オレラグ
夏の夜空にオレンジの天の川が浮かび上がりました by岡田アナ【Review】第21節 大宮アルディージャ戦
素晴らしい!
よく走って、よく戦って、ほんとうによく勝ち切った!
我がホームで16戦も負けてなかったという大宮を撃破。
ほんとにざまあみ・・・
おっと失礼。応援歌に入っている「お前」という言葉ですら話題になっちゃうご時世ですからね。乱暴な言葉使いは控えておきましょう。
アウェーの方には新潟を存分に楽しんでいただけたならこれ幸いでございます。
とにかくナイスゲームでした。心からの拍手と感謝の気持ちを送りたいと思います。
スタメン
新潟は前節から1人変更。
泰基が5試合ぶりのスタメンで左SBに入りました。
大宮も前節からの変更は1人。
シャドーにこちらも5試合ぶりのスタメンとしてバブンスキーが名を連ねました。
前半
お互いまずはリスクを抑えた入りの中でシモビッチという分かりやすいポストプレーヤーを活かすことで最初にチャンスを迎えたのは大宮でした。
2分、3分と両サイドからの連続CKはゴール前で際どいシーンにもなりますが、なんとかしのぎます。
対して、新潟もすぐにチャンスを作りました。
4分將成のフィードに右サイドの新井が抜け出してクロス。ファーサイドの新太が強引にシュートまで持ち込みますがブロックされます。
ただ、このプレーによって將成自身は「気持ちがラクになりました」と話していましたが、チームとしても連続で続いたピンチの直後にこうして反撃できたことは、ずるずる押し込まれないための一定の抑止力になっていたのかもしれません。
6分には泰基、新太、善朗でつなぎながらゴール前まで運んだり、9分にはインターセプトを起点に発動したカウンターで最後は奪ったサチローがフィニッシュまで行けたりと、緩急で攻めの形を作ることができていました。
しかし、12分、13分と再び連続でCKのピンチがあり、ここはライン上でサチローがなんとかクリアして難を逃れますが、17分やっぱり高さに屈します。
菊地からのフィードを左で吉永が受けると、上がってきた河面が後ろで引き取って、右足でクロス。ニアに走りこみながらシモビッチがあわせました。
吉永監督も「あれに関してはお手上げなので、もう忘れて、同じような場面を作られないようにと、後半に入りました」とおっしゃっていましたが、自分も見ていて「いや、そんなんできひんやん普通」とあの名言っぽく呆れて笑ってしまいました。あれはずるい。
いや、そんなこと言っていちゃダメなんでしょうけど、サイドではちゃんと2対2を作って受け渡して、新井は河面の利き足である左を切って右足で蹴らせることはできていました。
最後のところで大武が付き切れずにやられてしまったわけですが、あそこもどうするのが最適解だったんですかね……。
22分大宮にアクシデント。
負傷した三門→大山という交代が行われます。
そういえば交代で入った大山はそのまま三門から引き継いだ青いキャプテンマークを巻いていましたが、後半になって黄色に替えてたのはなぜだったんでしょうか。
すっごいどうでもいい話なんですけど妙に気になってしまいました。
ここから少し攻めきれない時間が続きます。
守備では切り替え速く、球際も寄せて及第点の出来でやれていたとは思いますが、マイボールになってからがもう1歩入って行けない印象でした。シュートは29分のレオとのワンツーから新太が放った場面くらいだったでしょうか。
解説の勲さんも「少し1人1人の距離感が遠い」ということをおっしゃっていました。
こうなると新潟は前節が今季初めての逆転勝利だったチームですから、煮え切らずじりじり時間が過ぎて…みたいな展開がどうしても過ってしまいましたが、この日は違いました。
32分、サチローからのパスを善朗が右サイドで受けると少し縦へ持ち出してクロス。これにドンピシャレオナルド!
なんといっても善朗のクロス。美しすぎました。GKとDFの間、かつCBの間へ巻いて置くようなボール。ベッカムなんじゃないかというくらい完璧なキックでした。It’s so beautiful.
