オレラグ
始まりの香り ~潮風打ち消すニンニク~【戦評】第1節 ギラヴァンツ北九州戦
こんにちは。
まじで最高っすね。たまらんっすね。
オープニングゴールが10年ぶり復帰のチバちゃん。続いてエースとしての活躍が期待されるストライカーの孝司。そして悩みながらもチーム残留を決断してくれたナンバー10・至恩。
開幕から古巣対戦で燃えていたであろう新加入の奏哉が入れたクロスからのオウンゴールを含めて4ゴールでの勝利。もう文句なし、言うことなし!……というわけではないので、まあその辺の言いたいことはこの後好き勝手書いていくとして、とにかく何より大事な勝ち点3を取ってくれたというこれに尽きます。ナイスプレー、ナイスゲームでした。
スタメン
とりあえずスタメンからおさらいしておきましょう。
まず新潟の方は、CBのチバちゃん、右SBの奏哉、ボランチのヤン、そして1トップの孝司と、新加入4名がスタメンに名を連ねました。また、GKにはプロ2年目で昨年はベンチ入りまではしたものの出場機会のなかった航斗がついにプロデビューを飾りました。おめでとう航斗、これからも頼むぜ。
それにしても小島がいて和輝がいて航斗ですからね。改めて頼もし過ぎるGK陣です。
対する北九州の方も新加入が4名スタメンに名を連ねていました。
まずGKの吉丸。そしてボランチの六平、左SHの前川がいて、前線(トップ下)には富山が入っていました。
展望記事で名前を挙げた平山はベンチで狩土名に関してはベンチ外ということで、やっぱり今年もこんな感じかなとは思いますが、ただAlbiWAYの方に出した予想スタメンの8人が正解ということで、外したのが3人のみというのは開幕戦にしてはそれなりに当たった方かなと我ながら思っています。
はい、そんなことはいいとして、さっさと本題行きましょう。
前から来た北九州
今までは時系列的に試合を振り返ってからよかったところや気になるところを取り上げていたんですが、今年は省力化であり効率的にやってみようということで時系列的に振り返るのは省いてみます。
ただ、正直分かりません。やっぱ自分の中でやりづらいとか書いておきたいってなったら急に書くかもしれませんが、まあその辺はマイペースにやっていきます。
ということでポイントとして取り上げてみたお話のまずは攻撃面について。
こちらは敵将の小林伸二さんも仰っていましたが、SBの裏のスペースを効果的に使うことができ、さらにそれをしっかり得点に結び付けられたことが大きな勝因となりました。
キックオフからすぐの場面で北九州の右SH・高橋が、彼本来の担当であるゴメスではなくさらに奥のCBであるチバちゃんまで出て行ったのが象徴的だったように、最初見た時は右から追い込んで中央にパスを出させてそこを狙うであったり、もしくは早めに右から出て行くことで至恩へボールを入れさせないようにしたりする意図があるのかなと推測しました。
実際のところは試合後のコメントで小林監督が「特にわれわれの左サイドについては、相手の背後を取るということでボールに対するプレスを躊躇なく厳しく行くように伝えていて……」と仰っていたので、右から追い込むというよりも、最初から右を消しておいて左に出させておいてそこで強く行くという感じだったため、高橋がより前へ出ているように見えたということだったのかなと思います。
前から奪いに行く北九州の狙いに関して、昨年まで同様分かりやすい図を作っていただけたので下図をご参照ください。
前線の1人(この時は富山)が新潟の低い位置に残るボランチ(主に島田)をケアしに行くのと同時に高橋は早めに前へ出てやはりここもチバちゃんのところまで出られるようなポジションを取っています。そして航斗が右の方へ出そうとしたのを見て今度は北九州の左SH前川が史哉までスプリントをかけようとしていました。
これは開始2分過ぎの場面ですが、このように立ち上がりから非常に分かりやすい立ち位置で前から嵌めに行く動きを見せていたのが北九州でした。
史哉の肝となったいなし
そんな北九州の守備に対して新潟が見せた攻略がまさに先制点のCKへと繋がった一連の攻撃です。
チバちゃんから一旦航斗まで戻ったボールに対して北九州のFWはそのままプレスを掛けてきて、FWが置いて行ったチバちゃんに対しては連動して高橋がすぐ捕まえに来ています。
続いて航斗からパスをもらった史哉に対しても前川が取りに来ますが、ここで史哉は結果的に少し窮屈になりながらも落ち着いて相手を剥がして奏哉へと繋ぎました。ここがこのシーンにおける肝だったと言えるかと思います。
ここでプレスをいなして奏哉へ繋いで縦へ展開できたことで、前掛かりとなった相手のSB裏のスペースを陥れるところまで持っていくことが出来ました。
いくつか縦パスがズレたり、ヒヤッとする場面もなきにしもあらずでしたが、それでも舞行龍が不在のCBに史哉を起用した意図というのは恐がらずにボールを受けられて配球をしてくれるという期待があったからでしょうし、この“開幕戦の先制点”という、のどから手が出るほど欲しかったゴールに繋がったという意味で、期待にしっかり応えてくれたプレーだったと言えるかと思います。
