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オレラグ

引っかかる事【review】第10節 大宮アルディージャ戦

2020年8月10日
こんにちは。
試合が終わった瞬間もうぐったりです。
いや、別に自分は1歩も動いていませんし、ただ「あー!」とか「うぉー!」とか「いやー!」とか言いながら試合を見ているだけなんですけど、それでもそれくらい見ている側もぐったり疲れてしまう試合でした。
解説の梅山さんも「決勝戦のような」と仰っていたり、敵将の高木さんも「内容の濃いゲーム」と仰っていたり、まさにその通りの熱戦だったように思います。
5連戦の最初からこんなタフでハードなゲームを強いられたのはしんどい以外の何物でもないですが、だからこそメンタル的なことなどを考えると勝利が欲しかったなと悔やまれるばかりです。

スタメン

 
さてまずはいつも通りスタメンチェックから。
新潟は前節からの変更が4人。
新太の相棒として2トップの一角に入ったのは3試合ぶりとなるマンジー。
両SHにはロメロと至恩が2試合ぶり。そして前節は右SBだった新井を左にして、右SBには今季初スタメンの史哉が入りました。
対する大宮は、まず前節が試合開始直前で中止となったため1週間と半分空いての試合となります。
前回の8節金沢戦からの変更は3人。
その金沢戦はお休みだった3バック中央の河本と右WBの渡部がそれぞれスタメンに復帰。そして最前線には3節以来とややお久しぶりとなる富山がスタメンに名を連ねました。

前半

早々からやられます。
5分、新潟自陣深くからのスローインを畑尾にカットされると、右サイドの黒川へ渡りドリブルから中央の富山へ。ポストで受けた富山は左足で丁寧なスルーパス。抜け出した奥抜に決められます。
とにかく立ち上がりがマズイ出来で、ここは大いに問題でしょう。
立ち上がりから大宮は相当なパワーを携えて前からボールを奪いに来ました。それはつまり、シャドーの1人が前に出て富山と共に新潟の2CBへ寄せ、それに連動するようにSBにはWB、ボランチにはボランチとまたシャドーが挟みに行くといった形で完全に新潟のビルドアップを食う形です。
プレビューで『大宮はほとんど前からプレッシャーは掛けてこない』なんて書いていたことは見事に裏切られたので、自分も見事に食われた側であり、偉そうに指摘できることでもないのですが、現場は当然様々に想定してプランを立てているはずですから、食われるのは自分だけでよかったのにと思ってしまいました。
12分にも簡単にビルドアップから運ばれて、大きなサイドチェンジとそこからまたさらにファーサイドへのクロスで揺さぶりを掛けられ、最後はゴール前で奥抜にドフリーで合わせられる大ピンチがありました。
シュートが外れた後のDF陣が誰かに「もっとこうしろよ!」とかっていう激しく檄を飛ばす感じではなく、その場に立ち止まったまま「なんでだよ…」みたいなチーム全体に対してイライラとか不満を持っているリアクションに見えたのが印象的でした。
それでも、15分を過ぎたあたりから大宮が元々プランとしていたのか、それとも状況を見てそうなったのか分かりませんが少し構えるような守備になってきて新潟もようやく落ち着いてボールを動かせるようになってきます。
15分には舞行龍の縦パスを起点にシルビ、島田、ロメロと中央で繋いでから右サイドの史哉へ展開してエリアの手前まで運ぶ形を作ります。
18分はこれも舞行龍の縦パスを起点に島田がライン間で受け、隣でもらったロメロがドリブルから運んで最後は新太がシュートという、ブロックはされましたがフィニッシュまでの形も作ります。
また、19分や23分の島田から新太に出たような縦に長いボールも織り交ぜつつ、少しずつ前線からの守備も機能し始めた中で26分でした。
至恩の左CK。ショートで島田へ入れてワンツーの形で再びもらいます。
少しボールが手前に来てしまったため突破はできませんでしたが、しっかりキープした上で落としたボールを島田がシュート性のクロス。
ブロックされたボールをロメロが拾ってシュート!同点!
ロメロのシュートについて梅山さんも「ボールが弾んでいる時はどうしても落ちてくるのを待ち切れずにフカしてしまうことがあるんですけど冷静でしたね」と仰っていましたが、利き足ではない左足だったのもよかったのかもしれません。過度に力むことなくしっかりミートさせて枠へ収めることだけを恐らく考えたことでゴールが生まれたのかなと思います。
ブロックの堅い相手に対してセットプレー、しかも飲水タイム直前というタイミングも含めて素晴らしいゴールでした。
さて、同点となり飲水タイムを挟んで数分後、大宮にアクシデント。
足首を痛めた三門→大山という交代が行われます。飲水タイムの時点で大宮のスタッフが気にかけている声がマイクに入っていたので少し前から痛みはあったのでしょうけど、30分というタイミングで大宮は1人交代カードを使う事となります。
ちなみにこれは余談ですが、大宮の選手、しかもアカデミー出身の選手を褒めるというのは癪なところもあるのですが、純粋に大山という選手はもっと評価されていい選手に思えてなりません。ゲームを作れて守備でも鼻の利く選手で、またこれはプレーとは関係ないですがルックスもいいですから人気も出るでしょうし。
まあ端から見たら分からないこともたくさんあるのだろうとは思いますが、正直他のチームでバリバリ主力としてプレーするところを見たいと思ってしまう選手です。
本題戻ります。
前半の終盤はさらに前からの守備も機能するようになり、攻撃でもブロックを作る大宮に対してスムーズに攻撃の形を作ります。
37分の和輝も含めたビルドアップでは左から中央、中央から右、さらにサイド替えてというように、相手の空いているところに顔を出しながら見事な運びができていたり、そうかと思えば43分のようにマウロの素晴らしいフィードを起点に1本のパスでライン間に起点を作ってゴール前まで迫るシーンも作ることができたりしました。
さらにアディッショナルタイムには中島の素晴らしいFKもあって、できれば前半の内に逆転したかったと思うくらい押し込む事が出来ましたが、残念。
前半終了。
1-1で折り返しとなります。

