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オレラグ

たっぷりの多幸感【Review】第18節 栃木SC戦

2019年6月17日

綺麗でしたね。
サチローのインターセプト。広瀬や大武のサイドチェンジ。そしてプラネタスワン。
試合直前に大雨になって以降、降ったり止んだりの気まぐれな天気でしたが、終わった頃には星が見えて月も出てきたりしていました(社長が晴れさせたとツイートされていましたね、ありがとうございます)。
なんとも素晴らしい、美しい1日になりました。

アルビレックス、遅ればせながらようやく今季初の連勝であります。

スタメン

新潟は勝利した前節の岐阜戦と全く同じ11人。勝ったらいじるなってやつでしょう。
栃木は前節から1人だけ変更。ボランチに和田ではなく寺田が入りました。
ただ、蓋を開けてみると栃木は相手とシステムを合わせる今年の基本的な流れを踏襲し4バックで臨んできました。
「岡山戦は3バックだった」とか「新潟は3バックが得意ではない」云々、それっぽいことを並べて導いた予想は今回も盛大に外れましたとさ。
まあ、全然いいんですけどね、勝ったし。

前半

まず、コイントスで栃木はエンドを替えてきました。恐らく風を考えて風上を取ったという事でしょう。

さて、栃木が相手にシステムを合わせるのはマッチアップを分かりやすくして守備をやりやすくするためというのはプレビューでもちょっとだけ書きましたが、そのような理由の通り試合の入りは栃木が前からプレッシャーをかけて押し込む展開になりました。
3分には右サイドの西谷和からゴール前へのパスを、寺田が落とし最後は浜下がシュートというシーンも作ります。
しかし、5分くらいからは栃木が前線へのシンプルなボールを多用し、それを新潟が跳ね返して中盤でのルーズボールの奪い合いになる中で、少しずつ新潟がボールを拾いそれを丁寧につなぐことでペースを掴んでいきます。
11分ゴメスのサイドチェンジを起点に右からサムエルのクロス、さらに左からゴメスのクロス。ゴール前でレオがキープするところまで行きますが最終的にサチローのファールになってしまいましたが、この厚みのある攻撃あたりからリズムも出てくるようになった印象でした。

13分には中央でゴメスが起点になりながら繋ぎ、左の新太に展開されるとインナーラップの形でゴメスが抜け出してチャンスを演出します。
さらに、右サイドではフランシスがスピードを武器に飛び出したり仕掛けたり脅威になっていて、21分にはそんな抜け出そうとしたフランシスを止めて田代にイエローが出ました。
結果的に後半田代は退場してしまうわけですが、序盤からフランシスには厳しく付いてきており、13分の時点で既にレフェリーから恐らく何回目だよと複数回の反則で注意を受けていました。
その直後には食いついたせいで入れ替わられて抜け出されるシーンを作られていましたし、相当に前を向かせたくない意識は強かったようです。

いいリズムでできてはいましたが、振り返ってみるとシュートシーンは少なく、32分のセットプレー崩れから左サイドフランシスのクロスにカウエがヘッドで合わせたところと、34分に大武のくさびを善朗が落として新太が運んで、最後はサチローのミドルというシーンくらいだったかと思います。
リズムがいい中でフィニッシュまでやり切るという部分は1つの課題かもしれません。

それでも、奪われた後の切り替えやセカンドボールへの反応はよく実践できており、攻め切れずともピンチを作られることはほとんどありませんでした。また、FM-PORTの解説だった梅山さんは「無理な縦パスを出していない、出しても収めているから相手のカウンターを発動させていない」と指摘していました。
ボールの動かし方に関しても細かく繋ぎながら前進する場合と、なかなかそれができない時にサイドチェンジや裏へのボールというシンプルな形も時折織り交ぜていたのもよかったのではないでしょうか。

前半終了、0-0。
できれば1点取っておきたかった内容でしたが、それでも十分にポジティブなゲームができていました。

後半

この試合、仮に一瞬の隙を突かれて敗れるようなことがあったとすれば(余計なお世話かもしれませんが)この後半開始早々が一番やられかねなかったのかなと思います。
47分の寺田のFKから判定は難しいものでしたが、サムエルが間に合ったように見えた中でCKを与えてしまい、そのCKから最後は森下にヘッドで脅かされました。
ああいうもったいないプレーやちょっとしたミスで与えたCKは、なぜだかよくないことが起こりやすいので避けなければならないところでしたし、そのCKに関してもちょっと対応が中途半端だったのかなと思います。
大島に付いていたフランシスはボールの軌道を見て自分がクリアできると思って途中でマークを離して留まりましたが、あそこはゾーンで立っていたレオに任せていいのかなと思いますし、留まるのであればしっかりクリアしないといけないかなとも感じました。

