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オレラグ

試練【戦評】第17節 ジュビロ磐田戦

2020年9月7日

こんにちは。

非常にしんどいゲームとなりました。
“昇格を目指す上で落としてはいけないゲーム”という言い方は、そもそも昇格を目指すならできるだけ落とさないようにしないといけないのであんまり適当な表現とは言えないのかもしれません。ただこの日はそういう“昇格を目指す上で”みたいな前提条件も関係なく、シンプルにいただけない、やってはいけないような試合だったのかなという印象です。

終盤の戦いは特にそう思いますが、シーズンが終わった時にこの試合が今季の底だったといえるゲームになることを祈るばかりです。

スタメン

ではスタメンからおさらいしてみます。
中2日ということも考慮してか、新潟は前節からGK小島とCBの舞行龍、マウロ以外の8人を入れ替えてきました。ここまで11試合連続スタメンフル出場とフル稼働していた新井が今回はベンチスタートとなりました。

対して磐田は、前々節の群馬戦から前節のヴェルディ戦にかけて後ろの選手を中心に8人と大きく入れ替えていましたが、今節はそこからまた群馬戦に出ていた選手を何人か戻して臨んできました。
ただ、GKの杉本とボランチのムサエフという今季ベンチ入りすらしていなかった選手をいきなりスタメンに抜擢したり、蓋を開けてみるとシステムも4-4-2を採用してきたりと、ちょっとしたサプライズもありました。

前半

磐田は守備時を始めとしてベースは4-4-2でやりつつも、ビルドアップの際はボランチ(主に上原)が下りて後ろを3人にしつつ、SBが上がりSHが内側に入るという形でした。
それに対して新潟は完全に前から嵌め切る形が作れていたわけではありませんでしたが、縦関係になる相手のボランチに対しては11分のようにこちらも前線2人が縦関係となり、開いたCBにはSHが外側へのパスコースを切りながら寄せ、中央への楔を後ろの選手が狙うという形が作れていることもありました。出来としては可もなく不可もなくといった感じだったでしょうか。

反対に新潟のビルドアップに対して磐田のプレスは非常に速く厳しいものがありました。2CBに2トップが、SBにSHが、そしてボランチにはボランチがと、連動してかなり高い位置から寄せてきたため、新潟はいつもやっているボランチが下りて後ろに数的優位を作る可変の暇も与えてもらえないような展開に見えました。
島田が流れの中で少し左に下りる格好になった10分頃のビルドアップが、結果的に1つゴール前へ迫るシーンへと繋がりましたが、それ以外では思うようにそういった形が作れず縦パスも入れられない、苦し紛れの展開を多く強いられました。

すると均衡が破れたのは23分でした。
右サイドの小川大から中央の伊藤が受けると、松本へ縦パス。松本が右サイドの上原へ渡してクロス。DFの間にうまく入った中野にヘッドで合わせられました。
この直前に伊藤の強烈なシュートでヒヤリとさせられていたわけですが、そこに至るまでにまず上原のサイドチェンジと松本のクロスがありました。さらに伊藤のシュートを挟んで今度は小川大のクロス、大森のクロスと再三にわたって左右に揺さぶられていました。
その後、中央で伊藤が受けたところでゴンサと善朗が急いで寄せに行っていましたが、揺さぶられてDFラインがズルズル下がってしまったのはこの距離からも明らかだったと思います。じりじりと寄り切られての失点でした。

それでも飲水タイムを挟んですぐに新潟は反撃します。
28分、史哉から右サイドのスペースに出たボールをシルビがキープしてファールを受けます。これで得たFKから善朗の蹴った高精度のボールがこぼれたところをマウロ!同点!
「セットプレーからゴールを奪えるというのは大きいですよね」という梅山さんの仰る通りです。失点直後のタイミングというのもナイスでした。

同点にした直後は島田がCBの中央や左に下りてビルドアップする形から、善朗やゴンサが間に入ってボールを出し入れしながらテンポよく動かせていました。その流れから30分にはゴンサのクロスにシルビヘッドという決定機を迎えます。この時間帯、このチャンスで勢いのまま逆転できていれば……なんて思うわけですが、こういうのを後の祭りと言うのですね。とほほ。

前半終了、1-1。
『うまくいっているとは言えないけど、タイスコアで折り返すこともできたし、相手もプレスは強烈だけどその分狙いどころは十分にあるから、いざとなったらベンチにいる強力なアタッカー陣を投入して仕留めよう』
以上がHTの個人的な心持ちでした。

