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オレラグ

たぶん狙った形、強さの証明【戦評】第35節 ツエーゲン金沢戦

2020年11月23日

こんにちは。
「イブラ・ゴメス」
自らを神と表現してしまうイブラヒモビッチという人物のスケールと、謙虚で真面目な彼の人物像は正直似ても似つかないわけですが(そもそもイブラと同じスケールの選手などいませんが)、アウェー京都戦と今節の金沢戦のように大事な場面で勝利を手繰り寄せるゴールを決めてくれたり、何より常に先頭に立ってチームを引っ張ってくれていたりという点で言えば、そんなあだ名も納得できる気がします。

アルベルさん、そのあだ名いいっすね。

スタメン

さて、今節もスタメンから。
新潟の方は前節からの変更が1人。
史哉がベンチスタートで大本が2試合ぶりのスタメンということで、ゴメスが本職である左SBに入り、至恩も同じく得意の左SHへ戻り、大本が右SHに入りました。

対する金沢は前節からの変更が3人。
まずは巧が契約の関係で出場できないということで、最近SHを務めていた下川を右SBで起用。そして前節はルカオ、杉浦恭というコンビだった2トップを2試合ぶりに山根、加藤というコンビに入れ替えてきました。

前半

立ち上がりはやはりお互いにリスクをなるべく抑える姿勢で、しばらくボールが落ち着かない展開で推移しますが、その中で最初のシュートは新潟でした。
4分、左サイドから至恩が抜けると、中にカットインしたところで倒されてFK獲得。これを中島が狙いましたがGKキャッチ。
さらに6分には、落ち着いたビルドアップの流れからマウロが鋭い縦パスを供給。善朗がそれを受けるとうまくDFをターンでかわし左へ展開。仕掛けて取ったCKはシュートまで至りませんでしたが、組み立てから1ついい攻撃の形も作りました。
また、いずれのシーンも直後の相手ボールになった際、素早い切り替えでプレス、または帰陣によって相手の攻撃を摘み取ることもできていました。

10分頃になると新潟が少しずつポゼッションをする時間も長くなってきて、試合自体が落ち着いてきます。
とはいえ金沢としてもポゼッションを相手にされたとしても、それはある程度想定されていたことでしょうし、事実狙いを定めて新潟の縦パスをカットしたり、中盤で素早く囲んで奪ったりというシーンもありました。
しかし奪っても思うように次の展開へ繋げることができないためにペースとしてはやや新潟という印象だったかと思います。

22分、自陣左サイドで至恩が奪ったのを起点に、大本、善朗、テセ、そして再び至恩とボールが繋がります。左サイドやや内側でもらった至恩はそこからドリブルで仕掛けていって、華麗なタッチでDF1人をかわしてからパス。
このパスを中央で待っていた善朗がダイレクトでシュートもDFのブロックに遭いゴールとはなりません。
それでもテンポのいい繋ぎからシュートまで持っていきました。

ここで飲水タイムが入りましたが、それが明けて以降の前半の後半、つまり第2クォーターにあたる部分は、そんな4分割した中で一番不穏な雰囲気の漂う時間帯だったように思います。
ポゼッション率自体は前半終了時点で62%と持ててはいましたし、終盤の42分には、左サイドを抜け出した至恩のクロスから善朗、テセの連続シュートという惜しいシーンもありました。
しかし、中盤で繋ごうとする最中に簡単なミスが散見されるようになり、そこから金沢に攻撃の糸口を作らせてしまう格好となります。
シュートは結局40分にあった左サイド本塚のクロスに島津がヘッドで合わせたシーンのみでしたが、最もヒヤッとしたのが26分。
一旦奪いかけたボールをすぐに島津に奪い返されて縦パスが加藤に出ます。抜け出した加藤はさらにフリーの山根にラストパスを送りますが、利き足とは逆の右足へマイナス方向に入ったためボールは収まらず何とかクリアしてしのぎ切りました。

