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例年以上に思う“よいお年を”【戦評】第42節 大宮アルディージャ戦

2020年12月22日

こんにちは。

怒涛のように試合がやってきた異例の2020年シーズンが終わりました。
最後くらい、と臨んだ最終戦は3-1の敗戦。
結局7試合勝ちなしのまま今季は幕を閉じてしまいました。
アルベルさんは終盤5試合ほどを除けばチームは継続的に成長し続けてきたと思うという趣旨のコメントをされていましたが、つまり継続的に成長できたとは言えない5試合でシーズンが締めくくられてしまったということですから、気分は冬の新潟の空模様のように暗く、重く、どんよりとしています。

とりあえず最終戦もいつも通り好き勝手振り返ってみます。

スタメン

まず新潟の方は前節からン変更が4人。
善朗が2試合ぶりにボランチに入ったことでゴメスが左SB。
また前節途中から右SBとして出場した荻原が今節は右SHということで、5試合ぶりのスタメン。
そして前線中央には、まず2試合ぶりのスタメンとなる中島がトップ下に入り、トップには前日会見の予告通り達也さんが今季初のスタメンに名を連ねました。
最終節でわざわざ予告してスタメン起用というのは、ちょっと余計なこと、考えたくないことを想像してしまうところもあるのですが、今は気にしないでおきます。

対する大宮は前節からの変更が4人。
まずはGKが18試合ぶりスタメンとなるクリャイッチ。
そして前節はボランチだった黒川、左WBだった高山、右WBだった翁長がそれぞれシャドーとCBと左WBいう本職の位置に戻ることで、その替わりにボランチの位置には22試合ぶりのスタメンとなる大山、右WBには18試合ぶりのスタメンとなる吉永が入りました。
さらに、当初はスタメンに入っていた河本がアップの際にアクシデントがあったようで、急遽高山がCBに入ることとなりました。

前半

1分に低い位置で奪われたところから小島に抜け出されてシュートを放たれたり、3分には小島からのパスに戸島が抜け出すシーンを作られたりと、早々からヒヤッとするシーンを作られましたが、ゴメスが「試合の入り自体はここ数試合で一番良かった」と話していたように5分頃からは一旦落ち着きます。

5分には丁寧に動かしてからバイタルにポジションを取った中島へ縦パスが入ったり、その直後にもビルドアップから持ち出して荻原がカットインでシュートを狙ったり、それ以外にも構える大宮に対して高い位置を取りつつ、引きつけたりしながら動かす狙いは窺えました。
10分には荻原が下がることで作った裏のスペースに達也さんが流れて起点を作ったところから最後は島田のミドルといういいシーンもありました。

しかし、このあたりから早くも大宮に押し込まれる展開が続くようになります。
きっかけは14分だったかと思います。
新潟の左サイドでのポゼッションに対して大宮は激しくプレスを掛けることで舞行龍に蹴らせて回収に成功します。
小島が拾って戸島へ繋ぎ最後は黒川がゴール前で決定機を迎えましたがここはわずかに枠を外れて救われました。

それでもさらに18分には、黒川に猛然とチャージを掛けられた和輝がパスミス。これを奥抜がワンタッチで戸島へ渡し和輝をかわしてシュートというこれまた決定機でしたが枠の上へと外れて事なきを得ました。

それでもまだ続きます。
21分には左サイドでテンポよく動かされたところから小島のクロスに、ファーサイドでフリーになっていた吉永が合わせますが、うまくミートできず外れました。
ここに関しては、荻原がプレスを掛けたあとに、そのままサイドの人数で後手を踏んだままフィニッシュまでいかれてしまったシーンでした。

飲水タイムを挟んで29分、大宮にアクシデント発生。
負傷によって畑尾→渡部へ急遽交代せざるを得なくなります。
また新潟も恐らくこのタイミングで2列目の配置を右に中島、左に荻原、トップ下に至恩という並びへ変更していたようでした。
後半の頭には細かい意図は分かりませんが、うまくいっていない時間帯が続いたため少しテコ入れを図ったといったところでしょうか。
実際32分には左に移った荻原が得意の仕掛けからFKを獲得するシーンもあったわけですが、30分にはゴメスからのバックパスを和輝が目測を誤ってCKにしてしまったり、32分にも黒川のプレスに引っかけられてあわやというシーンがあったり、不穏な空気は続きます。