レオも善朗に入った時点ですでに畑尾と菊地の間に入り、善朗が縦に持ち出したところでスッと畑尾の前に入ってあわせました。最初のポジショニングがよければ余計な動きは必要ないわけです。もちろんボールの質あってではありますが。
あと、忘れてはいけないのが新井。この攻撃の発端は善朗のパスがカットされた後、すぐに高い位置で奪い返した新井のプレーでした。グッジョブです。
終盤は追いついた勢いもあってか、それ以前よりも距離感自体がよくなったのに加えて、みんなが次をイメージしながら動いたり、ボールを運んだりすることができるようになって相手の守備ブロックの間を取れるようになっていました。
ラストはカウンターを起点にFKを河面に狙われましたが大谷がしっかり抑えて前半終了。
決して悪くない中で先制点を奪われながらもしっかり前半のうちに追いつけたことはこの試合の大きなポイントだった気がします。
後半
どちらも選手交代なく入りましたが、大宮は前半の終わり頃からバブンスキーと奥抜を入れ替えており、後半のスタートもそのまま左・バブンスキー、右・奥抜の並びで入っていました。
後半の入りは全体的にはボールの落ち着かない展開だったように思います。
アバウトなボールが行ったり来たりということではなくて、運ぼうとするけど両チームとも切り替えが速く、球際も強くやれていたために通らなかったりミスがあったりで、攻守の入れ替わりが多かったという事です。
守備への切り替えでいうと、53分に泰基の上げたクロスがそのまま塩田にキャッチされた後、カウエのプレスをスイッチとして前線での囲い込んだ場面や、57分の奪われたり先に拾われたりした後の泰基の寄せ、カウエのスライディング、サチローの反応と連続で奪い返すシーンは特によかったです。
すると歓喜は突然に。
59分、左サイドでボールを動かしカウエが受けると裏へのフィード。
これにフランシスが抜け出すと落ち着いてシュート!逆転!
完璧です。
フットボールは裏1本で点が取れればそれが一番楽だし効率がいいのです。ゴールにおける理想的な形といってもいいのではないでしょうか。
カウエの糸を引くよう完璧なタッチダウンパスはまさにピルロのようでした。
そして抜け出したフランシスも、カウエにボールが入った瞬間中へ走りだし、蹴られる直前に少し手前へ戻りながらU字を描くようにオフサイドラインを掻い潜った動きはまさにフィリッポ・インザーギのようでした。
ただただ興奮です。
また、ハーフタイムに確か水が撒かれなかったと思うのですが、それもあってボールがバウンドで走りすぎずにフランシスのシュートにつながったのかなと思いました(撒いていたらすみません)。
ビハインドとなった大宮は64分に吉永→大前を投入し、システムを4-4-2へ変更します。DFは左から河面、菊地、畑尾、奥井。中盤はボランチに大山、石川で左SHバブンスキー、右に奥抜。そして前線に大前とシモビッチです。
70分頃には再びバブンスキーと奥抜の左右を入れ替えているようでした。
70分右サイドで大前がキープし、奥井が上げたクロスにシモビッチがあわせるも上へ外れます。ここは競り勝てずともしっかり寄せて簡単にはやらせませんでした。
大宮がシステムを変えたことでマッチアップはハッキリしましたが、その分少し取りに行ったときにうまく外されてしまうシーンが見られるようになります。それでも、このシモビッチへの対応を始めゴール前の局面では集中していました。
また、攻撃では回数こそどうしても減りましたが、75分の將成のインターセプトからカウンターでレオのシュートまでいったところのように攻め切るところは攻め切ったり、攻め切れずとも攻め込むことで逆にカウンターを防いだり、さらにそうでなくても速い切り替えは継続しながらプレーできていたように思います。
しかし79分に大ピンチ。
新潟のCKがクリアされて恐らくカウエは味方につなごうとしたのではないかと思いますが、中途半端になってしまい大前に拾われると裏に出されて奥井と大谷の1対1になります。奥井はGKをかわしてシュートに行きましたがこれは枠を外れて救われました。
絶体絶命の場面で大谷がギリギリまで動かなかったのは素晴らしかったのではないでしょうか。結果的にかわされていますが、あそこまで追い込んだ上で外側へかわされるならシュートコースはかなり限定されますし、あれだけ我慢したことで味方もカバーに入れるだろうと考えて、かわされてもファールにならないように無理なチャレンジをしなかったのではないかと思います。
これはあくまでも推測に過ぎませんが、いずれにしろナイスプレーでした。
終盤新潟はレオ→貴章、善朗→ヨンチョル、新太→凌磨と前線を入れ替えて前のプレッシャーを落とさない、むしろ上げるような交代を行いましたが、期待通りのプレッシャー、そしてファールを誘うような強かなプレーと素晴らしい働きを見せてくれました。
また、83分の右サイド奥井からのロングスローを起点にゴール前で大前、河面のシュートを將成、さらに新井と体を投げ出したブロックは感動的ですらありましたし、アディッショナルタイムに入ってから1つ1つのプレーや判定にベンチの選手も総立ちで前に出てきていた光景はひしひしと熱いものを感じました。
そして、試合終了!
