オレラグ
からこそ、さらにガサゴソ【戦評】第28節 ファジアーノ岡山戦
こんにちは。
前回の福岡戦でも思いましたが、10月にもなるとナイトゲームはさすがに冷えます。ここ最近で言うとたぶん2015年の松本戦以来で(端山のゴールで勝ったやつ)こんな時期にもなって夜にやることなんてなかったはずです。
それでも今年はまだ11月下旬、そして12月のナイトゲームという未知の恐怖が待っていますから、この時期で寒いなんて言っていられません。
とにかく温かくして体調壊さないようにしましょう。
さて、悔しい引き分けです。
非常に痛い、もったいない勝ち点1に結果的にはなってしまったかと思います。今節も思ったことを振り返ってみます。
スタメン
中2日のゲームでしたが、新潟の方は前節からの変更が大本から中島に替わった右SHの1人のみでした。またベンチには久しぶりにシルビが入ります。
対する岡山は前節からの変更が6人。
FWは斉藤から山本、中盤はボランチのパウリーニョと右SH関戸から上田と野口。そして4バックに関しては左SBの徳元以外の3人をガラッと入れ替えてきました。CBのチェジョンウォンに関しては11試合ぶりのスタメンだったようです。
前半
開始1分、岡山は左サイドからのFKでゴール前に供給もクリア。
続いて2分、今度は新潟がテセのポストプレーから善朗がもらってミドルもGKキャッチ。
お互い長いボールを入れながらリスクを抑えた慎重な入りの中、どちらも1つずつ見せ場を作ります。
ただ、5分を過ぎたくらいからは予想された通り新潟が丁寧にボールを繋ぐようになり、それ以降は新潟がボールを持って岡山がブロックを作ってそれに対応するという展開が、基本的に90分続くこととなりました。
前半岡山の見せ場といったらまだ少しプレッシャーが掛かっていた序盤と、カウンターに出られた終盤くらいだったかと思います。
9分、高い位置でパスカットした上門のミドルは小島の正面。
14分、右サイド野口から中央の2トップを経由し、上田からのパスをもらった上門のミドルは上へ外れます。
そして終盤に飛んで36分、新潟のCKからの攻撃を防いだ後のカウンター。
右サイドを野口が抜け出してゴール前へ走りこんだ三村へのパスも、小島がナイスポジショニングを取ってクリア。
44分、後藤のフィードを三村が落とし、野口が左サイドの徳元へ展開。裏のスペースで受けた上門のクロスを山本にヘッドで狙われましたがここも小島のセーブで守り切りました。
やっぱり上門の積極的なシュートや、彼が絡むことで厄介な形を作られかけましたが、アディッショナルタイムに舞行龍がイエローをもらったシーンで梅山さんも仰っていたように、FWがサイドに流れて抜け出すシーンはほとんどありませんでしたし、何より新潟の守備への切り替えの速さが光っていたことで失っても素早く回収して主導権を握ることが出来ていたかと思います。
だからこそ先に1点を取っておきたいところでした。
7分、高い位置で相手のパスミスをカットした善朗から最後は至恩のシュートも枠の外。
21分、右サイドで田上とのパス交換から抜け出した中島のシュートはGKセーブ。さらにテセが粘って最後は至恩がシュートもGK正面。
振り返ってみると決定的なシュートシーンというのは多くありませんでしたが、ラストサードまで持ち込んで攻めこむ形は幾度もありました。
HTに出ていたアタッキングサイドの数字は前節とは打って変わって60%が右に寄っていましたが、前節とは違い左からも至恩がDF2人の間を割って行ったり、善朗とのワンツーで抜け出したりという仕掛けの形は見られて、それほど偏っていることにネガティブな印象はありませんでした。ただ、それはもしかすると失ってもすぐに奪い返すことが出来ていて、カウンターをケアできていたからかもしれません。
理由は何であれポジティブな内容だったことは間違いないでしょう。
前半終了、0-0。
残念ながら得点は奪えず。
後半
両チームとも1人ずつ交代を行います。
新潟の方は史哉→荻原。
もう少しサイドから仕掛けて行く形が欲しいということでの起用だったかと思います。
対する岡山は野口→斉藤。
ケガ人が続出したこともあって前節からFWに抜擢されていた三村を本来のSHに戻し、山本と斉藤という純正なFWを2トップとして後半からは起用してきました。
立ち上がりも立ち上がり、岡山はテンポよく繋いだところから、斉藤が上田とのワンツーで抜け出して早速崩しの形を見せます。
