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オレラグ

【Review】第10節 東京ヴェルディ戦

2019年4月22日

吉永監督の初陣。
前半と後半で明暗がハッキリ分かれるゲームになりました。
監督交代最初のゲームとして前半のようなプレーから大きな期待感を持ったのと同時に、でも、監督交代という大鉈を振るった中で勝ち点1にとどまってしまったのは全くもって受け入れられないという不満との両方を感じております。
ただ、吉永さんも試合後のコメントで「残念です」という言葉を何度も使っていたのでやっぱりそっちの方が大きい気もします。

スタメン

日報、スポニチ、エルゴラ全てが違う予想になっていたこの日。
様々な情報があった中で発表されたメンバーにはやはり多少の変更がありました。
まず左SBに新井が入り、CBは大武と今季初先発の広瀬がコンビを組みました。さらに、前線にはレオナルドが5試合ぶり、シルビーニョが4試合ぶりにスタメンに名を連ね、ベンチにはズミさんが5試合ぶりのメンバー入りを果たしました。

ヴェルディは前節から2人変更。
開幕戦以来のスタメンとなったネマニャ・コイッチを1トップに起用し、右サイドに6試合ぶりの先発となる梶川が入りました。

前半

それではまず”明”の前半から。
開始2分、中盤で善朗のいい守備からカウンターで凌磨のシュートまで持ち込みます。
4分にもレオが上福元までプレスに行き、パスを出した先の井上へカウエが詰めて奪います。シルビーニョが拾ってミドルシュートはDFにブロックされますがこれで得た右からのCKで早速ゲームが動きます。
善朗からのボールにニアで大武がヘッド。DFがカバーするも最後はシルビーニョとのツインシュートみたいになりながら押し込んだのはレオ!先制!
このCKはまず大武、広瀬、レオ、凌磨がGKの周りにポジションを取り、善朗の助走と共に凌磨はニアへ、大武は中央へ、広瀬はファーへ走りこむ形でうまくゾーンで守る相手を攻略しました。
まさに狙い通りといったゴールだったのではないかと思います。

ヴェルディは一応4-3-3ではあったようですが、守備の時はインサイドハーフの佐藤が主に前へ出て2トップのような形になり新潟の2CBへプレスをかけて来ました。ただ、新潟はこの1週間植え付けてきたであろうビルドアップからのボール運びでうまくかわせていました。
ワンタッチでのフリックや近い距離感で動かして相手を寄せてからの逆への展開や縦へのくさびといったパスで凌磨や善朗がアンカーの脇で受けることができていたように感じます。
また、守備に関してもヴェルディはビルドアップの際に井上がDFラインに下がりSBを押し上げSHが内側に入ってボールを受けようとする常套手段でやってきていましたが、持たせるところは持たせてOKという感じで対応できており、なかなか起点を作れないために佐藤も焦れてDFラインまで下がって受けに来るシーンが何回かありました。それでも新潟は、そこに対しても無理して行くことなく落ち着いて守れていたと思います。
1人1人の球離れの悪さや動き出しの遅さがヴェルディにあったことは否めませんが、しっかり前線が制限をかけてくれたり、プレスに行った場合は後ろもスペースができないようについていったり、新潟の切り替えの速さがあってのことでもあります。
また、それは近い距離でのパス回しができていたから奪われてもすぐに奪い返しに行けていたということでもあると思うので、攻守がうまく噛み合っていたと言えるでしょう。

しかし、ヴェルディも当然そのままにしてはいませんでした。
おそらく18分の佐藤のCKあたりを境に右サイドの梶川と左サイドの小池を左右入れ替えます。最初はCKからの流れでそのままにしているだけかと思っていましたが、試合後に梶川が「うまくいってなかったから入れ替えた」旨のコメントをしていたので意図的ではあったようです。
また、30分あたりに中継マイクで「皓太、17(カウエ)!優平、10(大)!」というスタッフの声が拾われていましたが、確かにそれ以降はそれまで2CBへ取りに来ていたインサイドハーフがあまり前へ出ずに4-5-1で構えるようになっていました。守備がハマらず前から行ってもかわされてしまうので、少し撤退することを選んだのではないかと思います。
それでも、35分には凌磨がアンカーの脇で受けてファールをもらうシーンもありましたし、37分には綺麗な流れの崩しからシルビーニョが抜け出してシュートというシーンも作れていたので、前半のうちはヴェルディの修正も特に影響はなく進めることができていたように感じました。