しかし、それをしのぐと52分、サチローの素晴らしいインターセプトからの突破を田代が止めて2枚目のイエローで退場になります。
このプレーに至るまでにはゴメスから善朗へのくさびのパスを起点に、中央でワンツーを使いながら動かして右へ運ぶいい展開がありましたし、その少し前にも広瀬、サチロー、善朗という大きな三角形でパスをつないで前進し、そこから左へ展開して最後はフランシスのヘッドまで行く流れを作っていました。
最初にピンチを迎えたことで嫌な雰囲気が醸成されかねませんでしたが、落ち着いて自分たちのペースにすることができていたのではないでしょうか。

栃木は西谷優を左SB、西谷和を左SHにそれぞれ下げて4-4-1へと変更します。ちなみにここで栃木ベンチはヘニキを準備しましたがやめていました。
1人少なくなった直後はそれでも前に出て圧力をかけてきた栃木ですが、それに対しては大武から左のスペースへレオを走らせるパスだったり、57分のサチローからのフィードでレオが抜け出す形だったりと、シンプルに裏を狙う形で相手をかわします。
そしてその後栃木のラインが少し下がれば、61分のように右サイドの深い位置からフランシスがえぐってレオのシュートまでいった一連の流れのように、丁寧につなぎながら攻め込む形を見せ、前半同様状況をよく見ながらプレーできている印象でした。

そして64分、ついにこじ開けます。

サチローからのくさびをフランシスが内側に入って受けるとレオとのワンツーで突破を図ります。ここは一旦引っ掛かりますが、こぼれ球にゴメスがいち早く反応。先にクリアしようと足を出した浜下のファールでPKゲッツ。
まあ、確かに難しい判定ではあったかなとは思います。
でもフットボールはこうやって何十年と続いてきたわけですからね。人間はなぜだか自らに不都合だったことほどよく覚えている生き物ですけど、基本的には苦みがあればその分旨みも味わえています。
こういうのも含めてフットボールだ、なんて格言みたいなことを見聞きしたことがありますけどそれがどうしても納得いかない人は、あと何年かすればビデオが入るでしょうからそれまでの辛抱といったところでしょうか。
ただ、ビデオが入ってもこういうことはある程度減りはしてもなくなりはしないと思いますが。

ちょっと寄り道してしまいましたが、このPKをレオナルドがこれでもか、というくらいゆっくりとした助走から左隅に「ズバババーン!」(アルビレックス公式LINEより引用)
あのゴール直後のブラジリアンカルテットの奇妙な踊りはなんだったのでしょうか。ご存知の方教えてください。
また、その最中で新潟の選手が自陣に戻るやいなやすぐにキックオフされないように、センターサークル内に立っていた善朗はさすがでした。

70分、栃木は寺田→和田。そのままボランチに入ります。
この時もヘニキを準備しつつやめていたようでした。いろいろ考えての交代でしょうけどなんかヘニキがかわいそうに思えちゃいました。

先制後も優位にゲームを進めていた中で74分には待望の追加点が生まれます。
右サイド善朗から前のゴメスへ。ワンタッチで中央へ送るとカウエが収めてフランシスを狙ってパス。ここは引っ掛かってしまいますが新太が拾うとすぐに反転してレオへ。
相手の股下を抜くテクニカルなシュート!GKに弾かれたところを、ごちそうさまです、フランシス!

新太はよく見ていました。ボールがこぼれてくる中で触るまでに2回首を振って確認していました。冷静なナイスプレー。
あと、もっと遡ってセットプレーがクリアされた後のプレー。
左サイドコーナー付近で浜下とレオが追いかけて浜下がなんとかクリアしたところを拾ってつなぎ直してゴールまでいったわけですが、ここでレオがノーファールでボールを掃きださせたのは地味ですがよかったです。
冷静に考えればあそこでファールをしないのはそんなに難しいことではないのですが、レオはボールを奪いにいく際どうしてもアプローチが行きすぎてファールを取られることが多いタイプだったので、あそこも「ノーファールで、ノーファールで……」と念じながら見ていました。レオも冷静なナイスプレー。

直後に栃木は西谷優→ヘニキ。ようやくヘニキを投入しました。
和田が左SBに下がってヘニキと枝村のボランチになります。
新潟は79分にレオ→貴章。そのままトップに入りました。

残り10分。
81分に大谷のフィードをDFがクリアしますが、こぼれ球をフランシスがカットしてサムエルのシュートまで行ったシーンがあり、直後には再び大谷のフィードを貴章が競ってフランシスが抜け出しかけますがファールというシーンがありました。
ここで梅山さんは
「GKにバックパスをした時点で栃木はもちろんラインを上げるんですけども、上げたところで数的同数。(中略)だから蹴った瞬間、蹴っただけでチャンスになっているということですよね。もっとシンプルに得点できると思います」
「これを意図的に繰り返してもいいかなと思いますね」と、おっしゃっていました。
これがどれくらい意図的だったかどうかは計りかねますが、結果的には上手にやれていたのかなとは思います。
したがって、フランシスのファールになってしまったシーンなんかは大谷に下げるまでにスタンドがザワついているように聞こえましたが、あそこはもっと余裕を持って見る方も見られたらいいなとは感じました。自戒も込めてですが。