さらに直後のCKもチェジョンウォンのシュートで完結させると、新潟のゴールキックからのリスタートに対しても前から嵌めこんで運ばせない守備をしてきました。
後半の入りから岡山が圧力を掛けてきてちょっといろいろ慎重に考える必要があるかな、なんて案じていたのも束の間、相手のミスを奪ったところから田上が深い位置まで侵入してクロスを上げるシーンを作ると、48分には相手を見ながらボランチを使いつつボールを出し入れする形も作って落ち着くことが出来ました。
51分にも岡山のラインが上げ切れておらず、全体の陣形が広がったのを見逃さずに至恩からライン間の善朗へくさびのパスが入ります。至恩に対応した松木に対して有馬さんからは「マツ!そこで止まったらプレッシャーになってないから!」と声が掛かっていましたが、前線の選手がプレッシャーを掛けに行くのに対して中盤より後ろの選手が離れてしまっていたことは解説の梅山さんもご指摘されていました。
これは推測ですが、立ち上がりに前から取りに行く姿勢は見えたので、前線としてはそれを続けようとしていたのだろうと思います。そして中盤より後ろの選手もそれは共有していたとは思いますが、新潟の選手がしっかりライン間や選手間に立てていたことで少し勇気を持って出て行きづらくなったのかなと感じました。
そういった展開が見られた中で、58分に岡山が2人目の交代を行います。
三村→パウリーニョを投入して白井を右SHへ移し、パウリーニョと上田がボランチのコンビを組む形にしてきました。
これは守備の立て直しという意図だったろうと思います。
実際狙い通りにバランスは修正されているように感じましたが、いかんせん奪った後のミスが散見されて反撃の形までは作ることができていませんでした。
新潟としては、相手のミスもありつつ素早い守備への切り替えも継続できていて、引き続きボールを支配しながらゲームを進めます。
63分には左サイドで荻原、島田、善朗、至恩でボールを動かして中島が内側から抜け出す形を作りFKのチャンスを得ます。中島のキックはGKに弾かれ、さらに善朗の右CKからテセがヘッドも得点とはなりませんでした。
この直後に善朗、テセ→ゴメス、ロメロを投入。
この交代で左SHにゴメス、右に至恩。そして前線にロメロと中島が並ぶ形となりました。
67分には小島の素晴らしいフィードからゴメス、島田、再びゴメスから至恩と中央でいい運びを見せますが最後田上のクロスは少し大きくなってしまいます。さらにロメロの推進力を活かしたり、荻原が得意の仕掛けを見せたりしてセットプレーも得ながら攻め立てますがなかなかゴールを奪うことができません。
岡山の方は77分に松木、山本→椋原、デュークカルロスという交代を行い、右SBと2トップの一角をそのまま入れ替えます。
それでも相手の交代など関係なく、78分には右サイドで田上がカットしたところを起点に、中島のポストプレーから福田とロメロの流れるようなパス交換を経て左のゴメスへ展開し、中央で再びもらった中島のミドルをロメロがコースを変えてゴールを脅かしますが枠へは飛びません。
残り時間が刻一刻と少なくなっていく中で新潟はシルビを呼んで、終盤さらにギアを上げる準備を始めますが、その矢先でした。
81分、ビルドアップで最終ラインに下がって受けた島田がコントロールミス。これを斉藤に奪われてそのまま持ち込んでシュート。失点。
岡山としては何とかここまで我慢した甲斐があったといった感じの得点だったでしょう。
痛すぎる失点、ミスによってプレゼントしてしまったような失点でしたが、ゴメスの言葉通り「なくさなきゃいけない」ことでありつつも今年から取り組んでいるやり方であれば「起こり得るミス」なのです。
ここで島田を責める人とはたぶん友達になれないなっていう感覚です。
1点を失ったことでさらにギアを上げる必要に迫られた新潟は、まず準備していたシルビを至恩に替えて投入します。
83分には右サイド田上の落としから福田のクロスを中島がヘッド。こぼれ球を島田拾ってシュートもGKセーブ。続けて中島の左CKからニアで舞行龍が触ってファーサイドへ田上も詰めに行きますが触れません。
それでも87分に執念が実ります。
ビルドアップから舞行龍が運び出し、荻原が福田とのワンツーで中へ。少しパスがズレますが、田上が受けてシルビからロメロと繋いでクロス。ブロックされたボールをシルビが拾って田上がサイドチェンジ。ゴメスがもらうと縦に突破してクロス。走りこんだ田上のヘッドはポスト直撃もこぼれ球を中島が収めて左足!同点!
