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オレラグ

残り試合で最大値を出すためのスイッチ【Review】第30節 柏レイソル戦

2019年9月2日

11連勝中の首位を相手にアウェーでドロー。
試合中実況の加藤暁さん、解説の名良橋さんもおっしゃっていましたが、前半戦ならそれでもいいと言えたのかもしれません。ただ、時期を考えれば痛い勝ち点1、悔しいゲームだったと言わざるを得ないのかなと思います。

スタメン

前節はやっぱりケガのために欠場だったという新井が2試合ぶりにスタメン復帰。それに伴い舞行龍がCBへ移ります。またベンチには久しぶりにズミさんが入りました。
柏は新潟からレンタルされている尚紀が契約により欠場。代わって田中が右SBに入りました。

前半

柏ボールでのキックオフに対してアグレッシブに取りに行ってスタートします。すぐ柏がボールを持つ展開になりますが、レオとシルビーニョが基本的に相手の2ボランチの前に立ってボールを入れさせないようにして、時折前からプレスを掛ける場合も、全体をコンパクトにしてスライドしがら対応するのは変わらない形としてやっていました。

最初のチャンスは10分。
クイックリスタートを始点に新太が仕掛けて得たFKをシルビーニョが狙いますがGK中村キャッチ。
反対に最初の大きなピンチは12分。
自陣右サイドで奪われると、瀬川のパスを中央で受けたオルンガがドリブルからシュートへ持ち込みますが、こちらもGK大谷がキャッチしました。

するとその2分後、ゲームが動きます。
相手のフィードを大武が拾うとサチロー、新井、フランシスとつないで右へ運ぶと、フランシスからのスルーパスに中央から流れてきたシルビーニョが抜け出します。しっかり中を確認したシルビーニョはマイナスへクロス。
フリーで待っていたのはレオ!先制!
シルビーニョが抜け出したのと同時に、ゴール前で少しずつ減速してから止まる判断をして見事にフリーになったレオ、さすがでした。
また、右サイドからの崩しで言えば、直前にも新井とのワンツーからフランシスが抜け出してクロスまで行ったシーンを筆頭に、以降も何回か右サイドから抜け出すシーンがありました。レオが相手の左サイドのウィークポイントについてコメントしていましたが、まさにスカウティング通りの形で奪ったゴールだったようです。素晴らしい。

先制点以降の試合内容を大雑把に書くとすれば、ボールを持つ柏に対してカウンターを狙う新潟でした。
18分には大武が跳ね返したボールをレオが拾って新太とスイッチ。ドリブルで運び、最後は新太のパスをもらったフランシスがシュート。
28分、左サイドからのボールをシルビーニョがフリックしてレオとワンツーからシュート。
さらに32分、左サイド新太からのクロスをレオが収めて、落としたボールにカウエがシュートなど、柏にボールは持たれても基本的にはブロックの外を回させることが出来ていて、チャンスの数自体は新潟の方が上回っていたこともあり、試合のペースということで言えば新潟が掴んでいたと見てよかったのではないでしょうか。

飲水タイムを境に柏は、大谷をアンカーでヒシャルジソンと江坂がインサイドハーフの4-1-4-1のような形にしていたと思いますが、特に大きな影響を受けることはなくプレーできていたようには見えました。
前半のアディッショナルタイムには切り替えの応酬になる場面がありましたが、そこも屈せずに高い位置でのいい守備を見せて締めくくります。

前半終了、0-1。1点リードでの折り返しです。

後半

やっぱりというか、ネルシーニョさんはスタートから動いて来ました。
田中→マテウスサヴィオ。
サヴィオが左SHに入って右SBには瀬川が入りました。
瀬川本人も「やったことがない」と話していたのでまさにスクランブル的な起用で攻撃的な姿勢を鮮明にしてきます。

48分には早速サヴィオが内側に入ってボールをもらうと一発でゴール前へ。クリスティアーノに飛び出してあわせられる決定機を作られます。
56分は左サイドの崩し。大谷のスルーパスから古賀に完全に抜け出されてひやりとさせられます。
サヴィオが入ったことで前半とは違った攻め方が柏は見られるようになって、新潟は少しマークの綻びや不用意なスペースを与えてしまうことが増えていました。
それでも立ち上がりは右サイドから新井が攻め上がってCKを取るシーンがあったり、左サイドからレオが持ち込んでフランシスのシュートまでいったシーンだったりと、オープンな展開の中で矛を交えることは劣勢ながらもできていました。

