オレラグ
ユニフォームとデザイン
デザインの視点からフットボールを読み解くコラム、「フットボールとデザイン」。第2回の今回はユニフォームをテーマに掘り下げてみようと思います。
ユニフォームはチームの顔であり、結束の証であり、広告塔でもあります。そんな様々な要素を持っているユニフォームを分析してみます。今回は主にフィールドプレイヤー(以下、FP)の1stユニフォームを前提にコラムを進めていきます。
要素① ボディ
まずはユニフォームの基盤であるボディから見てみましょう。ボディの色・柄は、そのユニフォームの方向性を決める最初の大切な選択です。
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— アルビレックス新潟 (@albirex_pr) 2019年2月24日
2019年のアルビレックス新潟のFP 1stユニフォームは、オレンジ地にブルーの特徴的な横線が描かれているものを使用しています。これはアルビレックス新潟オリジナルのものではなく、adidasのテンプレートのひとつです。各パーツの柄と色を自由に選んで作れるmiadidasというサービスを使っているようです。背中側の襟裏にそれを示す黒いリボンが付いています。
要素② エンブレム
次にクラブの顔である、エンブレム。2019年のアルビレックス新潟は刺繍で作られたエンブレムを左胸に付けています。以前はスポンサーマークと同じように圧着でした。
Jリーグ的にも世界的にも左胸に付けるのが一般的で、それ以外だと2019年の名古屋グランパスや99-00年のバルセロナのように中央に配置される場合もあります。
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— 名古屋グランパス 公式 (@nge_official) 2019年3月3日
これはボディの柄との兼ね合いだったり、スポンサーマークの有無によって位置が変化します。名古屋は前者ですね。特徴的なボーダーを映えさせるためにエンブレムを中央に配置しています。って、書いていて思ったんですけど、もしかしたら逆かも。どちらにせよ、上手くまとまってるのでOKでしょう。
エンブレムの表示方法は大きく分けて3つあります。刺繍と圧着と、昇華プリントタイプがあります。ユニフォームの柄を一緒にエンブレムも生地の時点で印刷してしまうというもの。利点は他の生地と全く同じ着心地なので、汗をかいても違和感がありません。僕個人としては刺繍のエンブレムが好きですが、実際に選手が着用する場合は、汗を吸って重くなってしまうという難点が。機能性を取るか、見栄えを取るか。難しい判断です。
要素③ 背番号・胸番号・選手名フォント
そして次に背番号・胸番号・選手名のフォント。ここに使われるフォントには、実は厳しいルールがあります。
ドルトムントを手掛けるPumaのデザイナーが語るフォントデザイン(別タブで開きます)
これはUEFA(欧州サッカー連盟)とFIFA(国際サッカー連盟)の規定なので、Jリーグの規定はまた少し違うものだと思いますが、そんなに遠くもないはずです。
普段何気なく目にしている背番号や選手名のフォントは、こうしてたくさんの手間がかけられて作られています。興味深いですね。
僕は2015年の川崎フロンターレのユニフォームに使われているフォントが好きです。作ったのは新潟県出身のアートディレクター、大塚いちおさん。ぐぬぬ……
そして今年変化があったのは胸番号。現時点では特に発表はありませんが、2019年から胸番号は必須では無くなったようです。最初僕はサプライヤー毎に違うのかな?と思いましたが、同じadidasでもアルビレックス新潟にはありますが、横浜F・マリノスにはありません。同じPumaでも川崎フロンターレにはありますが、セレッソ大阪にはありません。クラブ毎の選択制のようです。
欧州を真似しているわけではありませんが、デザイン的観点から考えると、要素はできるだけ少なくしたほうがまとまりが生まれます。2018シーズンから鎖骨スポンサーが解禁された今日のJリーグでは、胸番号は無いほうがデザインの自由度は高いと言えます。
要素④ スポンサーマーク
最後にスポンサーマーク。クラブが最もコントロールしづらく、かつユニフォーム全体のデザイン調和に関わる1番重要なパーツです。
2019年のアルビレックス新潟は、胸スポンサーマークを以前のように「亀田製菓」表示に戻しました。また腰スポンサーマークをよりわかりやすい「JA全農にいがた」に変更しました。その他、背中スポンサー「KOMERI」、左袖スポンサー「NAMICS」、右鎖骨スポンサー「NSG GROUP」、左鎖骨スポンサー「DENKA」は、2018年から継続です。
Jリーグ全体を見てみます。2019年のJリーグ全55クラブのFP 1stユニフォームの中で、スポンサーマークを最も上手くユニフォームデザインに落とし込んでいるクラブは、東京ヴェルディ。
東京ヴェルディの2019ユニフォームが届きました。
50周年!ゴージャス! #verdy pic.twitter.com/IFof0cH6mz— 高田桂@いぐのべる (@takadakatsura) 2019年2月21日
企業(特にスポンサードしてくれるくらい規模の大きな会社は)コーポレートカラーを決めている場合が多いです。マクドナルドなら「レッドとイエロー」、ファミリーマートなら「グリーンとブルー」。色だけでその企業と連想できますね。それを狙って、各社コーポレートカラーを設定しています。なので余程のことがない限り、そのカラーを覆すのは難しいのです。
そこで東京ヴェルディのユニフォームをもう一度見てみましょう。胸スポンサー「Akatsuki」、背中スポンサー「MJS」、腰スポンサー「e*grand」の表示がゴールドになっています。しかし3社とも、コーポレートカラーはゴールドではありません。
これはなんと50周年記念のゴールドの背番号カラーに、3社のスポンサーマークの色を合わせたのです。コーポレートカラーの露出よりもユニフォーム全体の調和を選んだということ。サッカーを愛するグラフィックデザイナーのひとりとして万雷の拍手を送りたい。そのくらいデザイン的に正しい選択です。この流れがJリーグ全体に波及してほしい、そう願わずにはいられません。
あとがき
色んな人や企業の思惑が入り乱れるユニフォーム。それをひとつの方向に纏め上げるのは至難の業です。そんな想いの込められているユニフォームを身に纏って、力の限り応援しよう! 皆さんの好きなユニフォームを #オレラグ で教えてください。記事の感想も書いてくれると嬉しいです!