オレラグ
ひらく、花火、華やかに【Review】第26節 徳島ヴォルティス戦
試合が終わって家に帰り、シャワーを浴びてもう1回試合を見直して、さて寝ようと思って床に就いた時、「目が覚めたらもう1回今日になっていないかなぁ」と思ってしまいました。
まあ、起きてラジオ付けたら遠藤麻理さんの優しい声が聴こえたのでやっぱり月曜日だったわけなんですけど、そんな無謀なことを願ってしまうくらい痛快で美しい日曜日でした。
スタメン
前節町田戦で負傷交代してしまった泰基はトレーニング合流まで約4週間というケガで欠場となり、代わって左SBに入ったのはその町田戦でも途中から出場したゴメスでした。ちなみにスタメンに名を連ねるのは6試合ぶりです。
また、それに伴いサムエルサントスが久々にベンチ入りを果たしました。
対する徳島は、プレビューでも書いたように岩尾が出場停止ということで、サチローの大学の後輩で、さらに凌磨の高校の同級生でもある鈴木徳真がボランチに入りました。
もう1つ前節からの変更点として、夏の移籍ウインドーで鳥栖から1年ぶりに帰ってきた島屋が復帰後初のスタメンに入っていました。
前半
今節から改正された新ルールが適用されていましたが、早速コイントスで勝ったカウエは前半のキックオフを選んでいたようです。
そんな新潟ボールで始まった前半でしたが、序盤は圧倒的に徳島がボールを持つ展開となります。15分時点でのポゼッション率も26%vs74%と見た目だけでなく数字としてもそれは顕著に表れていました。
しかし、FM-PORTのピッチサイドコメンテーター松村さんによると、この試合に向けて善朗は「ボールを持たれる時間帯は長くなると思うが焦れずにやりたい」と話していたそうですし、試合後の会見で吉永さんも「想定内」ということを仰っていたのでチームとして特に慌てるようなことはなかったのだろうと思います。
押し込む徳島は6分に表原のカットインからのシュート、9分には中央から小西のシュート、そして14分には左から内田のシュートと積極的にミドルで狙ってきました。ただ、新潟からするとエリアに侵入されてシュートとか、クロスからエリア内の選手があわせる形は作らせませんでした。
それゆえに守備よりも、奪った後に前へ送っても徳島の速い切り替えによって潰されてしまい、すぐに奪い返されるプレーが続いていたことの方が問題だったように思います。
DAZNの中継では「ベンチからレオにもっと前に前に」という指示が出ていたとピッチリポーターの吉田さんが伝えてくれましたが、PORTの松村さんからは「あまりうまく伝わっていない」ということが伝えられていました。
陣地を回復するために奪ったら簡単に裏へ送ったり、サイドのスペースへ味方を走らせたりするプレーというのは、両中継のリポートからも意識されていたことは確認できましたが、序盤の15分くらいはやはりうまく遂行できていなかったようです。
それでも、19分の結果的に通らなかったものの、サチローからフランシスへの対角のフィードをきっかけに盛り返し始めると、ようやく落ち着いてビルドアップする時間も作れるようになり、チャンスになりそうなところまで持っていけるようになります。
すると24分でした。
善朗の右CKは一旦クリアされますが浮き上がったボールをエリアの外で待っていたサチローが右足で「バッゴーン」!(公式LINEより引用)
吉永さんも「(サチローの)見たこともないような」と仰っていて、サチロー本人ですら驚いているようでしたが、一瞬ジェラードとかランパードに見えるようなスーパーボレーでした。
もう何度見直しても笑っちゃうくらいすごいんですけど、浮き上がったボールをインパクトするにあたって落ちてくるのをよく待てたところが素晴らしかったと思います。
どうしてもああいう場面は打ちたい気持ちが逸ってしまい、落ち切らないところでインパクトして上に上がったり、力のないシュートになったりすることがよくありがちなことですが、しっかり待ってコンパクトに振り切れたことでドライブがかかり、GKの手前でバウンドするセーブしづらいシュートになりました。
また、CKに至るまでの流れも將成がうまく体を入れてファールをもらったところからクイックで再開して、相手の守りが広がったままだったタイミングを見逃さずに善朗がうまくライン間でボールを受けていました。
これも忘れてはいけないナイスプレーでしょう。
