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オレラグ

今を勝つため、未来に勝ち続けるため【戦評】第9節 栃木SC戦

2021年4月23日

こんにちは。

試合後のインタビュー。
感情をとってもオブラートに包んだ返しをしているように感じました。
村松さんが上手に意訳しているのかもしれないし、実際にアルベルさん本人も十分に丸く伝えているのかもしれないし、その辺の細かいところはちょっと分からないですが、いずれにしても大人だなぁという印象を受けました。

冒頭にリスペクトしていると仰って、また途中にも再びリスペクトしているということを伝えて、そして『誤解しないでほしいのは批判しているわけではない』と丁寧に注釈も付けつつ激しさに疑問を投げかけていましたから、やっぱり好きじゃないのでしょう、ああいうやり方は。
個人的に栃木に関しては、まだエキサイティングの範疇であることが他の試合を見る中でも多い印象で、意思統一もできていて組織的ですからあれはあれで見応えがあるなとは思います。正直今季上がって来た東北のチームの方がさらにデンジャーな印象なので、あれに比べれば嫌いではないです。
ただ、昨日の試合に関して言えばもう少し早めに笛を吹いてくれてもいいのかなというシーンはいくつかあったように思ったのも事実です。戦い方の好き嫌いはともかく、アルベルさんの疑問や不満そうな感情については当然100%同意するところです。大事な選手が正当なフットボールコンタクトではないプレーで壊されでもしたら堪ったもんじゃないですからね。

それにしても栃木とか秋田の試合を担当するレフェリーは毎試合さぞかし大変だろうなと改めて感じました。
あ、秋田って言っちゃったね(川渕さん風)。

スタメン

さてスタメンです。

うちの方は前節から引き続き孝司が欠場ということでカイトが最前線を担い、さらに前節負傷退場となったロメロに替わって、前節ヒーローとなったヤムが今季初のスタメンとなりました。

対する栃木の方は前節からの変更が2人。
右SBに6試合ぶりのスタメンとなる吉田が入り、右SHには開幕戦以来のスタメンとなる松岡が入りました。右サイドのユニットをいずれも新加入の選手へ入れ替えてきました。

ゴールにも劣らぬ運びのうまさ

新潟がボールを持って栃木がハイプレスとロングボールでそれを破壊しに行くという展開は、戦前から十分に予想されたものだったわけですが、結果的に新潟のポゼッションは2戦続けて7割を越える内容となりました。

そんなお互いの特長が随所に発揮され、散りばめられていた中で、特に立ち上がりはうちの良さがよく出ていたということで、そこから1つ素晴らしい運びだったなと思う場面を拾ってみました。

前半7分のシーン。
一旦航斗まで戻ったところからのビルドアップです。
中央のヤンを経由して左に開いた千葉へと渡ります。千葉はすぐ外側のゴメスへ預けると、ゴメスがレシーバーのような役割となることでCBまでプレスに来ていた栃木の選手達の背中で島田がフリーとなってボールをもらう形を作り、そこから逆サイドへ展開できました。

まずこのシーンの時に解説の高木さんも仰っていましたが、航斗からヤンへ入れたような中央へ入れる意識というのは立ち上がりから非常によく見られました。
入れてワンタッチで戻してという一見何でもなさそうなパス交換も含めて、これをすることによって相手の2トップ+両SHをギュッと中央へ収縮させることでそこから広いスペースを使う流れを生み出せていたように思います。

さらに開いた千葉からゴメスへ渡ったところでは、相手の右SB(吉田)が思い切って出てきてその裏のスペースをボランチ(西谷)がカバーするという栃木のやり方をしっかり把握した上でフリーとなった島田を使えていました。
西谷が一旦サイドの裏をケアしに行こうとしたものの中央の島田に出されたことですぐに踵を返しているというのが映像でもよく分かりますのでぜひ見返してみてください。
島田としてももちろんそれを意図したポジショニングでしょうし、西谷がチームの約束事としてサイド裏のカバーへ行かないといけないような状況を作るために、至恩も大外で張るポジショニングを取ってくれていました。

そこからは島田がサイドチェンジで逆へ展開することで、より広いスペースのある右サイドから奏哉と善朗のパス交換によって深くまで入りクロスまで持ち込みました。
フィニッシュに関してはもうあれこれ言及する必要もないでしょう。
あまりにアメージングであまりにビューティフルな年間ゴール級のオーバーヘッドでした。

