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オレラグ

【Review】第12節 レノファ山口戦

2019年5月6日

GW真只中、快晴、小中学生無料招待ということで多くの少年少女も見守る中、コレオグラフィーも見事に決まり、完封で飾れたこの日の勝利は、令和初勝利であり、吉永体制初勝利であり、そしてビッグスワンでのリーグ戦通算300勝目でもあったそうです。
ただただ、幸せであります。

スタメン

新潟は前節から1人の変更と、それに伴いちょっとしたポジションの移動が施されます。
新井がCBへ戻って、左SBには尚紀が移り、右SBにはサチローが久々の出場となりました。
この週に1回練習を見に行ったとプレビューに書いたのですが、その際サチローがこの位置で使われているのを見ていたので、スタメンを見た時は練習でのパフォーマンスを評価されての起用なのだろうなと腑に落ちました。
対するレノファも前節からの変更が1人。
中盤に5試合ぶりスタメンの小野原が入り、システムも中盤が逆三角形の4-3-3(4-1-2-3)にして臨んできました。

前半

お互いが前線からプレッシャーをかけていくプランを持っていた中で、4分にはカウエが奪われたり、6分にもサチローから大へのパスがズレたりするシーンがあり、最初のピンチはその6分のボールロストからでした。
最終的にはペナルティエリア内の中央から田中が放ったシュートが枠を外れて事なきを得ましたが、立ち上がりに関してはこのように多少不安な部分が顔をのぞかせていたように思います。

しかし、少しずつ落ち着いてボールを動かして運べるようになり、まずい失い方も次第に減って自分達のペースにできていました。
レノファは佐々木が工藤と共に新潟のCBへプレッシャーをかけて、それに伴い三幸は佐々木が置いていった新潟のボランチを捕まえてというように、前へ出て守備をする際は4-4-2の形になっていましたが、それに対して新潟は善朗や凌磨がタイミングよく中央に入り小野原、三幸の脇や背中を取って中盤で優位性を作れるようになっていたと思います。
また、10分にはサチローが相手のベンチ前くらいで受けると早めにゴール前に入れたシーンがありましたが、以降も何回か似たようなプレーが見られてプレビューにこういうプレーは有効かもと書いた筆者的には1人で勝手にニヤニヤしていたのですが、別にこれを特別狙っていたというよりは、相手のどこが空いているか、相手にとって狙われて嫌なのはどこかを考えた中での1つの選択肢だったというだけのことでしょう。
そういう状況をしっかり認識した上でプレーを選べていたことがよかったのかなと感じました。

そして16分、歓喜到来です。
シルビーニョが抜け出したところで倒されて得たFKをきっかけに左サイドで尚紀、カウエ、善朗でボールを動かしてからのカウエミドル!
GKが弾いたボールをレオがプッシュ!先制!
立ち上がりにも同じような位置でカウエがボールを持ったシーンがあり、その時はくさびのパスを選択していたのですが、この場面は前が空いたこともあり思い切って狙ってきました。
レノファからするとセットプレーの時にカウエにドストンが付いていたのですが、しばらく付いた後、自分の持ち場に戻るタイミングで中盤の選手との受け渡しでわずかに誤差が起きてしまいスペースを与える形になっていたようです。
また、これはゴールとは少し関係ありませんが、きっかけになったシルビーニョへの三幸のファールは、確かに完全に抜け出した格好にはなっていましたが、ゴールまでの距離も遠く、さらに横から追いかけてきていた田中パウロは十分カバーに入れるくらいまで追いついて来ているようには見えたのでイエローが妥当だったかなとは思います。
カードを提示した後、詰めよる新潟の選手に対して主審も丁寧に説明しているようには見えたのでそれもよかったかなと思いました。

その後もチャンスを作ります。
27分、カウエのインターセプトからくさび、レオが落として善朗が抜け出してシュートは枠の外。
28分にはライン間で凌磨が受けると一気に対角の裏のスペースへ送ります。レオが収めるとスイッチしたシルビーニョがシュートを放ちますがDFにあたってこれも枠の外。
30分には自陣でカウエが奪うと凌磨へ渡し、一気にスルーパス。
レオが抜け出してシュートもこれはGKキャッチ。
こうしてチャンスを作りつつも、何より奪われた後の速い反応で奪いきるなりプレーを切るなりすることができていたので、いいリズムと雰囲気でゲームを進めることができていました。

そして45分には追加点が生まれます。
右から運んだ菊池の中央へ出したパスがズレたところを凌磨がカットしてそのままシルビーニョへ渡し、一旦ドストンがカットしますが、こぼれ球を大がワンタッチで裏へ送ります。
抜け出した凌磨のシュートはDFに当たったことで図らずもGKの頭上に美しい放物線を描いてゴールへ!素晴らしい。
久しぶりに大の空間を使ったセンス溢れるパスが見られたことが、彼はやっぱりちょっとした魔法の使い手であることを改めて窺い知ることができて非常に嬉しく感じました。