すると36分でした。
ビルドアップの場面でマウロが少し迷った末に和輝へ戻そうとしたところで黒川にかっさらわれます。そのまま黒川は和輝も抜き去り無人のゴールへ流し込みました。失点。
探して迷ってバックパスをしようと後ろを向いたことで視野が後ろになった瞬間を黒川はしっかり狙っていました。
解説の松原さんも仰っていましたが「起こるべくして起こった現象」と言えるかと思います。

前半終了、1-0。
点差こそ1点でしたが不安定な流れを払拭できないまま最初の45分を終えることとなりました。

後半

前節は、『乗り切った、とはいえ……』みたいな話を書いていましたが、今節はまた悪癖となっている時間帯にやられてしまいました。
49分、相手陣内で失ったあとに素早くプレスに行きますがうまくかわされると、奥抜に右サイドを抜け出されます。
早いタイミングで入って来たクロスボールに対してニアの戸島はスルー。これに新潟は完全に惑わされ止まってしまいました。
ファーサイドでフリーになっていた翁長が流し込みます。2点目。
解説の松原さんも、そしてオンラインスタジアムで解説されていた平澤さんも仰っていたように、まさに「ゴールへのパス」といった感じで丁寧に決められました。

しかし大宮はまたもやアクシデントに見舞われます。
54分、高山→嶋田。
この交代により、高山のいた左CBには吉永が移り、吉永がやっていた右のWBに嶋田が入りました。
1試合で2人の負傷交代、しかもその内の1人は急遽スタメンとなった高山というのは、ケガ人が多発した今季の大宮を象徴するような出来事でした。

2点目と相手の選手交代を経た直後くらいから新潟は少し変化が見られるようになります。
攻撃の際に至恩がかなり下がってボールを受けるようになっていて、その際には陣形も島田、善朗、至恩が3センターっぽくなり、ゴメスと荻原がサイドの幅を取って、中島がより達也さんと近い位置でプレーできるような形が多くなっていたように感じました。

すると54分、下がった至恩から中島へ渡り、そこから相手の間に入った達也さんへ鋭い縦パスが入ってシュートもGKキャッチ。
さらに55分には、やはり下がった至恩が起点となって右の荻原まで展開すると、カットインから至恩とのワンツーで侵入して最後は中島のシュートまでいきますがDFブロック。
さらにさらに57分には、マウロの斜めのパスから善朗を経由して右の荻原まで運び、DF2人の間を縫う見事な突破から最後は至恩のミドルまでいきますがここもDFブロック。

至恩が下がって受けることについて松原さんが「ボールが動かないんで彼(至恩)がそこの作業までやっていますね」と仰っていたように、ボールの運び出し、デリバリーの最初の段階からうまくいってないのを改善するためにやっていた策だったのは推測できます。
ですから、ゴールを奪うための直接的なものというよりは、まず攻撃のリズムを作りたいということだと思うので、本来は至恩ももっとゴール前で仕事ができる状態が望ましいわけです。
それでも実際にリズムを循環させてチャンスもできましたし、改めて至恩の選手としての幅の広がりを実感しました。

しかし、61分に達也さん→テセという入れ替えも行いますが肝心のゴールは奪えずに時間は刻一刻と過ぎてしまいます。
その内、大宮も少しアクセントを加えてきた新潟の攻撃に対して慣れてきたこともあってかチャンスも作り切れなくなりました。

73分大宮はシャドーの奥抜、左CB吉永、FW戸島→小野、富山、青木を投入。
最後となる3回目の交代で一気に3人を入れ替えて5人の交代枠を使い切ってきました。
この交代によって、最前線に青木、右のシャドーに小野、左CBには左WBを務めていた翁長が下がり、右WBだった嶋田が左WBへ、そして右のWBに富山というポジションチェンジが行われました。
新潟の方は、77分に荻原、史哉→シルビ、大本という交代。
シルビは右SH、大本は右SBにそれぞれ入っていました。

