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オレラグ

目指すはあっちへすらり こっちへするり【戦評】第29節 徳島ヴォルティス戦

2020年10月27日

こんにちは。

アルベルさんが「典型的なリーガエスパニョーラで行われるような試合」と仰っていました。
展望でも紹介したようにちょうどこの日の前夜にはエルクラシコもあったわけですが、それにも負けず劣らず、0-0でありながらエキサイティングなゲームが今節は展開されました。
ビッグスワンでの対戦でも感じましたが、この日もスタジアムで見たらもっと奥深くおもしろく感じられるゲームだったのかなと思います。
メッシやアンス・ファティ、モドリッチやセルヒオ・ラモスはいなくても、この日の両チームには至恩がいて舞行龍がいて、岩尾がいて西谷がいて、傑出したタレントとソリッドなチーム同士によるタクティカルなゲームでした。

しかし、そんな中身の濃いサッカーをDAZN観戦でありながらも堪能、満喫できたという充足感はありつつ、自分達のチームが望んでいたものを得られなかった悔しさの方が結局上回ってきてしまうのはどうしたって致し方ありません。

スタメン

まず新潟の方は前節と全く同じ11人です。
ただ、ベンチには4試合ぶりに矢村が入ったのと、さらに11節以来お久しぶりにモリシュンも入りました。

対する徳島は前節からの変更が2人。
CBの石井と左SHの杉森がそれぞれ2試合ぶりにスタメンとなりました。
変更したとはいえ2人とも“戻った”という表現が正確かなと思います。
ということで両チームともターンオーバーなどはなく、ここ最近の鉄板メンバーでスタートしたと言っていいでしょう。

前半

開始早々チャンスが訪れます。
相手のビルドアップで、右に下りて受けた小西のコントロールが少し大きくなったところを逃さず、善朗がボールを奪いかけたところでFK獲得。
2分、ファールを受けた善朗が自ら狙いましたが壁に当たってわずかに上へ外れました。
5分には舞行龍からのフィードを中島が受けてクロスを上げたり、10分には右サイドで中島が奪ったところから福田が右サイドへ飛び出してクロスを上げ、さらに高い位置で島田が奪って至恩がゴール前で仕掛けるシーンを作ったりと、立ち上がりに関しては長いボールも使いながら、また効果的なプレスも活かしながら見せ場を作っていました。

対する徳島も、少しずつポゼッションが落ち着いてきて持てる時間が長くなってくる中で、最初の大きなチャンスは16分でした。
右サイド岸本から中央の岩尾へ預けると、エリアすぐ外の渡井が岩尾に寄ってパスをもらいワンタッチで流します。このボールに西谷が史哉の内側から抜け出してシュートもギリギリ枠を逸れました。

それでも20分には再び新潟。
左サイドの至恩から内側で受けた善朗のクロスにテセがヘッドもGKのナイスセーブに阻まれるというチャンスシーンを作ります。
また、このシーンでも至恩を空けるために史哉がインナーラップしていたり、善朗が左右前後に動いて相手の間に入って起点を作ったりするなどいいビルドアップも見られたのですが、25分の飲水タイム前後あたりから少しずつ我慢の時間が長くなっていきます。

32分、左サイドから上がったジエゴのクロスを西谷が収めるも至恩が素早く戻ってナイスクリア。
35分には同じく左サイドから、西谷が突破して上げたクロスに垣田がヘッドで合わせますが、史哉が最後に体を当てたことでシュートは上へ外れます。
最後のところはしっかり締めることで決定的なシュートシーンというのはそれほど作られなかったのですが、いかんせんマイボールになっても相手のプレスから逃げるポゼッションが多くなってしまいます。
縦パスを狙われたり、もっと言えばとりあえず前線へ跳ね返しておくというシーンもあったりして、とにかく前線や相手陣内で自分達の時間を作ることが出来ない展開となりました。

終盤、37分に福田が中盤で取り返したところから至恩のワンタッチパスを受けたテセが反転シュートを放ったり、40分には相手の横パスをカットした至恩がそのままエリア内まで持ち込んでシュートなど、我慢が続く展開の中でもショートカウンターからチャンスを作ることができたのはナイスプレーでしたが、結局いつものように自分達がボールを持って主導権を握るということはできませんでした。