またヤンからボールをもらう際の千葉についてもちょっとだけ。
ヤンからボールが移動する間、体を開きつつステップを踏んで最初はシンプルに外へ出すような感じに見えたのですが、トラップの直前で少しステップを細かくすることで中央の島田へ入れる雰囲気を見せたように感じました。これによってプレスに来た相手の右SH(松岡)はそちらを意識させられて少し迷ったため体勢を崩したのではないかなという気がします。

最初はトーン、トーンという感じのステップで体を開きつつ、トラップ直前でトトトみたいな細かいステップによって一瞬でも早くボールへアプローチできるような、ワンタッチでパスが出せるような状況を作るフェイントがあったように感じました。
縦パスではないですが、駆け引きという点で個人的なチバメーターに1点加算したいようなプレーでした。

苦しい中でも

立ち上がりから前半の途中までは新潟の特長がよく表れていたわけですが、次第に栃木の特長が目立ち始めるようになり、ペースはじわじわと栃木へと傾いて行きます。

飲水タイムの直前に追いつかれたのであそこが1つのターニングポイントではあったのだろうとは思いますが、同点になって栃木の勢いが加速したというよりも、飲水タイムに微調整をしたことで特長がよりハッキリ表現できるようになったという印象ではありました。
その微調整というのは、新潟のビルドアップに対して少しやらせて(泳がせて)からプレスを掛けるようになったのではないかなということです。
少しやらせてからというと構えてからみたいに捉えられそうですが決してそうではなくて、もう少しメリハリをつけるようになったという印象でしょうか。

立ち上がりからしばらくは、ハイプレスをするにしてもテンポが同じだったために、新潟としても来たら渡す、来たら渡す、というイメージでうまく循環できていたように思います。
しかし飲水以降は、同じように高い強度で奪いに行くにしても一拍置いてからというか、ボールホルダーに対してもらったタイミングですぐ行くのではなく、少し間を置いてから行くことでボールホルダーがよりいい出し所を考えるタイミングでグッと出て行くことでそれまでのようなリズムを出させてもらえなかったように感じました。

また、一拍置くことでより全体の距離をコンパクトにしたところから奪いに行く形ができるため、なかなか穴を見つけられないような状況に陥ったとも言えるでしょうし、それまでできていたリズムが出せなくなったがためにボランチが下りる回数も増え、栃木としてはより前向きな矢印で守りやすくなったり、先制点のシーンのように栃木のボランチがサイド裏と中央に振られずに躊躇なくカバーへ回れるようにもなったのかなという印象を受けました。

それでも新潟もそれに屈してばかりではありませんでした。
途中解説の高木さんも仰っていたように、栃木のボランチは外にカバーへ出るから中央が空きやすいということでそこに至恩が入って受けに来たり、ビルドアップでボランチが下りた場合でも逆のSBが内側に入ることで中盤に残るボランチや2列目がより高い位置で受けられるようにするといった工夫が見られました。
また、栃木のプレスによってどうしても低い位置でのプレーが続く中で、サイドの裏へシンプルに長いボールを送ることによってまず陣地の回復を試みるプレーもありました。

そして終盤は選手交代によりシステムを4-1-4-1へ変更し、星や三戸ちゃん、至恩も含めてサイドから仕掛ける形で押し込むことで、最終的にそこから得たCKで劇的な同点弾が生まれました。

最後に

最後に見せてくれた意地によってとうとうリーグで唯一の無敗チームとなりました。同点直後もすぐボールを拾いに行ったり、ゴールを決めた千葉ちゃん自身もすぐ自陣へ戻って行ったりして、逆転するぞと全員が同点で満足しない姿勢をみせてくれたのも頼もしい限りでした。
また解説の高木さんは、攻めあぐねながらも最後まで『保持しながら崩すんだ』という姿勢でプレーし続けるメンタリティを褒めてくれていました。

アルベルさんの下でこの2年育んでいるアルビレックスのスタイルは、興奮もあるし学びもあって自分は大好きです。いや、たぶん大体みんな好きでしょう。
だからこの日のような試合でも勝ち切れるくらいの強いチームになるべく、このスタイルをますます磨き上げていってほしいなと思います。

くりはら
くりはら
鳥屋野潟ほとり出身のアルビレックス新潟サポーター。海外はアーセナル推し。Jリーグ、海外、2種、3種、女子、その他、カテゴリーは問わずサッカーが好き。ラジオも好き。某坂道グループもちょっと好き。