しかし、63分ついに破られてしまいます。
左サイドに出ていた大谷からのクロス。クリスティアーノが収めて落としたボールをサヴィオに叩きこまれました。
この同点ゴール自体とは少し違う話ですが、直前に行った選手交代にネルシーニョさんの策士な一端を垣間見た気がします。
61分に染谷→山下という交代をしてきましたが、1点ビハインドで攻め込みながらも取りきれない状況でCB同士を替えるというのは、山下本人も「びっくりした」とコメントしていたのも頷けるちょっと意外なベンチワークでした。
ただ、恐らくネルシーニョさんの中では攻撃はこのまま続ければどこかでゴールは取れると考えていたのではないかと思います。だからその前に、何度か受けていたカウンターによって点差を離されないように傷口を塞いだのかなと感じました。
結果的に交代の2分後に同点となったわけですが、それ以上にあの選手交代が新潟の状況をより一層難しくしたのかなと思います。

奪ってもすぐに失って、とにかくひたすら我慢の時間がしばらく続いた中で67分過ぎに訪れた飲水タイムはまさに「良いタイミング」(名良橋さん)でした。この時、吉永さんや達也さんも両手を上下に動かして落ち着けと声を掛けていました。
それでも再開後すぐにチャンスを作られて苦しい展開は変わりません。
71分に中盤で拾ったボールをカウエが左サイドへ送ってラインを割ってしまったシーンがありましたが、あのプレーなんかもボールを動かしながら自分達の時間を作る余裕が持てていない印象を感じてしまいました。
そして74分、カウエ→ズミさんを投入します。ズミさんも両手を上下に動かして落ち着けということを伝えていましたが、まさに今日ズミさんがベンチにいてくれてよかったなと思うような展開だったと言えるでしょう。

さらに、79分には新太→至恩。83分にはシルビーニョ→達也さんと交代枠を使います。至恩はいつも通り得意の仕掛けでチャンスを作り、ズミさん同様久しぶりの出場となった達也さんも、残り5分くらいから体力的にも苦しくなっていたフランシスとポジションを入れ替えることでフランシスをできるだけカウンターに備えてもらいつつ、サイドの守備を代わりに担ってくれました。
最後、柏はサヴィオのパスから江坂が飛び出してシュートを放ったシーン、新潟は至恩の仕掛けからレオが狙い澄ましてシュートを放ったシーンと、両チーム大きなチャンスを作りましたが勝ち越し点は奪えず。

試合終了、1-1。ドロー。

変化に抗えず

後半、柏が行った変化へ対応しきれず押し込まれ、そして追いつかれたという流れでしたが、その変化と新潟の対応について。

まず前半は、4-4-2の柏に対して新潟の前線2人(レオ、シルビーニョ)が柏のボランチの前に立つような感じでボールを入れさせないように守っていました。柏のボランチが下がれば2人のうちどちらかがアプローチを掛けますし、例えば柏のCBに新潟の前線がプレスを掛ければ置いて行った相手のボランチを新潟のボランチ(サチロー、カウエ)が捕まえるといった感じで連動して守れてもいました。

そうなると柏は外から運ぼうとします。ハッキリと可変しているわけではありませんでしたが、比較的左の古賀が残ることで後ろを3人にしてビルドアップを試みている感じには見えました。しかしそこにはフランシスが出て、幅を取った瀬川には新井が前へ出て対応できていました。
さらに、古賀が残るがために瀬川が幅を取ることになっていたことで、柏は左サイド(新潟の右サイド)のハーフスペースを狙う人がほとんどいませんでした。新潟はチーム全体としても守りやすかったですし、特にサチローとカウエにとっては、相手のボランチは前線の2人がある程度見てくれていましたし、そうであればライン間に立つ江坂へのコースを消せれば、あとは周りのカバーを考えることができて、それほど難しい判断を迫られることはなくスライドしながら守れていたように思います。