前半終了、0-0。
ボールを持てない上に、プレスもなかなか思うように嵌らずかわされるシーンが徐々に増えていった中で、それでも無失点でしのいだということで、実況の榎本さんが仰っていたように「及第点」だったのかなと思います。

後半

どちらもそのままスタートした後半、最初のチャンスは徳島でした。
47分、中盤でマイボールになりかけたものの田上が渡井に寄せられて失い、
そのままドリブルで運ばれてシュートまで持っていかれましたが小島がナイスセーブで防ぎます。
抜け出されたところで少し寄せるのが遅くなってでも中央の垣田を消してから渡井にアプローチした舞行龍のプレーはナイスでしたが、前からプレスに行ってアバウトなボールを蹴らせることに成功しながらマイボールにし切ることができなかったのはいただけないところでした。

とはいえ前半と同じように我慢強く戦いながら、57分には高い位置で奪った島田のシュートというショートカウンターからの攻撃を1つ見せると、そのあたりから新潟もリズムを取り戻し始めます。
59分、左サイドからのFKを善朗が逆サイドへ展開したのを起点に、右サイドでボールを動かしてから中島のクロス。ゴール前でこぼれたボールを至恩が拾ってシュートは枠の上へ外れました。
それでもこの起点となったFKに至る左サイドでの繋ぎでは三角形を作りながら前へ当てて落として裏のスペースにテセが流れるという循環ができていましたし、以降も小島のフィードから繋いで久しぶりにサイドチェンジを使った形もあったり、それと同時に前からのプレスや素早い守備への切り替えでしばらく自分達の時間を作ることができていたりもしました。

しかし、飲水タイムを挟んで一気に4人を入れ替える策で徳島は再びペースを取り戻しにかかります。
69分、CB内田、右SB岸本、ボランチ小西、FW垣田→CB福岡、右SB岸本、ボランチ鈴木、FW河田と、それぞれがそのままのポジションに入ります。
新潟の方は善朗→ゴメス。こちらもそのままトップ下の位置へ入りました。

すると早速徳島がチャンスを作ります。
74分、右サイド藤田のクロスを小島がパンチング。
こぼれ球を渡井が拾ってシュートも小島が鋭いセービングを見せます。
さらに2次攻撃。
後ろから繋ぎ直して左サイドに運ぶとジエゴのクロスに河田ヘッド。
これは幸いクロスバーに救われてゴールとはなりません。
さらにさらに77分には、小島から島田へのパスがズレて低い位置で失ってしまい、右サイドから西谷に抜け出されてクロス。クリアしたボールをさらに岸本に拾われて再びクロスと、立て続けにゴール前に迫られましたがここも何とかしのぎ切ります。

徳島の攻撃をようやくかわしてひと段落した80分に新潟は2人を入れ替えます。
史哉、中島→シルビ、ロメロを投入。
ゴメスが久しぶりに本職の左SBに入り、トップ下にロメロ、右SHにシルビという布陣に変更します。
すると新潟も交代を機に少し反撃に出ます。

82分、舞行龍からの縦パスを至恩が落として島田が右サイドへ大きく展開します。
田上がボールをもらって丁寧なクロスにロメロがヘッドもミートできず。
セカンドボールを至恩が拾ったところから今度はゴメスが縦に突破してクロス。
このこぼれ球を島田が拾ってシュートを放ちますがDFにブロックされてGKに抑えられました。
しかしスムーズなビルドアップと展開から厚みのあるサイド攻撃を繰り出しました。
さらに87分には小島のゴールキックから至恩、ロメロと繋いでシルビが抜け出しかけたところで倒されてFKを獲得します。
このFKを田上は相手GKが1歩も動けない際どいコースへ鋭く狙いましたが、惜しくもサイドネットでゴールとはなりませんでした。

逆に89分、左サイド渡井からのクロスに河田がピンポイントで合わせる決定的なシーンを作られましたが、残念そこは小島。
この日は、いや、この日も小島は幾度となく素晴らしいセーブでチームを救ってくれました。