前半終了、0-0。
ポゼッション率は38vs62、シュート数も1vs8と数字的には結構圧倒していましたが、ミスとそこからの速攻という展開が増えたことで、あまり自分たちのペースということは実感しづらいものとなりました。

後半

お互い選手交代はありませんでしたが、新潟は後半の頭から中島と善朗の位置を入れ替え、中島をトップ下、善朗がボランチという並びに変更していました。

すると開始早々中島がドリブルでスルスルっと抜け出しFKを獲得します。自ら狙ったこのFKはゴールとはなりませんでしたが、高い位置に移った中島が早速効果的なプレーを発揮します。
一度和輝のパスミスからシュートまで持っていかれたシーンこそありましたが、冒頭のFK以外にもゴール前へ迫るシーンを作るなど悪くない入りができていた中、待望の先制点を早い段階で奪います。

55分、後ろで左右にボールを動かして前を窺う流れから、マウロが右サイドのスペースへ縦パスを送ります。テセが流れて走りこんだものの最初は石尾に前へ入られてカバーされましたが、ここでテセが自慢のフィジカルを活かして相手を弾き飛ばすと、すぐに立ちあがりマイボールにするや否や、左足シュート!先制!
本人も「久々に自分らしいゴール」と話していた通り、まさにこれぞテセといったゴールでした。
またテセは「何もないところからのゴールだったので……」とも話していましたが、ほんとうにこういうのは相手からしたら堪ったものじゃないでしょう。改めて凄味を感じさせてくれたゴールでした。

さて、先制を許した金沢は59分に山根→杉浦恭を投入します。
対する新潟は62分にテセ、大本→史哉、矢村を投入。矢村が前線に入ると、史哉が左SBに入り、2列目を左からゴメス、至恩、中島という並びに替えました。
そんな交代を挟む間にも、59分には高い位置で善朗が奪ったところから至恩のクロスに中島シュート。さらに64分には右サイドから至恩が粘って突破したところからクロスに史哉がシュート。さらに止められたボールを中島がシュートと、どれも追加点とはなりませんでしたが、いい攻撃を続けます。

しかし、ここで落とし穴が待っていました。
67分、ホドルフォが本塚とのワンツーで左サイドを突破してクロス。一旦はDFがクリアしますが、それを拾った中島が外へ運び出そうとしたところで本塚に奪われ、間髪入れずシュート。同点。
本人もかなり悔いの残るプレーだったでしょうけど、中島の判断ミスを突かれてしまいました。簡単に外へ逃げずにそこから攻撃へ出ようとする気持ち自体は十分に理解できるし悪くなかったのですが、さすがにエリア内はリスクを第一に考えたプレーが求められるところでした。

それでも飲水タイムを挟んですぐのプレーでした。
70分、キックオフのリスタートから一旦マウロまで下げると、そこから縦パス。至恩が少し右側に出てこのボールをもらいに行くと、ヒールで流して付いてきたDFと綺麗に入れ替わります。少し持ちこんでから逆のスペースへラストパス。フリーで走り込んでいたゴメスはしっかり止めてきっちりシュート!勝ち越し!

味方のミスによる失点をキャプテンが直後に取り返しました。素晴らしい。
マウロの縦パス、至恩のベルカンプばりのトラップ&ターン、矢村のフリーランニングも効いていました。そしてゴメスの落ち着いたトラップからのシュート。自らも「あのトラップで決まったかなと思います」と話していましたが、ああいうフリーで余裕もある場面ほどいろいろ見えるし考えられる分、緊張するものです。
自分の学生時代を振り返っても、シュート場面に限らず何度ああいったシチュエーションでトラップがブレたことでしょう。いや、自分を引き合いに出すのはおこがましく、またゴメスにも失礼で、比べものにもならない話ではあるのですが。
まあとにかく、何でもなさそうなプレーこそ、やっぱりプロってすごいなあと改めて思わされるのでした。