両チームとも複数の選手を入れ替えた後の80分、ゲームが動きます。
右サイドから大山のFK。ゴール前で舞行龍のマークを振り切った青木がフリーでヘッド。和輝がキャッチし切れなかったボールを再び青木も和輝がセーブ。3度目のシュートも今度は大本が必至のカバーを見せますが、最後は黒川に詰められました。3点目。

新潟は83分に善朗→秋山で3回の交代を使い切ります。
シルビが入ってから舞行龍が意識的に浮球をシルビへ狙う形を増やしていたことが象徴するように、多少アバウトなボールを入れる回数も終盤になって新潟は増えていました。
すると89分でした。
マウロのロングボールからテセが流してシルビが抜け出します。中へのパスが一旦は奪われますが、至恩のプレスで取り返すとシルビがシュート。
DFにブロックされたボールを中島が左サイドで拾ってクロス。フワッと上げたボールに合わせたのはテセ!
最後に1点を返しました。

試合終了、3-1。
残念ながら4連敗で今季は全日程を終了することとなりました。

探しては遅い

攻守で1つずつ思った事を図にしていただいたのでそれについて少し。
まずは攻撃に関して、先制点直前の35分15秒~頃についてです。

善朗がCB間に下りてボールを持っている時の全体の立ち位置としては間違っていないというか、むしろ良い位置に立てていると思います。
相手のシャドーとボランチの脇(荻原、史哉)、トップとボランチの間(島田)、ボランチと3バックの間(至恩)、そして両ワイド(ゴメス、中島)と最前線(達也さん)という感じです。
そして善朗は左に持ち出すのを一旦やめて右に切り返すと、少し史哉を見てそっちに出す雰囲気を醸しだすことでシャドーの黒川を少し下げさせてからマウロに渡していたのもナイスでした。

しかし、その後ボールをもらったマウロはシンプルにサイドへ渡す選択で十分だったように思います。
黒川がプレスのスイッチを入れているわけですから、次に左WBの翁長も中島を狙ってきます。そうすればその裏も空いて来ますし(①)、あの距離感であれば仮に狙われても素早く出すことで中島にある程度の余裕は与えられたでしょう。
そして、中島に入ったところで内側にいた史哉がフォロー(②)に入れば相手のボランチである大山が出てくるでしょうから、今度はその裏の至恩が空いて来ます(③)。
もちろんこれはあくまでも後出しの理想と言ってしまえばそれまでです。
ただ、中島・史哉・至恩vs翁長・大山という瞬間的に局面で数的優位を作れるような立ち位置を取ることができていたということです。

このシーンはマウロでしたが、ここ最近はマウロに限らずビルドアップのシーンで、出し手がよりゴールにダイレクト(遠回りせず)に、よりいいところに、と考えてしまうせいなのか探し過ぎてしまってコースがなくなるというシーンは多かったように思います。
また受け手に関しても、受けようとボールを欲しがるアクションがもっとあってもいいのかなと思いました。

お互いがどのタイミングで出すか、どのタイミングで受けたいのかを見過ぎてしまって手詰まってしまうシチュエーションはここ数試合を含めて多かった印象でした。

行くべきところ

続いて守備のお話。
こちらは39分29秒~、CB西村から右WBの吉永にパスが出たシーンです。

吉永に対してゴメスが近い距離で対応しに行けているところまではいいのですが、トップの戸島は新潟のCB間にいてボールホルダーの吉永とは遠いですし、シャドーの奥抜も直前に逆サイドで下がって受けようとしていた分、まだ中央エリアにいます。またボランチの大山もパスコースには荻原がいて、島田も寄せられる距離にいるので明らかに吉永は選択肢が削られた状況ができあがっていました。
この状況であればゴメスはもっと激しく行くべきですし、何なら荻原も挟みに行ってもいいと思います。もっと言えばあそこまでスライド出来ているのなら前方にいる至恩ももう少しサイドへ出てバックパスのコースを塞ぎに行ってもいいでしょう。

