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オレラグ

ポジティブな欲深さ【戦評】第8節 ツエーゲン金沢戦

2021年4月19日

こんにちは。

クラブ新記録だそうですよ、開幕から8試合負けなし。
しかもそんな記録を打ち立てた試合が3位につける金沢を相手にしてのものであり、また我々も厳しい人だというのをよく知っている敵将に「やれることはやった。新潟の選手は1つも甘いプレーがない。結果はしょうがないかなと思っている」とまで言わしめての完封勝利です。
いやはや、何だか恐悦至極に存じますって感じですし、何よりこのわが世の春を謳歌している感じ、ただただ幸福です。

ヴェルディ戦で大量得点を取った時にも書いた気がしますが、これだけ好調が続く場合でも、正直小難しく考えるより見逃し配信を何となく見ながら「ヤムイェーイ!」とか「至恩フーッ!」とか「奏哉クーッ!」って盛り上がれればそれでいいじゃん、なんて思わなくもないのですが、まあ前節に続き見応えのある素晴らしい試合でしたし、せっかくですから今節もちょっと感じたことを書いていこうと思います。

スタメン

まずスタメンからおさらいです。
新潟の方は当日の日報予想の通り、孝司が欠場でカイトが初スタメンとなりました。試合前のインタビューでアルベルさんが「違和感のため休ませた」と仰っていましたから、大きなケガとかではなさそうということで少し安心しました。これから連戦もありますし、何よりシーズンはまだまだ長いですから、各選手とも大きなケガだけはないように願うばかりです。
そしてベンチの方には2試合ぶりの三戸ちゃんと久しぶりにヤムも入っていました。

対する金沢ですが、こちらはうちからローンで行っている泰基が契約のため欠場。替わって左SBには今季城西大学から加入したルーキーの片倉が抜擢されました。無難に高安を入れた予想スタメンはあえなく外れ。まあこれは仕方ない、分かりようがありません(言い訳)。

金沢でもありうちでもある

まずスタッツから見ますが、ポゼッションがなんと74%vs26%。パスの本数も3倍以上の差で新潟が多く、シュートも14vs2という数字が出ていました。特にポゼッションのところは前半の飲水までの時間帯で79%と出ていましたし、とにかくボール保持に関しては新潟が圧倒する展開となりました。
ただ試合中に梅山さんも仰っていましたが、ボールは握れていても主導権を握れているわけではありませんでしたし、試合後にアルベルさんも「明確に違ったプレースタイルを求める2つのチームの対戦」と仰っていたように、金沢は金沢で、新潟にボールは持たせていいから奪いどころをしっかり定めて縦や裏へ素早く狙うというプランがよく表現されていました。

こういうどちらか一方にポゼッションが偏る展開は、得てして持っている側がカウンターに泣くケースがよくあります。それは仮に試合が0-0で推移していて、お互いにこれといった決定機を作り出せていなくても、持っている側には持っている“のに”点が取れないという焦りやイライラが生まれやすく、元々チャンスは少ない想定である持たれている側の方が平常心でできるということが言えるのではないでしょうか。

そしてこの試合もそうなる懸念は十分にあったわけで、ハーフタイムには金沢ペースだという言葉もSNSで見たのですが、個人的には金沢のペースでもあるけど新潟のペースでもあるという印象でした。
それは新潟の選手達から焦燥感や苛立ちを感じなかったからです。結局先制点は77分まで奪えなかったわけですが後半もその印象は変わりませんでした。
なぜそう思えたかということで、その理由の1つではないかと考えられることを作っていただいた図と共にちょっと書きます。

つばぜり合い

まず先に結論から言うと、うちのボランチが相手の2トップの背中で受けるシーンをしっかり作ることができていたというところです。

ということでその1つの例として75分のシーンです。
舞行龍から右の奏哉へ渡し、トラップで中へ持ち出して横の島田へ渡します。島田はターンをして一旦後ろに戻すと、ボールをもらった千葉から鋭い楔が中間ポジションに入っていたゴメスへと入りました。

舞行龍が持ったところで相手FWの丹羽が少し出てくるのですが、それによってできた背後のスペースで島田が受けることにより相手のボランチである藤村を高い位置まで引きつけることができていました。すると必然的に中盤の中央が手薄な状況となりますから、そこをしっかりと活用するという流れができました。

とはいえ金沢としても、試合を通じて2トップの背中で受けられること自体にそれほど嫌悪感を抱いているようには感じませんでした。当然あまりにフリーで前を向かれてどこにでも出せるみたいな状況はあまり好ましくないとしても、慌てて出て行って穴を空けるくらいなら4-4のブロックが整っていて準備ができているなら問題ないという感じに見えました。

ただ新潟からすればその中央で受けることでリズムもできましたし、そこを起点に一旦外に出してから中間のスペースに入れるとか、実現はできずともしっかり画がイメージできている手応えを感じながらやれているような気がしました。
例えば新潟のボランチ2人が中央にいる際、もっと金沢の2トップが徹底的にボランチへ入れさせないようにして外へ外へというアプローチを掛けていたら、ボールの循環も外回りが多くなってもう少しストレスは大きくなっていたように思います。

試合後に島田が『持たされている感覚はなかった』と話していたので、金沢のペースでもありうちのペースでもあるというのはそれほど的外れではないのかなとも思いましたし、少なくともただ金沢の術中に嵌って苦しんだゲームではないというのは言えるかなと感じました。

駆け引きの面白み(解説の凄味)

金沢の守備対応の仕方についてもちょっと触れましたが、それでもやっぱりうちのCBが自ら持ち出せるとか、ボランチやSBが残って3人にして動かすとか、あとは受け手の方でも誰かが裏に走ったら手前にできたスペースに誰かが入るということを丹念にやり続けていたからこそでもあるのかなとは思います。