前半終了、1点リード。

後半

さて、”暗”の後半です。
頭からヴェルディは動きます。コイッチ→端戸を投入。
そのまま前線に入っていました。
すると、入りからヴェルディのギアが明らかに上がります。
49分左サイド、佐藤、井上、奈良輪、端戸で三角形を作りながらテンポよくつないで佐藤が右へ展開。若狭が落としたボールを井上がシュート。
50分にも左サイドで奈良輪、梶川、端戸、佐藤とつないで右へ展開。今度は若狭が自らシュートを放ちます。
いずれもゴールとはなりませんでしたが、前半にヴェルディの課題として挙げた球離れの悪さや動き出しの遅さは全くありませんでした。

「前にパスをつなぐ選択肢を増やそう」
「もっとボールを速く動かそう」
ホワイト監督のHTコメントの通りに改善されていたわけですが、これは意識の問題だけではないと思います。
前半の終盤から少し見られていたのですが、ビルドアップの際に最後尾を3人にする方法を井上が下がるのではなくて若狭が残る形を増やして、ゲームを作れる井上や佐藤が下がりすぎないような工夫がされていました。
また、前半のうちはまだ影響があまり出なかった梶川と小池のサイドの入れ替えが効いて来てもいました。
より狭いところで受ける技術に秀でる梶川が左に入ったことで積極的にオーバーラップできる奈良輪が上がるスペースと時間的な猶予も生まれ、さらに前線中央で張っていることの多かったコイッチに比べて、端戸がサイドに流れることで近い距離感で連動して崩す形を作れるようになっていました。
ただ、この点に関してはこの日「新潟が対策を練ってくるかもしれないということで左に小池、右に梶川でスタートした」というようなことをホワイト監督はコメントされていたので、前半の途中から後半についてはヴェルディ本来の形に戻したことでうまくいったと言えそうです。
それでも、新潟としてはここ2試合に比べれば前線2人と中盤より後ろの8人のギャップもある程度修正されていたとは思いますしなんとかしのいではいました。

しかし、落とし穴にハマります。
65分、広瀬の横パスを端戸がカットしてそのまま持ち込みGKとの1対1を冷静に沈めます。同点。
もう、痛恨の極みであります。
初先発ということを考えれば送り出すスタッフも多少のミスや感覚のズレみたいなところは想定していたとは思います。ましてやこれまでよりしっかりボールをつなぐ意識で臨んでいますし。
だとしてもあれだけ致命的なミスはさすがに許容できる範囲ではないでしょう。さらにこの後もう1回横パスをかっさらわれたシーンがありましたが、ビルドアップに定評があることを買われての起用だとは思いますから複数回明らかなミスがあったことも気になるところではありました。
ただ、こうして叱咤はできるのですが、責めたり咎めたりする気持ちにはどうしてもなれません。ああいうミスをしてしまった時の罪悪感、申し訳なさ、辛さみたいな感情が高校の時の自分のプレーと共に脳裏にフラッシュバックするからなのかもしれません……。
いや、“プロと高校の部活を比べるな”というのはごもっともですし、重ねてしまうのはおこがましいということは十二分に分かってはいるのですが……。
とにかく、彼が新潟に必要不可欠な選手であることは間違いないのでこれまで以上に応援しようと思いました。

はい、試合に戻ります。

ヴェルディは72分に梶川→ヴァウメルソン、さらに78分には小池→永田を投入します。
ヴァウメルソンはこれがJリーグデビューで永田はヴェルディへの移籍後初出場でした。両サイドハーフを交代してきたわけですが少しずつゲームがオープンになっていく中で、特にヴァウメルソンは分かりやすいサイドアタッカーという感じで梶川の時ほど繊細さは必要なかったので正直守りやすくなった気はしました。
新潟は79分にシルビーニョ→フランシスを入れて左サイドに配置し善朗をトップ下に移します。さらに3分後にはレオ→達也さん。
そして、86分に善朗→ズミさんを入れて前線は達也さんとズミさんのコンビに最終的にはなりました。
フランシスはドリブル突破からチャンスを作り、達也さんは最後にシュートシーンがあり、ズミさんは当初スタメン予想もされるなど新チームで期待されていた通りスッとゲームに入ってボールを潤滑させていましたが、いかんせん時間が少なくなかなか見せ場を作るには至りませんでした。