最後セットプレーからの交錯で田上が負傷により矢村と交代となってしまったのは非常に気がかりで心配ではありつつも、試合はその中断があったにしては思ったより早くタイムアップの笛が鳴りました。

試合終了、0-0。
実況の榎本さんも日報の記事でもあったようにまさに痛み分け。
ただ追う新潟にとってより強い痛みの残る引き分けとなりました。

運び方

お互いに高い位置から網を張ってそこからプレスへ行くという守備の狙いはある程度実践できていて、それがこの試合をより見応えのある試合内容たらしめたのではないかなと思います。
そんな展開だったからこそ、徳島とのちょっとした差のように感じられたことを拾ってみました。

その象徴的なシーンが前半24分のシーンでした。
このシーンでは、ボランチの小西がCB間に下りてもう一方のボランチである岩尾と縦関係になってビルドアップをします。それに対して新潟はテセと善朗がその縦関係となる相手のボランチ(小西、岩尾)を見て、中盤から後ろも前線と連動して押し上げることで前から網を張ります。
そして中央の小西がパスコースを探している間にさらにじわじわ新潟はラインを押し上げて、テセがプレッシャーのスイッチを入れると、小西からパスが出た左の内田に対して右に入っていた至恩も寄せに行きます。
しかし、テセと至恩の2人に寄せられた内田はそこで冷静に外側へドリブルで持ち出してプレスを外し、さらにサポートに入った杉森も少し運ぶようなトラップでスペースに逃げて、結局中央から右へと展開されました。

この内田、杉森の自ら運びつつ相手を動かすというプレー自体もそうですし、このプレーが選択できるということは、ボールをもらう前からそれを確実にイメージできていたであろう意識の部分に、強さとすごさを感じました。

新潟の場合、相手にプレッシャーを掛けられる中でビルドアップからサイドに渡ると、細かく繋いだりもしくはスペースへ送ったりという形、つまりパスの選択がほとんどでそのためトラップも足下に置くことが多いように思います。
もちろんそれでもテンポよく繋いだり、前線が流れて起点を作ったりしながら、状況を打破できるようにもなっていて、それは間違いなくチームとして成長しているところではあると思うのですが、この徳島の自ら運ぶという部分にちょっとした違い、チームとしてできる事の多さという差を見た気がしました。

無失点という成果

運び方の差について書きましたが、それでも徳島は自分が見た何試合かと比べても、プレスに屈してボールを失ったり支配し切れなかったりしたことは多かったように感じました。それは河田であり渡井なんかもそういった趣旨のことを話していたので間違っていない印象かと思います。

そんな守備において前からプレッシャーを掛ける部分もよかったのですが、SBの田上と史哉の2人が仕掛けてきたり侵入してきたりする相手に粘り強く対応しているプレーも随所に際立っていました。
特に田上の方は実況の榎本さんと解説の田淵さんも守備対応について絶賛されていましたが、84分のジエゴが仕掛けてきたのに対して体をぶつけてゴールキックにしたところで上げた雄叫びには、見ているこっちもグッと熱くさせられました。

ボールの運ぶ部分、攻撃の面においては課題や厳しいプレーが多かったのも事実ですが、無失点というところに関しては彼らSBの貢献があってこそだったのもこれまた事実でしょう。

最後に

風は強かったようですが、前回対戦同様綺麗な青空の下、見応えたっぷりのサッカーが展開されました。
そして結末は前回のような悲劇的なものではなく、また想定し得る最悪のものでもありませんでした。少しずつでも進歩していると言えるでしょう。

差を詰められずに試合数がまた1つ減ってしまったのでやっぱり悔しさが大きいのは否めないところではあるのですが、「望みはある」(舞行龍)という気持ちは強く持っておきたいと思います。

くりはら
くりはら
鳥屋野潟ほとり出身のアルビレックス新潟サポーター。海外はアーセナル推し。Jリーグ、海外、2種、3種、女子、その他、カテゴリーは問わずサッカーが好き。ラジオも好き。某坂道グループもちょっと好き。