オレラグ
短3度を長3度に【戦評】第17節 ヴァンフォーレ甲府戦
こんにちは。
自分が中学の時に聖籠や鳥屋野で見ていた北越の有田やユースの泉澤ももう今年30になるんですね。
そしてそんな彼らと同じ学年である乃木坂の新内さんがラジオで健康診断は大事だという話をよくされていたり、AKBの柏木さんが人間ドックで難病が見つかったりとかもしていたので、3つ後輩の自分もちょっとずつ体に気を遣ってあげないといけないかなぁと何となく思っています。
つまり何が言いたいかというと、ああいう追いつかれ方は精神的にズシっと重くのしかかってくるということと、そんなストレスが少しずつガタに表れやすくなるもしれないのでちゃんと今まで以上に日頃から体のメンテナンスはしないといけないなということです。
え?持っていき方が強引?知りませんそんなこと。悔しいんだからしょうがないでしょ……ってまあここでツンケンするのも体によくないでしょうから穏やかにいきましょう。
穏やかにいきましょうというよりも自分が穏やかになるためにいつも通り細かく振り返ってみます。
スタメン
新潟の方は前節から変更が1人。
前節途中出場から殊勲の逆転ゴールを奪ったカイトが3試合ぶりのスタメン。
またベンチには4試合ぶりのメンバー入りとなるゴンサと、いよいよケガから帰って来た小島が今季初めてのベンチ入りとなりました。
和輝はU-20の代表合宿に選ばれてもいましたから、GK陣の争いはベテランの瀬口も含めてまたさらに熾烈になってきそうです。
対する甲府は前節からの変更なし。
前節からの変更なしも何もこれで5試合連続全く同じスタメンということになりました。
3連勝を含む直近6試合負けなしで、しかも4試合連続で完封もできているわけですから、極力いじらないというのは妥当な判断なのでしょう。
コミュニケーションと連動
冒頭はちょっと心が荒んでいる感じで書きましたが、不満なのは最後追いつかれて勝ち切れなかったことだけで、内容としてはこの試合も非常にポジティブな場面がたくさんあったというのが実際のところです。
ということでそんな中から印象的というか代表的に良かったと感じた部分を拾ってみました。
まずは前半17分のシーン。
ビルドアップから縦パスを起点に細かい連携から至恩が突破しかけた場面です。
まず、2CB+ゴメスが残って後ろを3人にしてのビルドアップなのですが、全体が映っていないので先に立ち位置を整理しておきます。
恐らくですが孝司とカイトが中央に2トップ的に立ち、そこを甲府は1人余る形で3CBが監視。また大外の奏哉と至恩をWBがそれぞれ見て、さらに善朗と島田が相手の5バックと中盤4人の間に立つ形になっていました。まずこういった基本の立ち位置を取れていたことは大事なポイントだったかなと思います。
さて、後ろの3人でボールを動かす中で、舞行龍から千葉に渡ったタイミングで甲府のボランチ山田が出てきました。
千葉は少し詰まりますが落ち着いて左のゴメスへ預けます。
ここでゴメスにボールが渡った際、対面する甲府の長谷川は、まず自分の外側を見て、恐らく島田が受けに来ていないかという部分を確認していました。
さらに直後、今度は自分の内側を確認するのですが、ここで前線にいた孝司が下りて来ていることを把握したため、縦パスを入れられないようにわずかですが内側へ絞りました。
すると同じタイミングで大外に張っていた至恩も下りて受けに行くアクションを見せることでWBの関口を引っ張り出します。
これら2つのアクションがあったことにより、ゴメスから正面へのパスコースがわずかですが広がるのと同時に、縦パスを受けた島田は浦上に付かれていながらも、サイドのスペースは空いていたため余裕を持ってそちらへ逃げることが出来ました。
さらに、島田に縦パスが入った時点で相手の中盤4人のラインを一気に引っくり返すことができており、そこから先にボールに対して反応した孝司、至恩が3人目の動きによって守備ブロックの突破に成功しました。
このシーンの直前にも同じようにゴメスが持ち出しながらも一旦やり直した場面があり、その際『ユズそこ入っていいよ、前向けるから』と島田に声を掛けていたのですが、このコミュニケーションも含めて良い連携が取れているように感じられました。
変化にも対応
2つ目のシーンが75分です。
ここでは島田が左に下りることで後ろを3人にしたビルドアップだったのですが、まずこの4分くらい前に甲府の方は5-4-1から5-3-2へと形を替えていました。
そんな形を替えた甲府に対して新潟の方は、まず至恩が3センターの脇に下りて受けることで相手を引き出す、もしくは陣形を少しでもズラそうという試みを見せます。
ここからボールは一旦ヤンに落とされ、囲まれながらも島田へ戻して中央の千葉へと繋がります。
ここで千葉は少し前に運ぶ姿勢を見せることで相手の2トップの意識を中央に寄せ、また至恩とヤン、さらに島田へと出て行った3センター右の長谷川にも、早く後ろへ戻ってスペースを埋めないといけないように迫ることができました。
そうして相手の目線や意識をグッと集めてから右の舞行龍へ展開すると、今度はさっき至恩が受けたのとは逆の3センター脇に星が下りてボールを引き出します。この時点で3センターはかなり横に広がった状態となっていました。
さらに奏哉が下りて星からボールを受けることで1つ目のシーン同様WBの選手(ここでは荒木)を引き出しておいてサイド裏のスペースを空け、横に広がった3センターの間に入った善朗からワンタッチのパスが抜け出した星へ渡るという、ここも3人目の動きによる突破が見られたシーンでした。