後半

大宮は頭から2人替えてきます。
富山、黒川→戸島、近藤。1トップと右のシャドーを入れ替えたわけですがこれは梅山さんも仰っていた通り疲労や今後の連戦も考えた上である程度プランとしてあったことかなという気がしました。
後半の立ち上がりは前半のそれとは違い、また前半終盤の流れが続いているような感じで新潟がボールを動かしながらチャンスを窺い、大宮がブロックを作って守る展開となります。
大宮が前線から奪いに行こうとはしていたと思いますが連動できておらず、中島や島田はワンタッチで後ろからのボールを前へ供給したり、前を向いて受けた状態からボールを散らしてゲームを作れたりできていました。
また、大宮が中央を閉めてコンパクトに守ってきたら舞行龍やマウロが1つ飛ばしたパスでSBに供給して外に起点を作ることもできていましたし、55分にはようやく複数人で前からプレスを掛けて来た大宮に対して、舞行龍が長いボールで裏のスペースに送って新太が深い位置で起点を作り、落としたボールをシルビがシュートという形もつくれていました。
ピンチといえば65分のリスタートから奥抜に中央を抜かれて最後近藤にシュートを打たれたシーンくらいで、ここまでは幅や奥行きを意識しながら状況に応じたポゼッションで試合を優位に進められていたと思います。
しかし60分を過ぎたくらいから両チームともさすがに疲労の色が濃くなってきます。新潟は69分にロメロ→矢村を投入し、さらに飲水タイムを挟んで75分には史哉→田上と交代枠を使います。
大宮の方は飲水タイム明けのタイミングで奥抜→イッペイ・シノヅカを投入して前線の3人を全員入れ替えてきました。
すると77分にはイッペイ・シノヅカに右サイドから、81分には翁長に左サイドから抜け出されるなど大宮もここに来てフレッシュな前線3人と運動量豊富な翁長のドリブルや抜け出しを活かして盛り返してきます。
新潟は81分にシルビ→マンジーという交代も行いましたが、68分のシルビのミドルとそれに続いてあったCKから舞行龍が合わせてシルビが滑り込むも届かなかった場面が最後の決定機だった印象で、途中から出てくる選手の貢献度という点では大宮に一日の長があったような気がしました。
80分を過ぎてからも新井がスプリントして前線まで出てきたり、至恩がドリブルから仕掛けたりという決定機ではなくとも、思わず声を出して激励したくなるようなシーンはありましたが、どうしてもクロスやシュートが疲れからか踏ん張り切れずに浮いてしまいます。
終盤には前線4人が絡んでカウンターになりかけたシーンも2つくらいあったかと思いますが、ここも攻め切るには至りませんでした。
試合終了、1-1。
あれだけ疲労困憊となる中でどうしてもスペースが空いてオープンな展開になる中で、それでも大味で雑な感じは受けず、クオリティを落とさずに戦っていたのは単純にすごいなと改めて感心するほどの熱戦でした。

3-2ビルドアップへの対応

前線の守備でバッドだったシーンとグッドだったシーンについて1つずつ図にしてもらったのでそこについて。
まずはバッドだったシーンが前半9分。
ここは梅山さんもフリーの小野に入った時点で「このへんですね。このへんをもう少し消しに行きたいですね」とご指摘されていた象徴的なシーンです。
新潟の前線における守備の狙いとして、まず2トップは縦関係となり、前になるシルビが河本、後ろになる新太がボランチのどちらかを見ます。そして両SHが3バックの左右を見に行くというところまではいいと思うのですが、もう1人のボランチを誰が、どうやってケアするのかが立ち上がりは非常に曖昧でした。
 
