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オレラグ

まだ消させない【Review】第38節 京都サンガF.C.戦

2019年10月29日

ホーム戦3試合連続3ゴール以上での勝利。あっぱれでした。見事な戦いっぷり、そして勝ちっぷり。京都が相手であればもっと我慢をしながら勝負どころで刺す、みたいなイメージを持っていましたが、何をそんな弱気なんだと逆に鼓舞されたというか喝を入れられたみたいな気分でした。
もちろん、このチームはできるしやれると思って見ていたし応援もしていたつもりですが、ほんとにちゃんとそう思えていたのかと、自責の念を感じてしまいました。それくらい京都を相手にしても勇敢に戦って勝利を掴んでくれたと思います。

スタメン

新潟は前節から1人変更。前節途中出場から試合の流れを変えた秋山が、満を持して初のスタメンに名を連ねビッグスワンデビューとなりました。
試合前のインタビューでも吉永さんから「彼らしく堂々とプレーすることを期待しています」との言葉がありましたが、結果的にその期待通りの強烈な存在感を彼は示してくれました。

京都も前節からの変更は1人で、前節今季初めてベンチスタートとなった庄司がいつものアンカーとしてスタメンに戻りました。
前々節から前節にかけて大胆に5人を入れ替え横浜FCに完勝したこともあったので、基本的にはその流れを継続する選択だったと想像します。

前半

2分に至恩のカットを起点として新太のミドルがあり、直後には秋山のサイドチェンジから新太が受けるとGKとDFの間へ良いクロスが入りました。
どちらもゴールにはなりませんでしたが、早い切り替えから高い位置でのボールカットという積極的な守備によって立ち上がりからチャンスを作ります。

ボールを持った際は前節の福岡戦同様、秋山がアンカー的に中盤の底に残り、サチローは少し前へ出て、内側に入る至恩と新太と共に3人で相手のライン間にポジションを取っていました。また、シルビーニョはフリーマン的な感じで序盤は左に流れることが多かったように思います。HTのデータでは左サイドからの攻撃が59%と高くなっていましたが、それもそういった理由があったからではないかと感じました。

7分には後ろでボールを動かした後、ゴメスがDFをはがして楔を入れると、レオがスルーして新太がライン間で前を向くシーンがあったり、9分には秋山の落ち着いたボールコントロールによるキープからまたもゴメスのパスで今度はシルビが裏へ抜け出したりと、ボールを持った状態からのチャンスクリエイトも少しずつ増えました。

守備の方ではレオとシルビがアンカーの庄司を挟む形でパスコースを消すところから始まり、ゴールキックを含めて京都が低い位置で繋ぐところは立ち上がり同様プレッシャーをかけ、運ばれて自陣に下がれば無理をせずブロックを作って守ることができていました。
サイドの仕掛けから2回ほどCKを与えることはありましたが、非常に落ち着いた守備ができていたことでペースは新潟が掴めていたと思います。

19分には左サイドで至恩が相手2人の間を抜けたところからシルビのクロスに史哉が走りこんだり、直後には最近ホットラインになっている大武のフィードから至恩が仕掛けたりと見せ場を作ります。
さらにその攻撃の流れから、今度はゴメスのアーリークロスをシルビが落として新太がボレーシュートというシーンもあり、やはり左サイドを中心に攻撃が展開され、少しずつゴールにも迫り始めます。

すると31分、そんな左サイドでの攻撃からゲームが動きました。
京都のクリアを秋山が拾うと、ボールを受けたゴメスが少しドリブルで間を抜けつつ、外側の至恩へ預けてから再び裏へ抜け出します。
ワンタッチで上げた100点満点のクロスに待っていたのはシルビーニョ!
こちらもDFの間に入ってGKの足下に叩きつける100点満点のヘディングでした。
ドリブルで間を抜けてから至恩に預けた後、一旦至恩に近づいてから裏に抜け出したゴメスの動きは見事でした。

また、このゴールシーンの直前の攻撃も随所に良いプレーが散りばめられていました。
CBと秋山の三角形でのビルドアップ。
右に展開してからの史哉、新太、サチローの三角形によるパス交換。
そしてサチローが縦に走ったことで生まれたスペースに再びもらいにいった秋山。
さらにビルドアップのサポートのために内側へ入ったゴメス。
再びCBと秋山の三角形による作りから舞行龍がさすがといった感じのライナー性の楔。そしてそれがうまく通らずとも内側にサポートへ入っていたことでゴメスがしっかりセカンドボールを拾い、最終的には至恩のクロスからシルビのヘッドという決定機を作っていました。
先制点を見返す時にはぜひもう少しだけ巻き戻して29分17秒くらいからご覧になっていただき、一連の流れを確認して楽しんでほしいと思います。

先制点以降は、40分に左サイドから小屋松とレナンモッタの連携で裏を取られてヒヤリとさせられたシーンがありましたが、逆に言うと前半で恐かったシーンはここくらいで、シュートも0に抑えることが出来ていました。