前半には内側に入った至恩が裏に抜ける動きで相手を引っ張ることで空いたスペースにカイトが下りてポストプレーをするみたいな形もありましたし、先に挙げた74分のシーンで言えば、梅山さんも仰っていたように至恩が外側に張ることで相手のSBを引き出したことで内側にスペースができていました。

このシーンでもう少し言うと、千葉が少し持ち出したところで藤村が引き出されてる分、右SHの力安がグッと絞って中央へのパスコースを消す努力をしていました。それでも手前にいるヤンも気になる中で、一旦中央に入ったゴメスを消そうと左に動いたのを見て今度はゴメスが動き直すことで力安の右側でボールを引き出していました。
この瞬間的な数的優位と、下味となる局面としての位置的優位を作ることができていた駆け引きなんかは、金沢も決して致命的なミスを犯していなかった分、余計見応えのある見事なものでした。

またこれは余談ですが、後半の途中から『SHが幅を取って相手を引き出してみても面白いかも』と仰っていた中で、次第にそういったプレーが増えることでよりテンポもよくなったあたりに、さすが梅山さんと改めて思った次第です。さすがなんてちょっと偉そうで申し訳ないですが、ほんとに毎度勉強になります。ありがとうございます。

垣間見える強さ

それにしてもほんとに今のチームは強い戦い方、勝ち方ができている気がします。
堅いブロックを前に何度もやり直しながらあの手この手でこじ開けにいくプレーもそうですし、失った後のプレッシャーと帰陣の速さもそうです。あとはセットプレーで様々工夫を施しながらやっていることや、先制点の場面で奏哉がスパイクを履き替えるために一旦外へ出たタイミングで、冷静にヤムが右SB、カイトが右SHへ下りて対応した姿勢もそうです。結果的にその2人が拾ったところから決勝点が生まれるんですからおもしろいものです。

また、3節のレノファ戦も至恩の出場停止によって出番を得た星が先制点を奪ったように、今節も今季初出場でしかもロメロのアクシデントによって出番が回ってきたヤムが決勝点を奪いました。替わって出た選手が結果を出すというのは頼もしい限りです。

あとはこの日何度もありましたが、善朗や至恩がファウルを受けながらも笛が鳴るまで続けようとしたり、もしくは素早くクイックで始めようとしたりしていたプレーもナイスでした。
ひょっとしたらがっちりブロックを築いてくる金沢相手だからこそいつも以上にスピードを持って攻め切ろうとか、陣形が整う前にやろうみたいなことも意識していたのかなということを勝手に推測しましたが、まあその推測の正否はともかくとして、見ている側の気持ちもより熱く乗せてくれるようなプレーだったように思います。

コミュニケーション能力

ファウルの話ついでにではないですが、試合後にゴメスが主審の柿沼さんについてコミュニケーションをよく取ってくれてスムーズに試合が進んだということを呟いていました。
前節も窪田主審と孝司の会話がマイクに入っているシーンがありましたし、DAZNの番組では内田篤人さんがドイツのレフェリーについて『めっちゃ説明してくれるからよかった』みたいなことも仰っていましたから、やっぱりコミュニケーションって大事だなと感じます。

そしてゴメスは『良くないときばかり目立つけど、良かったときもしっかり評価してあげて欲しい』ということも呟いていました。
誰もが正しいジャッジを求めるしそれがレフェリーのお仕事ですから、違うと思った時に『おかしいでしょ』と厳しく抗議をしたり意見を言うのは何ら問題ないと思います。当事者である選手はもちろん、サポーターだって一緒に戦っているわけですから。

ただ、ちょっと見ている側が攻撃的になり過ぎることがあるのはどうにかならないかなというのは常に感じるところであり、それは審判がいて当たり前みたいに思われてしまうところからそうなっているように感じる事もあります。相手がいなければ試合ができないのと同じように、審判だっていないと成立しません。だからお願いしてやっていただいているというのが元々であり本来の形です。

個人的には学生の時に副審をやったことで大変さを感じられたというのがあるので理想はみんな体験できたらいいなとは思うんですけど、それは厳しいですから何か擬似体験できるようなものがあればいいなぁなんて思ったりします。まあそれも難しい話ではあるのですが、とにかく選手がこうやって言ってくれるのは大事だなと改めて感じました。

最後に

改めて我がアルビレックス、クラブ新記録の開幕から8戦負けなしです。
素晴らしい。

しかしこれだけ好調を維持して強さを示し続けてくれると、基本的にアルビレックスへの目線は生温い自分なんかでもチームに求めるものが贅沢になるんですから、人間というのは欲深い生き物だなと思わずにはいられません。

いくつかあったカウンターのピンチを考えれば、その起点となってしまったミスはなくさないといけませんし、ボールを持ちつつも決勝点をカウンターで取れたという点で攻撃における幅の広さは見せられましたが、がっちりブロックを作ってくる相手に対してそれでも崩し切るために、より速いテンポや連携、技術といったところの積み上げは必要でしょう。

贅沢になったり欲深くなったりする自分を浅ましいと反省しつつも、とはいえこういう贅沢や欲深さは決して悪いものではないのかなという気もします。

これからのアルビレックスにますます期待したいと思います。

くりはら
くりはら
鳥屋野潟ほとり出身のアルビレックス新潟サポーター。海外はアーセナル推し。Jリーグ、海外、2種、3種、女子、その他、カテゴリーは問わずサッカーが好き。ラジオも好き。某坂道グループもちょっと好き。