輝く新しい力
結果的にその後の2、3、4点目も全てが右サイドを攻略してのゴールとなりましたが、先に書いた通り左から強く出て行こうと狙って来ていた北九州に対してもう1つ新潟がよかったことを挙げるならば、試合全体を通して簡単に中盤や前線の選手が下りてボールを受けようとし過ぎなかったことがあるのかなと感じました。
4点目なんかが特に分かりやすいですが、一旦航斗まで戻ったボールに対して北九州はFWの1人がプレスを掛けて来ていて、先制点のシーン同様左右のSHも開いた新潟の両CBに寄せられる位置まで出てきています。それに対して航斗は浮球のパスでフリーの奏哉へ送って局面を打開しました。
GKまでFWが出てきているということは、必然的にフィールドプレーヤーのマッチアップはどこかで1人が空くことになります。1人空いたところにボールが出せれば相手はそこへ誰かがマークを捨てて出る必要が生じますから、そうやって少しずつズレができてしまうことになります。そこを新潟は航斗の浮球を起点に奏哉、ロメロ、善朗と少ないタッチで繋いで見事に突破しました。
航斗はこのシーン以外にもフワッと浮かしたパスでSBへ届けたり、少し鋭いボールで前線の選手に入れたりというプレーが幾度も見られました。特に鋭いライナー性のキックは、グッと体を寝かせてボールを切る感じで蹴るパントキックに象徴されるように、ユースや筑波時代からよく見られた特徴的なプレーだったので、それを見られたというのは何だかすごく嬉しく感じました。
少し話が逸れたので戻ります。
さらに選手がボールを受けに無暗に下がり過ぎないという点で新加入選手の存在も大きく感じられました。
チバちゃんや奏哉ももちろんですが、ヤンが前半はちょっとうまくゲームに乗れていなかった印象だったのですが、積極的な飛び出しからポスト直撃のシュートを放ったり、彼らしいタフなコンタクトでボールを奪ったりできるようになった後半は、ポゼッションの部分でも右から来たボールを左へ、左から来たボールを右へと、難しいプレーはせずとも少ないタッチでシンプルにボールを動かすことでリズムやテンポを作っていた印象でした。
また前線に立つ孝司についても、町田や琉球時代から見せていた安心と信頼のポストプレーによってしっかりと時間を作ってくれましたし、それによって味方も思い切って前へ出て行けるようになっていました。
昨年苦しんだ終盤を思い返すと、ボールは持っているけどなかなか前に入れられないがために前から選手がどんどん下がって受けに来てしまい、それでも結局プレスを掛けられてラインが下がってしまい最悪ピンチにもなってしまうという悪循環が見られました。
しかしキャンプ中の報道で善朗も新加入の選手が入ったことによって彼自身も下がり過ぎずプレーできるという話をしていましたが、その通りのプレーが開幕戦から早速見ることができました。
是が非でも伸ばすべきことと伸びればなおよいこと
一応課題として気になった点も挙げておきます。
まずはやはりアルベルさんもチバちゃんも話していたように後半の頭の時間帯、相手のプレスのギアが上がった中でバタバタしてしまったのは改善すべきポイントでしょう。
この時間帯こそまさに小林監督が仰っていたような左から厳しく行く狙いにまんまと嵌められてしまったというのは、右SBの奏哉による2つのパスミスを発端にチャンスを作られてしまったことからも明らかでした。
もちろん全ての試合において相手のペースになる時間帯というものはあります。その時いかに状況を見ながらプレーできるかが問われます。場合によっては自分達の狙いとしていることとは少し違う選択をするべきこともあるかもしれません。相手を見ながら判断して柔軟にプレーできるかという点はまだまだ伸び代がたくさんあると言えそうです。
もう1つはやらないといけなかったことというよりは、できればさらによかったことではあるのですが、序盤から北九州の高橋が前掛かりにCBまで出てくることもあってか、案外ボールを受けたゴメスがスムーズに運べたりできるシーンがいくつかありました。
右SBの野口も対面が至恩であることを考えるとなかなか思い切って出て行きづらかったということもあるかもしれません。
こういう割と優位な状況ができていた左サイドから仕掛けたり、崩しかかったりするチャレンジが特に序盤はもう少しあってもよかったかなと感じました。
開幕戦という独特な緊張感のある中で、特に序盤ともなれば慎重になるのは自然ですし全く悪いことではないのですが、攻撃のスイッチが入れられそうという場面でより躊躇なくトライする姿勢は今後期待したいなと思います。
ふぞろいのライン
守備についても少しだけ。