前半終了、1-0。

後半

スタートはどちらも変化なく始まりましたが、始まってすぐ(たぶん48分くらい)に京都は庄司とレナンモッタの位置を入れ替えていました。

入りはレオのミドルだったり、左サイドからのFKでトリックプレーを試みたり押し込みましたが、その後少しピンチが続きます。
53分、庄司の左CKにレナンモッタのヘッドは枠の外。
さらに56分には庄司の右CKをレナンモッタが収めて、落としたボールを小屋松に狙われますがここは体を張ってブロックしました。
終盤を除けばこの時間帯が最もこの試合で我慢を強いられる難しい時間帯だったように思います。だからこそ、そんな中で奪った追加点はスコア以上に気持ち的にも大きなゴールになりました。

58分、秋山の縦パスをライン間、相手のアンカーの脇でレオが受けると中央のシルビーニョへ預けます。フリーで受けたシルビは右も見つつ時間を作って再びレオへ。
しっかりトラップしてから2タッチ目でベストポジションに置くと右足!
ゴールへ打つというよりゴールの右の部屋(スペース)へ届けるようなイメージのシュートでした。今季目標としていた26ゴールに4試合残して到達です。

そしてこのゴールシーンも見事な作りから生まれました。
大谷からボールをもらったゴメスの鋭い楔がまず素晴らしい。
そして一旦下げたところで京都はプレスをかけてきて、さらにゴメスからのパスも少しズレてしまった中で、秋山は冷静にサチローへ入れてワンツーで抜け出し楔のパスを入れました。
梅山さんも「秋山がバックパスをしていたらこのゴールはなかったわけですから、そこで勇気を持って前につけられたというのは大きかったですね」と称賛されていました。
相手がプレッシャーに来ている中でそれでも縦に入れたことでアンカーのレナンモッタの脇に大きなスペースが生まれ、そこでレオが起点になったことでシルビもまたフリーで受けることができ、右にも左にも出せるし自らも行けるという何でもできる状態が生まれました。
リスクを冒したからこそ生まれた素晴らしい連携による「今年一番のゴール」(レオ)でした。

直後に足をつった至恩→フランシスへ交代します。
至恩は持ち味の仕掛けだけでなく守備でも非常にいい働きをしていました。急成長している新太先輩に比べるともう少し中を締めてほしいところや、動かされた時のカバーなんかで課題を感じることもないこともないのですが、球際で力強く体を当てられるようになっている印象を受けました。

京都の方は63分に宮吉→一美、65分には庄司→中坂と矢継ぎ早に手を打ってきます。この交代によって一美がトップとなり、インサイドハーフには中坂と仙頭が入りました。
しかし、こうして手を打ってきた京都を尻目に新潟がさらに追加点を奪います。

67分、ルーズボールを舞行龍が拾うと新太から秋山と右サイドで上手に相手のプレッシャーを剥がし、サチローから見事なサイドチェンジがフランシスへ通ります。
レオとのワンツーを狙ったプレーは相手にカットされますが、素晴らしい切り替えでフランシスと秋山が中坂を挟むとレオがカット。
キープしてからヒールパスをシルビへ渡すとエリア内で倒されてPKゲッツ!
69分、このPKをレオがしっかりゲッツ!3点目。
落ち着いたビルドアップと素早い守備への切り替え。やるべきことをやった結果だと考えれば、このゴールが取れたのは必然だったと言えるのかもしれません。素晴らしい。

3点差になり京都の方は「テンションも運動量もガタっと落ちましたね」(梅山さん)となってしまい、逆に新潟は気分よくノリノリで、スタンドからは蹴散らせチャントも響きます。
気持ちが乗るのはいいとしても、それでプレーが大味にならなければいいなと少し懸念もありましたが、戻るところは全力で戻って集中した守備を継続できていました。

77分にはサチローのフィードからレオが完璧なタッチで抜け出してGKと1対1の決定機を迎えますが、ここは外れてしまいます。
サチローのフィードはクリアかと思いましたが、恐らくしっかり狙ったフィードだったように思います。また、サチローに対して京都の選手がアフターでチャレンジしたのはファールの判定でしたが、主審の清水さんはしっかり展開を見てそのまま流してくれたのはナイスジャッジでした。
だからこそ(?)レオにはしっかり決め切ってほしかったところでした。

78分新潟は秋山→ズミさん。京都はジュニーニョ→富田を投入します。
ズミさんはそのままボランチに入り、京都の方はこの交代で恐らく3バックに変更していました。3CBに牟田、安藤、本多。WBには右が小屋松で左が富田。レナンモッタと黒木がボランチで、前線は一美をトップに仙頭と中坂がシャドーといった感じでした。