先制点直後に飲水タイムが入りましたが、それから再開して10分も経たないうちに追加点を奪います。
30分、右サイドから新井とフランシスがパス交換して運ぶと、新井が早いタイミングでゴール前へ。レオにピタッと収まると、左へ持ち出して左足でゴールの右隅へ「トリャー」!(公式LINEより引用)
2試合連続の“さすがレオ案件”です。
正直、右足のアウトサイドでトラップしたのが前に出たのは意図的なのか偶然なのかちょっと怪しく見えたりもするんですが、そこは置いときます。
前に出たボールを左でコントールした際に石井はレオの右足のシュートを警戒してそちら側のコースを切るために左足を少し出しました。ここで石井の両足が地面に着いた瞬間、ボールを左側へ出して石井から離れることによってシュートコースを作り、左足で逆サイドネットへ決め切りました。
DAZN解説の勲さんも「石井が一瞬右足を切ったんですよね。その瞬間を見逃さず左足の蹴りやすいところにボールを置いてゴールに流し込む」と解説をされていましたが、ほんとうに見事でした。
あれだけゴール前で落ち着いて相手を見ながらシュートを決め切れるのはゴールを取るツボを知っている感じがします。サッカー少年の手本になるようなゴールではないでしょうか。
2点リードしたことで前半はそのまま良い雰囲気のまま進めることができていました。
勢いが出て守備への反応が速くなったところもよかったのですが、それ以上に43分の攻撃がすごく落ち着いてできていたのがよかったです。
ビルドアップから右サイドへ運び、サチローが前へのパスを窺いつつ一旦やめて、もう1回後ろからやり直して左サイドへ運ぶと、最後はゴメスから新太へのスルーパスがCKに至るというシーンです。
攻め急がずにやりなおした判断もそうですし、サチローが一旦縦へのパスをやめた時にスタンドから拍手が起きたこともすごくいいシーンだったように感じます。
2点リードで時間も残り少なかったという余裕があったからだとは思いますが、一概に全部攻め直しを肯定していいわけでは当然ないとしても、0-0の後半とか、何なら1点ビハインドでも状況次第でこういう雰囲気ができるといいなあと思いました。
前半終了、2-0。
よくしのぎ、効率よくゴールを奪いました。
後半
徳島はスタートから2人を替えます。 石井、鈴木→田向、渡井が投入されました。 田向はそのまま右CB。渡井は後半から徳島がやや3-5-2気味にしていたように見えたので、中盤3センターの右に入っていたかと思います。
恐らく、後半を迎えるにあたり2点リードで相手が2人交代というシチュエーションから、多くの人が前節の展開を思い起こしたかと思います(何を隠そう筆者もそのうちの1人です)。
開始15秒には早速エリア内の河田にボールが入り、反転からシュートを狙われます。
サイドチェンジから仕掛けたり、カウンターになりかけたりしたシーンなどいくつか攻めに出る、もしくは出ようとする場面はありましたが、それでも54分には内田の攻め上がりから最後はゴール前でつながれて渡井にシュートを打たれます。ここは大武のブロックでしのぎますが、何となく不安な気持ちは払しょくできていませんでした。
そこへさらにアクシデントが重なります。
56分、善朗→貴章。
いつから違和感があったのかは分かりませんが、後半入ってからのプレーは確かにちょっと精彩を欠いている気がしていたので、さすがに疲れもあるのかなと思っていましたが、残念ながら交代となってしまいました。
正直、チームを牽引している中心も中心の善朗を欠くのは非常に不安でしたが、FM-PORT解説の梅山さんが試合中にも、試合後にも言及されていたように「矢野貴章がエネルギーを注いでくれました」。
徳島は2ボランチから3センターになったので数字だけ見ると中盤が1人多くなったように見えますが、2点ビハインドでリスクをかけて攻めるために3センターの両脇に位置する野村と渡井は基本高い位置を取ろうとしていました。
そのため、その2人の背中=小西の両側にスペースができるようになりました。そこに貴章がよく顔を出すことでリズムを作るのと同時に相手の脅威になっていました。
そしてそんな貴章の効果的なプレーと共に、アクシデントによる交代の3分後という早いタイミングで追加点が取れたのも非常に大きかったです。
60分、貴章のポストプレーからフランシスが強引にカットインを試みます。DFに引っかかりますが、こぼれたボールを新太が右足一閃!