後半

スタートから両チームともメンバーを替えてきました。
まず新潟は史哉、ゴンサ→新井、福田を投入します。
対して磐田は山本→大武へ入れ替えてきました。こちらはもしかすると前半シルビとの競り合いで頭をぶつけた影響も考慮しての交代だったのかもしれません。

すると後半の立ち上がりは新潟が積極的な守備や速い切り替えによっていいリズムで入ることができました。
47分には舞行龍のインターセプトからシルビ、善朗、ロメロと繋いで最後は善朗のシュート。51分には島田のクイックリスタートからシルビが繋いでテセのシュート。いずれもゴールとはなりませんがスピード感のある攻撃を展開します。
54分には中野のミドルを小島がナイスセーブでしのぐと、57分に新潟は善朗、シルビ→至恩、ファビオを投入してさらに攻撃のギアを上げにいきます。
59分には再び舞行龍のボール奪取からカウンター。ファビオが運び、中央で受けた至恩のシュート。ブロックされたセカンドボールを拾って今度は新井のクロスにテセのヘッド。枠を外れましたが厚みのある攻撃を展開します。

また、梅山さんが大事なこととして「相手を見ながら動かすということ」と仰っていましたが、ここに関しても後半に入ってからはボールをテンポ良く出し入れしながら、相手を動かしつつ空いたところを狙うというのがいくつか見られました。
62分、舞行龍と福田のパス交換で相手のファーストディフェンスである2トップの背中を取ると、さらにライン間に入ったロメロとテセがワンツーの形で突破してゴール前へ迫ったシーンなんかはその最たるものでした。

しかしその直後です。
ボールをキャッチした杉本から直前に投入された山本康が中央でもらいます。さらにこちらも直前に入ったルキアンが右に流れてボールを引き出すと、またさらに直前に投入されていた藤川が右のスペースへ抜け出します。藤川が上げた低いクロスに舞行龍がスライディングでクリアを試みますが、これが不運にもゴールへ。同時投入された3人の絡みによって勝ち越されました。

さらにまたその4分後。
右サイドのスローインから藤川がワンタッチで前へ。ルキアンがフリックで流したところに中野が抜け出します。カバーに入ったマウロと入れ替わり、懸命に足を伸ばしたことで出てきたGKの小島はキャッチしきれず、こぼれ球を角度のないところから右足でねじ込まれました。3点目。
中野の倒れ込みながらの執念もそうですが、ボールを蹴るというより下に滑り込ませるようにして回転のかかった浮球にしていた技術も、それを意図的に狙ったのか反射的に自然とそうなったのかは分かりませんがいずれにしても見事でした。
新潟としてはスローインのところから中野に付いていた至恩が、ルキアンのフリックする瞬間にはすでに離していたので、もう少し付き切ってほしかったということが言えるかもしれません。舞行龍も至恩へ何か不満そうにしていたように見えたのはその辺のことかと思います。

72分、新潟は島田→新太で5人の交代枠を使い切ります。
梅山さんが交代直後に仰っていたようにてっきりロメロをボランチで新太が右SHに入る形になるかと思いましたが、福田をアンカーにしてロメロと至恩がインサイドで、新太はややトップ下とうか、実質テセとファビオと共にセンターフォワードを3人並べるような形にしてきました。
直後に新井のロングスローからテセがフリーで合わせた決定機がありましたが、これが決まっていれば長崎戦のように……なんて後の祭りパート2です。
これ以降これを上回るようなチャンスを作ることができなかったのは、この試合の特によろしくなかったポイントだと思うのであとでもう少し触れます。

対して磐田は78分に中野→ルリーニャを投入してこちらも5人の枠を使い切りました。
前線からの守備の強度とカウンターのパワーを落とさないという意味で効果的な采配だったのではないでしょうか。
この交代直後には新潟のミスから藤川と小島の1対1を作られ、さらに山本康に詰められてと肝を冷やします。
試合後に梅山さんも勝敗を分けたポイントとして「ゲームマネジメントの差」ということを挙げていましたが、終盤も思うように押し込めない新潟に対してしっかりコンパクトな守備を維持して、マイボールは丁寧につないで危なげなく逃げ切った印象の磐田でした。

試合終了、1-3。
岡山戦に続いて今季2度目の中2日でのゲームでしたが、再び敗れてしまいました。今後の日程を見るとたぶん最低でもあと6回くらいはあるはずなので、もうそれだけで9敗となってしまいます。昨年昇格した柏、横浜FCが8敗と9敗だったようなので、何とか中2日もうまく乗り越えられるチームになりたいところです。