前半終了、2-0。
スタジアムは2点目の直後から蹴散らせチャントが響きます。
点差が大きく開いた時に歌われることが多いですが、あのイケイケの流れであれば踊れる時に踊っといた方がいいでしょう。

後半

レノファは頭から2枚替えを行ってきます。
工藤→池上、菊池→楠本。
楠本はそのままCB、池上は佐々木と共に前線に入り最初の陣形から4-4-2の形にしてきました。
菊池に関しては2失点目の発端にもなっていましたし、その直後にも横パスをレオにかっさらわれてあわや3点目というピンチにも絡んで、相当バタバタしてしまっていたのでそのあたりが原因だったのかと推測します。
工藤についてはDAZNの中継で解説の勲さんもおっしゃっていましたが、前線で構えて起点になれる工藤ですが、そこまでボールが行かないからもう少し下がってボールに関わってほしいという意図での池上投入だったのかなと思います。
実際池上は中盤まで下がってボールを受けるシーンが多かったですし、佐々木も同じように下がったりサイドに流れたりして受けていたので実質ゼロトップのような形でまずはボールをしっかり運ぶ、相手陣内に持っていくことを主眼にしての交代策だったのかなと感じました。
そしてこの変更は、新潟が後半シュートを放つまで30分を要してしまった点からもある程度功を奏したと言って差し支えないと思います。

53分には左サイド高井のクロスを大武がクリアミス。大谷がナイスセーブでしのぎ、さらに池上に詰められますがそこも大谷のセーブでしのぎます。
結果的にこの日のMVPに選ばれた大谷ですが、試合後のコメントではこのシーンで弾いた場所がよくないと反省の弁を残していました。
プロとしてはそういう意識はあって当然なのかもしれませんが、ヒーローになってもなお、さらなる質を追求しているところに頼もしさを感じました。

60分新潟はシルビーニョ→達也さんを投入します。
後半なかなかボールが入らない、前に収まらない中でズミさんや先に貴章投入なんかも考えられましたが、ボールがうまく入らないことでちょっとイライラが強めに出てしまって守備の部分でスイッチが切れちゃっているシーンが出始めていたのでそこの強度を下げないという意図で達也さん投入はベターな選択だった気はします。

それでも流れは好転しません。
64分には左からのクロスが流れたボールを小野原が拾って落とし、前の放ったシュートはわずかに上。
2分後には左からカットインした高井のミドルも大谷がファインセーブ。
さらに続けて池上の右CKから川井に2回シュートを放たれますが、ここも大谷が素早い反応で抑えました。

69分新潟、レオ→貴章。
74分にその入ったばかりの貴章が決定機を作ります。
相手のペナルティエリア内で楠本からボールを奪ってGKと1対1の大チャンス迎えましたがファインセーブに遭い、止めは刺せません。
さすがにここは決めていただきたいシーンでした……。
このビッグチャンスの直前、レノファは小野原→高木を投入して、システムは4-4-2のまま池上と三幸がボランチで、右に田中パウロ、左に佐々木で2トップに高井と高木という配置に変更してきました。

78分は新潟のチャンス。
貴章が投入されたくらいのタイミングで左右のポジションを入れ替えて左に回っていたサチローが、相手陣内でボールを奪うと自ら少し運んでクロス。
相手の小さくなったクリアを善朗が左足ボレー!GKに阻まれた後、さらに凌磨もシュートを放ちますがGKにキャッチされます。

この2分後に善朗→至恩という交代で3人の交代枠を使い切ります。
善朗はこの日も安定のパフォーマンスを見せてくれました。
この最後の交代枠については、もちろん至恩を使いたかったというのもあると思いますが、欧州なんかでよくある活躍した選手に拍手やコールを送るタイミングを作るための交代みたいにも勝手に感じました。

終盤レノファはさらに点を取るために前掛かりになったことで、新潟も貴章のクロスから達也さんの惜しいシュートだったり、至恩のスルーパスに貴章が抜け出しかけたりとチャンスが生まれるオープンな展開になります。
レノファは85分に池上のクロスに佐々木がヘッドというシーンがありましたが、新潟は最後まで集中を切らさずにゲームを締めることができました。

試合終了、2-0!
1か月ぶりの勝利、ひとまずよかったよかった、そんな気分です。

速く、強く、1つ1つを丹念に

まず、総じて守備に関しては切り替えが速く、ボールへの出足やその強度も速く強く行えていた印象でした。
ファーストディフェンスのレオナルド、シルビーニョが2人でCBにはめに行くケース、シルビーニョがレノファの三幸を見るようにしてレオナルドと縦関係になるケース、はたまた2人がまず三幸のラインの高さからスタートしてパスコースを消してから前線へプレッシャーをかけるケースと様々ありますが、いずれにおいてもそこでしっかり追えていることとそれに伴って後ろがしっかり押し上げられていることで、基本的に前を向いた状態で守備をすることができていたのが特によかったと感じます。
しっかりプレッシャーがかかっている状態で押し上げられないと、不用意に背後や斜め後ろで受けられて後手の対応を強いられることになるわけですが、前半のレノファが逆にそういった状態に陥っているような感じがしました。

