その他、カテゴリーは問わずサッカーが好き。ラジオも好き。某坂道グループもちょっと好き。