2-1、最後までタフに戦って大宮から大きな勝ち点3を奪いました。
切り替え
相手の3バックに対しては無理に寄せずある程度持たせるやり方はよく機能していたと思います。
まずレオと善朗(特に善朗)が相手のボランチを消すところですがそこはあまり心配していませんでしたから肝はSHでした。
フランシスと新太は我慢してラインを崩さず、WBに出たら寄せる、シャドーが下がってきたら少し寄せるという感じで最低限の仕事をしてくれたように思います。
シャドーにライン間で起点を作られて崩されるシーンは少なかったと思いますし、それでもシモビッチという強烈なポストがいるのでそこで起点を作られることはありましたが、ラインを崩さずコンパクトにやれていたことでボランチもすぐに囲みに行くことができていたように感じました。
そして、切り替えの速さの部分は大宮の強みでもありましたが、そこで後手にならずしっかり戦えたのが一番の勝因だったのではないでしょうか。
寄せるにしてもブロックを作るにしても奪われた瞬間のファーストプレッシャーがしっかりかかっていたことで、奪えずとも相手の攻撃をやり直しさせることができて、そこからは上記のように無理に取りに行かないコンパクトな守備で囲むなり、絡め取るなりできていたのかなと思います。
作って使うこと
戦前の勝手な予想では、勝利するにはもっとカウンター中心のいわゆる弱者の戦いになることも覚悟していましたが、吉永さんのおっしゃっていた通り「守り一辺倒ではなく、攻撃のプランを持ちながら」できていたように感じました。
特に前半のラスト15分、同点に追いついてからの時間帯です。
何度もピッチ中央の相手のライン間でボールを受けて起点を作ることができていました。
先に新潟のビルドアップに関してこの日の流れをおさらいすると、大宮はシャドーの2人がアタッカータイプということもあって(プレビューで書いたことは今節も外れました……)SBを消しつつCBにも寄せに行くような積極的なプレスをかけてくることが最初は多くありました。そのため大谷まで戻して蹴らざるを得ないシーンも多くなってしまいました(失点の発端もこの形から)。
そういう流れもあり恐らく途中からカウエがハッキリと下りることでビルドアップのサポートをするようになり、また大宮が1点リードしてプレスのスタート位置をやや下げたことも重なり、少しずつビルドアップが落ち着き始めました。
そして落ち着いてからは早く動かして相手がスライドする間隙に縦パスを入れるとか、SBを起点に斜めのくさびを打ち込むなどいいチャレンジが増えて行きます。その中で取り上げようと思って図にして頂いたのがアディショナルタイムに入ってからのシーンです。
まず新太がライン間の相手にとって捕まえにくいあいまいなポジションを取ります。
ボールが大武に入ったところでサチローが縦に抜ける動きをしたことで、畑尾が前に出て新太を捕まえることを断念させるのと同時に、3バックを押し下げる(中盤とのギャップを広げる)ことに成功します。
それでも大宮はマークを受け渡して大山が新太に付きますが、善朗と新太が相手のボランチを引きつけたことでサチローがスッと下がって直前に広げたギャップのスペースで受けることができました。
さらに下図のようにSBが幅を取り、フランシスは前に出てレオと共に相手の3バックを止めて、善朗、新太、サチローが相手のボランチのラインに顔を出すことで中盤に数的優位を作るような形も、ここまでハッキリした形ではありませんがこれに近いシーンがほんのわずかですがあり、この狙いはとてもよかったですし、もっと見たかったなと思いました。
また、切り替えの速さをベースで持ちつつ、こうして崩す形を探したり、この前半ラスト15分はいいくさびが入りながらも攻め切れずに悪い失い方でカウンターを食らうシーンがありましたが、後半はゼロではないにせよ攻め切ったり、意識して準備をしたりしてカウンターへの対応もできていたように思います。
このように試合中の修正という点では鹿児島戦に続きよかったのではないでしょうか。
最後に
前半戦終わって8勝5分8敗の11位。なんとか星を五分に戻してど真ん中で折り返しました。
天皇杯が聞いた限り非常に残念なゲームで、この日のアップ前には長文のメッセージ幕が出されたりもしていました。
そんな状況で迎えたゲームでよく戦い、そしてよく勝ち切ってくれました。
昇格を目指すのであれば現状の勝ち点では全然足りませんし満足もできませんが、得点はリーグ4位と取れていますし、この勝利はきっとこれからの弾みになるでしょう。というか弾みにしなければいけません。
そして今回、これを書いておかないといけません。
この日は試合前にターレスのゴールハイライトが流され、黙祷も捧げられました。
どうしたって負けちゃいけない大きな理由がこうして今節はあったわけですが、SNSでも多くの方が仰っていましたけど、この勝利はターレスが力を貸してくれたのでしょう。ありがとう。
ここからさらにアルビレックスはがんばっていくから、温かく見守っていておくれ。