その後はそれほど見せ場らしい見せ場もありませんでしたが、チームとしてしっかり守備の網を張る中で、とにかく善朗がここぞという場面でカットしたり、相手を潰したりというシーンが見られました。このあたりは後半からボランチに下げた効果が特にハッキリ表れているように感じました。
また、矢村も前線からサイドに流れてしっかりキープをしたり、ファールをもらったりといった、チームを大いに助けるプレーでよく目立っていました。

84分、金沢は加藤、島津→杉浦力、西田を投入。西田が左SHで本塚が右に回り、2トップは杉浦コンビになります。
さらに89分には廣井、本塚→作田、高安でCBと右SHをそのまま交代しテコ入れを図ります。
しかし新潟の方は85分に至恩→達也さん。アディッショナルタイムにはゴメス→荻原と、疲労も考慮しつつ交代を行いながらほとんどピンチらしいピンチも作らせずに、上手に時間を進めることができていました。

試合終了、1-2。
3試合ぶりの勝利です。

徹底された狙い

奪った2点にも象徴されるようにサイドのスペースを突いていく狙いが徹底されていました。逆に言えばそんな狙っていた形からしっかりゴールが奪えたということでしょう。

1点目に関してはテセのフィジカルあってのゴールではありましたが、前半からテセは何度もサイドに流れて起点となるプレーを見せていました。
また、2点目に関しても途中から中央に位置するトップ下へ移った至恩が、右に流れる形で後ろからのボールを受けて見事に抜け出したプレーでした。
さらに、いずれのシーンでもマウロからの縦パスでしたが、この2つのシーンに限らずこの日は特にマウロからサイドへの鋭い楔のパスというのが何度も見られました。

そしてサイドのスペースを突くにあたって、そのスペースを作る動きというのが1つ大きなポイントとしてあったかと思います。
得点で言うと2点目の方が分かりやすいですが、マウロが持ったところで右SHの中島は大外に張り、ハーフラインくらいの高さまで下りていました。そうすることで相手の左SBであるホドルフォを引き付けてその裏にスペースを作る、またCBもサイドに釣り出すことで至恩とそのスペースで勝負させる形ができていました。

1点目に関しては右サイドに敵味方が密集していたので、ボールをもらったマウロに対して島田と善朗は一旦やりなおせと手で合図していましたが、それでも中島が下がって受けることでホドルフォを引っ張り出し、またCBもサイドへ釣り出す形自体はこのシーンでもできていました。
ですから、味方に戻せと言われても出したマウロの自信みたいなものと、テセのフィジカルが合わさったことで生まれたゴールだったと言えるでしょう。

1人でも連携でも

スペースを使うにあたって、誰かが動くことで違う誰かに使ってもらう形だけでなく、自らが動いてボールをもらいそのまま自らが使うという形も至恩がよく見せていました。

2点目のターンなんかはまさにそうでしたが、収めるフリをしてトラップでクッと角度を変えて前に持ち出すという形であったり、また下がってもらいに行く雰囲気からU字を書くようにサイドを抜け出す形だったりは前半から何度か見られました。

リーグの中でも屈指のマンツーマン守備を敷いてくる金沢というチームに対して、そんな人に厳しく食いついてくる特徴を裏返そうという大枠の目的を持ちつつ、至恩のように自ら動いて自らがスペースを使うであったり、誰かが動いて違う誰かに使ってもらったりという形を使い分けながら攻略できていたという点で、非常におもしろく、また頼もしく感じることができました。

最後に

ゴメスが言っていたように1勝でどうこうなるような差ではないので、とにかく残り試合も1つ1つただ勝ちを目指して戦うということに変わりはないわけですが、あと7試合、この日の試合後のような笑顔が見られることを楽しみにしたいと思います。

くりはら
くりはら
鳥屋野潟ほとり出身のアルビレックス新潟サポーター。海外はアーセナル推し。Jリーグ、海外、2種、3種、女子、その他、カテゴリーは問わずサッカーが好き。ラジオも好き。某坂道グループもちょっと好き。