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オレラグ

サラバ未勝利【展望】第5節 東京ヴェルディ戦

2021年3月26日

こんにちは。

今週のある日、新潟はとっても天気が良くて、広がる青にふわふわ浮かぶ白の画はまるで初夏を思わせるようでした。とはいえ空気はピンと張っていて、時折吹く風も冷たく感じられるあたりはやっぱり春先のそれです。そしてそんな空気や風を感じると無意識に卒業や門出というものが想起されます。

不思議なもので卒業っていうのは式自体の記憶は大して残ってなかったりします。それよりも、その後仲のいい何人かでダラダラといつまでも教室で喋っていたことだったり、はたまた前日に見た綺麗な夕焼けを見てセンチメンタルな気持ちになったりした記憶の方が鮮明で、さらにその時頭の中で流れていた曲なんかもちゃんと思い出せるのです。
その記憶全てが正しいものかそうでないかはもう今となっては知る由もないですし、心のどこかでそんな綺麗ずくめでもなかったような気もするのですが、だからこそつくづく過去っていうのは勝手に美しくなるものだなと思い知らされます。

的確な補強もスタートはイマイチ

何だかいい雰囲気でそれっぽく冒頭部分を書いちゃいましたけど、もう限界です。やっぱりいつも通りサッカーの話をするのが一番楽しいですから、さっさと本題に移りましょう。
2週続けてのホーム戦となる今週末の第5節は、ここまで1勝1分2敗とイマイチ波に乗ることができていない東京ヴェルディとの対戦です。

永井秀樹監督3年目となる今季のヴェルディについて、まず選手のインアウトから少し確認しておきます。
アウトで言うとやはり井上、藤田というアカデミー育ちの若手2人がJ1へ引き抜かれたというのが最も大きな痛手でした。永井さんが現役の晩年にプロデビューを果たした井上と、永井さんがユースの監督時代から育ててきた藤田という、ある種独特で特徴的なスタイルを持ったヴェルディというチームにおいてそれを熟知している2人の移籍はマイナスと捉えざるを得ないでしょう。
しかしインのリストを見ると、昨年躍進した北九州でボランチとしてチームを引っ張った加藤や、昨年は徳島でプレーしたものの1年で復帰となったアカデミー育ちの梶川など、マイナス面を十分に埋められる的確な補強がしっかりと行われました。そして実際ここまでの4戦を見てもその加藤や梶川は何の違和感もなく中心選手として活躍しています。

変わらぬスタイルをさらに研磨中

『ある種独特で特徴的なスタイル』と先程書きましたが、それはつまりシステムはあってないような感じで、選手それぞれが入れ替わり立ち替わりポジションを変えながら、高いポゼッションを軸にしてゲームを支配するという非常に流動的で攻撃的なスタイルということです。
ということでまずそんな特長でもある攻撃について書いていきます。

まずビルドアップの際に基本となる並びというか立ち位置を少し無理矢理ですが数字の羅列で表現するとしたら、3-2-5もしくは2-3-5といった感じになるかと思います。前線の5に関しては両ワイドに1人ずつ幅を取る人がいて、中央のエリアにいる3人は特に流動的に動きながら相手のライン間を狙ってくるので実質0トップみたいな感じとも言えます。

そして数字の羅列自体が多少無理矢理であるくらい流動的な中で、その並びへ変化するパターンもこれまた様々あります。守備の時は基本4-4-2なのでそこからの変化としてとりあえずいくつか列挙しておくと、
①ボランチ1人が下りて後ろを3。残ったボランチと前線の1人が下がって2。両SBが幅を取り、SHと前線1人が中央エリアを流動的に動く3-2-5。
②片方のSBが留まることで後ろを3。もう片方のSBがボランチの位置に入り片方のボランチと共に2。両SHが幅を取り、SBの1人がボランチに出たことで押し出されたボランチと前線2人が中央エリアで動く3-2-5。
③両SBがどちらもボランチの位置に入ることで後ろはCBのみの2。ボランチ1人と内側入って来た両SBによって3。両SHが幅を取り片方のボランチと前線2人が中央エリアで動く2-3-5……etc

こういったことに加えて例えば、CBが1人ボランチの位置へ出ることで後ろを3にしたり、前線の1人が幅を取る役割を担ってそちら側のSHは中央のエリアでライン間を狙ったり、または後ろを3人にした上でその前にボランチ1人だけをアンカー的にプレーさせることで前線で4人が流動的に動くパターンも見られました。
とにかく様々な変化をさせながら相手を動かして、空いた所に通したらまた次に出てくる相手の裏を取って、ということを常に狙ってきます。

そんなヴェルディに対して昨年の対戦ではSHが外を切りながらプレスを掛けて中盤内側で奪う狙いがある程度奏功しました。しかし今季ここまでヴェルディと対戦した山形であり町田なんかは内側をしっかり閉めて外へ追い出して奪いに行く形がハマッてもいました。
いずれにしても守る側として大事になるのは、どこで追い込み奪い切るのかということをしっかり意思統一して明確にすることかなと思います。