前半の飲水タイムを挟んで柏は4-1-4-1に変化させて、新潟は少し押し込まれてラインが深くなるシーンも多くなりました。しかし、中央部分のアンカーとインサイドハーフにリズムを変えるような動きは少なかったので、ボランチと前線2人で受け渡しながら見られていましたし、左サイドの瀬川もやはり外にいることが多かったので特に構造は変わらず問題なく対処できていたと感じます。

しかし、後半。
左サイドに入ったサヴィオが中に入ってハーフスペースを狙ってくるようになります。
さらに、アンカーだった大谷とインサイドハーフだったヒシャルジソンを入れ替えたことで、大谷は引いて新潟のボランチを釣り出した後、自ら前に出て空いたスペースで受けるといった前半にはなかった変化を見せてきました。そのようにして新潟はボランチが動かされてしまうことで全体のライン間や選手間に距離が生まれ始め、左サイドではサヴィオが中に入ることで古賀が前に出てきて、マークの綻びも見られるようになってしまいます。
また、古賀が出てくるためフランシスは重心が下がり、同じくアンカーのヒシャルジソンはシルビーニョが見るため、レオは前線で1人になってどうしても逆サイドへのコースまでは消せず、柏はそれも把握して1つ飛ばすようなパスを増やして揺さぶってきていたように感じました。
これらの変化によって新潟は完全に押し込まれてしまったのではないかと思います。

自分達の時間の作り方

「攻撃に問題があった」と吉永さんは仰っていましたが、確かに攻撃面で修正ができていれば結果的にあれだけ押し込まれることもなかったのではないかというのは一理あるかと思います。
攻撃の問題と言うのはズミさんが入ることで得られた落ち着きの部分も大きな1つではあるでしょうし、その落ち着きを得るためには相手のどこが空いてくるかを見て判断して共有するといったことが足りなかったところに繋がるのではないかと感じました。

もっとこういうのが欲しかったというプレーの例を挙げると、55分00秒あたりの舞行龍のプレー。
相手は1トップになっているわけですからCBのどちらかは空くはずです。このシーンはGKからすぐにもらって完全にフリーでした。そして、ゆっくりと持ち出すことで相手のインサイドハーフ(江坂)を釣り出して切り返しでかわしてからカウエへ渡し、また折り返しをもらっています。
このシーンでもったいなかったのはカウエがあそこで近寄ってしまったことで狭くなってしまったことでした。近寄らなければインサイドハーフは取りに行くか留まるかの判断がさらに難しくなります。仮に舞行龍へ取りに来てくれればカウエは空きますし、そこにアンカーのヒシャルジソンが寄せてくればバイタルエリアに大きなスペースができます。

もう1つ、81分45秒からのシーンでは至恩がアンカーの脇でボールをもらって一旦ボランチへ預けた後、再びアンカーの脇(インサイドハーフの背後)のスペースでもらって仕掛けるシーンがありました。
もちろんこういうのは、言うは易く行うは難しであってそんな簡単な話ではないのは重々承知です。ただ、形を変えてきた相手に対して次はどこが空くかを考えて判断して共有したプレーがもっと見られたらよかったなとは感じました。

これくらいはできる

試合後のインタビューで吉永さんは「これくらいはできるという彼らの力を証明したかった」と仰っていました。そうです、これくらいはできるのです。
“じゃあなんでこれまでその力を常に発揮できなかったのだろう”と思ってしまいますが、今それを振り返っても仕方ないというか、そういうことは全部終わってから考えるものなのかなとも思わなくもないので一旦置いておきます。
とにかく残りの試合で、これくらいはできるという水準をコンスタントに発揮してほしいというのと、それを少しずつでも更新しながら勝ち続けてほしい、それを願うばかりです。いや、願うだけじゃいけませんね、今まで以上に精一杯応援したいと思います。

くりはら
くりはら
鳥屋野潟ほとり出身のアルビレックス新潟サポーター。海外はアーセナル推し。Jリーグ、海外、2種、3種、女子、その他、カテゴリーは問わずサッカーが好き。ラジオも好き。某坂道グループもちょっと好き。