相手の陣形を見つつ、それがどう変化してどこにスペースが生まれやすくなったかということを、個々人で認識しチームとしても共有することで突破できたり、もしくは突破できずともそれが共有されているように窺える攻撃がこの日も随所に見られました。
チームの連携、奏哉の潰し
3つ目は守備についてのシーンを拾ってみました。26分の場面です。
相手が後ろで動かすのに対して、しっかり中央をケアしつつスライドして、能動的にプレスのスイッチを入れたところから外側で奪ったという流れのシーンです。
まず、右CBの浦上は出すところがないと判断して持ち出すのをやめ、一旦中央に下りていた新井へ戻して攻撃を作り直します。
ここで孝司は山田を隠し、また孝司と共に山田を挟む形で見ていた善朗は新井を牽制する動きを見せます。
さらにカイトも、まずは野津田を警戒したポジショニングを取ってから、新井へパスが入った時点で野津田を中盤に任せつつ少し前へ出ます。内側に入っていた荒木からその先のメンデスまでを見られるような位置へとポジションを取り直しました。
さて、ボールをもらった新井は最初に左を見るのですが、カイトがじわじわ前を窺っているのを見てそちらをやめ、再び右の浦上へ戻します。
するとここで至恩が外を切りながらプレスを掛けて守備のスイッチを入れます。浦上は少し前を見ますがすぐに難しいと判断してメンデスへ渡しますが、新潟の方は至恩のプレスに連動する形で善朗がグッと前に出てメンデスまでプレスを掛けます。
メンデスにボールが入ると、カイトは外も確認しつつ、まずはより入れられたくない内側の荒木に対応できるように立ち位置を取ります。実際パスが出る際ちょっと重心も内側に動いていました。
メンデスは結局大外の泉澤へのパスを選択しましたが、そこは奏哉がピタッと寄せて少しずつ押し出して下げさせ、最終的には次の中央への縦パスをカットしてみせました。
甲府からするとこの流れは今までの試合でもよく見られた常套手段の運び出しです。
後ろで動かしつつ荒木が内側に入ることで相手を中央へ意識付けさせて外側の泉澤へ展開。そこから寄せが甘ければ彼がそのまま持ち出したり突破したりすることもできますし、突破ができなくてもそこで起点を作ることによって、内側に入っていた荒木やライン間に立つ野津田に渡してから連携で突破するというものです。
他のチームを見ていると、連動しながら中央を閉めて外側へ追い出すところまではできていても、結局外側に入ったところでやらせてしまう場面は散見されていた印象があります。
しかし、うちはマッチアップする奏哉が見事な間合いの詰め方で蓋をすることによってそのまま奪ったり、または下げさせて攻撃をやり直させたりすることに成功していました。
このシーンではちょっとトラップが離れた瞬間、一気に詰めることで前を向かせないどこから横へのドリブルすらも許しませんでしたし、言わずもがな2点目も奏哉のまさしく間髪も入れさせない寄せによってパスミスを誘発したプレーが起点となり生まれたゴールでした。
引かれようが出てこられようが
試合後に敵将の伊藤さんは『受けてしまったこと』を悔やんでいて、試合中にはうちのCBにボランチの山田がプレスに行ったタイミングで『ナーイスヤマ!』と声も掛かっていたので、やはりもう少し前から制限を掛けることがプランとしてはあったのかなと思います。
ただ、うちとしては取りに来てくれた方がスペースもできて攻撃の糸口は見つけやすいですから引かれた方が厄介になるかなとは予想していました。
さらに先制もされてしまいましたから、攻撃に関してはもっと苦労するかなというのが正直なところでした。
しかし、先に挙げた2つのシーンのようにスペースを作って活かして攻撃の形を作ることもできていましたし、同点弾が顕著な例のように、ベタッと引かれた場合でも焦れずに動かしながら、奪われても素早く奪い返すことで2次攻撃、3次攻撃と畳みかけてこじあけることができていました。
ちなみにあの同点弾の起点となった善朗の仕掛けなんかは、一旦下げてやり直そうという素振りでボールをさらして、泉澤がそっちへ少し先に意識が行ったところを突いて見事に縦に運び出していました。
インスタライブで最近参考にしている選手としてマンチェスター・ユナイテッドのブルーノ・フェルナンデスの名前を挙げていましたが、まさにユナイテッドにおけるブルーノ・フェルナンデスと同じくらいアルビレックスにとってもなくてはならない存在であることをこの日も改めて示してくれました。
最後に
見直して細かく振り返ってみて、アルベルさんの仰っていた『勝ちにふさわしいプレーができていたと思います』というのも十分納得できるものだったなと改めて思えましたし、何よりも冒頭よりも穏やかになれました。
堅守であり、内容が悪くともしっかり勝ち切れる強さがある甲府に対して先制されながらも逆転まで持っていったのは間違いなくポジティブであり、それと同時にあそこまでいけたなら勝ち切らないといけなかったというのもまた事実でしょう。
ただヤンが『もっと細部を詰めたい』と反省していましたが、逆に言えば細部を詰めることに集中すればいいとも考えられるわけで、アルベルさんも仰っていたように『このプレースタイルを続けることがより多くの勝ち点を積み重ねることに繋がる』ということを見ている側からしても強がりではなく思えますし、今節はもったいないミスと勝ち切れなかったことだけを悔しさとして糧にできればいいのかなと思います。