昨年は奏功したとはいえ、中央に入れられた場合たとえこちらがコンパクトにしていたとしてもそれを剥がすだけの技術をヴェルディというチームは持っていますから、1つかわされるだけで一気にピンチになるリスクはあります。そう考えるとサイドでコースを限定した状態にしたところを強く狙いに行くことはそういったリスクも抑えつつリカバリーも効くという見方もできます。
ただ守備から攻撃に出ることを考えた場合は中央に誘導して奪えた方がより可能性は広がりやすいということも言えます。この辺のヴェルディのポゼッションに対する新潟の追い方や寄せ方は改めて注目したいところです。

またヴェルディはなかなか中央に縦パスが入らない場合、ボランチであったり前線で流動的に動く選手だったりがサイドに流れて下りて起点を作ろうとします。ただそれは一旦陣地を押し上げるための落ち着きどころとして考えている場合もありますし、相手が無理して抑えに行こうとして中央の選手が持ち場を離れることを狙った罠を意図している場合もあります。
相手がどういう意図で外に出たかを見極めて、まずやられてはいけないのは裏であり中央であるということを念頭に置きつつ出るか出ないかという判断が、非常に大変で難しいところではありますが重要なポイントになるでしょう。

ちょっとした隙はあり

続いて守備についても少し。

先程もちらっと書いた通り、守備の際は基本的にシンプルな4-4-2を敷いてきます。前からプレスを掛けるシーンもそれなりにありますが、ベースとしては前線2人がまず相手のボランチの選手を消すところから始めてミドルゾーンでブロックを作るのが主な形です。

ただ組織的ではあるのですが我慢強さみたいな部分は多少綻びもある印象を持ちました。
ヴェルディが攻撃でテンポよくボールを動かせていたり、縦パスがよく入っていたりする時は、その勢いのまま素早い寄せで回収できることが多いのですが、そうでない時の我慢しないといけない場面で、少しブロック守備でスペースを埋める意識が強く働き過ぎるが故にボールホルダーに寄せが遅れたり甘くなるシーンというのはこれまでの試合を見る限りいくつか見られました。

またこれは前節のヴェルディと金沢の試合であったことですが、ヴェルディがビハインドの状況で金沢のSHが少し下りてボールを受けた際にヴェルディの寄せが甘くなったシーンで解説をされていた金鍾成さんが「守備も仕掛けて行かないと」と指摘されている場面が何度かありました。
これもやはりブロックで守る際にあまり動かされすぎないようにとか、人に付いて行き過ぎないようにといった意識があるからなのかもしれませんが、攻撃的に仕掛ける守備の物足りなさみたいなところは、新潟としては付け入る隙が十分あるのかなと感じました。

アクセント山下

ポゼッションを特長としているチームですが、いい攻撃ができている時は繋ぎに固執することなく、狙えるところはシンプルに裏へ送る攻撃もできるチームです。これは前節対戦した金沢のヤンツーさんも試合前コメントで「ここ3試合でチャンスを作っているのは両ウイングの背後」ということを仰っていました。
ただ逆に言うと攻撃のテンポが出ない時間帯や、もしくは相手に押し込まれて我慢が続く劣勢の時間帯は、マイボールになった際に繋いで自分たちの時間を作って立て直そうとする意識が強くなり過ぎるせいか、奥行きを使う意識が薄くなってしまい、結局低い位置でミスが起きたり奪われたりしてしまう悪循環に陥るパターンも見られました。

そういった特徴があるヴェルディだからこそ、少しいい意味の違和感を持った選手として要警戒しておきたいのが11番の山下です。スピードがあり小回りも利くドリブラーの彼ですが、前節はチームが短い繋ぎに固執してしまう時間帯でも、彼がいくつか裏に抜ける動きを見せることで違いを作っていて、結果的にゴールも奪っていました。
新潟としてはラインを高くしてコンパクトに守ることはこれまで通り大事なことですが、常に飛び出しを狙う快速アタッカーの山下を最終ラインは少し意識しておく必要があるでしょう。また最終ラインに限らずGKの航斗も先に反応して前へ出てクリアできる準備を特に今節はしておかないといけないかなと思います。

最後に

きっといつの日か笑い話になるのかな
あの頃は全然勝てなかったなんてね
水平線に消えて行く太陽みたいに
僕らの悔しい記録もサラバなのだね
サラバ未勝利

いい加減ヴェルディに勝ちましょう。

くりはら
くりはら
鳥屋野潟ほとり出身のアルビレックス新潟サポーター。海外はアーセナル推し。Jリーグ、海外、2種、3種、女子、その他、カテゴリーは問わずサッカーが好き。ラジオも好き。某坂道グループもちょっと好き。