プレスに屈す

それでは気になったことを2つ。
まずはビルドアップが手詰まり気味だったことに関して、前半25分のシーンを取り上げてみました。

2CBに対して磐田の2トップは前からどんどんプレスを掛けてきました。前半のところでも書いたようにボランチが下りてサポートする暇も与えてもらえない中で、縦パスは難しいですし、ロングボールを蹴らない限りボールはGKへ戻すかSBへ動かすしかありません。
ただ当然それは磐田の狙いどおりの展開です。
FWに寄せられたマウロが体を右に向いた時にはもうすでに左SHの大森が史哉に対してスプリントを掛けてプレスへ来ていました。マウロに戻すのは当然できず、寄って来たゴンサにも相手のボランチが付いて来ています。さらにこれは梅山さんも称賛されていましたが、中野が小島へのパスコースを先読みで消しに行っていたことで、結局やや窮屈な体勢から史哉は長いボールを蹴らざるを得なくなりました。
このシーンのように相手のプレスに手を焼いてSBの位置も低くなり、結局そこで受けて袋小路になってしまうというケースがこの日は多く見られました。
逆に言えば、それでもSBが高い位置を取ることで相手の中盤より後ろの選手を前に出させないとか、相手のFWとMFの間にギャップを作るということができればよかったのですがそれもできませんでした。

また例えば、あえて低い位置に残ることで相手の中盤を引き出して、それによって空いたスペースを狙うということも手段としては十分有効なわけですが、このシーンで言えばゴンサに対して出てきたムサエフの背中(上原の脇)にあるスペースを狙おうとしている様子はほとんどありませんでした。ここを狙えていないことも大森が思い切ってプレスに行ける一因になっていたと言えそうです。

結果的にこの史哉のアバウトなボールの跳ね返りを拾ったところから、もう1度繋ぎ直し、今度は史哉のスペースへのパスを起点にFKから同点弾が決まったので、セットプレーは偉大だなということとサッカーってやっぱ面白いなとも思わされたわけですが、今そんなことはいいのです。
このようにSBのところでビルドアップが手詰まったり、相手がプレスを掛けてくることで生まれるスペースを狙えていなかったりするシーンが何度もあったことは大きな課題として残りました。

終盤のちぐはぐ

もう1つ。
こちらは後半のところで“あとでもう少し触れます”と書いた部分、最後の交代から終盤の戦いについてです。
取り上げてみたのは83分のシーンになります。
相手陣内に押し込んだ状態から後ろの3人でボールを動かす中で、至恩がボールを受けに来たものの、マウロがシンプルに長いボールを入れて、結局チャンスにもならず終わってしまったという場面です。

まず、新太を投入して通常の4-4-2からシステムを変更したことについては、この図の立ち位置からも分かると思いますが、CB2人+アンカーの福田で後方を担い、SBが幅を、ロメロと至恩が内側のポジションをそれぞれ取り、FW3人がゴール前という形で押し込む事を意図していたんだろうと思います。4-4-2から可変するよりも最初からアンカーを置いて新太も中央に置いた方がいいという判断だったかなと推測しました。
しかし、早めに長いボールを入れるのか、ある程度運んで角度をつけてから入れるのかという狙いがはっきりせず、また統一されている感じもせず、結果的にちぐはぐ感が残ったまま終了の笛を聞くことになってしまった印象です。
さらにこのシーンの直後にはゴールキックからのセカンドボールを拾われて余裕を持ってボールを動かされていましたが、3センターになったことで守備にもちぐはぐ感が出ていたのは否めなかったように思います。

またこれは少し違う話になりますが、終盤の戦いの中で少し運ぶにしても浅く角度のない位置から上げるにしても、組み立てからクロスへのコネクターという役割と、先に書いたビルドアップの手詰まり問題の両方で、中島の不在ということを感じずにはいられませんでした。
より一層選手間の競争が求められるところです。

最後に

今節の振り返り、終わります。
こうして厳しい敗戦を喫しても、幸か不幸か次の試合はすぐにやってきます。
とりあえず同点に追いついてからの時間帯、後半立ち上がりの時間帯、いいリズムでできたところも忘れないようにしたいところです。負けたから全部ダメにしていては伸びるものも伸びませんから。

しぶとく戦いましょう。

くりはら
くりはら
鳥屋野潟ほとり出身のアルビレックス新潟サポーター。海外はアーセナル推し。Jリーグ、海外、2種、3種、女子、その他、カテゴリーは問わずサッカーが好き。ラジオも好き。某坂道グループもちょっと好き。