椋原がクリアしたボールを拾ったところから4、50秒かけて左から右、右から左と揺さぶってついにこじ開けました。
追いついてからの最終盤はそれまで比較的静かだったのとは対照的に行ったり来たりのめまぐるしい展開となります。
新潟の方は中島のポストプレーからゴメスが侵入してあわやオウンゴールというシーンを作ったり、セットプレーのチャンスも何度か作ったりします。岡山の方はアディッショナルタイムに上田→下口を投入。本職はSBの下口を右SHに入れて少し勝ち点1も視野に入れつつも、行ける時は迷わずカウンターに出て最後までチャンスを作ります。
しかし結局そのまま試合終了、1-1。
個人的には同点に追いついたことで交代が取りやめになった達也さんをそのまま投入してもよかったのかなあと思いました。
もちろん、それでさらに前掛かりになれば勝ち越されるリスクも高まりますし、そのままのメンバーでももう1点取れる勢いがあったと考えれば十分理解もできるわけですが。
まあこれはどうしたって結果論になりますし、善し悪しの判断はできません。ただ達也さんが見たかったなっていう願望込みの感想です。
エリアの深い位置を取る
ボールを持って試合も支配しているけどなかなか1点が取れないという課題がやはりこの日も最大のテーマになったかと思います。
今回はアタッキングサードまで入ってサイドで保持している時について、気になったところを拾って図にしていただきました。
前半36分。
右サイドの深い位置でテセが起点を作り、善朗に戻したところでサイドが善朗&福田vsDF2人という2vs2の状況になったシーンです。
この時にゴール前には4人が入って人数が掛けられていること自体はいいのですが、2vs2の局面とゴール前との局面がそれぞれ独立してしまっているような気がしました。つまり、ゴール前の人はクロスを待つだけになっていた気がします。
テセが深い位置で起点になってからゴール前へ戻ったタイミングで、入れ替わるようにでも、少し時間差をつけてからでもどちらでも構いませんが、中央から誰か1人ボールに寄って来てもよかったのではないかなと思いました。
そして中の4人と外の2vs2の間に岡山のDF(徳元)がカバーとして入っていましたが、この選手を引き付ける意図も含めて、近寄ってからゴールラインの方へ抜けてエリアの深い位置を取るという意識が欲しいなとも感じました(下図のようなイメージ)。
この後実際には、後ろにいた島田が思い切って前に出て来て突破を試みましたが、結果的にクリアされて新潟のスローインとなりました。この島田のプレー自体も決して悪くありません。むしろ積極性を感じさせてくれるという意味ではいい飛び出しだったと思います。
ただ、ゴール前は最低3人いればいいと思っているので(個人の感想です)、ここで島田が前へ出ていくリスクを考えると、中から1人が寄って来て絡みに来てくれた方が効率的だしリスク管理にもより配慮した形ができるかなといった印象を持ちました。
ちなみにですが、27分にも左サイドで相手DFと同数の状況があり、結局下げてやり直したのですが、そこでは梅山さんも「背後に抜ける動きが欲しい」ということを仰っていました。
ホーム甲府戦のこの戦評記事でも、サイドで持ったところからのもうひと工夫という話は書いたのですが、ゴール前の人数であったり、もう1回やり直して押し込んだりということは確実に進歩していると思うので、こういう場面を崩し切れる形や連携が作られるといいなと感じました。
光る守備への切り替え
失った後の即時奪回、セカンドボールへの反応、中2日を感じさせないくらいこの日は特に守備への切り替えが光るプレーがたくさんありました。
至恩が仕掛けて取られた後にすぐ取り返しに行くプレーはたぶん3回はあったと思いますが、これには梅山さんも絶賛されていました。
そしてカウンターを食らいそうなところで内側にポジションを取っている史哉がナイスポジショニングでカットするシーンも何度もありましたし、福田はポジショニングもそうですが、体の入れ方や取りに行く出力の出し方やタイミングなんかがさすがでした。
また、連動した守備という点では逆サイドの選手の絞り具合と、味方に加勢して相手を囲いこんで連続したプレスを可能にした場面も何度か見られたのは非常にわくわくできました。
過密な日程で大変ではありますが、これを続けることが出来れば崩されたりこじ開けられたりすることはそうそうないと思えたので、やはり攻撃の質、ビルドアップの質をさらに高めていくことがより重要だとも感じた次第です。
最後に
DAZNのセリエA中継でもお馴染み、熱いローマサポーター=ロマニスタである実況の北川義隆さんが、いいサッカーをしながらも1人退場したユベントス相手に引き分けてしまった愛するローマについて「いいサッカーをする時は勝たなきゃダメ」ということを仰っていました。
その言葉に確かにそうだよなと改めて思わされました。
今チームが取り組んでいること、表現していることは全くもって間違っていないと思いますし、確実に成長して強くなっているでしょう。
ただ、勝つことでそれは真に証明されますし自信にもなっていきます。それはアウェーの福岡戦や京都戦でも実際に感じられたことです。
こういう試合をしっかり勝ち切れるように、いいサッカーをしているからこそ勝てるように、がんばりましょう。