 
一方グッドだったシーンが前半44分です。
右から展開されたボールが山越に入ったところでロメロがプレス。河本にはシルビが付いており、大山には新太が見に行っています。一旦WBに渡しますがここもしっかり史哉が連動して寄せたことで再び山越に戻ると、斜めに入れた小野に対して至恩が素早く寄せてさらに新太も挟む事が出来ていました。恐らくこれが狙いとしていた綺麗な形だったのかなと思います。
 
もちろんこれに関しては、山越に展開される前に小野と畑尾に対して島田が2度追いして守備のスイッチを入れたことがあってのプレーだったことも記しておかないといけないでしょう。
さて、このレビューを毎回読んでいる人が果たしてどれほどいるのかは分かりませんが、実は山形戦も同じような事を取り上げています。要は3バック+2ボランチでビルドアップしてくる相手に対してどうやってプレスを掛けるかという問題です。
プレビューで紹介した金沢のようにもっとSHが絞って先にボランチを消す意識があってもいいのかもしれませんし、そもそも奪いに行くタイミング、ここで言えばシルビが出て行くタイミングも改善の余地ありなのかもしれません。
事あるごとにアルベルさんも仰っていますが、ここに関してももう少し「時間が必要」なのかもしれません。

特に私的な感想

言ってしまえばレビューは全部私的な感想ではあるのですが、ここでは特にそんな類の話を、細かい動きや形の話ではありませんが1つ。
概ねで非常にいいゲームをしたと思います。それは間違いないでしょう。
ただ、やっぱりどうしても立ち上がりの15分くらいが気になってしまいました。
90分を通してずっと自分たちの時間としてプレーするのはほぼ不可能です。どこかで我慢する時間やどうにもうまくいかなくて劣勢になる時間はあるものです。ただ、激しいプレスでビルドアップを遮断されてしまったところから、マイボール時(攻撃時)だけでなく守備においても必要以上に受けてしまったというか、恐る恐るプレーしているような気がしてしまいました。
狙いとしているであろうことは攻守それぞれで見られました。
守備はどう嵌めに行きたいんだなとか、攻撃ではボランチが相手の1トップと2シャドーの間に入って、SHは内に入って相手のボランチの脇に入って、うまく相手の間に顔を出したところに入れて相手を寄せてまた空いたところに出してという風にやりたいのかなというのは感じました。
でも守備に関しては行ってはいるけど行き切れてない印象で、先に挙げた9分のように簡単に外されたり運ばれたりしていましたし、攻撃でも縦パスにチャレンジはしているのですが、なんだか淡泊ですぐ失ってしまいバタバタしている印象がありました。
これはあくまでも印象であり、さらに感覚的なことでもあるので非常にあやふやしたものなので、別にそうでなければそうでないでいいですし、気にしなくてもいいのかもしれません。
ただ、立ち上がりというまだどうにでも変わり得る落ち着かない時間帯に相手の圧力にたとえ屈したとしても、必要以上に受けてしまって結果的に失点してさらに追加点の決定機まで作られてしまうというのは、新しいチームになっておもしろいサッカー、わくわくするプレーがたった10試合でここまで出来ているからこそ、もったいなく感じたという話です。

最後に

楽しい話で締めます。
来て早々鮮烈なプレーを見せてくれている中島に関してはもうたくさんの人が絶賛されているのでここでは一旦置いておくとして、ここでは島田について。
山形戦のプレビューの冒頭でコーヒー発売という話題の中で彼について少し触れたことはあったのですが、改めてプレーについてです。
まずそもそもレフティーが好きで、さらにゲームを作れたり攻撃において決定的な仕事が出来たりする中盤の選手(例:中村俊輔、加藤大、エジル、レコバなど)が好きというか憧れなので、島田も当然その対象ではありました。
そして実際うちの選手としてじっくり見るようになって、やっぱりキックの質、視野の広さとそれに伴う判断力など期待通りに好みな選手だったのですが、それだけはありませんでした。
それが守備力。
以前松本戦のオンラインスタジアムで平澤さんも「ボールに突っかかっていく時のスピード感がものすごく速い」と仰っていましたが、この日も59分のような狙い澄ましたカットや、82分のようにしっかり相手を観察した上で足を出してカットという光るプレーがありました。
さらに、先程図で取り上げた44分の直前のように勢いを持って相手DFまでプレスを掛けたプレーを筆頭に、89分という体力的に相当きつい時間にもスプリントをして激しくプレスをかけていたのは見事でした。
守備のイメージがそれほどなかった分、最初は驚いたのも事実ですが、視野が広く戦術眼に長けているからこそ守備でも潰すポイントの見極めが速いのだと感じて合点がいき、ますます好きになりました。
評価が右肩上がりの中島がいて、こちらも攻撃では欠かせない秋山がいて、さらにボール奪取ではチーム随一のゴンサがいて、そして島田がいて。
次の試合はすぐにやってきますが、ボランチの人選と彼らのプレーを改めて楽しみにしたいと思います。