こちらはまず課題について挙げておきますが、これは言わずもがなですが失点シーンに代表されるようにラインコントロールのまずさ、アラートさが足りないように感じられた場面が前半は散見されたということでしょう。
解説の山形さんも途中仰っていましたが、北九州のビルドアップは序盤からしばらく昨年まで基本としていた2CBの脇にボランチが1人下りて最終ラインを3人にするやり方をしてきませんでした。
そのため最初の方は4-2-3-1(4-4-2)同士でマッチアップも分かりやすいため特に問題なくできていたかと思います。
14分30秒頃に北九州はこの日初めて六平が左に下りることで昨年と同じようなやり方をしてきたのですが、その時はシンプルに同サイド(北九州の左サイド)の裏へ送られたボールを航斗が出てセーフティーにクリアすることができたので、ここも特に問題はありませんでした。
しかしその2分後の16分です。
CBの佐藤喜が少し運んだところから外を切るロメロの内側を通して大外で幅を取る左SBの永田へ渡します。永田から一旦後ろへ戻されたボールを六平は一気に対角のフィード。このボールから割とあっさり高橋に入れ替わられてしまい、結果的には航斗のファインセーブで難を逃れましたが大きな決定機を作られてしまいました。
そして問題の失点が41分にあったわけですが、ここも高橋の決定機とほぼ同じ形によってやられてしまいました。
自陣でのリスタートから左で受けた六平が少し運ぶと、ハーフラインを越えてから裏へパス。これに富山が抜け出して決められました。
解説の山形さんに「一瞬止まったような」と指摘された後、さらに「ラインが揃っていないというのもあるんですけど」とさらっと言われてしまったのは大きな問題でしょう。
16分のシーンしかりこの失点シーンしかり、六平があれだけフリーで持てている状況であるならばもっと最終ラインはボールが出てくることを想定して準備しておく必要があったはずです。
でもやっぱり……
1つ視点を変えてみます。
ボールの受け手のところではなく、例えば出し手である六平に対してもっとフリーで持たせないようにする必要があったのではないかという見立てです。
確かに失点シーンに関してはもう少し早い段階で寄せるアクションがあってもよかったのかもしれません。ただ、16分のシーンで言うと佐藤喜が少し運んで永田に通されところでボランチのヤンが出て、空いた中央にロメロが入ってという連携を取りながら内側をやらせないような対応はできていますし、これらのシーンに限りませんが前線の鈴木はサイドを変えさせないように自分の左側を切って右へ追い込むという形を何度もやっていましたから、チームとしてある程度持たせるところは持たせてブロック守備をしつつ中はやらせないみたいな共通認識の下でやっていたと思われます。
そう考えるとやっぱり無理矢理に六平へプレスを掛けるべきだったとは言えませんし、加えて高いラインを敷いてコンパクトにやろうとしていたのであればこそ、まず一番やられてはいけない裏への警戒、準備というのは最優先に意識しておかないといけなかったのではないかなと、違う見立てをすることで改めてそんな風にも感じました。
締めはグッド
3点目が入って以降は北九州が落ちたというのもありますが、積極的なプレッシャーから奪ってショートカウンターというシーンも多く作れましたし、反省すべき失点があったからこそ途中から入った田上なんかは特に裏への警戒、ラインコントロールの意識は見受けられました。ですから70分以降は高いラインを維持しつつ、時には全体が20~25mくらいにかなり圧縮されたコンパクトな陣形でプレーできていることもありました。
相手が後ろを3人にしてきた場合の寄せるアクションと、それに伴う最終ラインを中心とした全体の連動というのはさらに細かくチーム全体で詰めていきつつ、守備に関してはラスト20分くらいをベースにしてどの試合もできるだけ長い時間それを継続できればいいのかなと思います。
最後に
セットプレーについても最初のチャンスでサインプレーを使ってみたり、それ以降も中央にスペースを作るような動き出しからそこに飛び込む形が組まれていたりという丁寧な準備がされていることがまず好印象でした。それがしかもきっちりゴールに結びついているわけですから、まさに努力の賜物でしょうし、神様は見ているなという感じです。
神様と言えば2点目も神の力添えというか神の手が現れたのかもしれないというシーンでした。正直あのシーンについて100%ハンドではないと言い切ることは自分にはできません。ただ主審と副審で協議して認めたものですからゴールはゴールです。北九州からしたら堪ったものではないだろうなということはお察ししますが。
まあ2点目がハンドかそうでないかは一旦置いておいたとしても、それ以外でも狙った崩しの形をしっかり遂行して得点を奪えたという事実が新潟にとっては何より重要であり大事なことです。
来週のホーム開幕でも今節得た自信を携えて戦ってほしいなと思います。
さあ、いよいよ楽しいシーズンが幕を開けました。