86分栃木は和田→菅。途中出場の和田は少し足を気にしている素振りもあったようで違和感があっての交代でしょう。
新潟は87に善朗→至恩。89分に新太→達也さんでゲームを締めにかかります。

そしてアディッショナルタイム5分、欲を言えばあの至恩の決定機でトドメの3点目を取れていれば100点満点でしたが、最後までしっかり集中して、タイムアップ。

試合終了、2-0!
完封でようやく今季初の連勝を果たしました。

バリエーションと意識

この日はいいところがたくさんありました。
まず、攻撃のバリエーションを様々に使えていたところです。
前半の最後の方にも少し書きましたが、丁寧にビルドアップから運んで行くところ、シンプルに裏を狙うところ、素早くサイドチェンジをして薄いサイドを狙うなどです。
また、左はトップ下の善朗も含めて連携しながら、右はフランシスやサムエルの推進力、突破力を活かせるような1対1のシチュエーションというそれぞれの特長を活かしたサイドの使い分けもよく見られました。
それによって栃木は、当初の4-4-2からフランシスとサムエルの突破を警戒して、西谷優が下がって5バックのようになることもありました。

栃木はそれ以外にも両SHが下がって後ろに6人が並ぶようなこともありました。恐らく臨機応変に調整しながら人数を掛けて守ることは準備していたと思われますが、それに対しても新潟はいたずらにボールを持ちすぎてしまうシーンは少なかったように思います。
メリハリを効かせながらボールを動かせていたのではないでしょうか。

もう1つ。
1点目のPKに繋がったサチローからフランシスへの縦パスなんかは象徴的ですが、ピッチ全体で縦へ入れる意識を高く持ってプレーできていたこともよかったことの1つでしょう。
ピッチ全体でと書いたのは、FWや2列目の選手への相手陣内での勝負のパスだけでなく、CBからボランチへのパスでも感じました。
これまでだったらなんとなく、もしくは寄せられて困ってCB間でパス交換していたところを、サチローが相手の2トップの間に顔を出してそこにタイミングよく入れる場面がよく見られました。

カウエが後ろに下がり相手の2トップに対して数的優位を作るとか、善朗が相手のライン間にポジションを取って、というプレーは今までの試合でもありましたが、そこに対してもう何人かが絡むことで相手に的を絞らせないようにいくつかの選択肢を作ることができていました。
それによって、今までにもあったいいプレーがチームとしてさらに機能することにつながっていたのかなと思います。

ゴメスとサチロー

やっぱり彼らの活躍を語らないわけにはいきません。
まずゴメスですが、高い位置を取るだけでなく内側に入って縦パスを受ける側にもなっていたのは見事でした。新太とどちらが外に出るか、内に入るかは相手を見ながら嫌がっている方を選択していたそうですが、まさにそれが相手としては守りづらい状況を作り出していたのではないでしょうか。

また、縦パスの供給側でも積極的なくさびのパスを入れていました。
図のシーンの直前、49分のシーンではシンプルに外の新太を使っていたのですが、それを伏線にして52分にはより脅威となる中央へのくさびのパスルートを作り出しています。実際対応に来た浜下は外側へのパスを予想して飛んでしまい中へのコースが開けていました。

そしてサチローです。
それは、それは走る、そして奪う。素晴らしかったです。
ただ、至るところで彼が相手の攻撃の芽を摘んでいたわけですが、何がよくなっているって取りに行かないところの判断が間違いなく向上しているところです。
12節の山口戦のレビューで、その時はSBでしたが守備でリスキーに感じるところがあると書きました。しかし、その感覚は極めてわずかなものになりました。
本人もそのあたりは課題として意識していた旨のコメントをしていたので、着実に成長しているということでしょう。
それにしてもあの運動量は改めてすごいです。
以前、フランス代表のエンゴロ・カンテを元フランス代表のデサイーが面白い表現で称賛していましたが、あの言葉はそのままサチローに当てはめてもいけそうですね。
「地球上の7割は水が覆っている。残りの3割はサチローが覆っている」

おしまい

よかったことに挙げた2つのことも、ゴメスとサチローのプレーも、共通するのは相手を観察しながらプレーできていたということではないでしょうか。
速い攻守の切り替え、球際への反応などを基礎としつつ、とてもロジカルなゲーム、ロジカルな勝利だったように思います。

そして、試合後に善朗も「楽しかった」とコメントしていましたが、やっている選手が楽しければ見る方も楽しいのです。
勝利と楽しむ事はほとんど矛盾しないでしょうから、どんどんサッカーを楽しんでほしいなと思います。
あんなにずっと走れないし、あんなに上手にボールも扱えない人間としては、とにかくそう思うばかりなのです。
うまい人たちが楽しむって一番強いんですから。

よかったことばっかり書いてきましたが、連敗中散々暗く書いてたので今回はこれでいいでしょう。

くりはら
くりはら
鳥屋野潟ほとり出身のアルビレックス新潟サポーター。海外はアーセナル推し。Jリーグ、海外、2種、3種、女子、その他、カテゴリーは問わずサッカーが好き。ラジオも好き。某坂道グループもちょっと好き。