この試合、戸島に最終ラインから縦パスが入ってフリックされたシーンが何度かありましたが、そういうのも含めて、アプローチすべきところで反応し切れていない、もしくは様子を見ちゃうシーンは気になりました。
攻撃よりもこちらはより直接ハードワークの求められる事ではあるので、疲労も限界に達していた終盤戦には酷な話なのは理解していますが、じゃあ仕方ないで済ませてはいけないことでしょう。
来季はもっと行かないと、ということで指摘しておいていいのかなと思った次第です。

この試合についてはここまでです。
次はちょっと、最終戦も終わってこの記事も今シーズン最後になるので、今年印象に残っている事を1つ書きます。

想像し得ない年

プロフィールにもある通り、自分はありがたいことにビッグスワンの近くで生まれ育ちました(正確に言えば生まれ育ったところにビッグスワンができた)。
幼いころからあの広い公園には散歩で連れて行ってもらったり、もう少し大きくなってからもよく遊びに行ったりするような場所でした。
そして今でもランニングをしたり、ボールを蹴ったりと体を動かしに行くこともあれば、特に理由もなくぶらぶら行ったりもする場所です。

今年の4月くらいだったでしょうか。
その日公園に行くと、そこには見慣れたジャージを着た人がランニングをしている姿がありました。
また違う日に行ったときには、また違う数人がランニングや軽いアジリティーのメニュー、そしてボールを触っている姿がありました。
その人たちがアルビレックスに所属する外国人選手だと気付くのにほとんど時間は要しませんでした。

新型ウイルスによりトップチームは活動休止を余儀なくされたので、コンディションをある程度維持しておかなければいけないということで恐らく公園で体を動かしていたということだったのでしょう。
最初その光景に出くわした時は、軽く「ラッキー」と思って遠目で眺めていたのですが、しばらく見ているうちにどんどん胸が熱くなってきて泣けてきてしまいました。

というのは、ほとんどが日本で暮らすのは初めてであり、シルビに関してもまだ2年目という年に誰も経験した事のないウイルスの脅威に晒されることになってしまったということが、どれだけ恐怖で不安で辛いものかということ。
そして、そんな中でも遠い国からやってきた彼らはこのチームのために、このチームを応援する人や地域のために勝ちたいと思いながらいつ来るかも定かではない試合に備え、自分が小さいころから遊び慣れた公園でフィジカルとメンタルを整えてくれているということに嬉しい気持ちと感謝の気持ちとがごちゃごちゃになって涙となってしまいました。

もちろんがんばっていたのは日本人選手だって同じです。
札幌の野々村社長は自身がMCの番組で、感染防止のために制限は設けないといけないけど、あまりに縛り過ぎても気持ち的に参っちゃったりしんどくなったりしてしまうから難しいというようなお話をされていました。
ただでさえ厳しい世界で戦っているプロフットボーラーにとって、今年が肉体的にだけでなく精神的にもいかに過酷だったのかなんて常人の自分には想像すらできません。

選手、スタッフのみなさんには心からの労いと感謝を伝えたいと思います。
今年1年本当にお疲れさまでした。

最後に

勝てないまま4連敗で終わってしまい怒りや切ない気持ちでシーズンオフに入ってしまいましたが、2020年というシーズン全体がラスト数試合の印象に引っ張られ過ぎても行けないとは思っています。

今後の発展を見据える上で、2020年というのはその基礎の年になり得る年であり(ていうかしないといけない)、非常に重要で実りのある年でもあったと思います。
個人的には新しいスタイルに取り組んだチームから新しい発見や解釈も多く、サッカーについてまたたくさん学ぶことのできた楽しいシーズンでもありました。

新井との寂しいお別れがありました。
またここからいくつかの別れと出会い(または再会)があるとは思いますが、一喜一憂しながら、そして来年についてなるべくポジティブに想像しながら、寒い冬を乗り切りたいと思います。

最後までまとまりのない長い文章にお付き合いいただき感謝です。
どうかどなた様も暖かくしてお体を大切にお過ごしください。
今年も1年お疲れさまでした、そしてありがとうございました。

くりはら
くりはら
鳥屋野潟ほとり出身のアルビレックス新潟サポーター。海外はアーセナル推し。Jリーグ、海外、2種、3種、女子、その他、カテゴリーは問わずサッカーが好き。ラジオも好き。某坂道グループもちょっと好き。