また、どうしても後ろから追いかける形で守らないといけない状況が試合中に起こるわけですが、その時も例えば17分20秒からの形や24分15秒あたりからの形など素早い切り替えから複数で襲いかかって奪う、もしくはプレーを切るということもできていたように感じます。

さらに、前半に関しては奪った後やルーズボールを拾った後のフォローが近かったり、速かったりしたことで完全にこっちが主導権を握った状態でゲームを進めることができていたのではないでしょうか。
一旦攻撃が手詰っても冷静にやり直して崩しにかかる形なんかは練習で見られた通りというか少しずつやろうとしていることができている、またはその質を上げることができているのかなとも思えました。
もちろん、試合後のコメントでレノファの霜田監督が「自分達でゲームを壊してしまった」とおっしゃっていたようにレノファのミスが多かったり、前半は前線の動き出しも少なかったりというようなことを割り引いて見る必要はあるのでしょうけど、この試合を評価する上でこっち側からそれをわざわざ強調する必要もないかなとは思います。
ということをわざわざ書いてみたのはちょっとそんな声が自分の周りでは多く聞かれた気がしたので、こういう風にここで記しておこうと思った次第です。新潟は十分勝利に値するゲームをしていたと感じました。
ただ、相手の出来が悪かったのは日報に載っていたウチさんのコラムにも書かれていた通り事実ですし、またこのコラムに関しては相手に対しての大変辛辣な批評がとてもウチさんらしくていいなとも思いました。

課題

しかし、吉永さんも「反省点は多い」とコメントされていたように課題もあります。
それはやっぱり後半の戦いでしょう。
一番はトドメを刺せなかったところかなと思います。
先に少し脱線して書いておくと、「2-0は危険なスコア」というなかなか面白い格言がこの国のサッカー界では一般的に使われますが、正直あれはただの思い込みだと思っています。
要は2-0から逆転するという劇的な試合が記憶に残りやすいから、それが思い込みでいっぱい存在すると勘違いしているだけではないか、ということです。
レノファ戦に話を戻しますと、2-0で逃げ切れたことはよかったですが、当然2-0より3-0の方が安心です。そんな安心の3点目をチャンスがありながら決め切れなかったことは課題でしょう。
また、2-0で逃げ切るにしても後半はちょっと攻撃の形が乏しくなってしまいました。あれでは2-0も危険なスコアになりかねません。
相手が形を少し変えて、圧力を強めてきた中で、前半のようにボールをスムーズに動かせなくなったり、思うように拾えなくなったりした時にどれだけ他の方法を持っておけるか、それを実践できるかは課題の1つだと思います。
1つの解決策としては、達也さんが途中から入って2回オフサイドに引っかかりましたが、ああいう裏への動き出しというのは後半のような展開の中では有効であり、それと同時に必須になってくるかなと感じました。

最後に

サチローと至恩についてちょっとだけ。
まずサチローですが、やっぱり2度追い3度追いできたり、思い切って攻撃にも出て行けたりする運動量はさすがですし、空いていると見るやゴール前に早めに入れるパスだったり、くさびのパスだったりもそつなく出せますし改めていい選手だなぁと感じました。
守備の局面で取りに行くところと止まるところの判断の部分で少しリスキーに感じることもありましたが、それも彼の積極性あってのものなので変に縮こまるよりは全然いいですし、彼自身は立ち位置、ポジショニングに課題を感じていることをコメントしていたので、次節以降そのあたりも気にしながら彼のプレーを楽しみにしたいと思います。

至恩は前節水戸戦でわずかな時間の中ではありましたがほとんど見せ場を作れず、吉永さんからも「自分が出た意味を理解して」というような声をかけられたそうですが、この日は武器であるドリブルから貴章への惜しいスルーパスも見せていました。
また、87分には左で受けてキレのあるフェイントで相手を外し中へ入ってパスを出したところで引っ掛かってしまうシーンがありましたが、あれでいいのです。
奪われたら奪い返しに行けばいいし、このシーンのように先輩たちもカバーしてくれるわけですから。
厳しくも温かい目で応援していきたいと改めて思いました。

くりはら
くりはら
鳥屋野潟ほとり出身のアルビレックス新潟サポーター。海外はアーセナル推し。Jリーグ、海外、2種、3種、女子、その他、カテゴリーは問わずサッカーが好き。ラジオも好き。某坂道グループもちょっと好き。