試合終了、1-1、ドロー。

決着をつける力

守備に関しては上でも少し書きましたが、ここ最近、特に複数失点が続いた過去2戦に比べればそれなりに改善されたように思います。
やむをえず戻りながらの守備を強いられた際に、下がり過ぎて手前の選手が空いてしまうケースが完全に払拭されたわけではありませんでしたが、急いでブロックしに行く時の距離はそれでもまだ小さくなっていましたし、崩されかけたシーンはあっても完全に崩されたシーンはあまりなかったと思います。実際失点はミスからでしたし、最後の最後体を張るところは張れていた、もしくは張りにいけていた印象です。
ただ、あくまでもこれはこれまでと比べてなのでさらに向上させる必要はあるということは忘れず書いておきたいと思います。

それよりもやっぱり問題は追いつかれたことよりも突き離せなかったこと、つまり攻撃の部分だと感じました。
ボールを運ぶことや中盤で動かすことは間違いなくよくなっていました。
しかし、吉永さんも試合後のインタビューで「勝負、決着をつけるところではまだまだ甘い」と仰っていた通り最後のところのラスト3分の1は歯痒さというか物足りなさが残りました。
シュートを打つべきか味方を使うべきかの判断力、またその判断をする速さいずれにおいてももったいないと感じるシーンはいくつかありました。
まあ、恐らくご覧になられた方であれば思い当たるシーンがいくつかあるかとは思いますがここではあえて名前を挙げますがシルビーニョについて。
ブラジル人選手が初めてJに来るとよく「日本のサッカーは速い」と発言することがあります。昔から気になっていた言葉だったのですがDAZNでブラジルの全国選手権を見た時に確かに遅くてゆったりしており、その言葉にようやくピンと来たということが昨年だか一昨年だかありました。
シルビーニョのプレーを見ていると独特なCKの蹴り方を含めてそのDAZNで見たブラジルのリーグの感覚が思い出されることがまだ時々あります。
これは別に速いから良いとか悪いとか遅いからどうだとかってことを言いたいわけではありません。ブラジルのリーグは確かにゆったりとしている印象ですが日本より緩急がハッキリしている印象もありました。
だから、その緩急の感覚やタイミングにまだ周りと誤差があるのだと思います。
ワンタッチで叩くこともできますし、キープしてタメを作ることもできます。特にキープ力はただキープするだけでなくそこから前へ向いて優位な状況に持ち込む事が出来ます。
いかに彼の技術と強さをうまく運用していけるか、そして周りとすり合わせていけるか。期待したいところです。

ボランチの左右

この試合ボランチの位置が右に大、左にカウエでいつもとは逆でした。
これは徳島戦もそうで、その時は意図が分からずレビューのくせに疑問のまま書いたのですけど、この日はしっかり意図が感じられました。
効き足が内側になるようにすると前から相手に寄せられた時に効き足で扱う場合当然内に向きます。この状態で近い距離の味方(ボランチの相方やCB)とパス交換をする際、そのままワンタッチで縦パスを入れやすくなります。また、自分に速いプレスが来れば当然その裏が空くのでそのパスコースを作るためにあえてそこで受けて、相手を引きつけておいてから横へつなぐことで味方が縦パスを入れやすくできるといったことが言えます。
一番分かりやすいのは前半28分のシーン。
ここはCBからボールが入りボランチのパス交換の後、さらに善朗も絡んでおり凌磨も次に受けられるようなポジションを取っていました。
このようなシーンが試合を通していくつか見られたので恐らくそういう意図を持っての配置だったのではないかなと思います。

最後に

スタンドにはチームを鼓舞するメッセージが書かれた断幕も出されていましたが、とにかく吉永体制でまず1つ勝ちたいですね。
アウェー連戦になりますが、首位を叩いちゃいましょう。

くりはら
くりはら
鳥屋野潟ほとり出身のアルビレックス新潟サポーター。海外はアーセナル推し。Jリーグ、海外、2種、3種、女子、その他、カテゴリーは問わずサッカーが好き。ラジオも好き。某坂道グループもちょっと好き。