さすがにぼっこれはしませんでしたが、右のポストにあたってゴールへ突き刺さりました。(公式LINEの方言に一瞬考えましたが、無事解読成功)
人一倍ゴールに貪欲で誰よりもゴールを欲していた彼が、なかなか取れない中でも一生懸命それ以外の仕事をやって、ようやく生まれた豪快なゴールにちょっと泣けてきそうだななんて思っていたら、「献身的に走っていればいつか自分の下にボールは来る」という新太のコメントをすかさず松村さんが差し込んできました。
もうこれは泣かせに来ているとしか思えません。
ナイスゴールにナイスリポートでした。
64分、表原→押谷。徳島がここで3人の交代枠を使い切りました。
島屋が右のWBに入り、押谷と河田の2トップだったかと思います。
その4分後に飲水タイムがあって、その直後の70分。
中央で渡井が受けるとドリブルでスルスルっと持ち上がり、エリア内に侵入してシュートまでいきましたが、ここは大武がブロックします。
何度かこうしてエリアの中まで入られて瀬戸際の対応を迫られるシーンを作られましたが、しっかりブロックできていました。
また、後半になっても「湿度76%、風もほとんどない」(松村さん)という厳しいコンディションでもレオなんかは最後尾から持ち上がる田向にかなり後ろまで下がって付いて行ったり、新井がスパイクを交換するために一時ピッチを出た時には、貴章が右SBに入ってカバーしたりとチーム全員で守備にもよく奔走していました。
80分に新太→至恩、86分にはフランシス→凌磨と両SHを入れ替えます。
すると88分でした。
自陣ゴール前からサチローが大きくクリア。右サイドのルーズボールをうまく体を入れたレオがマイボールにすると、そのままドリブルで運びます。
タメを作って攻め上がりを待ってから中央の至恩へ。ゴール前で収めると細かいステップで内側に持ち込みDFのタイミングを外して「ダバーン」!(公式LINEより)
梅山さんは「チームで共有しているんでしょうね、彼に点を取らせたいと」と試合後に仰っていましたが、新太同様に待ち望んでいた選手のゴールがついに生まれました。
試合終了、4-0。
この試合がJ2通算50試合出場で、松村さんリポート曰く野澤が「チームの心臓」と称しているサチローのスーパーゴール。
ストライカー・レオの貫禄の今季12点目。
翌日バースデーの新太による待ちに待った12試合ぶりのゴール。
そして新潟の宝、至恩のプロ入り後初のゴール。
誰が取ったってゴールの嬉しさは変わりませんが、今節は特に熱いゴールが並びました。
頭を使って守る
素晴らしい4ゴールで完勝したわけですが、その4ゴールと同じくらい、ちゃんと無失点で終われたことが素晴らしかったです。
まずはSHの守備について。
3-4-2-1の2シャドーはハーフスペース(※)にポジションを取ってくるため新潟のSHとしてはまずそこへの縦パスを消すために中央のパスコースを締めることが優先されます。しかし前半の序盤に関しては少し絞りすぎて、外からストレスなく持たれて押し込まれた印象がありました。
14分の内田がミドルを放った直後に梅山さんは「新潟がブロックを作って人というよりスペースを埋めているので、若干ボールホルダーへのプレッシャーが遅いんですよね」と仰っていました。
プレビューにアウェーで戦った前半戦の対戦からの反省点としてリスペクトし過ぎないということをちらっと書きましたが、リスペクトし過ぎていたとは思いませんが、やや相手が狙うスペースに対して意識が強くなり過ぎていたのはあるかもしれません。
それでも、点が入ったこともあってか次第に前から牽制する場面も増えましたし、下図のように状況(アプローチする高さや周りの味方の位置)を見ながら、外側へのパスコースを切ることで自らが押し込まれすぎず、かつSBが相手の外の選手に釣り出されず中央のスペースを狙う相手選手に集中できるように助けとなる守り方が見られるようになっていました。
実はちょうどこの日の朝、ドイツスーパーカップで幅を取りつつ中央のスペースを狙うバイエルンに対して新潟と同じく4-2-3-1(4-4-2)で綺麗に守るドルトムントという構図の試合を見て、その中でドルトムントの両SHであるジェイドン・サンチョとラファエル・ゲレイロがいい働きをしていたのが目に止まったので、徳島戦もその部分に少し目が行ってしまったというのがあります。
だから、正直上に書いた見立てがどれくらい的を射ているのか、さらには重要なポイントだったかという自信や確証みたいなものはあんまりないのですが、とにかく一生懸命ハードワークしているだけでなく、しっかり頭も使って大変なタスクを新太もフランシスもがんばっていたことは間違いないはずです。
頭も使って守る(物理的な意味で)
もう1つ取り上げたいのはクロスへの対応(特にCB)です。
一時期に比べてクロスから合わせられての失点や競り合ったこぼれ球を押し込まれての失点、もしくは失点にならずともクリアできない、先に触れないというシーンは減ったように感じます。
この日に限って言えば、相手のストロングポイントであるWBの突破力、特に左サイドの杉本に対して新井がほぼ完璧に封じこめたというのも大きな理由だとは思います。
ただ、それと共にCBがしっかりゴールエリアで待てていて不用意に出なかったり、出て対応しないといけない時はしっかり潰したり1回プレーを切ることが以前よりも徹底できている気がしました。
ひょっとすると対人のうまさや、パスの出し手だけでなくこの“ちゃんと跳ね返す”点においても將成がポジティブな効果を生み出しているのかもしれません。
最後に
夏場の3連戦は2勝1分で乗り切り、順位もトップハーフの9位まで来て、上位進出に向けてホールドに手を掛けたとまでは言い切れないかもしれませんが、手の届くところにホールドが見えるくらいまでには来たと言えそうです。
なんといってもこの3連戦で11得点。得点数は44まで伸びて堂々のリーグ1位です。
基本的にどの国のどのリーグでも得点数より失点数が少ないことの方がタイトルや上位に入るための絶対条件になる傾向は強いですが、だとしてもリーグで1番の得点力は大きな武器であることは間違いありません。
今後このまま打ち勝っていくのか、上手にバランスを見出していけるのかは分かりませんが、とにかくpartido a partido(1戦、1戦)です。
すみません、急なスペイン語はシメオネがよく使うこの言葉をただ使いたかっただけなので気にしないでください。
まずはしっかり休んでもらって、次節までの1週間、万全な準備を整えましょう。