すると81分、レナンモッタからの縦パスを小屋松が受けると一旦黒木に戻し、黒木から少し下がった一美にボールが入り、思い切ったミドルが大武に当たり少しコースが変わって1点を返されます。
梅山さんは「プレッシャーの掛け方ですよね。横から行ったら前が空いているのでシュートを打たれますよね」と問題点に言及されていました。
京都はシステムを替えたことで後ろの作りが2(CB)+3(両SBとアンカー)から3(CB)+2(ボランチ)になり、また3点ビハインドのため攻撃的ではありましたが外に張る選手の役割がWBとなりました。これにより新潟としてはSHがCBへ寄せれば、SBやボランチとの距離が広がってしまうというそれまでよりも難しい状況が生まれるやすくなりました。
失点シーンで言えば仙頭と小屋松が入れ替わっていたのでこの時ライン間で受けたのは小屋松でしたが、そこに対してケアしに行ったボランチ2人がそのまま右に寄ってしまい、空いたスペースを降りてきた一美に使われてしまいました。変化への対応は精査しておきたいところです。

それでも直後にシルビーニョ→貴章の交代を行い、新太を中央に移し貴章を右サイドに置いて締めの策を講じると、長い5分のアディッショナルタイムもしっかりと逃げ切ることができました。

試合終了、3-1。
楽しかったです。サンキュー&感謝。
しっかり点が取れるってやっぱり素晴らしいですね。

(もう何回か使った気がする言葉だけど)準備が大事

相手のSBはボランチのような位置に入ってビルドアップをするため、新潟(特にSH)としては必然的に味方と近い距離を保てて守ることが出来ていました。京都のSBが外側をオーバーラップするシーンは少なかったというかほとんどなかったと思いますが、だから新潟のSHが後ろまで押し下げられることもなかったですし、前半立ち上がりの至恩のパスカットや3点目直後のフランシスや新太のパスカットを筆頭に、相手の横パスを中へ絞っていたSHが奪う機会が多かったのもそういった理由があったからではないでしょうか。

また、京都の大外で幅を取っている選手はアタッカーであり、割と高い位置を取っていたので、裏を取られたり取られかけたりしてヒヤッとするシーンはありましたが、新潟のSBとしては前に出て捕まえに行くかどうかという迷いや難しい選択を迫られることも少なく済んでいたように思います。
失点シーンは相手の変化への対応で綻びが出てしまったわけですが、逆に言えばそれまでの戦いは「今週は立ち位置の整理をした」という松村さんからの情報もあったように、十分に京都戦へ向けた準備をして、それをしっかり遂行できていたということが読み取れる気がします。

さらに守備の部分でもう1つ感じたのは、奪いに行く狙いもあったからだとは思いますが全体としてファーストディフェンスがとても早かったことと、もう少し細かく言うと、寄せの早さだけでなく、ボールホルダーに対しての寄せる間合いもほとんど与えずに、ゼロ距離で懐にグッと奪いに行けている印象がありました。
京都の選手はミスが多かったことを反省点として挙げていましたが、確かにゴール前の勝負の縦パスだけでなく、その前段階の横パスでもイージーなミスによって失うシーンは散見されました。
これを引き起こしたのも、近い距離で守れていることと、それによって早く深く寄せる守備ができていたからではないかと感じます。

ひょっとするとベストかも

そして秋山です。
京都はインサイドハーフの1人が前に出て1トップと共に新潟の2CBに対してプレスを掛けて来る中で、そのプレスに来た京都の2人の間、もしくは脇に必ず顔を出してボールを受けて捌いていました。
また、そうやって相手の最初のプレッシャーラインを越えることで、「京都は(秋山に)誰が出るか少し躊躇している」(梅山さん)状態ができて、中盤の底から攻撃を司る、まさに司令塔といったプレーを見せてくれました。

そしてしっかり繋ぐところは繋ぎながら押し込むというやり方の中で、秋山に負けないくらいの存在感を出しているのが史哉ではないでしょうか。
74分頃の相手のパスミスをワンタッチで新太へ繋いだところや直後のレオへのダイレクトでの素晴らしいフィードなど、クリアしても決して間違いではない、咎められることはないような場面でもしっかりと味方へ繋ぐ技術、そしてその意識はさすがだと唸らされました。

こうした繋いで押し込む攻撃の部分と、守備ではやや意外に感じた前から取りに行く姿勢がよかったのはもちろん、それよりも相手のゴールキックを始めとして相手陣内では前から寄せて、自陣まで来られたらしっかりブロックを作るという「エリアごとのプレーが整理できていた」(梅山さん)という使い分けを滞りなく出来ていた部分がさらによかったと感じます。
ひょっとするとこの試合は今年やりたかったことを一番表現できていたのかもしれないとも感じましたが皆さんいかがでしょう。

最後に

帰り道、雲が晴れて綺麗な夕日を見ることができましたが、これが幸せな結末を暗示した素敵な予兆であると、勝手に解釈していることをお伝えして締めたいと思います。

くりはら
くりはら
鳥屋野潟ほとり出身のアルビレックス新潟サポーター。海外はアーセナル推し。Jリーグ、海外、2種、3種、女子、その他、カテゴリーは問わずサッカーが好き。ラジオも好き。某坂道グループもちょっと好き。